モンティ・ホール問題

登録日:2010/08/28(土) 12:41:59
更新日:2024/04/26 Fri 17:52:00NEW!
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突然だが、ここでクイズを一つ。


某国某時代、あなたは王様の戯れによって、あるギャンブルに参加させられた。その内容は以下の通り。

あなたの前に三つの扉がある。一つの扉の向こうには金銀財宝があり、二つのそれには銃を構えた兵士がいる。
あなたはその中から一つの扉を選ばなければならず、財宝がある扉を開けばそれを持ち帰ることができるが、
兵士のいるほうを開けてしまえば即座に殺されてしまう。

あなたは一番右の扉を選んだ。

すると財宝のある扉を知っている王様は、
「そうか、では残り二つの扉のうち外れ一つを開けてやろうぞ」
と、一番左の扉を開けてみせた、そこには兵士がいた。
「さあ、ここで選んだ扉を変える権利をやろう、今の扉のままでもいいし、中央の扉を選び直してもいいぞ。」

生きて金銀財宝を持ち帰りたいあなた、扉を変えるべきか否か、それともどちらでも同じなのだろうか。


当たりとハズレの二者択一なのだから確率は半々で、扉を変えようが変えまいが同じだろう。
そう考える人が多いのではないだろうか。

実はあなたが選んだ右の扉が当たりである確率は三分の一であり、中央のそれは三分の二であるので、扉を変更したほうが正解の確率が高い。


「いやいや、コイントスと同じで裏表、当たり外れだから、どうあがいても二分の一だろwwww馬鹿乙www」

と言いたい気持ちはわかる。

確かに扉が二つになった時点でコイントスによって扉を決め直せば確率は半々となる。
ただこの場合、あなたが最初に選んだ扉と王様が残した扉には価値の差が生まれている。

具体的に説明すると
あなたが最初に選んだ扉が当たりの確率は単純に「三分の一」、残った二つの扉に当たりがある確率は「三分の二」

ここで王様はあなたが選んだ扉を開けることはできないので、残った二つのうち一つの外れを開ける。
すると王様が残したほうの扉が当たりである確率はそのまま三分の二となり、あなたの選んだ扉は依然として三分の一である。











…と散々説明してきたが、
実のところ嘘では無いのだが、真実の説明とも言いがたい。
ただし、これは現実でも簡単に再現でき、理論的にも個々の前提・推論から導き出される結論は全て納得がいくものであり、決してパラドックス(矛盾)ではない。

騙して悪いが…と言ってみたいところだが、騙したわけでもない。

結論が直感に反しやすいことから疑似パラドックスではあるが。




上記の説明だけだと不十分なので解説する。
分かった人も分かっていない人も理解の手助けになるかもしれない。



まず、前述の「扉を変える方が確率が高くなる」だが、
この回答を得るには『王様が扉の向こうを知っている』必要がある。
更に余計な心理戦を挟まないようにするため、『絶対に途中で王様が外れの扉を開く』という前提(ルール)も必要……言い換えると『絶対条件』である。
というか、王様が偶然当たりのドアを開けちゃったら気まずいにもほどがあるし、ドアを選び直す権利が与えられるんだろうか……


これらがふんわりと表現されているようでは過程に揺らぎが生じるため、解答にも揺らぎが生じる。
「1/2だろwwww馬鹿じゃねぇのwwっうぇwww」「実は扉を変えると確率は2/3です(キリッ」のどちらもが正解にも外れにもなりうる。
更に後述するが、別の前提があると他の確率にもなりうるため、心理戦を挟む余地があると更にぶれが生じる。


そのためふんわりとした出題にしたり誤解があると、出題者の想定と異なる解答を出した教授が怒り心頭になることもあるのだが、正直怒るのも無理ないと思う(追記者の感想)。




簡単(?)に冒頭の解説をすると

  1. 王様が扉を開ける時点で残りは「当たり・外れ」「外れ・当たり」「外れ・外れ」の3パターンに絞られる
  2. 王様は『答えを知っている』ので「当たり・外れ」「外れ・当たり」の場合は、外れの方の扉を開かざるを得ない。「外れ・外れ」なら適当に選ぶ。
  3. これを言い換えると「当たり・外れ」「外れ・当たり」ならば「当たり」にしてくれているため、王様はわざわざ外れを潰してくれている可能性が高い
  4. 結果、最初の扉が正解の確率は1/3、残りの扉が正解の確率は2/3となる。

上の解説を言い換えただけなのでこれでもなるほど分からんとなる人も多いと思われるが、直感と反しやすいのでそう感じることも致し方ないところ。
この条件の場合、「1/2」という直感自体が間違っていると認識できないといけない。



ただし、上記の前提条件が変わると解もころころ変わる。
こちらも考えていくと上記で納得いかなかった人も、納得しやすいと思う。

選んだ扉が当たりか、外れかによって王様がドアを開けるかどうか決まる場合


この場合、王様の行動によって最初に選んだドアが当たりか外れかが分かるため、正解を選べる確率は1/2以上になる。

『最初に選択した扉が当たりだった場合にのみ、絶対に残りの内外れの扉を1つ開く』という前提だったならば、
当然、王様が扉を開いた時点で「扉を変更しない」が有力…というより最初の扉が確実な正解になる。
そして選択後王様が扉を開かない場合は外れ確定なので扉を変更しなければならない。残りの扉の確率は1/2。

逆に『最初に選択した扉が外れだった場合にのみ、絶対に残りの内外れの扉を1つ開く』ならば確実に正解を選べる。
というのも、王様が扉を開いた時点で最初の扉は外れ確定で、王様が開けなかった扉が確実な正解になる。
そして選択後王様が扉を開かなかった場合は最初の扉が確実な正解になる。

『残りのどちらかの扉を開くかどうかは絶対ではないよ』という前提の場合、
最初に選んだドアが当たりか外れか判定できないので、確率は1/3のままになる。
王様の選択基準や各選択の確率を決めれば計算出来るが、逆に言えばクイズとして出題するには前提条件を最低でもいくつか追加する必要が生じる。

実は2020/03/03現在、冒頭のクイズでは王様が『絶対に扉を開ける』とは明記されておらず、判断基準も不明なので、確率を確定できない。
そのため「いくら考えても答えは出ないし*1、単純にもう1/2でいいんじゃないかな?」という状態になっている。
例えばだが最初は宝の場合100%で外れの扉を開け、最初が外れの場合50%の確率で外れの扉を開くという基準だと、ナッシュ均衡の解では1/2とwikipediaに書かれている。


『王様は扉の向こうを知らない』『でも絶対途中で扉を開ける*2というルールで尚且つ『外れの扉を偶然にも開けられた場合』
王様が意図的に外れの扉を選択していないことから、2.3.の様に外れの可能性を潰してくれているわけではなくなっているため、最初の扉と残りの扉のどちらも1/2になる。
なお、この場合はランダムに開ける(※同確率で当たりを開ける可能性もある)ことが重要であるため、王様の扉の向こう側の知識は重要ではない。






この問題の元ネタは米国のクイズ番組「Let's make a deal」の三枚のドアの向こうにヤギ二匹と新車一台を前述の条件で当てるというもの。
(※似たような例は古今東西で考えられている)

1990年、雑誌「Parade magazine」のコラムニスト、マリリン・ボス・サバントが読者のこのクイズへの質問に、
「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答したところ、
読者から「彼女の解答は間違っている」との約一万通の投書が殺到した。
投書には千人近い博士号保持者からのものも含まれていた。

論争は場をニューヨークタイムズに移して続き、1992年、3囚人問題を紹介したマーティン・ガードナーによる解説で収束を見た。
この騒動でこの問題は世間に知れ、番組の司会者「Monty Hall」(偽名)の名から、モンティ・ホール問題と呼ばれるようになる。

ドアが2択になった経緯を知っているか知らないかの情報の差がドアの評価に影響しているので一種の心理トリックになっており、
確率論から導かれる結果を説明されても、なお納得しない者が少なくないことから、ジレンマやパラドックスと称されることもある(あくまで疑似パラドックスである)。

「直感で正しいと思える解答と、論理的に正しい解答が異なる問題」の通例ともされるが、
前述している通り、前提条件を厳密に決めておかないと紛糾することになる。






見事、当たりの扉を選んだあなた、追記修正よろ。

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最終更新:2024年04月26日 17:52

*1 仮に王様の性格が悪いと仮定しても、再考を促す手段として活用できる一方で、外れを開けると再考した時の確率が1/3から1/2へと増加することから安易に行うべきでもなく、色々なパターンを深読みできるので

*2 王様が当たりを引いたらどう処理するかでまた変わるので、この記事ではとりあえずスルーする