「あの音は……!」
レイドリックは身構えながらこう言った。
「この男はサイボーグのようです。尋常ではない速さで動き、武器を弾く装甲を持っているはずです。」
マフィアのボスはその言葉に反応して意外そうな顔をした。
「ほう……、サイボーグを知る者がまた現れたか。不思議な都市だな。」
無警戒に立ったままそう答えた。
観察するようにレイドリックを見つめている。
そしてこう言った。
「サイキックさんよ、話し次第では俺はここから出ていっても良いぜ。」
突然の申し出に冒険者たちは驚いた。
それは冒険者たちだけではなく、回りのマフィアたちも驚いていた。
マフィアのボスは再びソファーにゆっくりと腰をかけた。
そして足を組み、くつろぎながら言葉を続けた。
「俺がここに居るのはパーツのためだ。この都市にはサイボーグのパーツを扱ってる店があるんでな。
こんな機械文明の劣る国で何でそんなに揃っているのかってくらいの品揃えでビックリしたぜ。
だが、べらぼうに高い値段を吹っかけられてな。それで金のためにマフィアのボスなんぞしてるって訳だ。」
そう言って男はレイドリックに視線を向けた。
「サイキックさんよ、あんた、他にサイボーグのパーツを扱ってる店を知らないか?
もっと良い店があるなら、ここを出ていっても良いぜ。」
レイドリックは身構えたまま警戒を解かずに、その視線を受け止めてこう言った。
「……残念ながら、そんな店は聞いたこともありません。」
レイドリックの返答は一般的なものである。
通常はサイボーグに会ったことすら無いのが普通であり、サイボーグのパーツを扱う店の存在など知りようも無いのである。
何処でどう作られているのかも不明なサイボーグたちは、自分たちの改造が行われた施設でメンテナンスを受けているのだと噂されている程度である。
「そうか、じゃあもう用はねぇ。」
そう言った途端、ソファーに腰掛けていたその男の姿が消えた。
レイドリックが素早く上を見た。
飛び上がった男は天井を蹴り、冒険者たちに襲いかかってきた。