十八試局地戦闘機 震電

登録日:2011/12/21(水) 23:40:06
更新日:2024/01/09 Tue 00:03:35
所要時間:約 4 分で読めます




機体データ


●エンジン
三菱・ハ43-42型
空冷星形18気筒 2030馬力
最高速度 741km/h

●武装
30mm機銃×4
30・60kg爆弾×4

初飛行
1945年8月3日

概要

震電は、第二次世界大戦において日本海軍が開発した戦闘機である。
大戦末期の本土防空戦において海軍が求めていたのは、B-29に対抗することのできる高速重武装の高高度迎撃機であった。
旧式化した従来型の零戦は勿論、期待の局戦雷電すら「空の要塞」B-29には苦汁を飲まされ、本土は次第に焼かれてゆく。

新鋭機紫電/紫電改は数が足りず、前線から更なる新型機の開発・実戦配備を求める声が日増しに強くなっていった。
そこで、開発陣は前翼型(エンテ翼型)と呼ばれるスタイルの革新的な機体を作ることになった。

前翼型の利点は、前翼が揚力を発生させることや、プロペラ効率が上がること等によって機体全体の抵抗を低く抑えることが可能なことである。
そのため、大馬力エンジンと重武装を搭載しつつ機体をコンパクトにまとめることが可能となり、その結果スピードと高火力の両立が可能となった。

しかし、震電にデメリットが無いわけでは無い。
プロペラが推進式、機体の後ろにあるため、試験飛行では離陸時にプロペラが滑走路に接触して損壊、離陸に失敗した(この対策として、二回目の試験飛行からは、垂直尾翼下に同社の白菊の尾輪が取り付けられた)。
さらにプロペラから発生する気流を受け取れない。これは離着陸時、不安定になりやすい上に、エンジンの冷却も鈍くなってしまう(エンジン冷却は専用のファンを取り付けることで、ある程度は克服している)。
また、脚部が非常に長く、脆いので、着陸時に「ポキンッ」なんて事も考えられる。

確かに一旦空にあがり、戦いとなれば震電は頼もしいだろうが、運用は多少難しいかもしれない。完全な兵器など無いのである。

そして、初試験飛行が1945年8月では実戦運用等されるはずもなく、3回目の飛行後、壊れた発動機の部品をメーカーから取り寄せようとした少し後に無念の終戦となった。
しかし前翼型の戦闘機の成功例は他国でも殆ど無く非常に珍しい機体であったため、終戦後に1機だけ米軍に接収され、分解されてワシントンD.C.のスミソニアン航空宇宙博物館の倉庫に運ばれた。
2023年現在はスミソニアンの別館にて前半分だけが復元展示されており、恐らく後半分や資料は今でも倉庫で日の光の元に出るその日を待っている…。

また2022年、ある企画のために日本で原寸大レプリカ模型が製造され、それを聞いた福岡県の大刀洗平和記念館がクラウドファンディングで資金を集め企画使用後の模型を展示用に購入。*1
内部の操縦席は企画用に少しいじってあるため完全復元ではないものの、これが震電の初フルスケール展示となっている。


ジェット化構想

さて、このエンテ翼と言う浪漫溢れる機体だが、この浪漫はまだ止まらない。
「ジェット機化」する構想があったのだ。
まぁ、「ジェット機化してみね?」「いいなソレ、カッコいいな」程度の話で、ジェット機化に向けて何かした、と言う事実は無いのだが。
更に更に、その搭載予定のエンジンはとてもじゃないが実戦に耐えれるものでは無かった。当時の日本には、希少金属も無いので、まともに生産できなかっただろう。

同時期に試験飛行が行われていた橘花は日本独自開発のエンジンを搭載していたが、これも当初は世界初ジェット戦闘機Me262を運用していたドイツからジェットエンジン
実物や関連資料からエンジン開発をする予定が実物も含め大半は搭載した潜水艦と共に失われ、寄港時に下され空輸された僅かな資料を基に作成せざるを得なかったために
僅か1年で開発できたものの当初予定された性能には及ばず、後継となるエンジン開発も難航した。
なお日本版Me262といわれる橘花はMe262に比べると小型なのに対し、陸軍ではキ201(火龍)という日本版Me262が計画されており逆にこちらは一回り大きくなる予定だった。

そんな事はどうでもいい!
この浪漫溢れる形状に、ジェットエンジン…
先人は偉大だと言わざるを得ない。



ゲーム・アニメでの活躍


  • ストライカーズ1945(無印・Ⅱ)
初代、続編のⅡ共に自機として登場
ショットは直進型で移動速度が速い
そして最大の特徴として、ボスに近づいてボムる(Ⅱでは仕様が変わりゲージ上昇率は悪いが、LV3まで貯めて使うと)ラスボスすら一撃で粉砕するチャージウェポン(初代ではボム)【サムライソード】を搭載している事である
ちなみに初代では特定条件でパイロットの素顔(さらに条件を満たすとパイロットが脱ぐ)を見る事ができるが、コイツだけ筋肉隆々のむさい男(それ以外は全員女性パイロットである)

  • 19XX
↑とタイトルが似ているように見えるが、全く別のメーカーによるシューティングゲーム*2の自機の一つ。
機動力に優れ、貫通性能を持つビーム弾「スーパーシェル」が強化対象になっており震電が装備した時のみ2連装になる。
雑魚の掃討には向くが、硬い敵に張り付いても火力が上がらないので多くの場合3wayに取って代わられがちである。

物語中盤で主人公である宮藤芳佳専用機として登場している
足に履くストライカーユニットの形状のため特徴的な背部プロペラは再現されていないが、翼に前翼型の形状が認められる。

ちなみにこちらも初登場時にネウロイ一撃で粉砕している。
性能を十分に発揮し、ロマーニャ地方の解放に大きく貢献する。

最終作戦後破棄(ラストシーンにて大和と共にどこかの海岸に打ち上げられているのが確認できる)。

  • 紺碧の艦隊
震電の設計をベースに後世世界にて改良を加えて配備された防空戦闘機「蒼莱」が登場する
後世世界における米軍の東京初空襲にて爆撃機編隊を一会戦で壊滅させる初陣を飾った
様々な架空機が存在する同作でもきっての人気機種で、OVA版では番外編として一話をまるまる使った開発秘話が作られている

太平洋戦争下の機体そのものではないが、PlayStationStoreにて配信されていた航空自衛隊所属の架空の先進支援戦闘機ASF-X ShindenⅡは本機の名前を引き継いだと言う設定。
設定としては震電開発者の子孫が開発チームにいたことから命名されたとしている。
種別はマルチロール機。その後ACECOMBAT Infinityや、ACE COMBAT 7 SKIES UNKNOWNのDLCでも続投している。

  • 荒野のコトブキ飛行隊
敵であるイサオの赤い機体が登場、搭乗者の高い技量と機体性能も相まって主人公サイドに甚大な被害を出した。

主人公が通う大学の敷地内に完品で埋められていた。
自動車部の手で、文化祭の呼び物として修復され、試験飛行まで行ったが、パイロットが素人のため、着陸できなくなったというオチがつく。

艦載機化された*3「震電改」が登場…するのだが、サービス開始直後に1度イベント報酬になったきり長らく再登場せず、
さらにこれに並ぶ性能の艦上戦闘機も存在しないため、幻の超兵器・オーパーツと化していた。
そんなこんなでサービス開始から10年を迎えた2023年4月23日、10周年記念の期間限定任務の報酬として大抜擢され、遂に幻のオーパーツを脱した。
期間限定なのでここで入手していない場合はまた幻のオーパーツになった…と思ったら、2024年1月1日の新春任務にて再配布された。
艦これ運営は上記の企画を大絶賛していたので、その記念ではないかとも囁かれている
これを逃したら今度こそまたオーパーツになると思われる。

マタ・タミが変身した姿として震電を模した「しん電」が登場。パイロットは野原しんのすけ


  • ZERO PILOT ~銀翼の戦士~
PSの空戦ゲーム。
終盤のステージで艦上機として、母艦の空母「大鶴」を護衛するミッションがある。
しかし高高度からはB-29、低高度からはスカイレイダーが波状攻撃を仕掛けてくる屈指の難関ステージ。
どちらかを追って急上昇と急降下を繰り返すことになり、撃墜に手間取ると次の攻撃を阻止するのに間に合わなくなる。
大鶴は2発までの被弾になら耐えてくれるのでいっそのこと被弾覚悟で、同高度の次の攻撃の阻止に向かうのも手。
着艦モーションも用意されており、機体下から伸ばしたフック付きワイヤーをアレスティングワイヤーにひっかけて止まるようになっている。


追記、修正は分解されて倉庫にぶち込まれた上に放置プレイをかまされてからお願いします。

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最終更新:2024年01月09日 00:03

*1 制作会社とは公開まで企画用のものである事を秘匿すると約束していたため、展示開始から1年以上出所が一切明かされていなかった。

*2 ストライカーズシリーズは彩京、19シリーズはカプコン

*3 後に局地戦闘機などを配備する基地航空隊も実装されたが、通常の震電は未実装。