海と毒薬

登録日 :2010/03/26(金) 00:00:52
更新日 : 2015/07/07 Tue 22:07:24
所要時間 :約 3 分で読めます




『海と毒薬』とは、1958年に発表された遠藤周作(1923~1996)の小説。または、これを原作とした同名の映画。

本項目では小説と映画を記述する。


【小説】
芥川賞作家・遠藤周作(『沈黙』『深い河』等)による、実際の事件を題材にした1958年の小説。
キリスト教徒である作者が「神なき日本人の罪意識」を問うた作品である。新潮社文学賞や毎日出版文化賞を受賞した。


《ストーリー》
新天地に引っ越した「私」は、持病の治療のために近所の医院に通う。
しかしある日、「私」はその医院の医師・勝呂が戦時中の『ある事件』に関わっていたことを知ってしまう。


──九州のF市にある大学病院の医局員だった勝呂は、実験材料にされる患者や医学部長選挙で争う教授たちと医局員を見て、憤りと虚しさを感じていた。


そんなある日、医学部長選挙に出馬していた橋本教授が、前部長の姪の手術に失敗してしまう。
橋本教授は名誉挽回のため、軍部から要請された「米軍捕虜の生体解剖実験」を受け入れる。

その生体解剖実験に、勝呂と親友の戸田の二人が参加することになるが・・・・・・


【映画】
原作の映画版。1986年制作の全編白黒作品で、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した。
監督は『黒部の太陽』や『日本の黒い夏-冤罪-』等で有名な、社会派映画の巨匠・熊井啓。役者陣には奥田瑛二や渡辺謙、ヅラ・・・西田健などの名優が出演している。

【キャスト】
勝呂:奥田瑛二
戸田:渡辺謙
浅井:西田健
橋本教授:田村高廣
大場看護婦:岸田今日子

【スタッフ】
監督・脚本:熊井啓
撮影:栃沢正夫
音楽:松村禎三


映画内の手術シーンの血は輸血用の本物で、手術器具も戦時中の本物を使用している。


【その他】
実際の事件をモチーフにしているが、小説は作者の創作性が強い。
ゆえに劇中の「食人行為」は、戦後の裁判で米軍側の「捏造」として無罪(あくまで食人行為のみ)になっている。

実際の事件については興味があれば、各々の判断で調べてみてもよいだろう。
※閲覧には一応注意されたし


『海と毒薬』という題名は、作者が実際に事件があった大学病院に見舞い客として行き、
劇中ラストの勝呂と戸田のシーンよろしく、屋上から雨に煙る街と海を見渡して思いついたという。

『悲しみの歌』(1977年)では、勝呂のその後が描かれている。

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