コメディアン(ウォッチメン)

登録日:2010/12/30 Thu 22:07:02
更新日:2024/04/12 Fri 23:40:47
所要時間:約 5 分で読めます




真夜中、
全てのスパイが、
スーパーヒーローが動き出す。
知りすぎてしまった者たちを
狩り出すために…。

─ボブ・ディラン


じゃあ訊くがな、モーロックが復活したとしたら、おめぇらどうする?
大変だぁ、力を合わせてやっつけようってか?だがな、奴を倒して何になる?
それで何かが変わるのか?

冗談じゃねぇ!変わるもんか!わからねぇなら教えてやるぜ、よく見てろ!

変わるもクソもねぇ。どうせ30年もしねぇうちに、水爆が何もかも
燃やしちまうんだ。こんな風にな…


コメディアンとはアラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画のアメリカンコミック、及びそれを原作とする映画『ウォッチメン』に登場するヒーローの一人。

概要

物語の主人公の一人でありながら、冒頭で彼自身は死んでしまうものの、劇中においても特に重要な役割を果たしているキャラクターでもある。
外見は両肩に星条旗を模したデザインの肩当と黒い革製のボディアーマーを身に着けた大男。
当初は目元を革製のドミノマスクで隠すだけだったが、ベトナム戦争以後は顔に負った傷を隠すために分厚い革製のフルフェイスマスクを着用する。
またスマイリーフェイスマークのバッジを胸元に取り付けている。


人物

本名エドワード・ブレイク。1924年生まれ。
年表によればわずか15歳でヒーローデビューを果たしている。
ヒーローとなったのは「自らの破壊衝動、暴力への欲求を満たすため」と云う世間一般が考えるヒーローとは思えない超危険人物だが、1939年に結成されたミニッツメン、そして1966年に結成されたクライムバスターズ(後のウォッチメン)の両方に所属したベテランヒーローでもある。
そして40年近く(映画では以上)に及ぶ長い活動の中でヒーローとしての自警活動を越えて、政府の依頼する非合法活動に従事していた。

実際のところ、経歴を見ればわかる通りただ粗暴なだけの人物ではなく、かなりの切れ者。
「コメディアン」と云うコードネームも「破滅に向かい変革する時代の中で、自らが道化となる事を選んだ」と云う皮肉を込めた名称である。

劇中においては当、アニヲタWikiでも絶大な支持を受けているロールシャッハが唯一「尊敬に値する」と口にする人物であり、この事はムーアによる紹介文でもわざわざ説明されているほど。
基本的に市井の人物に関しては無関心のDr.マンハッタンでさえ「興味深い人間」と評し、オジマンディアス「狂気の時代に生きる賢者」と、(彼らにしては)最大級の賛辞を送っている。

また粗暴な悪漢にもかかわらず、聖母(マリア)に祈りを捧げる癖がある。
ちなみに映画版の日本語吹き替えでは「母さん」と思いっきり誤訳されてしまっており、2019年発売のアルティメット・カット版でも修正されなかった。


能力

ウォッチメン世界の住人なので特殊能力の類は無し。
だが生まれつき巨体と人並み以上の怪力の持ち主で、ライフルやショットガンといった銃火器で武装しており、ベトナム戦争では火炎放射器により敵兵を焼き殺す姿も見受けられた。
ムーアは、このキャラクターの説明に際し「CIAの謀略を一纏めにしたような人物で、ある国の指導者が反米的で邪魔ならばコメディアンが行ってケリを付ける。ある国の反米政権を潰したいならコメディアンが潜入してコトを起こす」と記している。
実際、作中においてもDr.マンハッタンを除けば唯一キーン条例制定後も活動を許されており、非合法活動に手を染めるプロフェッショナルとして描かれている。


活躍(?)

その一方で、劇中ではかなりの悪漢、疑惑の持ち主としても描かれている。
作中において特に重要な事件として扱われているのは、1940年の初代シルク・スペクターへのレイプ未遂であろう。
この事で作中のメインヒロインであるシルク・スペクターⅡから激しく憎まれる原因となっている。
その他、作中で描かれている場面としてはベトナム戦争に参加した際の虐殺行為と、現地で関係を持ち妊娠させた女性に対する仕打ち等があるが、この時のDr.マンハッタンとのやり取りと交わされる会話は「エドワード・ブレイク」と云う人物の複雑な人となりを端的に表わしており、非常に興味深い。
その他、1963年のケネディ暗殺や1973年のウォーターゲート事件の揉み消しに関わった事が示唆されている(映画では明確に描写されている)。
それらの活動は、60歳を迎えた1985年においても続いていたのだが、ある「島」をブレイクが目撃し、そして……



物語は、こうして始まる。


余談

  • 原作でのコメディアンは、ベトナム戦争で負った傷を隠すために、それ以後は分厚い革製のマスクを着用するようになっているのだが、映画版では目許のみを隠すドミノマスクを引き続き着用している。

  • 元ネタは同じDCコミックスのヒーロー・ピースメイカー*1
    姿は全く似ていないが、ピースメイカーは平和を愛する一方で、そのためならば喜んで虐殺すらも行うというヒーローとは程遠い人物であり、この暴力的な一面はコメディアンの元となっていると思われる。
    ちなみにピースメイカー本人は2021年に公開されたジェームズ・ガン監督の映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』にて実写作品初登場を果たし、単独主演のドラマシリーズ『ピースメイカー』もHBO Max(日本ではU-NEXT)で配信された。




朝がこようと寝てたまるか。
心臓がガタつこうが知った事か
オレは祝杯を挙げるのさ。
あんな
コメディアンどものためじゃない、
ここにいない
ダチ公のために…

       ─エルビス・コステロ









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最終更新:2024年04月12日 23:40

*1 正体は外交官のクリストファー・スミス。