危険物取扱者

登録日:2012/05/02(水) 00:16:53
更新日:2023/10/03 Tue 19:17:49
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危険物取扱者とは日本の国家資格の一つ。
世の中いろいろやべーものがあるが、日本では消防法で定められた危険物の取扱及び貯蔵に関わる業務を担任する者である。
消防法において危険物は第1類~6類の6種類に分けられ、これらを取り使う業務に甲乙丙のグレードが付けられている。
(※「第〇類」の数は物質の化学的性質などを基に分類されたもので、危険度の優劣を表すものではない)
該当する危険物取扱者免許を所持する者が危険物取扱者になることを許される。

分かりやすく言うならば、ガソリンスタンドの店員などが我々庶民にとって最も身近な危険物取扱者であろう。
勘違いされやすいが、タンクローリー自体の運転に、危険物の免許は必要ない。ガソリンなどを「積んで」走るときにいる。

工業系の仕事に着く際は非常に役に立つ免許であり、工業高校出身の人間ならば、必ずこの免許を取得しているといっても過言ではない。
というよりこの免許の取得が必修化されている工業高校も実際に存在する。
また農業高校でも危険物の資格取得に力を入れている場合がある。
ちなみに後述するように(甲種以外は)特に受験資格は無いので、普通科の生徒・出身者でも取ろうと思えば取れる。

工業系の資格としては電気工事士自動車整備士と並び人気、知名度が高い。
また、工業系の資格の中では比較的女性にも人気のある資格である。

そもそも危険物取扱者とは 後述する指定数量を越えて危険物を扱うのに必要な資格 なのでそれ以下の場合は一般人でも扱える。
ガソリンの指定数量は200リットル、灯油は1000リットルとなり、
一般人が自動車にガソリンを入れたりストーブに灯油を入れるのは1日にせいぜい数十リットルなので指定数量を越えることはそうない。
とはいえ法的にはそうであっても危険物の性質を理解して注意して扱うべきなことに変わりはないが。
また 消防法では その通りだが実際は市町村の条例でもっと縛りを入れてることが多い。
ガソリンは指定数量200リットルなので消防法的には199リットルまで家に保管してもokだが
ほとんどの自治体ではそれ以下の基準で保管するようにと定めているはず。
ガソリンスタンドは 自動車の駆動用燃料タンク に給油する場合に限り指定数量を超過する認可を受けている施設なので
自動車ではない 何か にガソリンを入れるのは1日に指定数量まで(ガソリンのみなら200リットル)しか給油できない。


免責事項

項目内に記載された難易度評価・社会的評価は、あくまで執筆者ないしは追記者の個人的見解によるものです。言われた通り資格取ったのに選考落ちたーなんて言われても責任は取らないよ!

また、実際に資格を取得したいと思った場合、当Wikiを参考にしようとは思わずにネットを切って参考書を買うなり講座を受けるなりすることを激しくおススメするよ!

危険物取扱者になるためには

『危険物取扱者になりたいけど、どうすればいいのか分からない……』

答えは単純明快、危険物取扱者の試験を受けて合格すれば、その日から危険物取扱者である。
すなわち、実際に危険物を取り扱う仕事をしていなくても、免許を所持していれば危険物取扱者の称号を得られるのだ。


試験の種類

※実際に受験する際は、ちゃんと公式サイトの説明を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で問題が発生しても責任は取らないよ!

試験は甲種、乙種、丙種に分かれており、それぞれ扱える危険物の範囲が違う。さらに乙種は扱える物質の種類によって1~6類まで細分化されている。

どの試験も3分野に分かれており、3分野とも正解率6割が要求される。

  • 危険物に関する法令
消防法をはじめとする法令。「指定数量」という考え方について、危険物取扱者のルール、危険物を取り扱う施設の分類やルール、危険物の陸上輸送に関するルールなどを問われる。

  • 物理学及び化学
この分野のみ種によって名前が変わり、甲種は「物理学及び化学」、乙種は「基礎的な物理学及び基礎的な化学」、丙種は「燃焼及び消火に関する基礎知識」。
高校生レベルの物理・化学に加え、燃焼の仕組みや消化の原理などを問われる。

  • 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法
各類に属する代表的な危険物の特徴や安全な保存法、消化方法を問われる。

難易度

概ねの試験の難易度は
甲種>>>~越えられない壁~>>>乙種4類>4類以外の乙種>丙種
である。

ガソリン、灯油、軽油などの液体燃料全般を取り扱える乙種4類(通称「乙4」)、全ての危険物を取り扱えるキングオブ危険物取扱者である甲種は特に人気が高い。

てゆーか、ぶっちゃけ乙種4類と甲種以外は空気
これは「乙4を取得し、免除条件を得てから乙4以外を受験する」という受験者が大多数であるから。
これを裏付けるように、大手参考書メーカーから市販されている参考書はほとんどが
  • 危険物取扱者 甲
  • 危険物取扱者 乙4
  • 危険物取扱者 乙1・2・3・5・6(=乙4以外すべて)
  • 危険物取扱者 丙
の4種類となっている。


受験資格

※実際に受験する際は、ちゃんと公式サイトの説明を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で問題が発生しても責任は取らないよ!

甲種を除き、受験資格は特に無く、受験料さえ支払えば小学生でも受験できる。2013年には小学2年生の甲種合格者が爆誕した
受験申込封筒も最寄りの消防署に置かれているので簡単に受験する事が可能。

試験はマークシートの選択式であり、合格率は甲種30%・乙種4類30%・乙種4類以外60%・丙種60%程度であり、かなり合格しやすい。
上記のうち乙4は人気が高く、その中には学校等で無理矢理受験させられたやる気ない受験者が少なからずいるため数値としては落第者が割り増しされており、実際の難易度は他の乙種と同等と考えられている。
乙4は完全にまっさらな状態の受験者が多く、一方で他の乙種は科目免除者が多い傾向が高い。
既に乙種免状を持っている者は他の乙種免状受験時に試験科目の「危険物に関する法令」と「基礎的な物理学及び基礎的な化学」が免除され、試験時間も短縮され35分となる。つまり「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」のみ、問題数にしてマークシート10問分に相当する。
乙4以外の乙種を受ける人は大体「該当物質を仕事で扱う」とか「甲種の受験資格取得のため」など専門性の高い立場・意欲を持つため、乙4のような記念受験勢が稀であることからストレートな難易度が表れている。
甲種の低さは単純に難しく、試験科目の免除もない。

なお甲種のみ例外的に極めて厳しい受験資格が課せられている。
  • 化学系の学部・大学を卒業している。もしくは化学に関する授業を15単位以上修得した者。
  • 乙種免許の内のどれかを取得していて、かつ、危険物取扱者としての実務経験が2年以上ある。
  • 乙種免許を以下の4種類以上取得している者
  ①1類又は6類
  ②2類又は4類
  ③3類
  ④5類

上記のどれかに該当していることが甲種受験資格である。
しかも、試験の内容自体が乙種とは遥かに次元の違う難易度を誇る。流石は危険物取扱者の最高峰といったところだろうか。

なお、卒業実績や業務実績を持たない者が乙4から甲種に挑むつもりなら上記の通り2類は省略してもよく、3類・5類及び1類or6類の3つを取る必要がある。
そのため「1類を取るか6類を取るか」という話になるのだが、難易度的には「どっちもどっち」。どのみち甲種を取るなら全部勉強する必要があるのであまり気にする必要はない。
しいて言うなら、1類は「勉強は面倒くさいが試験は簡単」、6類は「勉強は簡単だが試験は面倒くさい」という傾向がある。
1類は該当する危険物の種類がやたらと多く、覚えるのが大変だがその代わりに試験自体は基礎問だけで十分数が稼げるため、基本ができていれば問題なく合格できる。
一方6類はたった4種類しかなく覚えやすい代わりに、一つ一つの危険物について問われる知識が深く難問奇問が出やすい傾向にある。

取り扱える(立ち会える)危険物の区分

ここで言う「立ち会い」とは
立ち会う権限のある危険物取扱者が適切に監督指導していれば、無資格者でも資格者と同様に危険物を取り扱うことができるというもの。
例えばガソリンスタンドは甲種か乙種4類の資格者が最低1人が立ち会っていれば資格のない店員でも給油などの業務が可能。
セルフ式スタンドに至っては事務所内からカメラで監視している危険物取扱者の元で車で乗りつけてきた客自身が取扱いを行なっている。
もちろんミスや事故が起きた場合は立ち会っている資格保有者の責任となる。

甲種

全ての種類の危険物の取り扱いと立ち会いができる。
更に、甲種防火管理者と防災管理者の資格、陸、空自衛隊の技術陸曹と空曹の任用資格を有すると認められる様になる。

乙種

1~6類のうち自分が免状を交付されている類の危険物のみ取り扱いと立ち会いができる。

乙種1類-酸化性固体
乙種2類-可燃性固体
乙種3類-自然発火性及び禁水性物質
乙種4類-引火性液体
乙種5類-自己反応性物質
乙種6類-酸化性液体

全ての類を所持していれば甲種同様の取り扱いと立ち合いの資格を有する様になる。

丙種

第4類に属する危険物のうちガソリン、灯油、軽油など指定されたものの「取り扱い」のみができる(立ち会いは不可)。
要は乙4の完全下位互換なのだが、覚える内容は乙4とほとんど変わらないため、正直とる意味はほぼない
運転免許は取れないけど写真入り身分証明書が欲しかった人が取る、
または灯油の配達や作業をするけど乙4取れそうにないアホな人向けの資格だったが、現在はその手の需要が少ない。

もう少し詳しく

危険物に関する法令

とにかくいろいろな規定が出てくる。暗記を最も要求されるだろう。内容をちょいと見せると、

  • 指定数量
確かに危険物は量が多いほど危険だが、異なる種類の危険物を量だけで比較するのは好ましくないため、種類ごとに「指定数量」という値が規定され、

扱う量
⎯⎯⎯⎯
指定数量

で表される「指定数量の倍率」という数値が重要となる。
指定数量の倍率が1(倍)以上になると消防法の規定に従うことになる。それ未満の場合は条例による。
例えばガソリンは「第4類・第1石油類・非水溶性」なので200L、重油は「第4類・第3石油類・非水溶性」なので2000L。つまり同じ量(例、400L)だとガソリン(400÷200=2)は重油(400÷2000=0.2)と比べて10倍危険。

  • 施設
製造所、貯蔵所(7種)、取扱所(3種)に分けられる。例えばタンクローリーは貯蔵所のうちの「移動タンク貯蔵所」、ガソリンスタンドは取扱所のうちの「給油取扱所」にあたる。
それぞれにおいて扱える危険物やその指定数量の範囲、容量や設置場所(住宅、学校、重要文化財などからの距離)、危険物保安監督者の設置義務のありなしなど規定がある。
ここでいう製造所等は 認可を受けた範囲ならば 前述の指定数量を無視して危険物を扱える。
ガソリンスタンドは「自動車の駆動用燃料タンクにのみガソリン類を給油できる取扱所」
ホームセンターなどの一部の店は「他所でちゃんと充填梱包された燃料を丸ごと売ることができる取扱所」となっているので
ガソリンスタンドでは自動車ではないもの(携行缶など)にガソリン入れてを売る行為は 一般人と同じ権限でしか行えない。


  • 消火設備
第1種(消火栓)、第2種(スプリンクラー)、第3種(泡消火設備など)、第4種(大型消火器)、第5種(小型消火器、水や砂のバケツなど)がある。

燃焼は、「燃えるもの(固・液・気体等の物質)」と「燃やすもの(酸素)」と、「条件」(温度)が揃うと急速にエネルギーを放出しながら結びつく反応であり、基本的にはこの物、酸素、温度の3つのうちどれかを絶てば消えるor燃焼できない。
一般家庭では水がこの3つを1発で絶ってくれるので多用されるが、油等特殊な火災だと逆に危険。対応する消火器や砂を有効活用しよう。

危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法

  • 第1類・酸化性固体
ここにあるのは「燃やすもの」にあたる固体で、
塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、 硝酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムといった酸素の供給源が該当する。
保存時は衝撃や高温・可燃物との接触を避ける。消火時は水で冷却しよう。

  • 第2類・可燃性固体
「燃えるもの」にあたる固体。
代表選手は硫化リン、硫黄、赤リン、金属粉、固形アルコール。
空気や水を避けるために密封し、冷所に保存される。水で冷却することが多いが、水と反応する物質は砂をかけて酸素を断つのが効果的。

  • 第3類・自然発火性及び禁水性物質
水や空気に触れるだけで化学反応(発熱)を起こし、物によれば一緒に「燃えるガス」を発生させる、相当危険な物質。指定数量も10kgなど少ないものが多い。
黄リン、アルカリ金属(カリウムやナトリウム)、アルキルアルミニウム、ジエチル亜鉛、水素化ナトリウムなど。
空気や水と触れないように、灯油や窒素の中で保管される(ただし黄リンは禁水性でないので水中に保存)。
黄リンなどを除いて水での消火はできず、不活性ガスや砂などをかけることが効果的。消火も難しい部類。

  • 第4類・引火性液体
「燃えるもの」にあたる液体。
引火点、つまり「火を近づけたら燃え出す」温度の低いものから、
特殊引火物(ジエチルエーテルなど)
第1石油類(ガソリンなど)
アルコール類(消毒用アルコール、67度以上のお酒など)
第2石油類(灯油や軽油など)
第3石油類(重油など)
第4石油類(潤滑油など)
動植物油類(オリーブ油など)。

静電気をためやすい・揮発しやすいなどの特徴があるため、静電気を溜め込みやすい「絶縁体」の上に置かない、換気の良い所に置くなどが重要。勿論火気厳禁。
ほとんどが水より軽く、浮いて流れるため、火災時は水はかけずに消火器液など専用の薬剤を散布して酸素との接触を断つこと。
自動車用のガソリンや軽油、ボイラー用の重油、ストーブ用の灯油、酒類や消毒用のアルコール、果てはペンキや化粧品にも第4類が使われているため、最も生活に密着した危険物と言える。
必然的にこれを扱える乙4は需要も大きく、多くの職場で求められる手堅い資格である。また、日本で使われてる危険物の98%が第4種である。
ビルのメンテナンス業務に就く際は、この乙4と第二種電気工事士、2級ボイラー技士、第三種冷凍機械責任者の四つの資格が必須と言われ、「ビルメン四点セット」と呼ばれている。

  • 第5類・自己反応性物質
「燃えるもの」と「燃やすもの」を両方含む物質で、自然発火・爆発などを起こす危険性があるという厄介物。
過酸化ベンゾイル、ニトログリセリン(ダイナマイトの成分)などの硝酸エステル、ピクリン酸やTNT(トリニトロトルエン)が所属する。
衝撃を避けて冷所に保存。消火は非情に困難で(何せ周囲からの酸素を断っても自分で持ってるので効果が無い)、大事に至らぬうちに水で冷却するのが良い。

  • 第6類・酸化性液体
「燃やすもの」にあたる液体。
過塩素酸、過酸化水素、硝酸など。
保存時は衝撃や高温・可燃物との接触を避ける。消火時は水で冷却しよう。
また自然に分解するものも多く、その場合は密閉禁止。


興味がある人は近所の消防署に行って願書を貰ってこよう!







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最終更新:2023年10月03日 19:17