シャドウゲイト

登録日:2011/12/18(日) 04:23:01
更新日:2023/12/17 Sun 07:37:30
所要時間:約 7 分で読めます









わたしこそ しんの ゆうしゃだ!!













シャドウゲイトとは、1989年3月31日にケムコが発売したファミコン用アドベンチャーゲームである。




概要

元々は米国のICOM Simulations社が1987年にマッキントッシュ用ゲーム「Macventure」シリーズの一つとして発売した作品。
日本で発売されたものはケムコがローカライズした移植版である。

行動の自由度が高く、当時としては美麗なグラフィックを誇り、さらにゲームオーバー(死に方)のパターンがやたら豊富なので、マニアの間では隠れた名(迷)作と呼ばれていた。

一方で、洋ゲー特有の高難易度や、何気ない操作で即ゲームオーバーする事が原因でクソゲー扱いされることも多い。

しかし、実際にプレイしてみると
  • コマンド総当たりが多かった当時の和製アドベンチャーゲームとは一線を画す自由度の高さ
  • どこでもできるセーブ機能
  • ゲームオーバーになってもペナルティがほとんどなく、直前の状態からすぐコンティニューしリトライできる良UI話を聞き漏らしたら詰むミシシッピー殺人事件とはえらい違い
などゲーム的な面白さとユーザーフレンドリーなシステムが盛り込まれた良作であることがわかるだろう。

…わかってください。


ケムコが手掛けたMacventure移植作は本作の他にも『ディジャブ 悪夢は本当にやって来た(原題: Deja Vu: A Nightmare Comes True)』『悪魔の招待状(原題: Uninvited)』があり、これら3作は『ケムコ三部作』とも呼ばれる。

この三部作共通の特徴として
「原作(英語版)では二人称による状況説明だったものが、全て一人称による独白になっている」
という改変がなされている。
原作では、主人公が置かれている状態等はTRPGのゲームマスターよろしく「あなたは~」というナレーションによって説明されるのであるが、ケムコはこれを主人公の独白にアレンジしたのである。

その結果、『ディジャブ』の主人公はハードボイルドな雰囲気を湛え、『悪魔の招待状』の主人公は情緒不安定な少年となった。
そして本作の主人公は、自分の死に様を事細かに実況するけったいな勇者と化した。



わたしの ゆうしゃとしての ちが さわぐ!!



ストーリー

とある王家の血をひく主人公ことしんのゆうしゃ(自称)は、ドルイド僧から魔王ワーロックがシャドウゲイト城*1を根城にタイタンの中でも最も恐ろしいベエマスを呼び出し、世界を恐怖に陥れようと企んでいることを聞く。
これを聞いたしんのゆうしゃはそれを防ぐために

たいまつ1本だけ持って


たいまつ1本だけ持って


シャドウゲイト城に単身乗り込むのだった…。




これが きょうふへのいりぐち というわけか…。



登場人物

  • 主人公
しんのゆうしゃ。王家の血を引いてるらしい。
呪文を簡単に使えるようになったり、ひかき棒で即死できたり、鎖に繋がれてる見知らぬ女を見て「おっ…いいおんな」と呟いたりと流石である(なにが)。

ゲームの主人公たちの中でも随一の死にやすさを誇り、その貧弱さはかのスペランカー先生並みである。
生粋のポエマーでもあり、死に際に放つ哀愁漂う断末魔は逸品。
興味のあるかたは「シャドウゲイト 辞世の句」でググってみよう。

しんのゆうしゃの割にヘタレな言動が多く、モンスターが出現するたびに
ひいっ」「でた!」
などの悲鳴を上げたり動揺したりする。

パッケージのイラストではイケメンで凛々しい表情をしており、本編のヘタレぶりが嘘のよう。

  • ワーロック
強大な魔力を盾に世界征服を企む魔王
タイタンの中でも最も恐ろしいベエマスを呼び出すため、シャドウゲイト城に引きこもっている。
ゲーム冒頭で目だけ登場し、そのままゲーム内ではまったく姿を見せず、ラストバトルで初めて姿を現したかと思ったら終始後ろ姿な上に悲惨な死に方をする可哀想な人。

パッケージでは口が耳まで裂け、鋭い牙が生えそろった恐ろしげな顔をしている。

  • ベエマス
ワーロックが呼び出した最も恐ろしいタイタン。
タイタンと聞くと巨人のような姿を想像するが、実際はつぶら瞳をしたピンク色のドラゴンに似た外見をしている(そもそもベヒーモスの訳である)。
('p')あうあうと首を振る姿はかわいい。

赤い目と白い歯が素敵な死神。
ゲームオーバー画面に出てくるため何度も見ることになるある意味このゲームを象徴するキャラ。
普通にやってても主人公が良く死ぬ、死ぬことへのペナルティがほぼないゲームなので主人公の辞世の句を聞きたいプレイヤーは積極的に殺すため出番がかなり多いと思われる。
主人公が死ぬ=コンティニュー時には散々世話になるので、「わたしのしんゆうでさえも…」などとゆうしゃが口にする親友とは、この死神だと一部では云われていたりと、死神なのに過労死が心配される。



へっ へんなこと させないでくれ!!



コマンド

ゲームで使用する10のコマンドを説明する。

各種コマンドは
①コマンドを選ぶ
②コマンドを実行する対象を選ぶ
③Aで選んだものを用いる対象をさらに選ぶ
という動作を経て実行される。
前述の通り元はマウス操作前提のPC、それもMacゲーなのでファミコンのコントローラーパッド用にアレンジされている部分がある。そのため操作しにくい。

2chのシャドウゲイトスレでは
◯◯(コマンド名)>◯◯(コマンド対象)>◯◯(さらに対象)
と表記される。


例)つかう>つるぎ>セルフ→わたしは つるぎのはを ひだりむねに(ry

なお、たいまつには行動回数制限があり、コマンドを選んで行動すると減っていき、火が消えると真っ暗な中で転んで頭を打って死亡する。
このため消える前に新しいたいまつに火を付けて行動回数を増やす必要がある。
また、ゲームオーバーになると残りの行動回数が一定の数になるペナルティがある(ただし、少ないときにゲームオーバーになると逆に増える)。

  • つかう
アイテムを使ったり装備をしたり呪文を唱えたりするコマンドである。

装備する際は

つかう>◯◯>セルフ

という動作を行うことで装備できるが、このゲーム内に登場するアイテムでしんのゆうしゃが装備できるアイテムは3つしかなく、それ以外の身に付けられそうなものに対してこのコマンドを行うと…お察しください。
しんのゆうしゃは本当にそのままの意味で解釈してしまい、それがどんな危険な物であったとしても、躊躇なくわざと使用するのである。

例 
1松明を自分に向かって使用→焼身自殺
2剣を自分に向かって使用→胸に剣を突き刺して自害
3槍を自分に使って使用→剣と同じ
4矢を自分に向かって使用→上に同じ
5斧を自分に向かって使用→以下同文
6火搔き棒を自分に向かって使用→もう云わん・・・・・・・。

・・・・・・という具合にである*2

また つかう>セルフ を行うと「へっ へんなこと させないでくれ!!」と妙に焦る。
何をするつもりだったのだろう…。

  • しらべる
対象を調べる際に使うコマンド。
これを行うことで、その場で何をすればいいかわかることが多く、攻略に際して非常に重要なコマンドである。

一見危険そうな大蛇も しらべる>へび で「ばかにしている!だいじゃは ただの つくりものだ」ということが判明したりする。

ちなみに しらべる>セルフ すると
「わたしこそ しんの ゆうしゃだ!!」と高らかに教えてくれる。
アイテムを装備している場合はそのあとに身につけているものを教えてくれる。


  • とる
アイテムを手に入れ持ち歩けるコマンド。
このゲーム、やたらと取得できるアイテムが多く、その上持ち物欄の制限がかなり緩いため40種程度は余裕で持ち歩ける。
その反面、使い道のないダミーアイテムと使うと即死するトラップアイテムが半数を占めており、プレイヤーを悩ませてくれる。

一見ただの背景のような、あちこちにかけられてる松明(きりたんぽに似てる)も取れたりするなど、色んなものを取ることができる。


  • あける
扉や袋を開けたりするコマンド。
一見開けられそうにないところも開けられたりするのでマップは注意深く見よう。

またこのコマンドで開けられる扉はカギの付いていないものだけで、カギ付きの扉は対応するカギをつかう>カギ◯(数字が入る)>とびら とすることで開けられる。


  • すてる
アイテムを捨てるコマンド。
このゲームでは一度使えば後は用済みとなるアイテムが多いため、不要になったものを処分しアイテム欄を整理するためにある…のだが、前述したようにアイテム欄にはかなりの余裕があるため、普通にプレイしていればまず使うことのない死にコマンドである。
使うとしたらアイテムが多くてページ切り替えが面倒になったときくらいだろう。


  • しめる
死にコマンドその2。
一度開けた扉や袋などを閉められるが、閉めることを必要とする場面はゲーム内に一切ない。


  • たたく
対象を手で殴打するコマンド。
隠し通路を開けたり岩を壊したりするのに使うのだが、使う機会はそれほど多くない。
一見敵キャラに対しての攻撃コマンドのようにも見えるが、実際はモンスター相手に使用しても大抵返り討ちにあう。
このヘタレが!


  • はなす
対象と話をするコマンド。
しかし城の中で出会うのはほとんどがワーロックの手下のモンスターであるため、聞く耳を持つ相手は非常に少ない…というかほぼいない。例外はドルイドぐらい。
一応呪文を唱えることにも使える。
死にコマンドその3。


  • いどう
目的地に移動するコマンド。
コマンドを選んだあと、画面上の目的地を直接カーソルで選ぶか、いどうコマンドの下にある移動できる場所が□で表示された簡易マップから選んで移動する。
移動できる場所はほぼ無制限で
井戸だろうがだろうが(ドスーン!ぎゃーっ!! あんこくのなかでまたたくほしのかがやきだった。)
燃え盛る火炎の中だろうが(ホップ、ステップ、ジャンプ!かーるいす!!)
選択すれば躊躇なくしんのゆうしゃが飛び込んでくれる。
そして大抵死ぬ。(あづーっ!!)
しまいにはどうしてこんなことをさせるんだ!!文句を垂れる


  • セルフ
自分になにかをする場合に使うコマンド。
装備したり、薬を飲んだり、刃物を自分の胸に刺したりetc…。
つかう>びん1>セルフ
つかう>おの>セルフ
といった具合である。
まあ大概死ぬ。
一言で言えば自殺コマンドである。
マントなどの場合は流石に自殺に使わずちゃんと装備してくれる。




うーん しっくりくる。



補足

ゲーム中にセレクトボタンかスタートボタンを押すとヒントが聞ける。
しかしこのヒント、内容にやたらばらつきがあり、下手すると「あきらめるな!!」としかヒントが表示されなかったりする

また関連商品として、GBCでリメイク版の『シャドウゲイトリターンズ』が、NINTENDO64で続編の『シャドウゲイト64』が発売されている。
続編とは言っても2Dから3Dになっていたり、主人公も頑丈になっていたりと似ても似つかない。
またしんのゆうしゃはこちらの作品では伝説の勇者として崇められている。ちなみにこの時点では本名の名前の部分は「ジェイル」と部分的に判明している。

そして2014年、Steam用としてリメイク(リブート)版である『Shadowgate』が発表された。
こちらは現代のPCのスペックに合わせてグラフィックその他が大幅アップデートされておりまた謎解き部分も一部改変されている。
だがこちらの制作には原典のICOMの開発者も携わっており正当なリブート版と言って差し支えの無い物となっている。
主人公のフルネームは25年の時を経て、遂にWestland(ウェストランド)の 「Jair Cuthegar(ジェイル・カサガー)」 卿と確定した。
勿論、バリエーション豊かな死亡シーンもそのまま…というか増えた(例:ゴブリン達が屯する酒場でゴブリンから酒を奪い、袋叩きにされる)。しかも中には複雑な手順を踏まないと死なない、言わば隠し死亡シーンまであるという徹底ぶり。
しかしこの『Shadowgate』、Nintendo Switchなどの家庭用機にも配信されたが日本国内版でも ローカライズされていない
テキストが多いゲームなので翻訳コストがかかるのは理解できるが
テキストが主体のADVを 英語のみで 日本国内のCSゲーム機に出すソフトは珍しい。
CERO審査は通しているのに…。


競馬界にも競争馬として「シャドウゲイト号」が実在する。

2012年1月4日に引退し生涯戦績は46戦7勝。
何気に海外G1勝利
ゲームとは一切関連はないが名前が同じということで、しんのゆうしゃたちは彼がレースに出走すると色めき立った。









いかなる しょうがいも のりこえ
ついきしゅうせいを すること…
それが わたしの はたすべきしめいなのだ!!



ついき>しゅうせい>こうもく
ぎゃー!!かんじが!!かんじが!!




ざんねん!!
わたしの ついきしゅうせいは これで おわってしまった!!

(画像出典:シャドウゲイト 開発元:ケムコ 発売元:ケムコ)

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最終更新:2023年12月17日 07:37

*1 ちなみに、ゲームタイトルは「シャドウゲイト」だが、ゲーム本編では全て「シャドウゲート」と表記されている。

*2 『ディジャブ』では拳銃をセルフで使うと「生きることに疲れて拳銃で自殺した」と、まともなメッセージが出る。『悪魔の招待状』だと「刃物をうっかり滑らせて身体を切って大量出血死」という、半ば事故のような描写になっており、どちらもあまりネタにされない。