Dr.マンハッタン

登録日 :2010/12/27 (月) 20:23:45
更新日 : 2017/07/05 Wed 15:01:47
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生者と死者の間に、分子レベルでの差異はない。

僕にとっては、全く興味のない事象だよ

アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画のアメリカンコミック、及びそれを原作とする映画『ウォッチメン』に登場するヒーローの一人。

事故により細胞レベルにまで原子分解された後に、自力で復活を遂げた世界で唯一の「超人」で、ロールシャッハと共に同作のシンボル的存在である。


人物

本名ジョナサン・オスターマン。
1929年に時計職人の息子として生まれ、自身も父親に倣い時計職人となる事を目指していたが、アインシュタインが相対性理論を発表。
時間すら絶対なものではない事が明らかにされ原爆が投下される世界となった事で、他ならぬ父親自身に時計職人になる道を閉ざされ原子物理学者の道へと進む事になる。

1958年、博士号を獲得。

1959年5月、ジーラ・フラット研究所に赴任し、同僚ジェイニー・スレーターと恋仲になる等、順風満帆な人生を送るかと思われたが、8月に事故により原子レベルに分解、塵すら残さずにこの世から消滅する。

しかし、11月に歩く循環器系や一部に筋肉を残す骨格と云った段階を経て復活。
1960年3月、「スーパーマンは実在した、しかもそれはアメリカ人だった」との言葉と共にその存在を公表され、やがて「Dr.マンハッタン」(原爆開発計画の名前に由来する)のコードネームを授かるのである。

復活後は体毛のない肉体から青い光を放っているが、これは崩壊する原子の高速で動く電子の放つ光の色。また、額のマークは水素の原子構造を顕している。

当初は他のヒーローと同様にウォッチメンの一員として暗黒街と戦っていたが、ケネディが暗殺され、ニクソンの時代へと移る中でDr.マンハッタンの能力は犯罪との戦いや先端技術の開発のみならず、より明確な「抑止力」……自らを生んだ原子力や核兵器と同様の意味を持たされてゆく事となる。

そして1971年、大統領命令によりベトナム戦争に介入。米国を勝利に導く。
ベトコン達は地上に降りた「神」の姿に畏怖し、米軍よりも彼自身に投降したとさえ言われた。

1976年、ニクソン3期目の当選を果たす。
翌77年、キーン条例が制定され、すでに引退していたオジマンディアス以外のヒーローの自警行為が禁止され、政府の庇護下に置かれたDr.マンハッタン、エージェントとして非合法活動に従事していたコメディアン以外のヒーローに引退が勧告される。

1980年、ニクソン4期目の当選。
1984年、ニクソン5期目の当選。
1985年、コメディアンが殺害される。


……そして、物語は始まる。


能力

自らの意のままにあらゆる原子を分解、構成する能力を持つ。
その能力を応用し、物体や生命体を分解する事が可能な他、テレポーテーション、巨大化、分身(同時存在)、飛行、無からの物質の創造等の能力を有する(全知ではないが実質的に全能で不滅の存在)。
また、時間を一定方向のマクロな流れでしか感知できない他の人間に対して、曖昧な在り方をする原子レベルのミクロの視点で世界を見ている。
このせいか過去・現在・未来において自らが同時に存在しているかのような発言をしており、未来の姿を漠然と呟く姿は本作を象徴する場面の一つである。


創造物

『ウォッチメン』の物語は発表された1987年よりさらに溯った1985年と設定されている。
しかし、作中のアメリカはニクソン政権下で保守層が無敵の力を持つ、現実をも超える覇権主義国家として描写されているのである。

ソ連はDr.マンハッタンの存在により埋められない戦力差に焦燥を募らせながらも、やはり現実を超える軍拡を続け、世界は劇中でピースマークと共にシンボルとなっている「終末時計」が真夜中(0時=核戦争勃発)まで わずか10分前 まで進む事態となっていた。

……しかしDr.マンハッタンがいる限りアメリカの勝利と繁栄は揺るがない、歪な世界。
そんな作中の米国ではDr.マンハッタンのもたらした技術による、現実の現代をも超える数々のアイテムが登場している。

  • 完全無公害の電気自動車
  • 反重力飛行機
  • 高分子化による新しい素材の生地(※ロールシャッハが薄いゴムにインクを挟んだ生地をマスクに利用)
…等がそれだ。
あっ、“ある人物”が利用した

!
テレポッドもね!
!


余談

  • アラン・ムーアと並び称されるライターにしてアーティストであるフランク・ミラーが前年に発表した『バットマン:ダークナイト・リターンズ』ではスーパーマンが存在を隠蔽されているとは言え、やはりDr.マンハッタンのような役回り……「地上に繋がれた神」として登場する。
    最大の抑止力が戦力の不均衡を招き、それが崩壊の発端となるのも同様である。

  • Dr.マンハッタンは最初は全身を覆うタイツを身に纏っていたのが、最終的には全裸となる。
    これは彼が徐々に人間性を失っていく事の寓意で、事実、劇中で現在の彼は食事や睡眠の描写は描かれず、SEXもローリーと別れる事で習慣をなくしたのだと取れる。
    画一的な描写を嫌ったムーアが、意図的に仕組んだ構成、描写である。

  • 時計職人の息子であり、事故に遭う以前までは、やはり時計の修理を趣味としていた。これが、自らの再構成の際の伏線となっている。


原子力は
人間の本能以外の全てを変革させた
この問題への対処の鍵は
我々自身の胸の内にある
こんなことになるのなら
時計職人になっていればよかった

           ─アインシュタイン




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