高等専門学校(高専)

登録日:2012/04/16(月) 19:03:06
更新日:2023/10/01 Sun 11:16:53
所要時間:約 7 分で読めます




『高等専門学校』とは、日本に於ける学校の一種である。
『高専』と略されることが多く、本項もそれに倣い、以下「高専」と書くこととする。

“各種学校”に属する専門学校とは似て非なるものである。


◆高専って何よ?

高専とは中学生が進学する際の選択肢の一つである。
カリキュラム内容は高等学校(以下「高校」と書く)と同じものもあるが、それらと同時に工業系の学科を学ぶ。

……と書くと工業高校と何ら変わらない学校と思われがちだが、全く別の性質なのが「高専」である。

まず違う点として高専は大学と同じ高等教育機関であることが挙げられる。
区分上、高校は中学校と同じ中等教育機関に分類される。
従って高専で学ぶ内容には大学レベルのカリキュラムも含まれる事が特徴。

また修了期間も高校と違い、基本的に5年間となっている(例外もあるが、それは後述する)。

なお高専は基本国立であり、公立高専と私立高専は数える程度(公立→3校、私立→3校、国立→51校)なのも特徴的な点の1つ。

高専を卒業した場合、学歴としては4年制大学よりは下、短期大学とほぼ同格、専門学校よりやや上とされる。
4大卒>短大卒≒高専卒≧専門卒>高卒
という感じ。

以上が大まかな高校と高専の違いである。


◆高専でのカリキュラム内容

基本的には高校と同じ事を学んでいくが、専門性が求められる高専故にクオリティーが違う。

まず文系に関してはそこらの高校よりクオリティが低め。
例えば多くの高校で「現代国語」「古文・漢文」に分けられる国語であるが、高専に関しては纏めて「国語」として扱われる。
そしてこの手の話題でよく取り上げられるのは英語で、大学入学共通テスト(旧:センター試験)を経験しない事から、高専生の英語力は壊滅的。
その壊滅さは「英語ができない高専生」と揶揄される程である。
これは専門科目を重視される場所で、文系のコマ数が少ないためである。
そのため文系教科の充実度に関しては一般の高校生に負けるかもしれない。

しかし理系、とりわけ数学に関してはおかしい位に進む。以下にそのカリキュラムを示す。

■高専1年:高校で学ぶ数学をほぼ全て学ぶ。
(要は数学ⅠA, ⅡBをこの1年で学ぶ
■高専2年高校範囲でのベクトル、行列、微積分、更に行列式を学ぶ
数学ⅡB、ⅢCをこの1年で学んだ上で、大学1年で学ぶ内容も学ぶ
■高専3年{二重積分や偏微分、そして常微分方程式を学ぶ。
少なくとも高校3年に当たる学年では学ばない。なお上記は大学1年で学ぶ。)
■高専4年ラプラス変換フーリエ変換複素関数ベクトル関数を学ぶ。
(大学の学科によるが、上記の内容は大学2年で学ぶ。)

更に高専2年生から専門科目が始まり、学年が増えるにつれその専門性が増していき、最終的には高専5年生(大学2年生)の時点で、大学4年生かそれ以上の専門性を学ぶことになる。


◆高専の生活

・学生について

大学と同じ扱いであるため、校則は比較的緩め。
そのため高専も慣れてきた頃には、髪を染めたり服を着崩したり、オタクになったりチャラくなったりと、個性的な人が増えてくる。

一方工業系の高校であるため女子学生が非常に少なめ。
その為「高専病」と呼ばれる、いかなる女性が可愛く見えてしまう症状を抱えてしまう。より重度になると同性愛者になることもある。

・テストについて

テストは高校と同じように4回のテストとさほど変わりないが、赤点の基準は60点と高い。(高校では平均以下を赤点と設けているのが多い)
更に高校では許されている、出席点やレポート点といった教師の温情措置が一切ない。
これは殆どの高専がJABBEと呼ばれる物を採用されており、客観的な評価が求められるためである。本当にいい迷惑である。

当然赤点をとった場合は問答無用で単位不認定となるので、必須単位の場合余裕で留年になる。
その為、留年率が異常に高い。実際オリジナルメンバーで卒業することは絶対にない。
これについては後ほど述べる。

なお温情処置が無いと言っても、先生によってはちゃんと追試/再試を実施するため、赤点取ったら素直に勉強しましょう。

・部活について

当然高専にも部活動が存在している。
運動部に関しては高専大会と呼ばれる高総体のような大会があり、それに向けて活動している。
また3年生までなら高総体やセンバツに出ることが出来るが、実力に関してはお察し。

・研究について

また高専には大学と同じように研究室が存在しており、早くて高専4年生の前期で配属される。
その活動内容も大学と同じように、先生から研究テーマをもらい研究を進める。
ただ大学生と違い、学会発表については消極的であるため、外部発表は少なめである。
当然高専にも卒研(卒業研究)が存在しており、今日も5年生方は研究作業に追われている。


◆高専での進路

高専には3つの進路が存在している。

1. 企業に就職する
2. 大学に編入する
3. 専攻科に入学する

まず就職に関しては、就職率がほぼ100%と非常に高い。
その上高専枠と呼ばれる特別枠での就活であるため、大学生と比べて非常に楽に内定を貰いやすい。
これは高専卒業時点(20歳)で大学生と同等の専門性を持っており、コスパが高い事からである。
しかし初任給に関しては大学卒よりも低く、企業にもよるが昇格が遅い(又は難しい)のが欠点。
大幅な昇給や(特に幹部クラスへの)昇格を望む場合は、就職先をきちんと吟味した方が良いだろう。

大学編入に関しては、基本的には大学3年次に編入することになる。
進学先としては国立大学工学部が中心で、特に長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学への進学が多い。
因みに国公立大の工学部の場合3年次編入ができるのは高専からのみのところが殆ど。

そして専攻科とは、いわば大学3~4年生に当たる所であり、そこを卒業すると大卒と同じ扱いとなるため、そこから大学院に進学したりすることが可能となる。


◆高専の種類

工業高等専門学校(工業高専)

殆どの高専はこれに分類され、学ぶ内容も機械や電気と工業的な分野である。
中にはデザイン系や建築系と一味変わった物もあったりする。

電波工業高等専門学校(電波高専)

一時期あった高専の分類で、読んで字の如く電波関係を学ぶところであった。
今は消滅し、後述の高等専門学校に改組された。

高等専門学校(高専)

最近「スーパー高専」と呼ばれる新モデルが設置され、新たに作られた分類である。
今のところ、高専に分類されている所として
  • 仙台高等専門学校(旧宮城工業高等専門学校と旧仙台電波工業高等専門学校が統合)
  • 富山高等専門学校(旧熊本電波工業高等専門学校と旧八代工業高等専門学校が統合)
  • 香川高等専門学校(旧高松工業高等専門学校と旧詫間電波工業高等専門学校が統合)
の3つがある。
ぶっちゃけるとお金がない為の統合だったりとかなんとか。

商船高等専門学校(商船高専)

主に船舶に関する知識を学ぶ学校で、航海や機関等を実習込みで勉強している。
なお商船高専に関しては例外的に終業期間が5年6ヶ月と他の高専と半年長い。
これは残り1年間を航海実習として当ててる為である。
実習中は実際に練習船で海に出て、長期間、洋上で訓練を行う。

呪術高等専門学校(呪術高専)

主に呪術・呪霊に関する知識・技能を学ぶ学校で、それらを実習込みで勉強している。
全国でも東京校京都校の2校しか存在しない。

……というのは、当然、創作のお話
が、この存在が日本における『高専』という存在の知名度を押し上げたのも事実。
ただ、逆にそれまで知名度が低かったため、『高専』という単語を不用意に創作物にタグ付け等する2次創作者が急増*1
現役高専生と思われる人物が、困惑の意をSNSに投稿したことが話題になったりもした。


◆入試などについて

高専の入試問題は全高専同じものを用いており、マークシート式で回答する。
専門性を求められる場所であるため、理科と数学の難易度が高め。
一方で英語についてはリスニングがない事から、比較的楽である。
この時点で「英語ができない高専生」の原因が明らかになる

因みに、日本一学力が高い高専は明石高専と言われている。偏差値なんと68
当たり前のように毎年東大や京大に編入生を出している。
(他の多数の高専では1人出たら10年ぐらい語り継がれるレベル)
その為兵庫県では難関大学に進学する為には進学校より高専に入った方がいいとすら言われているらしい。
また他の高専も明石高専程ではないがそれなりのレベルを誇っておるため、そう簡単に入学することは出来ない。

◆余談

柔道界では高専柔道と呼ばれるモノが存在するが、高専とは全く関係なく、ルーツは旧制高校である。

追記修正は高専生が行なってください。










高専の真実、及び留年について

上記の通り高専は非常に留年率が高く、オリジナルメンバーで卒業するのは不可能であると言われている。
この理由として赤点60点というのもあるが、一番言われるのが「就職率ほぼ100%」という謳い文句に騙され、自分に合わない学校に選んだからである。
実際、高専は本当に合う人にとっては天国みたいな学校であるが、半端な気持ちで入学すると、今後の人生に確実に悪影響を与える所である。

というのも教える内容も将来技術者にとって必要なことしか教えてもらえないので、自分がやりたいこととマッチしなければ、学びたくないものを5年間学び続ける事となる。
更に高校生相当の学年から、大学よろしく数多くのレポート課題を出され、酷いときには1週間にレポート課題数個が毎週続く生活が待っている。
そのため高専に合わない人は、学びたくないものを学び、書きたくもないレポートを書き、結果モチベが下がり、赤点を取り、更にモチベが下がるという負のスパイラルに嵌る羽目となる。

また3年間通った後途中退学し、大学進学を試みる人もいるが、残念なことに専門性が求められる高専では大学入試対策の勉強を一切しないため、苦労覚悟で勉強しなくてはいけない。
特に文系に関しては並の高校生よりも酷いため尚更である。

そのため「家が近いから高専に入学した」とか「就職率100%だから」とか、ある意味生半可な気持ちで入学すると、今後の人生に多大なる影響を与えるため、よくよく熟考することをおすすめする。


追記・修正はレポート制作に追われている高専生が行なってください。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 学校
  • 高専
  • 高等専門学校
  • 専門学校
  • 工業
  • 天国←人によっては→地獄
  • 留年率高し
  • ラジオヘッズ
  • 今日本に必要なもの
  • 何故学校増やさない?
  • 高専病
  • ロボコン
  • 野蛮の園
  • 日本最後の希望
  • 理系
  • 男の園
  • ロボット

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年10月01日 11:16

*1 『高専」を作者の造語と誤認したのか、そこまで気が回らなかっただけなのかは不明