セイバーガンダム

登録日:2010/01/06(水) 21:53:22
更新日:2024/02/25 Sun 20:01:03
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天翔ける情熱
天翔ける美しさ
混迷する世界の救世主が 今 真紅の翼を広げて飛び立つ



機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場するモビルスーツ(MS)。


目次



セイバー
SAVIOUR

基礎データ


型式番号:ZGMF-X23S
所属:ザフト
全高:18.61m
重量:77.13t
動力機関:デュートリオンエンジン
装甲:ヴァリアブルフェイズシフト(VPS)装甲

武装:
MMI-GAU25A 20mmCIWS×2
MA-BAR70 高エネルギービームライフル
MA-7B スーパーフォルティスビーム砲×2
M106アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲×2
MA-M941 ヴァジュラビームサーベル×2
MMI-RD11 空力防盾
MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲×2

特殊装備:デュートリオンビーム送電システム

パイロット:アスラン・ザラ


機体解説


ザフトユニウス条約締結後に開発した「セカンドステージ」の1機。
頭頂部にあるイージスジャスティスを彷彿とさせる縦長のセンサーマストが特徴。
本機は他のセカンドステージの機体に比べ開発が遅れていたため、アーモリーワンにおけるファントムペインによる強奪を免れた。

カオスと同じく型式に「2」を持つ航空機系統の機体であり、続く開発ナンバーが「3」であることから開発されていた5機の中でも初期に設計されていたと推測されている。
ただし、カオス・アビスガイアの三機とは異なる開発手順を踏んでいるため、インパルスの換装装備として派生する構想は存在しない。


他のセカンドステージシリーズと比べると、装甲が薄く設計されているため耐久性が若干劣り、特殊兵装は少なめ。
その反面本体性能自体は高く、操縦者の技量が要求される機体である。
下記の機動力を生かした一撃離脱戦法がメインではあるが、対MS戦・対要塞戦まで行える高い汎用性をも有する万能機である。
対MSにおいても複数敵との交戦から単体戦までを幅広くカバーしており、可変機構を生かして戦いに緩急をつけ、敵を翻弄する。

本機は「重力下における高機動戦闘」をコンセプトに開発されており、高機動戦闘に耐えられる極限まで機体の軽量化を図られている。
そのためかVPS装甲の起動時の装甲色は最も電力消費も多いが耐久も高い
それでも当時普及が進んでいたパワーエクステンダーを搭載したため、プラントからオーブ近海まで巡行しムラサメと(小競り合い程度だが)戦闘を行った後、オーストラリアにあるカーペンタリア湾まで無補給で移動してもエネルギー切れやその予兆をみせない辺り、バッテリー効率は従来機と比べてかなり高い模様。(最もプラント〜大気圏までは慣性航行でバッテリー消費を最小限にしていた可能性もあるが)

この“防御力を犠牲にして高めた運動性とパイロットの反射速度で被弾率を下げ、機体に掛かる負荷orダメージは強度の高いPS装甲でカバーする”という、
いわゆる『当たらなければどうということはない』的な設計思想は、ある意味ストライクフリーダムにも共通するものがある。
いわば収斂進化とでもいうのか、エース機を設計しようとすると同じようなところに行きついてしまうのかもしれない。

可能な限りデッドウェイトを減らすべく、MS・MAどちらの形態でも使用可能な武装が搭載されていることもあり、オールレンジの攻撃をカバーしている。
実際、空中での機動性は同じ空戦用のムラサメ数機を軽くあしらえるほどで非常に高く、
劇中でセイバーに直接攻撃を当てることが出来た機体はフリーダムのみである。

本機の最大の特徴は他のセカンドステージシリーズ同様にMAへの変形機構を有していることで、下半身を180度回転させ背面の砲身パーツを前方に展開し、
双頭の機首を持つ戦闘機型MA形態となる。
カオスなどに比べるとより航空機に近い形状で、風や空気抵抗のある重力下での運用を想定して設計されている。
しかし、逆に無重力下では変形するメリットが少ない。ただし揚力は得られなくとも、推進力のベクトルが一方向に集中する分速度は上がりはする。
そのため本機の高い機動力は実質的には大気圏内外を問わない。

ザフトはこのセイバーを含むセカンドステージシリーズの活躍に並々ならぬ期待をかけており、
特にインパルスとセイバーはプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル直々に搭乗要員を選出し、
間接または直接的に自身の影響下に置いている。
元々、イージスやジャスティスにも共通するセンサーマストは通信性能を強化し、指揮官機として運用する際のメリットとなる。
セイバーは、セカンドステージシリーズにおけるイージス的役割を担うことも期待されていたのかもしれない。


「セイバー」とは、「Saber()」ではなく「Saviour(救世主)」の意。
宇宙世紀にそんな名前の奴がいた気がする?気のせいだ。

赤くてセイバーだがこっちのセイバーとは関係ない。たぶん。



武装


  • MMI-GAU25A 20mmCIWS
両側頭部に2門装備された対空機関砲。
MA変形時には使用できない(砲口がシールドで覆われるため)。

  • MA-BAR70 高エネルギービームライフル
「MA-M20ルプス」を発展させたMAの最新モデルのビームライフル。
他のセカンドステージにも採用されているが、個々の機体毎に多少のチューンが施されている。
MS形態の非使用時には後腰部に、MA形態では変形した左肩アーマー付近に懸架される。

  • MA-7B スーパーフォルティスビーム砲
後述のアムファルタスの砲身パーツに併設されているビーム砲。
ジャスティスのファトゥム-00に搭載されていたカノン砲「MA-4B」の発展武装。
核エンジンが無いというハンデを乗り越え、元来の高出力・連射性を継承する優れた逸品である。
ちなみに、比較的エネルギー消費の少ないこちらを射撃してターゲットの照準を確認し、後述のアムフォルタス発射時の命中率アップを狙うなど、
レーザーサイト的運用も可能。

  • M106アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲
背部左右にある大口径のビーム砲。
スーパーフォルティスを上回る破壊力を持ち、MS・MA両形態におけるメインウェポンである。
フリーダムに搭載されていた「M100バラエーナ」にエネルギー変換効率の向上等の改良を加え、
核エンジン以外での使用を可能とした物。本家と遜色ない威力を誇る。
脇に抱えて発射する描写が多いが、肩部に展開してバラエーナのような発射も可能。
見た目はF91のヴェスバーをデカくした感じ。

  • MA-M941 ヴァジュラビームサーベル
アビス以外のセカンドステージに共通で採用されたビームサーベル。両肩アーマーに1基ずつ格納される。
従来のミラージュコロイド技術の応用である電場固定法ではなく、
ユニウス条約を巡るトラブルの際に開発された新技術の一部を導入し、
フリーダムやジャスティスのラケルタビームサーベルと比べてもより強力な出力を実現した。

  • MMI-RD11 空力防盾
対ビームシールド。サイズはさほど大きくはなく流線型の表面上部には二枚のスタビライザーがあり、普段は左腕に装着されている。
MA形態では胴体正面を覆うように装着され、死角からの攻撃に対処すると同時に空気抵抗に対する整流の役目も果たしている。
そのためこのシールドが破壊されるとMA形態への変形は不可能となる。
可変機であり、変形にシールドが不可欠という意味で同様のZガンダムのものほど堅そうには見えないが、大丈夫なのであろうか?

  • MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲
MA時の機首に2門を内蔵された機関砲。
フリーダムやゲイツに搭載された物と同一。



本編での活躍


再びザフトに戻ったアスランがギルバート・デュランダル議長から直々に渡され、そのまま3代目アスラン専用のガンダムになる。

受領後、まずオーブに向かうが既に連合の傘下となっていたためムラサメのスクランブルに遭い止む無く入国を断念。
そのまま「ミネルバ」と合流し、以降はMS隊の隊長機として連合との戦闘に参加。

ミネルバでは数少ない空戦能力を持つ機体だったこともあり、インパルスと共に前線に立ちさまざまな作戦に貢献。

インド洋やダーダネルス海峡戦では1対1でカオスを圧倒し、ローエングリンゲート攻略戦ではゲルズゲーを戦闘不能に追い込む戦果を挙げる。
しかしクレタ沖戦でフリーダムと交戦した際、感情を爆発させたキラに対しアスラン自身が迷いを秘めていたこともあり、
圧倒された末胴体を残しあっという間にバラバラにされ撃墜されてしまった。

一応機体の残骸は回収されたが、流石に五体をバラバラにされてしまっては修復は難しかったらしく、ミネルバ艦内でも放置されそのまま退場。

クレタで撃墜されるまで被弾ゼロであったが、あまり目立った活躍もしなかったため
「また自爆するんじゃね?」
と言われていたが最後は達磨化……
セイバー涙目。

MS戦においてアスランはオールラウンダーながらも土壇場では射撃よりも格闘戦に出る傾向があったため、射撃装備寄りのセイバーとはあまり相性が良くなかったのかもしれない。
とはいえ、開発の初期段階でアスランを引き込むことを予定していたとは思えないのでやむを得ないことではある。
おそらく当時ロールアウトしていた機体で最も高性能なMSが本機だったのだろう。
ただ(一応は)アスランに受領させるつもりでレジェンドを開発していたあたり、操縦者とMSの適性についての考慮が不十分であることも否定はできないが…。



バリエーション


◇プロトセイバー

型式番号:ZGMF-YX21R

『DESTINY ASTRAY』に登場。
その名の通りセイバーの試作機。某ミニ四駆とは関係ない。
地上に下ろされ重力下での変形・機動データ収集に使われていたもので、アスラン機はこのデータを元にプラント本国で建造された。
試作段階ながらプロトカオスなどに比べ完成度は高く、シルエットは完成版であるアスラン機と同一で武装も同じ。
一方、起動時のVPS装甲はダークグレー主体に白いラインが入った一風変わったものとなっており大分印象が異なる。
ちなみにこれは実験の際変形プロセスの検証をしやすいよう調整されたもの。

元々実験後の廃棄処分を前提としていることもありアスラン機に比べ全体の性能は低いがそれでも過酷な機動実験を耐え抜いた。
しかし開戦前に連合に強奪されてしまい「RGX-04」の型式番号を与えられ、同時に量子コンピュータウイルス散布システムを追加。
これにより他の戦闘機やMSを乗っ取り遠隔操作することが可能になった。
その後は『一族』の息のかかった部隊に運用され、『一族』の壊滅後は戦闘用コーディネイター:イルド・ジョラールの手に渡る。
更にイルドの手で背面にプラグを増設し回収されたリジェネレイトガンダムのコアユニットを連結するゲテモノ強化で核エンジンの装備が可能になり稼働時間を無制限化した。
リジェネレイト部分を分離しウイルスで遠隔操作することも可能だが、その間はプロトセイバー本体はバッテリー稼働になる。

なお、強奪後も装甲の白いラインは残されているが、これはイルドが、かつて同じ組織にいたカイト・マディガンの真似をしているため。
カイトとイルドは傭兵組織“サーカス”*1の出身だが、ここを正式に抜けるためには「複数vs一人」でのMS戦闘で勝利せねばならず、
その際、一人側のMSの装甲には大きく白字で十字型のマーキング(『的』を意味する)をするというルールがあったのだが、
カイトは何か思うところあってか、自身のMSの装甲にはこの時と同じく、左胸を中心に大きく白十字を描くようにしている*2

◇ヴァンセイバー

型式番号:LV-ZGMF-X23S

VS ASTRAY』に登場する機体。
謎のトンデモ組織「ライブラリアン」の建造されたセイバーのコピー改造機。「ヴァン」はフランス語で「風」の意味。
頭のトサカや顔、羽の装着位置が変更され、セイバーよりほんのちょっぴり早く変形可能。
当初のパイロットはカーボンヒューマンのグゥド・ヴェイア。
しかし、元々組織の活動にノリ気で無かったのでオーブに来てオリジナルの親友イライジャに機体をプレゼントして去っていった(その際彼のザクをちゃっかり強奪したが)。
その為現在のパイロットはイライジャ・キール。

トンデモ・キワモノデザインのライブラリアン製ガンダムの中でも、アレンジは控え目で比較的かっこいい機体……
と思いきや、乗り換えたイライジャがマガノイクタチストライカー(ネブラブリッツ用)を取り付ける大暴挙。
アムフォルタスにマガノイクタチが干渉して変形できない(劇中ではそんなことはないのでご安心を)。

ちなみに上記組み合わせはライブラリアン側も有効と判断している。
マガノイクタチストライカーは安定翼としてだけでなく、武装としても使える。
近縁組織が所有していたプロトセイバーがベースになっていたことを考えると、その機体のウイルス追加後のデータを用いたのかもしれない。
でもぶっちゃけ見た目はかなりアンバランスである。



立体化


ガンプラ

1/144コレクションシリーズ、HG GUNDAM SEED、1/100で発売。
HG・1/100共に変形機構をほぼ完全に再現している。
後に、ヴァンセイバーが1/100キットに新規パーツを追加した形で発売された。


ゲームでの活躍


◇V.S.シリーズ

  • 連合V.S.Z.A.F.T.
PS2移植版に高コスト機体として参戦。
原作通りのMA形態による一撃離脱戦法が得意でMA形態の総合性能は変形機体随一。
MS形態でも武装や格闘は平均的に扱いやすく、強力な物が揃っている。
またこの時は変形機体はBDによって強制的に変形していた為、扱い勝手はともかく機動性は常に確保していた。耐久値も720とフリーダムらと並び最高。

  • 連合VS.Z.A.F.T.Ⅱ
こちらでは中コスト機に変更。
今回は随分と紙装甲(中コスト機中最低)で、性能は無印での性能を全体的に劣化させた形。
MA形態だとトップクラスの機動性(ブースト量はフリーダム、速度は格闘機並)と異常なまでの操作性(ヘアピンカーブ曲がれるくらい)を誇るが、
MS形態になったとたん重い、遅い、総じて残念、という極端な扱いを受けている。
今回は変型格闘がないため、MA形態で近づいてそのままMS形態で闇討ちできる。さらにMA形態ではダウン属性のビームを動きながら撃てる。
格闘は判定が弱めだが伸びが良く火力もそこそこ。
変形時と通常時の繊細な操作を要求されるためこちらも職人機体となった。


◇『ガンダムvs.ガンダム』

無印にのみ登場。
インパルスガンダムのアシストに駆けつける。
内容はMA形態のセイバーがアムフォルタスを撃ちながら相手に迫るというもの。
当てようと思って当てるのはなかなか難しいが、セイバー自体にも当たり判定があり、相手からすればなかなか鬱陶しい。

NEXTではガナーザクウォーリア(ルナマリア機)にとってかわられた。
こちらの方が圧倒的に使いやすいことは言うまでもない。

◇機動戦士ガンダム Extreme vs. MAXI BOOST

グフイグナイテッドのアシストとして参戦。
一段切り抜けかアムフォルタスを撃ってくれる。
残念ながらアシスト呼出時にアスランの声は入っていない。

機動戦士ガンダム Extreme vs. MAXI BOOST ON

ガナーザクウォーリア(ルナマリア機)のアシストとして参戦。
シールドを構えながらやや緩慢な突進で攻撃する。
アスランの声はないが、メイリンの声が入る場合がある。
EXVS2では武装変更によりリストラされ、ガナーザクウォーリアのアシストとしては1作限りの登場となった。

スーパーロボット大戦シリーズ

初参戦はScramble Commander the 2nd
セイバーの間は敵で、味方として使用できるのはフリーバトルくらいなので印象は薄い。

Zにも登場。現時点で普通に自軍で使用できるのはこの作品のみ。
武装の射程に死角が無く、足が速い上に使い勝手の良いALL武器があるため、切り込みや速攻に適したユニット。
しかし後継機が格闘寄りの∞ジャスティスなため、育成の際にジレンマに苛まれる。
シナリオ上では、原作通りフリーダムに撃墜された後修復されるためその後も使用できるが、
最後はシンのデスティニーに撃墜されて破棄されるという、原作より扱いが良いんだか悪いんだかわからないことになっている。

Lではアスランに渡された後、ルートによってはいつの間にか撃墜されていて出て来もしない。
別ルートでは撃墜を確認できるがマップ上のアイコンのみで機体グラすら無い。
その後アスランは終盤に∞ジャスティスを入手するまで、乗り換えでもしない限りザクウォーリアで戦う羽目に…
スタッフは何かセイバーに恨みでもあるのだろうか?
それでも名前すら出て来ないKよりはマシなのかもしれないが。
完全に余談だが、アウルアビスガンダムがちょうど同じ扱いである。
(LのSEED DESTINY勢のグラフィックはぼぼKからの流用のため、Kに出てないセイバーやアビスは出番が貰えなかったのではとも言われている)
なお、乗り換えでもしない限りと言ったが、アスランを乗せろと言わんばかりにファントムペインから奪還したガイアガンダムがミネルバ隊に搬入されているバルトフェルド「」

◇GENERATION of C.E.

DESTINY中期の機体かつ発売時期におけるアスランの最終搭乗機というのもあって、パッケージイラストなどでもアスランと一緒に登場。
武装もビームサーベル、ビームライフル、ムフォルタスプラズマ収束ビーム砲という非常にバランスの良い組み合わせ、宇宙や空中で使用できる万能さから採用率も高い。
ただ、オリジナルストーリーとなるDESTINY編後期のシナリオでは、既にセイバーが大破しているのもあってかジャスティスガンダム(ミーティア装備)でアスランは出撃するのでやや不遇。
余談だが、ムフォルタスプラズマ収束ビーム砲はゲームでは珍しく肩越し発射演出がある。


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最終更新:2024年02月25日 20:01

*1 遺伝子調整が上手くいかず、親に育児放棄されたコーディネイターの子どもを親権者から買い取り、傭兵として育成・派遣するという、中々にブラックな組織である。

*2 PS装甲搭載機でも、カラーパターンをわざわざ変更して白十字のマーキングを表示させている。