断章のグリム

登録日:2011/03/28 Mon 00:22:35
更新日:2023/10/25 Wed 00:10:44
所要時間:約 6 分で読めます




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クラック!






レーベル:電撃文庫
著者:甲田学人
イラスト:三日月かける

全17巻。うち1巻は短編集。
2009年にドラマCD化されている。

Missing』で電撃文庫にデビューした甲田学人氏の新作。
Missingが高校を舞台にしているのに対し、こちらは基本、事件が起こった場所へ向かうスタンス。
副題になった童話を元とした事件が起こっていく。


~あらすじ~
神様からの贈り物を巡る、胸を打つお話。
主人公である白野蒼衣はある少女との出会いによって、様々な人々の想いを受け止めていくことになる……

思い出が強く残るべったりな幼なじみ
「蒼衣ちゃんだけは、私の味方だよね?」
「二人は一緒にいなきゃ駄目なのに!」

心を開こうとしないツンデレゴスロリ美少女。
「……だ、誰もあなたなんか心配してないわ」
「…………うるさい、殺すわよ」

まっさらに純粋無垢な妹的存在、眼鏡っ娘クラスメイト、ミステリアスなお姉様、真面目な委員長、潔癖症な少女など女性陣も魅力的!

一巻では幻想と鳥達との触れ合いを通し徐々に深まっていく絆を描く。

巻を追うごとに、いじらしくなってくる蒼衣の大切なものへの執着心、浮き彫りになってくるヒロイン達の過去。
蒼衣が自らの言葉の重みに気づくとき、世界が変わる……!


追記・修正お願いします






はつかねずみがやってきた
話はおしまい




























   *   *
 *   + うそです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *







何も間違ってはいないけれど嘘です。


~あらすじ~
平凡な高校生・白野蒼衣は、ある日<神の悪夢>から生まれた<悪夢の泡>、<泡禍>に遭遇する。

それを追っていた美少女・時槻雪乃に出会い、
その日から蒼衣は彼が愛していた「普通の日常」とは対極の<神の悪夢>が創り出した悪夢の童話が顕現する世界に巻き込まれていく事になる…。



~用語~

作中での「神」とは、「全ての人間の無意識は共有されている」という集合無意識に眠っている絶対存在の事。

<泡禍>(ほうか、バブル・ペリル)
神は全知故、世のすべての恐怖を見、そして全能なる神の手で捨てられ、それが人間の抱える恐怖に浮かぶことにより引き起こされる異常現象のこと。

<断章>(フラグメント)
泡禍から生還した人の心に残された<悪夢の泡>の欠片。<泡禍>によって植え付けられたトラウマを引金に、現実に異常現象を呼び出す事ができる。
要は魔法みたいなものだが、あくまでトラウマであるため使えば精神に負担をかけ最後は自らが泡禍を撒き散らす異形と化してしまう。

<断章騎士団>(オーダー・オブ・ザ・フラグメンツ)
泡禍に巻き込まれた人間を無償で助ける相互扶助組織。通称ロッジ。
活動拠点ともなるので複数存在する。

<断章詩>
過去に自分が遭遇した<泡禍>に対するトラウマを鮮明かつ瞬時に心の中から汲み出し、断章を発動させるための言葉。日常生活での暴走を防ぐためにも必要。

<騎士>
<泡禍>の起きた地区に赴き、<泡禍>を潰す人達の総称。


~主な登場人物~  キャストはドラマCDより

白野 蒼衣(しらの あおい)
CV:KENN
平凡や普通を"愛している"高校生。
彼が学校から下校中に、<泡禍>に遭遇した事から物語は始まる。
自分は普通だと常識人ぶっており、自ら非日常に身を置こうとする雪乃に「普通」を与えようとするが、実は作中随一の狂人。
普通に拘るあまりに普通じゃない行動を平気で行い、幼少期のあるトラウマから「自分は他人を見捨ててはいけない」という強迫観念に憑かれ少しでも「人を救おう」と試みるも、それが報われる事はほぼない
また1巻ラストにて「深く理解した<泡禍>を潜有者と派生現象ごと完全に滅する」断章<目覚めのアリス>に覚醒してしまい、先述のトラウマから来た「被害者を分かろうとすればする程『突き放して殺してしまう』」力を得てしまい、
ならばせめてと「犠牲を最小限に収める(=潜有者の死は諦めてもそれ以外の犠牲は起こさせない、雪乃を助けるためならやむを得ない)」と奔走し、ある種潜有者に対する醒めた冷静さを得るも、それでも真相・解決に至るのは終盤なため犠牲は出てしまい虚しさは募るばかりである。
また終盤では(一応蒼衣を恨む理由はあるとは言え)自分を殺そうとした相手も助けたいと願う様子から、殺しに来た人物の元保護者(こっちは既に相手を始末する気満々)から「DV夫にそれでも尽くす奥さん」なんてあんまりな例えをされていた。
+ 以下、最終巻の重大なネタバレに付き注意
彼のトラウマの根源は、幼少期「溝口葉耶」という少女と幼馴染だったことにある。
蒼衣だけを友人とし、蒼衣が自分から離れる事を認めず、蒼衣以外の全ての「普通の人と世界」は自分の心を壊す「敵」と感じ、蒼衣すら引くレベルで自分だけの「王国」を築いていた…平たく言うとヤンデレメンヘラ少女だった葉耶。
そんな葉耶と友達でいつつも彼女の痛みは理解出来ず、「普通になればいいのに」とも感じていた蒼衣は本作開始時まで「彼女の事」を思い出せずにいたが、
1巻クライマックスにて「自分が葉耶と彼女の閉じた世界を否定し突き放したせいで、葉耶は異形となって崩れ去った」という幻視をしてしまい、それが<目覚めのアリス>覚醒の切っ掛けとなり、(内面は異なるとはいえ)葉耶から感じた痛みを連想させる雪乃に感情移入する原因にもなった。

…だが、12・13巻である事情から断章が不安定化した頃から「葉耶の幻影」と悪夢に苛まれるようになった蒼衣は、16巻で「葉耶は彼女の母に虐待の末殺された」という真実を過去の新聞記事等から知らされ、
同巻ラストと17巻にて1巻の幻視は「『彼女を否定して帰宅した』→『数日後彼女が死体となっても母に殺され続ける様を見てしまった』が心に封印された記憶の底で煮詰まって混ざったもの」という結論を得たが(ちなみにその時偶然共にその様子を見てしまって壊れたのが夢見子)、
今更真相に気づいても「葉耶の幻影」や力が消える事はなく、今彼を襲う危機の打破に役立つ訳でもなかった…。
なお「葉耶の幻影」が望むことは「蒼衣が自分の王国に来ること」なため、結果的にではあるが蒼衣の他者救済願望や彼女を普通に引き戻したかったという無念は葉耶への償いにもならない自己満足でしかなかったという皮肉なことになっている。
ゆえに本人もエンディングでは「葉耶の幻影」がいずれ自分を王国に招く(≒自分を終わらせる)と感じながらも、それを闇雲に恐怖する事を辞め静かに受け入れていた。

時槻 雪乃(ときつき ゆきの)
CV:藤村歩
ヒロイン。ロッジの<騎士>であり、<雪の女王>の異名をもつ。
断章の発動条件から左手首には寸刻みに切り傷があり、包帯が巻かれている。
姉により家族を失っており、今でも姉の亡霊に取りつかれているため、あえて「普通」から遠ざかろうとしている。
ツンデレのはずだがなかなかデレない。だがそれがいい。
狂人のふりをしているが実のところは作中数少ない常識人。

鹿狩 雅孝(かがり まさたか)
CV:三木眞一郎
作中では殆ど神狩屋(かがりや)と呼ばれている。
雪乃の活動拠点であるロッジで活動をサポートする世話役。
断章の影響で死ぬことができない。対外的にはまともに見えるが狂人で、断章を得てしまった事件から生死観を意図的に歪ませている。
+ 以下、ネタバレに付き注意
だが<目覚めのアリス>の「どんな断章でも確実に消し飛ばす=不死でも殺せる」という「希望」と、13巻での事件のラストから、
最終章では蒼衣に自分を殺してもらうため本作のラスボスとなり、蒼衣の殺意と断章を煽ろうと彼を徹底的に追い詰めていく。

田上 颯姫(たのうえ さつき)
CV:福圓美里
神狩屋のロッジに住んでいる中学生くらいの少女。
ある理由により学校には通っていない。

夏木 夢見子(なつき ゆみこ)
颯姫と同じくロッジに住んでいるロリ。<泡禍>によって精神が壊れており、人形然としている。

時槻 風乃(ときつき かぜの)
CV:遠藤綾
雪乃の姉。雪乃に取り憑いている亡霊。雪乃に宿る〈断章〉の一部にしてオリジナル。
生前は後の雪乃に表面上だけは似た醒めて病んだ性格だったが、亡霊と化してからは妙にハイで妹や人々が苦しみ右往左往するのを楽しむ女王様になり、断章覚醒直前から自分が見えるようになった蒼衣を断章から「アリス」と呼ぶ。
もちろん狂人、ではあるが物語でメインを張ることは少なく、自他共に認める「世界から外れた人格」ゆえに一周回って相対的にまともに見える。
メディアワークス文庫で発行されているスピンオフでは生前の彼女が主役を務めている。



三日月かける先生の描くイラストは輪郭などに多少好みは別れるかもしれないが、線が細く色彩は鮮やかでメルヘンらしさがあり、
表紙を見たらどういう内容か何となくわかるだろう。
本編の間に挟まれる挿絵はすべてその章の最後に載せられている。



最近のにしては珍しいボーイ・ミーツ・ガール作品なのもそうだが、主人公に対してヒロインが、


デレない

いや、多少のデレはあったかもしれないがそのシーンを抜きとっても2ページいくかどうか…

だが15巻にてついにデレた。さらにラストの17巻では…

読み物としては多少擬音語が多い気はするが、それが物語を想像しやすくさせている。
また、それはホラー作品における怪奇現象が起きている時の異常な静けさ、緊張感や危機的な雰囲気をリアルに再現するためのものである。
そしてこの想像のしやすさにより生まれるこの作品…



痛い



痛いのである

とにかくキャラが今どんな目に遭ってるかが細かく、擬音語付きで書かれている為読んでいると体がムズムズする。
そして物語の殆どは素直に喜べないような終わり。しかしバッドエンドと言うよりはトゥルーエンド寄り。


この作品での怪奇現象は灰かぶりや人魚姫など、その巻の副題になっている童話に基づいたものとなっている。

これはこれらの物語が人間の根源的無意識において共有化され、物語の「元形」となっているため、
根源的無意識から浮かび上がった<泡禍>はこの物語の形で顕れるのである。
事件に巻き込まれた者達は知らず知らずのうちに物語の配役に組み込まれてしまう。


さて、勘違いしてはいけないが、この作品のジャンルはメルヘンである。

大事なことなのでもう一度言う。

メルヘンである。

決してホラーではない……らしい。作者がメルヘンだと言い張っているのだからメルヘンなのだ。

前作に比べて、メルヘンの中にスプーン一杯ほどグロが入ってるというのが作者の言である。


なので、例え出来損ないのシチューみたいなグチャグチャの肉塊が押し寄せてこようが、
バイオハザード』や『サイレントヒル』も真っ青な病院奇形パニックが起ころうがリアル蓮コラやらかそうがメルヘンである。

……いい加減観念しろ。
そのせいで一部では「スプーン一杯(大きさが25mプール)」だの「スプーン一杯(中身がこれ)」だの突っ込まれてたけど

???「スプーン一杯で驚きのグロさ!」


<モチーフに使われた童話>

短編
  • 金の卵をうむめんどり
  • よくばりな犬
  • アリとキリギリス

ドラマCD
  • 小人と靴屋


ちなみに第44回星雲賞にノミネートされた。…SFって何だっけ?





「さあ、追記と修正のお話をしましょう……」

「<変われよ>」

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  • 鬱展開の嵐

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最終更新:2023年10月25日 00:10