飛鳥了

登録日:2010/07/19 Mon 01:45:50
更新日:2024/04/09 Tue 09:49:42
所要時間:約 8 分で読めます






【概要】

漫画『デビルマン』の登場人物。
主人公、不動明の親友で、明と並ぶもう一人の主人公。
人類で最初に悪魔の脅威に気付いた飛鳥教授の一人息子で、父の研究を引き継ぎ明をデーモンと合体させ、デビルマンを生み出した人物。
金髪碧眼の美少年で、明からは「天使のようにうつくしい」と表現されている。

1972年のTVアニメ版には登場しないが、永井豪作品を代表するキャラクターであり、氏のスターシステムにより『デビルマン』以降も、主に明と一緒に様々な永井作品に登場している。

CV:水島裕(OVAシリーズ、CBキャラ 永井豪ワールド)/関智一(AMON デビルマン黙示録)/日野聡(サイボーグ009VSデビルマン)/村瀬歩(cry baby)

【人物】

クールで冷静だがエキセントリックな性格でもあり、時に予測不可能な行動を取る。(ただし、新デビによるとクールを気取っているが、虫も殺せない性格と明から評されており、明の前では猫を被っている節がある。)
若干のテレパシー能力らしきものがあるようで、明のピンチを察して駆けつけたりもする。
デーモンと合体しそこなった普通の人間として、世界が「自分が恐怖に思う筋書き通りの破滅」に向かっていることを恐れている。

永井豪の自伝漫画である「激マン!」によると、了は元々すぐに死ぬ予定であったため「アニメ版には了は登場させなくて良い」と、永井自身が東映に指示した。
しかし実際に作中で了を殺したところ「デビルマン」自体の続きが描けないという事態に陥ったため、
「実は生きていた」という設定で執筆を続け、その後も了は最後まで作品の中心におさまることとなった。

作者である永井氏本人も、かなり終盤になるまで了の正体を決めかねていたようで
「デビルマンの本当の主人公は飛鳥了だったのではないか?だとしたら飛鳥了とは何者なのか?」
と自問自答を繰り返しながら、最終的な解答へと導かれていくさまが描かれている。
因みによく本編と外伝での外見と性格の変わり様を読者にネタにされているが、おそらく明の発言から、本編前に明と別れてから麻薬入りのタバコを常用しているらしく、その影響で窶れており、それが外見及び性格に表れていたのだろう。しかし、明と再開し、心身ともに負担が軽くなったので麻薬をやめ、再び元に戻ったのではないだろうか。多くのバージョンで削除されがちだが、実は本編でも明と二人だけの時には口調が柔らかくなっている時が多々ある。




※これ以降ネタばれが含まれています



























何を悲しんでいる明、これでいい、これでまた世の中が変わるのだ


愚かな人間どもが汚す前の地球に、人間のいない、美しいデーモンの星に



その正体はデーモン族の首魁である暁の堕天使ルシファーこと、大魔神サタン

更に言えば、物語その物の発端でもあるが、その願いは何処までも純真である。
元々は『神』に仕える天使……と云うかぶっちゃけ“父”と同じ力を持つ天使の長たる“息子(娘)”であったが、神が自らが創造した地球に発生した、他の生物を取り込みながら異形の姿と強大な力を得ていくデーモン一族を醜いという理由で亡ぼそうとしたこたから離叛して堕天使となり、デーモン側につく。
デーモンの軍団を指揮し、神の軍勢を地球から放逐した事により、悪魔王ゼノンの更に上に立つ者、大魔神としてデーモン達に崇拝されている。
元天使らしく12枚の輝ける翼と両性具有の体、そして極めて強大な力を持つ美しい存在。
尚、後の続編的作品によってデーモン族に倣ってルシファーもまたゼノンを吸収合体しており、合体した状態が“大魔神サタン”であると云う設定の補完がされている。
また、デーモン族の場合は一度合体してしまうと二度と元の姿に戻れないのだが、全知全能であるルシファーの場合は自由に分離も可能で、これがサタン(ルシファー)とゼノンが離れて会話していた理由となっている。

また、ゼノンは最終決戦時に乗っていた多頭龍の正体でもあり、これもルシファーとの合体のバリエーションの一つであるらしい。
尚、ゼノンと合体している、いないにもかかわらずルシファーの時点で全知全能なので、ゼノンがルシファーの一部となったという以上の能力の変化等は無いと思われる。

神との戦いに勝利した後に再戦に備え眠りにつくが、200万年の時を経て目覚めた彼が観たものはデーモンに代わる新種族「人間」によって汚染された地球であった
自分達が必死になって護ってきた地球を汚された事に激怒したサタンは人類を滅ぼす事を決意。
サイコジェニーという極めて強力な精神操作能力をもつデーモンの力を用いて飛鳥了という人間の記憶を植え付け、「人間」として人間社会に潜伏する。
これは人間の事を深く知る為の策略であったのだが、その最中にサタンは予想もしていなかった事態に遭遇してしまう。
それは、自分が両性具有であるが故*1に、心優しい人間の青年である不動明を愛してしまったこと。
サタン=飛鳥了は人が滅びた後のデーモンの時代にも明が生き残れるよう、彼をデーモンと融合させる事を目論む。
その目論みは成功し、明は勇者アモンの力を得るが、それはデーモンの新たなる敵対者「デビルマン」を生み出す事に他ならなかった。
明と共に幾多のデーモンと戦うものの、デーモンは人類への総攻撃を開始。
人の弱さ愚かさを知った了の思考・思念をサイコジェニーが受け取り、人類同士で争うように作戦が遂行され、了自身も自分の考えたとおりにデーモンが行動する事に疑問を感じ、やがて自分の正体を知る。

デーモンの支配者として覚醒しても尚、明の事を諦め切れずにいたが、それ故に明の怒りや悲しみの深さを知りデーモンとデビルマンの戦いが避けられない事を悟るのであった。
サタンは戦いにこそ勝利したものの、己の行いがかつての神の傲慢と同じであった事を悔やみ、その胸の内を死に行く明に語る……

月だ……美しい……あの月だけは数百万年前と変わっていないよ……地球はあの月より美しかったのに……

この小宇宙は、私たちの親が創ったんだよ。君たち人間は、神と呼んでいたね。

神は、この辺境の小宇宙に生命を吹き込んだ。地球は生命に満ち溢れ、色んな生物が育っていった。

数億年ののち、生物の進化の様子を見に戻った神は異様な生物を発見した……それがデーモンだったんだ。

デーモンの醜さを、その異常な進化を、その飽くこと無い闘争心を神は恐れ、忌み嫌った。

神はこの小宇宙を無に帰すことに決めた。全てを消し去ることで、自分たちの失敗を償おうとした。

私は怒り、反抗した。自分たちの生み出した生命だから、勝手に殺していいと言うのか?

地球上の生命は生まれたくて生まれたんじゃない、だが生きている!自分の意志で、自分の心で、必死に生きている

私はデーモンと共に神と戦った。君が人間を守るために戦ったように、デーモンと、デーモンの星、地球を守るために。

……そして……勝った。

次なる神の攻撃に備え、我々は200万年の眠りに入った。サタンは神によって氷に閉じこめられたのではなく、戦いのために自ら氷に閉じこもったのだ。

眠りから醒めた時、地球は変わっていた。美しいはずの地球は汚れきっていた。人間という新しい生物のために……

私は許せなかった!私が命をかけて守った地球を汚してしまった人間たちを!

私は……人間たちを滅ぼすことにした。……だがそれは、神がデーモンを滅ぼそうとしたことと同じ行為だった……力の強いものが、強いからといって弱者の命を、権利を奪ってよいはずはないのにな……

許してくれ明……私は愚かだった……

明?

……ねむったんだね……明。永劫のやすらぎのねむりに……。


【その他の登場作品】

デビルマン以外では『バイオレンスジャック』と『デビルマンレディー』に登場。
戦いの後、世界を再創世したサタンであったが、己の愚行や愛する明を殺した後悔などから、地獄地震という大災害を引き起こして関東を孤立させ。
サタンは分裂しスラムキング・ズバ蛮に、天使だった部分はハニー達に。
また、己を苛む心が人犬という形で具現化しており、スラムキングに徹底的に貶められている。

悪たるスラムキングに、善なるハニーたちが勝てるかどうかで世界の命運を決めようとする。
また、自らを止め得る存在として不動明=デビルマンを求めており、明=デビルマンはバイオレンスジャックとして顕現し、サタンの悪夢たる混沌の世界の秩序を破壊していた。
物語の最後にサタンが自我を取り戻すと、三人に別れていたジャックも一つとなりデビルマンに。
この復活により、デビルマンはサタンの願いにより、全知全能たるサタンと同じ力を持つ存在へと進化したとされており、その後の両者の邂逅により『バイオレンスジャック』の世界はようやく閉ざされることとなった。
しかし考えてみて欲しい。読者ならわかるが、この作品には明と了の関係に似た門土と竜馬という二人が出てくる。この二人の結末、および明(ジャック)と明(レディー)の発言の食い違いをみると、明(ジャック)はサタンが無意識に創った「自分を止めてくれる」、「自分が明を愛していると理解してくれている(レディーで登場する本物と思われる明は了の愛故の涙を理解していなかった)」理想の明であり、本物ではないのだろう。そして戦いのなかでジャックはそれをサタンに伝え、サタンは自分が創世した世界を手放した。その結果、なぜかバイオレンスジャックと会った人々の彼への記憶が「薄れて」いったのだった。この現象はレディーにも出てくる。

『デビルマンレディー』の世界では二つに分かれ、それぞれがアスカ蘭不動ジュンになった。
この世界ではデビルマン(本物)は全知全能となりながらも魂のまま地獄に囚われていたが、不動ジュンとの出会いにより新たに創造された地上へと干渉し始める……しかしジュンから明への記憶が異常な早さで「薄れて」いくのだった。このバイオレンスジャック終盤とデビルマンレディー中盤の出来事は同一の存在ミカエルによる影響の可能性がある。おそらく本編での明の発言通り、都合の悪い歴史としてサタンの創世したバイオレンスジャックの世界は消滅し、ミカエルにより、レディーの世界が創られたと考えられる。(そして、それをも含めて漫画版の不動ジュンの正体も含めたある意味で“レディー関係ねぇじゃん”という衝撃のラストへ。)*2

この両作品では何れもサタン(ルシファー)が意思の力のみで“宇宙をも生み出せる”という出鱈目さが描かれており、文字通りサタン=了の願いや迷いがそのまま世界の形となっている
尚、考察の余地こそあれ作者である永井豪の解釈としては誕生経緯がどうあれ、魂も紛い物であった早乙女門土に対して、サタンに生み出された不動明は復活とその世界での存在の経緯はどうあれ、魂は間違いなく明本人のものという解釈で間違いないと思われる。
これは、自身に対しての最大のカウンターとしてデビルマンの存在をサタンが望んだことと関係しているのだろうが、前述の『バイオレンスジャック』と『デビルマンレディー』双方の世界にて、明が自由意志を持って活動していたことからもうかがえる。
事実、当時の制作状況を元ネタとした虚々実々の『激マン!』デビルマン編でのラストもまた『バイオレンスジャック』の始まりに繋がる展開となっており、一連の流れは完全に永井の中では地続きになっている模様。
ある意味では多次元的解釈を明言せずとも先駆けて取り入れていたような展開の広げ方なのだが、その中でも“大きな流れ”として先ず確実に紡がれる時系列ということなのたろう。

『鉄の処女(アイアンバージン)JUN』においても「飛鳥了」という人物が登場する。
みかけもそっくり同じ。
ヒロインの遠い親戚にあたり、祖父の復讐のためにヒロインに近づく。
「悪魔じみた腕力」を持つ「不動明」を友人に持つ。

【余談】

上記の通り元々了自身は序盤で退場する予定であり、その後も正体を決めあぐねていたため大魔神サタンの設定は完全に後付けという事になる。
だからなのか、劇中ではシレーヌやその他雑魚デーモンに幾度となく殺されかかっている
「サタン自ら人間社会に潜伏する」という作戦自体ゼノンやサイコジェニーなど一部の上層部にしか知らされていなかったのか、あるいは知っていてもどんな人間に化けているのか分からなかったのか…フォローは幾らでも可能だが、それでも一歩間違えれば大魔神の死と共に作戦瓦解に成りかねない失態である。
まあ、サタン自身もそのようなリスクは最初から承知で作戦を実行したのかも知れないが。

ゼノンの姿は『デビルマン』のイメージの原案の一つとしたダンテの『神曲』に於ける、地獄の最下層に幽閉された魔王ルチフェロ(ルシファー)=サタンの描写から生み出されたデザインだったのだが、当の永井はこの怪物を素直に“サタン”と呼ぶことが出来ず、そこから更に真の魔王の姿を追い求めていく中で、自分が当初の予定に反して生き延びさせてしまった了の正体としてサタンの正体である堕天使ルシファーが重なったのだとか。
何れにせよ、この描写によって『デビルマン』の世界観が更に後の作品にまで繋がったのは間違いないだろう。
永井は連載中、酷い幻視に悩まされたと云うが……描かされたのだろうか。

また上記の通り永井の指示によって、アニメ版には登場しないのだが、
漫画版でのもう一人の主人公が登場しないことに疑問の声が相次いだため、
アニメにはそっくりさんの氷村巌が登場する。
こちらは親友でもなんでもない転入生で、第5話から14話まで度々明や美樹に絡んで事件に巻き込むが、
最終的に青黒い豹頭のコウモリ型の 妖獣ヒムラー の正体を現し 魔将軍ザンニン との二人がかりでデビルマンと戦うが、
人間体の出番の長さの割にあっさりと敗れた。 あれだけ怪しいのにデビルマンの目をごまかし続けたことだけは結構凄いかもしれない

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最終更新:2024年04月09日 09:49

*1 と本人は発言しているが、外伝の「嫉妬」で無意識に美樹を殺しかけた了や明への告白まがいの発言、二つの続編の男の彼(スラムキング)と女の彼?(不動ジュン)の独白を読む限り女の心も男の心も明を愛しており、どう考えても両性は関係ない。

*2 ただしこれは『バイオレンスジャック』と『デビルマンレディー』が同一の世界観だったら、という少々無理矢理な解釈に基づくものである。両者には矛盾した描写もあり、例としてレディーにおいてはダンテが神曲を書いた時代には魔王ゼノンは地獄に封印されている。「途中まではデビルマンと同じ」なら氷の中で眠っていなければおかしい。また『バイオレンスジャック』での魔王ゼノンの足はデビルマンと同じく蹄型だが、レディーでは怪獣のような足となっている。よって『バイオレンスジャック』と『デビルマンレディー』は何の関係もないパラレルな作品であると考えても全く不自然ではない。