貧乏デッキ/Budget Deck(TCG)

登録日:2012/07/10 Tue 11:11:36
更新日:2023/11/01 Wed 21:35:08
所要時間:約 6 分で読めます




貧乏デッキ/Budget Deckとは、トレーディングカードゲームにおいて比較的少ない予算で構築されたデッキを指す俗語。


■概要

デッキの強さ弱さは関係なく、あくまでデッキの値段の高低で分類される。
ただし、基本的には環境デッキ相手に一矢報いられる程度の強さのものを指す。
値段の高低の基準はあくまでそのカードゲーム内やフォーマットにおいての相対的なものであるため、それなりの値段がするデッキであっても更なる高額デッキの溢れる環境では貧乏デッキと呼ばれる事がある。

対義語は「 札束デッキ 」。一方で「紙束」は類義語に見えるが、実際の用途は違うことが多い。

一方でよくあるのが「当初は安価だったが、そのデッキが結果を残し環境デッキ相手に渡り合えると判明した結果、人気が急上昇→カードの値段も急上昇してしまう」という事態。
MtGで言えば《虚空の杯》などは今でこそ1枚1万円以上するが、登場から相当期間の間は1000円前後で買うことができたのだ。
まったく再録がないカードがある日突然注目を浴びて大高騰、という例も多い。


■貧乏デッキの組み方

当然ながら高額なカードは投入できないため、一枚一枚のカードパワーでは劣る事になりやすい。そのためカード同士のシナジー(相互作用)を重視した構成になったり、安い下位互換カードを用いたりする事が多い。
また、強いことは強いが他のデッキに使うだけの「汎用性」に欠けるために値段が安いというカードも活用することになる。

低予算で強力なデッキを構築するために必要なのは紛れも無くカードプールに対する知識と探究心であり、安価なカードを探す中で既存環境には無い新たな発見があるかもしれない。
ストレージボックスに雑多に納められたカードを眺め、新たな発見を楽しみながらデッキを構築することもTCGの醍醐味の1つである。

低予算と書くと初心者向けに見えるものの、実際は枠を縛ろうとしている訳なのでなかなか難しい。
だがある程度ゲームに慣れてきて変わった遊び方をしたいプレイヤーにはぜひお薦めしたい。
カードにかけられるのは決して資金だけではない。時には知恵と時間を積んでグッドスタッフに頼らない編成を組んでみるのも面白いものである。


各TCGにおける貧乏デッキ

Magic the Gathering

多色のデッキは必然的に高価な土地カードを多用するため、単色デッキになりがち。
デッキを多色化する場合2色以内に抑えるか、土地の扱いに長ける緑を中心として基本地形を多用する構成などが有力タイプ。
低予算でも遊べるようコモンカードのみで構築するフォーマット「Pauper/パウパー(貧困者の意)」が公式にサポートされており、トーナメントプレイヤーからも人気がある。
MOだけでなく紙で集めたとしても数十円~数百円のカードがほとんどなので非常に安くデッキを構築することが出来る。
更に非公式フォーマットではあるが、専門のサイトまで立ち上がっていてほとんどのMO民に認知されているカード価格0.2セント以下限定という極端な貧乏デッキ専門フォーマット「Penny dreadful」なる物も存在する。

代表的な貧乏デッキには以下のようなものがある。
  • ウィップ・バイパー
  • 白ウィニー
  • 赤単スライ・「ケルドの炎」*1型アグロ、バーン、ゴブリン(ゴブナイト)
  • 緑単エルフ

  • 青単テンポ
Tempest Djinn / 大嵐のジン (青)(青)(青)
クリーチャー — ジン(Djinn)
飛行
大嵐のジンは、あなたがコントロールしている基本島(Island)1つにつき+1/+0の修整を受ける。
0/4
出すのは「基本島」に限定される。が…そうすれば 3マナで6/4+飛行 という青らしかぬガチムチになってしまう。このカードのおかげで、ショックランドやチェックランドは不要…むしろ邪魔と言えるトンでもな事態となった。「執着的探訪」で手札を溜めつつ、打ち消しで邪魔しながら隙を見てこいつを投入…。というデッキがスタンダードに流行した。


  • ターボゲート/Turbo gates(門デッキ/Gates)
MtGの貧乏デッキには珍しい多色だが、特徴的なのは以下に示す主力カード達。
  • タップインなので、場に出したターンにはマナを得られないコモン土地(×たくさん)。
  • 8マナ8/8。ファッティ。
  • 2緑マナで2/2。緑基準なら貧弱クリーチャー。
  • 0威力の火力。
  • ただの置物。
  • アンタップインで無色マナ出すだけの土地。

単体のカードパワーはこの通り非常に弱い。
しかし、前述したように貧乏デッキはシナジーで伸びるカードを軸に組まれるものもあり、これもその一つである。
そのシナジーの根幹こそがデッキ名にある『門』である。

  • 青緑スレッショルド(スタンダード時)
エターナル環境でも亜種が発生したが、レガシー版青緑タッチ赤スレッショルドこと【カナディアン・スレッショルド】は《タルモゴイフ》×4から始まる超高額デッキだったので、あくまでもスタンダード時。

エターナルにも存在している。
そもそもエターナルのデッキが札束になりやすいのは、パワー9デュアルランドなど、超高額の*4再録禁止カードを採用しているからなので、それらを採用しないデッキは結果的に貧乏デッキと呼べる価格帯になってくる。
それでも1000円オーバーのカードは当たり前、10,000円オーバーでも複数枚採用されるようなデッキもあるので、スタンダードから見るとはるかに高額ではある。

◆レガシー
  • Death&Taxes
  • The Spy
  • ターボデプス(レインボーデプス型)

◆ヴィンテージ
どちらも高額カード筆頭のパワー9とデュアルランドを入れる必要性があまりないデッキ。
ただドレッジは4積必須のBazaar of Baghdadが1枚37万(2021/6/19、Wisdom Guild調べ)
土地単はデッキパワー自体がそこまで強くないのが弱点。


遊戯王OCG

再録されたことのない汎用カード、環境デッキのキーカード、素材の縛りが緩いEXモンスターといったカードは高額になりやすく、それらのカードのなるべく頼らないようにすることで安価で構築できる。
また、レアリティが複数種類あるカードは希少度が低い方にすれば、構築費用を安くできる。

また、近年のストラクチャーデッキ(構築済みデッキ)の質が高く、同じストラクを3箱買って組み合わせるだけでもそれなりに完成度が高いデッキが作れるので、これから遊戯王を始めるプレイヤーにもオススメ。
「青眼龍轟臨」以降のストラクではエクストラデッキも充実しており、HERO's STRIKEでは融合モンスターが5枚も入った大盤振る舞いとなっている。
逆に「真帝王降臨」のように、あえてエクストラデッキを使用しないことで強力な効果を生み出すデッキもある。
ストラクは再録も豪華であり、強欲で謙虚な壺等の高額だったカードも収録されている。

ゴールドシリーズ等で過去の強力カードの再販も盛んであることから、比較的貧乏デッキが組みやすい環境であるといえる。
2016年には強力なエクシーズモンスターのArk Knightヴェルズビュートが再録されている。

最近ではレア以下でありながら優秀な効果を持つエクシーズモンスターやシンクロモンスターがよくパックに収録されるため、エクストラもそこそこ充実させることができるようになった。
また、月華竜、琰魔竜、閃珖竜、ホープ・ザ・ライトニングのような単行本付録で強力なシンクロ、エクシーズも存在しており、それらを頼るのもいいだろう。

余談だが、アニメでもチーム太陽などが貧乏デッキ使いであった。
また苦学生である城之内も、原作では《死者蘇生》を使用していない、エース級のカードは元々他人のカードであることが多いなどカード資産に欠ける描写が多い。

以下のようなデッキが貧乏デッキと言えるだろう。
過去の第一線級のデッキや強力なカテゴリのものも多くあり、やりようによっては現在の環境でも十二分に戦えるものも少なくない。
環境を意識したり、レアリティに拘り過ぎると、そこそこの構築費用が掛かることもあるが。


他多数
ぶっちゃけ「ストラク2~3つにチョイ足しパーツ」って感じで買うだけで全然戦えるゲームであり、下手に貧乏デッキを組もうとするよりそちらの方が賢い選択肢だったり。
あとはそのテーマが強化されたらそれに合わせてデッキを組みかえていけば十分長く遊んでいけるため、社会人プレイヤーや復帰勢にはこういう遊び方の人も多い。


バトルスピリッツ

全体的にシングル価格が安めなので、蜂王リュービ*5だとかの裏Xレアを使うデッキを組もうとしない限りは全体的に安め。
構築済みデッキの完成度が高いことが有名で、スターターデッキ(1000円)を二つ合わせただけのデッキでも大会に参加できるほど。
特に「陽昇ハジメデッキ バーストヒーローズ」の完成度は語り草となっており、当時下手に新しいデッキを組もうとすると「そのデッキでスターターデッキに勝てるの?」と言われたくらいの完成度を誇っていた。
後に「1つ買えば環境トップレベルのデッキがすぐ手に入る」というコンセプトの構築済みデッキ「メガデッキ」シリーズ(2700円)が販売されており、事実メガデッキを少しいじっただけのデッキが全国大会で優勝している。

また、ウィニーによるデッキも相手によっては痛烈に刺さる。最近こそ砲天使カノンなどのメタも登場したものの、当初は大天使ミカファール(Battle Spirits)に対する最善対抗策だった。
ついでにコモンカード同士のシナジーを組み合わせることでどんなスピリットでも葬ることが基本的に可能なので、お金がない方々にもオススメだったりする。
また、安めのデッキ破壊手段を集めたデッキ破壊を勝ち筋とするデッキはそれらに対するメタカードを積めないデッキも多く、バトスピの試合形式がシングル戦であることも相まってそこそこの勝率を期待できる。

え?XXレア?創界神?ご勘弁を。


カードファイト!!ヴァンガード

デッキ構築の上での鬼門は一律RRに設定されている「守護者」完全ガード)であり、それが安いデッキは基本的に他も安い。
だが当初、完ガはトライアルデッキについてこなかった為、その分敷居は高かったが、「ヴァンガードG」からはトライアルデッキに完ガが含まれるようになった。
トライアルデッキが出ないクラン?まだそんなクランがあったんですね(笑)
また、デッキの切り札であるグレード3やその他デッキを回すためのカードが安価なデッキも、全体的に安くなる傾向にある。


デュエル・マスターズ

グッドスタッフデッキは重いカードを多用する都合上札束化しやすい。王来篇現在だと【5Cコントロール】が該当する。
【速攻】は軽いカードを中心に組まれる都合上、全体的にレアリティが低いので、比較的安価に組めるデッキ。
特に黒緑速攻は速い、安い、強いと三拍子揃った優良デッキで、神化編環境から長きにわたって愛され続けている。

……というのは過去の話。革命編で《轟く侵略 レッドゾーン》が登場したのを皮切りに、自力でコスト踏み倒しできる大型クリーチャーが多数登場。【ドギラゴン剣】など、速攻並みのスピードを持ちながらも高レアリティのカードを何枚も使うデッキはもはや珍しくなくなっている。

超天篇になると、速攻と相性のいいGRクリーチャーが多数登場。メインデッキはともかく、超GRのせいで【速攻】の方がむしろ高くなるという事態も頻発することに。
どうしてこうなった……

エピソード2からははバニラを並べての物量戦法が確立されたので、バニラビートで戦うことも可能。
青単バニラビートの主要パーツは「神秘の結晶龍」一個で揃う。お値段(税抜)500円である。
そこにバロンスペード4枚とストリーミング・シェイパーを挿してやればなかなか強力なデッキになる。

超次元コントロールもかつては札束に近かったが、エピソードシリーズからは安価になりつつある。
ガンヴィートやジオ・ザ・マン、四つ牙などの安くて強い超次元も多い。
特にチャクラ、メビウス、ガンヴィートは再録されたので、枠色に拘らなければ安く手に入る。

ただ、BAGOOON・パンツァーのようなビクトリーカードは今でも割高なので、使用する超次元呪文に合わせてうまく取捨選択してやろう。他にはデビル・ディアボロスZはガード・ホールと併用されることが多いので、その辺も避けるといい。

他に安上がりなのは、構築済みデッキ、特にスーパーデッキやクロニクルデッキを買うことだったりする。
デュエマの構築済みデッキは必須カードやコンボパーツが初めから3~4枚ずつ積まれており、無改造でもある程度回せる。
近年は「開発部セレクション」という商品名で環境を席巻したデッキを再現したものが発売され、こちらもショップ大会程度ならすぐに持ち込めるほどに強力。

3000円~5000円程度のデッキともなると環境レベルの強さを持つものも多く、それらを手にすることで結果として楽に強いデッキが組めるともいえる。
中には無改造で持って行っても実践で勝てる商品まで存在するのである。



追記・修正は、お値段以上!?なカードの可能性を信じながらお願いします。

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最終更新:2023年11月01日 21:35

*1 英雄譚の一つ。場に出すと手札をすべて捨てるが、三ターン目に赤カードから出たダメージ値を全て+2。墓地利用や手札補充・場のクリーチャー次第でとんでもダメージが出る

*2 巨像は門が8以上あると巻き添えでやられるので注意。

*3 「門を10種類集めると勝ち」と書いてある《迷路の終わり》をエンドカードにした超低速コントロールデッキ。当時のメタが【白青黒ボードコントロール】だったため、除去をスカせるので強かった。

*4 デジタルゲームのMO(Magic: The Gathering Online)だと1,000分の1くらいの費用で簡単に入手できるが、あえて考慮しない

*5 現在は禁止カードが多数あるため構築不可能