グリンフレーク

登録日:2011/12/26 Mon 15:38:05
更新日:2024/02/08 Thu 21:26:44
所要時間:約 20 分で読めます




グリンフレークは、DQ7に登場する、ハーブ園で有名な町。
赤の石版。ゲームでは6番目に訪れる。
前はフォロッド。次はユバールの休息地

4人の男女による昼ドラさながらの愛憎劇で有名。
あれ?これドラクエだよね……?


主な登場人物(過去)


「うぶなアルスのために、
親切なあたしが分かりやすーく説明してあげる。
いいわね?

まず、カヤはイワンが好き。
イワンはリンダにメ~ロメロ。
リンダはペペにまっしぐら。

さて ペペが好きなのはいったい誰でしょうか?
あとは自分で考えること。」

…と、親切なマリベルが作中で説明してくれるが、簡単に書くと ペペリンダイワンカヤ という恋愛模様である。
イワンがリンダを諦めれば丸く収まるのでは…



  • ペペ
ハーブ園に仕える庭師の男。いつか自分だけのハーブ園を持つのが夢。
幼馴染のリンダに恋心を抱いているが、ハーブ園の御曹子イワンがリンダと婚約しているためその感情を表に出すことができず、一歩身を引いている。

マリベル曰く、大人っぽい美声の持ち主。

  • リンダ
道具屋の娘。両親は既に他界しており、またリンダ自身も体が弱いため、自宅1階の道具屋は別の夫婦に貸し出しており、普段は2階に籠っている。
親の代にできた借金のカタにイワンと婚約するが、リンダ自身は幼馴染みのペペを愛している。
良くも悪くも直情型な性格であり、ペペへの募る想いをノートに延々と殴り書きをしたり、態度が煮え切らないペペに駆け落ちを迫ったりする。

  • イワン
ハーブ園を営むボルックの息子。
借金の帳消しを条件に、リンダに婚約を申し出る。
リンダの気持ちが自分に向いていないことに薄々勘付いてはいるが、現実を認められていない。

カヤ曰く、「イワン様は可哀想な人を見ると自分が助けねばならないと強く思い込む」らしく、昔はその対象がカヤだったとのこと。
カヤに言わせれば、今のイワンはリンダを愛しているのではなく、”リンダの不幸な身の上”を愛しているようだ。

  • カヤ
ボルック邸で働くメイド。イワンが好き。
計画性と行動力に優れ、イワンとの恋が実るためなら手段を選ばない危険人物。
グリンフレーク編の物語に“愛憎劇”の印象が強いのは、カヤの活躍(?)によるところが大きいだろう。

その他の登場人物

  • ボルック
イワンの父親。ハーブ園を営む富豪。
リンダの両親にお金を貸した人物。
「したくもない借金の取り立てをやめるには、イワンとリンダに結婚してもらう他ない」とのことで、結婚の準備を進める。

「リンダの借金を帳消しにしてやりたいが、理由もなく帳消しにするわけにもいかないから建前を用意する」という対応を見るに、善人か悪人かで言えば間違いなく善人の部類ではある。
少なくとも「借金のカタに息子と結婚しろ」などと要求しているわけではなく、その辺りの決断は当事者たちの自由意志に任せている。
しかし、彼がリンダの結婚を解決策にしたことで事態がこじれにこじれたため、ある意味全ての元凶と言えるかもしれない。

  • ポルタ
ペペの弟。父・兄と共にボルックのハーブ園で庭師をしている。
兄想いな性格。結婚願望があると語り、実際に彼の書いたラブレターが町中で見つかる。


ストーリー(過去・前編)

ふしぎな石版・赤を揃えてたどり着いたハーブの町。
そこではかつてのダイアラックと同じく、全ての住民が石化していた。

主人公らは、人を石化させる“灰色の雨”を降らす魔物『あめふらし』を町の中で見つけ、退治する。*1
そして、ダイアラックで手に入れた『天使の涙』を振り撒き、住民の石化が解けて一件落着*2…とはならず、一人だけどうしても石化が解けない男が居た。

ハーブ園の庭師ペペは、幼馴染みのリンダを庇って灰色の雨を直接浴びており、天使の涙では解除しきれない強い呪いがかかっていたのである。

ペペを治す方法を求めて聞き込みをしていくと、「エンゴウの占い師パミラは薬師としても凄腕」という情報が聞けるので、主人公らは謎の神殿を経由して過去のエンゴウを再訪することとなる。

パミラから秘薬をもらい、ペペの石化も治って万事解決。
後は北西にあるらしい洞窟の探検*3でもすれば終わり…

…とはいかなかった。

本当の物語はここから始まる。


※以下ネタバレ含みます

ハーブ園の御曹子

ペペの石化が治る少し前のこと。

ハーブ園の御曹子イワンは、灰色の雨が降ったとき婚約者のリンダが庭師のペペと一緒にいたことを怪しく思い、二人で何をしていたのかとリンダに問い詰める。
しかし、リンダは「何もしていない」とはぐらかし、走り去ってしまう。

町の人々は、リンダがペペを想ってたびたびハーブ園を訪れていたことを知っていた。

一方、イワンの父・ボルックの屋敷で働くメイドのカヤは、イワンに関係を迫る。

「ずいぶんお疲れのようで。
またリンダのことで、あれこれ悩んでいるのかしら?」

「すまんが、ひとりにしてくれ。
考え事はひとりになった方がはかどるっていうだろ。

…や、やめてくれよカヤ!

「ふーん、あらそう。
でも、リンダとペペだってこれくらいやってるわよ。

「でたらめ言うな!」
「じゃあ、しょっちゅうリンダがペペのいるハーブ園に通うのはどうしてだかお分かり?」
「ハーブが好きだからだろ。」
「おめでたい人ね。好きなのはハーブではなく、ハーブ園にいるペペではなくて?
「いいかげんにしろよ。そんなことがお前に分かってたまるか。
リンダが俺の気持ちを裏切るなんて絶対にない。
絶対に絶対に絶対にだッ!



この後、リンダやボルックの依頼で主人公らはペペを治すための薬を求めてエンゴウへと向かうこととなる。

宴にて

主人公が手に入れた秘薬でペペの石化が解け、彼を心配していたリンダも安堵する。
元気になったリンダを見て気をよくしたイワンが、ペペの回復を祝って宴を開くことを提案し、父ボルックも賛同したため、その日の夜にハーブ園で宴が開かれることとなる。

ボルックはこの宴の場で、イワンとリンダの結婚の日取りを正式に発表することを考えていた。
これに焦ったカヤは、宴の最中、酒の席からひとり離れていたペペの元へ向かい、「リンダと駆け落ちしろ」ととんでもない要求をする。

「……バカ言ってんじゃないよ。
そんなこと、できるわけないだろ。」

「絶対、上手くいくわ。第一、あなたにはハーブがあるじゃない。
リンダと二人でこの町を出ていったとしても、やっていけるわよ!」

「駆け落ちなんかしてみろ。
残された父さんと弟がどうなるか想像つくだろ。」

「リンダと一緒になれるのよ。だったら家族のことなんてどうだっていいじゃない!
私はイワン様の元でメイドとしての生活を続けていきたいだけなの。」

「だから僕にリンダと駆け落ちしろってのか。ハン、冗談じゃない。
悪いが、断る。駆け落ちなんて身勝手なこと、僕にできるもんか。」

「あなた……リンダがイワンの妻になるのを、そばで見ていて平気なの?
悔しいって思わないの!」

「……。」

このあと、一人になったカヤに話しかけると、宴の席に出した私の料理は美味しかったかと問われる。
はい/いいえのどちらで答えても、「うふふ、そうですか。では、そろそろ毒が効いてくる頃合いですね。」と恐ろしい発言が飛び出す。
…が、これは冗談で、さすがの彼女も宴の場に毒など仕込んではいない。
しかし、カヤは「本当に毒を混ぜておけばよかった。リンダさえいなくなればイワン様を独り占めできるのに」と続けるのだった。


突然の通り雨

ボルックが息子の結婚について発表しようとしたその直前、通り雨が降り注ぐ。
それは普通の雨でしかなかったが、住民のひとりが「灰色の雨だ!」と叫び、宴の場はたちまちパニックに。
皆が建物の中へと避難し、ボルックも宴は中止せざるを得ないと諦める。
カヤは一人、「イワン様の好きなものたくさん作ったのにな…」と料理が雨に濡れてしまったことを残念がる。

そんな雨の中、リンダは煮え切らない態度のペペに詰め寄っていた。

「さあ、答えて。時間も経てば、考え方も変わってくるでしょ。」
「あの時、断ったのをもう忘れたってのか。
何度聞かれたって、僕の答えは変わらんよ。」

「そんなこと言わないで、一緒にこの町を出ようよ。
ハーブのこと、たくさん勉強したんだよ。
あなたの役に立てるようにって。」

「それでもダメだ。
駆け落ちなんかしたら、みんなを裏切ることになる。」

「みんなみんなって、何で周りのことばっかり気にすんのよ!
あんたの気持ちはどうなの?

そう……わかったわよ。このいくじなしっ!

あんたなんか、あんたなんか、ずっとここで雇われ庭師をやってればいいのよっ。
イワンの奥さんになったら、あんたをうんとコキ使ってやる。
覚悟してなさい!」

「はやく家に帰れ。でないと、風邪をひくぞ。」
「バカッ あんたなんか居なくなればいいのよ。
もう顔も見たくない!




ペペはその場を去り、リンダは一人取り残される。
主人公らがペペを追うと、彼は一人で町を出ていこうとしていた。
キーファが「借金はリンダと二人で返していけばいい、ボルックさんなら分かってくれる」と説得するが、ペペの決意は固かった。

「あなたの言うとおりだ。
もっと早く、そうすべきだった。
けど、もう遅い。

僕は要領が悪すぎた。」


ペペが居なくなった後

ペペが町を出ていったことは、すぐに町中に広まった。

ペペの弟のポルタは、「女のことぐらいで家族と仕事を捨てるなんて酷すぎる」「もし帰ってきたら絶対にぶん殴ってやる」と納得がいかない様子。
一方、ペペの父親は「息子は町を出なければならないほど追い詰められたが、自分たちのことを考えてリンダを連れていけなかったのだろう」と彼の気持ちを汲み、ペペが二度と帰らないであろうことを悟る。

リンダは自分がペペを傷つけたせいだとひどく後悔し、イワンはそんなリンダを見て「俺のことより、居なくなったペペしか見ていない」と嘆く。
しかし、カヤはリンダを連れていかなかったペペに対し「最後まで役立たずのいくじなしだったわね」と一人悪態をつく。


ストーリー(現代)

封印が解かれ現代に復活したグリンフレーク地方は、エンゴウ地方に隣接する位置に現れる。

長い年月の果てにグリンフレークの町は滅びてしまったようで、「かつてここにも町があった」と語る老人が一人住んでいるだけの荒地と化している。

一方、グリンフレーク跡地の東にはメモリアリーフという町が新たに作られており、かつてのグリンフレークと同じくハーブ園で栄えている。
住民の話によると、その昔この町を作った男は大層な働き者で生涯独身を貫いたというが、現代でハーブ園を営む男は四六時中メイドを追いかけ回しているだけの怠け者*4になっている。
そんな状況でもハーブ園のおかげで商売繁盛しているようだ。

また、メモリアリーフの裏手から山道を登っていくと、山頂にギュイオンヌ修道院という施設があり、シスターたちが慎ましく生活している。
修道院の片隅、ちょうどメモリアリーフを見下ろせる見晴らしのよい崖の上には、『ペペ』『リンダ』という名前が彫られた二つの墓が寄り添って立っている。
墓にはメッセージも刻まれているようだが、長い時の中で朽ち果てており文字を読むことはできなかった。
シスターの一人はこの二つの墓について、「何かの罰でこのような場所に埋葬されたのでしょうか」と言うが…?



ここまででグリンフレーク編のシナリオは一旦幕が降りる。

が、リートルードの過去世界を救った後*5に渡れるようになる大きな橋の先がグリンフレーク地方に繋がっており、そこでこの恋物語の第二幕が始まる。

なお、リートルードクリア後に見られる一連のイベントは本編と全く関係がないため、別に見なくてもメインストーリーは進行可能。


ストーリー(過去・後編)

リートルードの過去世界から橋を渡ってたどり着いたグリンフレーク地方。
かつて主人公らがグリンフレークを訪れた時代から30年程の時が流れており、グリンフレークが健在かつメモリアリーフは丁度生まれた頃…という時代となっている。

この時代では、グリンフレークにてイワン&カヤの物語が、メモリアリーフにてペペ&リンダの物語がそれぞれ展開される。

グリンフレーク編(イワン&カヤ)

様変わりした町

グリンフレークの町では、ボルックの跡を継いだイワンがハーブ園を営んで…おらず、カサドールという男がハーブ園を経営している。

住民の話から、この町に起きた変化を知ることができる。
  • イワン
    • リンダと結婚したあと、父ボルックの仕事を引き継ぐ。
    • 周囲の反対を押しきりハーブ園をたたんでブドウ園の経営に舵を切る*6が、見事に失敗。
    • ブドウ園をカサドールという富豪に売り渡したイワンは、すっかり怠け者になってしまった。
  • リンダ
    • イワンとの間に一人息子をもうける。
    • ハーブ園を手放してから働かなくなったイワンに代わり、酒場で懸命に働き、家庭を支えた。
    • しかし荒れた生活を続けるイワンに愛想を尽かし、とうとう町を出ていってしまった*7
  • カサドール
    • グリンフレークにやって来た富豪。イワンからブドウ園を買い取り、元のハーブ園に戻して経営を建て直す。
    • 体調の悪化が年々進んでおり、今では寝たきり生活を送っている。
  • カヤ
    • なんとカサドールと結婚した。
    • メイド時代に培った料理の腕をふるって、病弱な夫を支えている。
    • イワンがリンダと結婚してからしばらくは二人を遠くから眺めている日々が続いたが、リンダが町を離れてから再びイワンに会いに行くようになる。
    • 「旦那思いの奥様」として評判である一方、落ちぶれたイワンに溜まった酒場のツケを代わりに支払うなど世話をやいており、「かつての雇い主とはいえ、そこまでしなくても」という住民もいる。
  • エペ
    • イワンとリンダの息子。*8
    • 真っ直ぐな性格で、怠けてばかりの父イワンを叱咤しながら、ハーブ園の庭師の仕事に従事している。
  • ポルタ
    • カサドールのハーブ園で庭師の仕事を続けている。
    • 無事結婚できたようで、子供が一人いる。


コパン毒殺未遂事件

カサドールの屋敷で働くメイドのチェリは、屋敷で飼われている犬のコパンの世話をしていた。

チェリは、カヤの言いつけで味付けに失敗した料理の後始末を任されるが、「たまにはコパンにご馳走を食べさせよう」と思い、カヤの料理をそのままコパンに差し出す。

しかし食事を終えたコパンは、しばらくしてから泡を吹いて倒れてしまう
ポルタの家に運ばれたコパンは、毒消し草を与えられて一命をとりとめるが、チェリはこの一件であることに思い当たり、その場を去る。

イワンの家にて

一方その頃、カヤはイワンの元を訪れていた。

イワンはカヤに「落ちぶれた自分などに関わらないでほしい」と伝えるが、イワンを想うカヤの気持ちはあの頃から何も変わっていなかったのだ。

言い争いが続く中で、イワンはカヤが大事に持っている小ビンに気づく。

「おや?なんだなんだ。
まだそんなガラクタを大事に持っていたのか。」

「ガラクタとは酷いわね。
コレ、子供の頃 あなたが贈ってくれた物なのよ。」

「そうだったのか……
それより、小ビンの紐がボロボロだな。とりかえた方がいいぞ。」

「いいのよ、このままで。当時のままにしておきたいの。」

カヤが居なくなった後、イワンに話しかけると、彼は『カヤが昔の思い出にとらわれすぎている』と主人公に語る。

「美しい思い出を持つ人は、今に不満があればあるほど美しかった過去を夢見ます。
昔のことなど忘れて、カヤが考えを改めてくれれば良いのですが……。」


夫人への疑惑

コパンが毒で倒れた一件でカヤを怪しんだ名探偵チェリは、カヤ本人を直撃する。
しかし、決定的な証拠がなく、カヤを追い詰めるには至らなかった。

「あの料理にはどういう味付けがされているんですか。」
「母親秘伝の味付けよ。
それより、どうしてお前は私の言い付けを破ったの?」

「すごいお母さんですね。娘に毒の料理を教えてくれるなんて。
「な、何を言ってるのよ。
それ以上いいかげんなことを言うと、許しませんよ!」

「いいかげんなもんですか!
たぶん奥様の料理のせいで旦那様は今も寝たきりなんです。
味付けに失敗したのだって、おおかたいつもより多く毒を混ぜすぎたからじゃないんですか。」

「いいかげんにおし、チェリ!
それ以上何か言うと、屋敷から出ていってもらいますよ。」

チェリは奥様の罪を暴くための証拠が必要と考えるが、カヤ本人を自ら問い詰めた結果、カヤから強く警戒されてしまう。
そこで彼女は、主人公らに証拠を見つけてきてほしいと依頼する。

カサドール邸周辺をうろつく主人公らは、屋敷の前で突然出てきたカヤとぶつかり、彼女が落とした『ムラサキの小ビン』を拾う。
それをチェリに渡すと、彼女は小ビンの中身を確かめるため、ポルタの元を訪れる。
ポルタは小ビンの中身は毒だと断言し、確信を得たチェリは今日の晩餐でカヤとの対決を決意する。


イワンとカヤ

晩餐の少し前。
カヤは「ヒモが切れてしまった」「中身は手元にいくらでもある」などとぶつぶつ言いながら厨房で料理をしていた。
そして、最後の仕上げはひとりでやりたいからと、他の使用人を厨房から閉め出す。

晩餐の時。
カサドールは「たまには大勢で食卓を囲みたい」と、たまたま屋敷にいた主人公らを招待する。
そして食事が始まったその時、ついにチェリが声を挙げる。

お待ちください! 旦那様、そのお料理に手をつけてはなりません。
旦那様のお料理にだけ、毒が入っているのです。」

チェリは、カヤが長年カサドールの料理に毒を混ぜていたこと、カヤが落としたムラサキの小ビンがその証拠であることを告げる。
カサドールは、自身の薬が入っていると聞かされていた小ビンの中身が実は毒だと知って驚愕し、カヤを問い詰める。
カヤは「小ビンは私のものだが、中身が毒だというのはデタラメだ」と言い逃れるが、カサドールから「ならばビンの中身を飲み干して潔白を証明してほしい」と言われて黙りこくってしまう。

緊張が続く中、カサドール邸にイワンが現れる。
カサドールは「今は取り込み中だから帰れ」とイワンを突き放し、カヤも声を荒げる。

「そうよ、出ていきなさいよ。あなたには関係ないんだから。」
「いいや、あるね。
カヤに命じて、カサドールさんを病気にさせたのは俺だからな。

何を言い出すのよ!適当なことを言わないで。」

カサドールは静かに怒り、イワンとカヤにすぐに町を出ていくよう伝え、二人はその場から去る。


イワンの手紙

イワンはカサドール邸に向かう前、息子エペに手紙を残していた。
エペはその手紙を読み、居なくなった父親に思いを馳せる。

“友人が父さんのために、取り返しのつかない過ちをおかそうとしている。
今からそれを止めにいくが、その後父さんはこの町から出ていかなければならないだろう。

どうかわがままを許してほしい。
お前には今まで苦労ばかりかけて心からすまないと思っている。
母さんを リンダを不幸にしたことは、今となっては詫びようもない。

最後になるが いつまでも元気でな。

イワン”




メモリアリーフ編(ペペ&リンダ)

スライムを連れた少女

過去のリートルードから橋を渡ってたどり着いたメモリアリーフの町。
主人公らはそこで、スライムと戯れる少女・リンダとその父親と思わしき男と出会う。
主人公らを一目見て「30年ほど前に皆さんによく似た人と会った」と語るその男こそ、この町をハーブで栄えさせたペペであった。

住民の話によると、リンダはペペの実の娘ではなく、両親が亡くなり行くあてのないリンダをペペが引き取ったのだという。
ペペは独身を貫いており、お見合いも断り続けているらしい。

主人公らは「半年前まで裏山の修道院からシスターがよく町に来ていた」という話を聞き、ギュイオンヌ修道院へと向かう。


シスターベシアのハーブ

修道院へと至る山道の途中、主人公らはぼんやりと光るハーブを見つける。
近くにいたシスターの話では、このハーブはベシアというシスターが大事に育てていたものらしい。

光るハーブの近くにある小屋には、ベシアがしたためたと思われる日記が残されていた。

“夫と子供を捨ててきた私を、あなたは軽蔑するでしょうね。

だから、あなたには会えません。
でも、あなたを愛する気持ちに逆らうこともできません。

せめて、遠くからあなたを見守ることだけはお許しください。

ハーブの咲きほこるあの庭で、あなたの姿を目で追っていたあの日のように……。”


修道院にて

山頂のギュイオンヌ修道院では、シスターたちが俗世を離れて自給自足の生活をしていた。
修道院では半年ほど前にベシアというシスターが亡くなっており、どのシスターも口々にベシアとの思い出を語る。

ハーブを使った料理が得意だったこと。
メモリアリーフのハーブ園でつらそうな表情をしていたこと。
体が弱く、病に倒れたこと。
亡くなる直前、ハーブ園を見下ろせる場所に墓を作ってほしいと願ったこと。

ベシアの墓を訪れると、そこには『リンダ』という本名と、彼女が残したメッセージが刻まれていた。

“私はここにいます。
ここより永遠に あなたの庭を 見守り続けます。”


ペペとリンダ

主人公らはメモリアリーフに戻り、修道院にリンダの墓があることをペペに伝える。
ペペはそんな身近にリンダが居たことに驚き、墓を一度見てみたいと主人公らに同行を申し出る。

修道院に着くと突然、ひとりのシスターが声を荒げてペペを追い返そうとする。
納得がいかないペペは、リンダの墓を探しにどこかへ歩いていってしまう。
シスターは落ち着きを取り戻し、主人公らに静かに語る。

「つい、意地になって邪険に振る舞ってしまったけれど、悪気はなかったんです。
ただ、今になってのこのこやってきたあの人が赦せなかった。
せめてもう少し早く、ここに来てくれたなら……。」

ペペはリンダの墓の前で佇んでいた。
そこに、先程のシスターが現れ、彼に事実を伝える。

「その下に眠っているのは、紛れもなくあなたの幼馴染みのリンダです。
半年前まで彼女は確かに、この修道院で生活していました。」

「こんなに近くにいて、どうして私に会いにこないんだ。
おかしいじゃないか!」

「会わす顔がなかったのです。
家族を捨ててきた自分を彼女は恥じていました。」

ペペは、自分への想いを抱えたままリンダがこの世を去ったことを知り、あの雨の日、リンダを連れて町を出なかったことを後悔する。

「臆病な私が、君を不幸にしたんだな。
ごめんよ、リンダ。

そこまで私のことを想ってくれていたなんて、気づきもしなかった。」


評価

ダイアラックと同じく、会話のみで進行しダンジョンや戦闘がほとんどない*9ため、賛否が分かれやすい。
昼ドラとも揶揄されるドロドロした話に加え、ここのストーリー上で主人公たちは当事者でなく傍観者に過ぎないため、興味のない人には「昼ドラを見させられている」と感じる人も多いであろう。

二度の過去(グリンフレーク/リートルード)+現代にわたって展開される作り込まれたシナリオは、時間遡行を扱った秀逸なストーリーとして評価する声もあるが、本作発売当時の小~中学生のプレイヤーにはいまいち伝わらなかった感もある。



登場人物それぞれがよく言えば人間臭く、悪く言えばそれぞれが人として未熟な面を持ち合わせており身勝手な行動も多いため、その部分でも好き嫌いが分かれる。

  • 最も槍玉に挙げられるのはカヤであろう。
    カサドールの毒殺未遂はいわずもがな、自身がイワンと結ばれるためになりふり構わない姿は他の三人を差し置いて批判の的になりがち。
  • イワンは常に現実から目をそむけ、最終的には堕落とヘタレの代名詞。
  • リンダは不幸体質なため同情すべき点はあるが、イワンとの婚約を踏み倒してペペと駆け落ちしようとしたり、幼い子供を残して家を出ていった点が批判される。
  • ペペはとにかく優柔不断。

一方、
  • カヤはとっくに没落したイワンのために殺人未遂を起こすあたり、ありがちな金目当てでなく財産の損得抜きでイワンを本気で愛していた。
  • イワンはダメ人間なりにカヤを庇う行動力を見せ、息子や住民の一部からも見直された。(ダメ人間ではあっても殺人に手を染める性格ではないという程度の信頼はあったとも取れる。)
  • リンダは自身に落ち度のない所でイワンと結婚する以外の選択肢がなかった上、子どもを置いたのも修道院に連れていけなかったからとも取れる。周囲も皆リンダに同情していた。
…等の擁護意見もある。



この物語で一番の被害者はカサドール。
可愛い若妻をもらったと思ったら何の非もなく毒殺されかけ、その上全く愛されていなかったことを知ってしまい、事件後は酷く落ち込んでいる。

また、両親から取り残されたエペも被害者のひとり。
ただし彼はイワンと違ってたくましく育っており、カサドールのように意気消沈したりせず、「これからも庭師を続けるだけ」と割りきっている。

ちなみにカヤの悪事を暴いたメイドのチェリであるが、事件解決後は名探偵ごっこで仕事をサボっていた罰として、先輩メイドから大量の仕事を押し付けられてしまう。
全く仕事を手伝ってくれず怒鳴ってばかりの先輩に対し、チェリは「あんたって、悪魔みたいに性格の悪い人だったのね。」と毒づくが、先輩メイドからは「今ごろ気付いたの?あんたってホントに鈍いわね。」と返されるなど、カヤの一件とは無関係にギスギスした人間関係が垣間見える。

余談

  • 昼ドラで忘れがちだが、グリンフレークの北西には毒の沼地の中に洞窟があり、最奥にいる洞窟魔人+踊る宝石を倒さないとふしぎな石版が揃わない。
    • この洞窟魔人、何気にキーファがいるうちに戦う最後のボスである。
    • この時点ではキツイ火力のベギラマをぶっ放してくる上に、お供の踊る宝石がサポートしてくるので地味な難敵。
    • 幸いなことに敵のMPが少ないので、ガス欠に陥れば楽になる。

  • 現代のグリンフレーク地方には毒の沼地の中に立つ宿屋が存在する。
    • ストーリー上で立ち寄る必要はないものの、この宿屋にいる老人は物語の核心に触れる“神と魔王の戦い”について言及し、作中で初めて魔王の名を口にする。

  • 過去のグリンフレークの酒場には『ギャンブル好きで自由奔放・享楽的な姉』『誠実でおとなしく、水晶やタロット占いを好む妹』というモブ姉妹がいる。
    • 言うまでもなく、DQⅣに登場するモンバーバラの姉妹マーニャミネアのパロディであろう。
    • ちなみに本作の発売後、本作のシステムをベースにしたDQⅣのリメイク版がPSで発売された。

  • 家族を思うあまり『リンダと駆け落ちする』という決断ができず町から出ていったペペに対し、キーファは「俺だったら絶対に逃げ出さない」「ペペはいい人すぎるから、ああする以外なかったんだろう」と話す。
    • 実際、次の旅でキーファは【恋】と【仲間・家族】を天秤にかけ前者をとるので、ある意味有言実行してはいる。*10
    • あるいは、グリンフレークで優柔不断なペペを見届けたからこそ、キーファはユバール編でペペとは違う生き方を選んだ(=自分の気持ちに正直に生きた)のかもしれない。

  • 『早すぎたツンデレ』ことマリベル貴重なデレが見られる名台詞「あたしが死んだら、アルスはあたしのことずっと憶えててくれる?」は、このグリンフレーク編で聞くことができる。
    • タイミングとしては、リートルードの石版から橋を渡ってメモリアリーフ→ギュイオンヌ修道院に行き、リンダの墓を見届けたあたり。
    • マリベルを語る上で外せない名シーン。普段の毒舌とのギャップにドキッとしたプレイヤーも多かったと思われる。

  • 小説版ではグリンフレーク編は存在ごとカットされている。
    • まぁ主人公と無関係の昼ドラをわざわざ小説でやられても、という感じではあるが…。
    • ただし、「灰色の雨」の方はダイアラック編でしっかり触れられているため、小説版では 灰色の雨の根本原因が全く解決していない という別の問題が発生している。
    • 一方、漫画版ではグリンフレークは登場するものの主人公たちはストーリーに関与せず、あめふらしを倒したのは別の人物であり、その後の顛末も口頭で語られたのみである。


追記・修正はムラサキの小ビンの中身を飲み干してからお願いします。


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最終更新:2024年02月08日 21:26

*1 作中でキーファから『雑魚』呼ばわりされているが、実際大して強くない。なんで石化能力を戦闘でも使わないのか…

*2 ダイアラックの時と違い、灰色の雨が降った時ペペとリンダ以外の住民は屋内に居て、リンダもペペに庇われていたため、ペペ以外の住民は直接灰色の雨を浴びずに済み、天使の涙で治すことができた。

*3 この洞窟は物語と全く関係ないが、ふしぎな石版があるので必ず立ち寄る必要がある。一応、町で聞き込みをしていけば、洞窟に石版があるらしいことが推測できるようにはなっている。

*4 ただしメイドたちも追いかけられるのを楽しんでいる様子がうかがえる。うらやまけしからん

*5 タイミング的にはキーファ離脱後~メルビン加入前

*6 ハーブ園があるといつまでもペペの面影がちらつき、嫁のリンダがイワンを見てくれないからだろう。

*7 イワンとリンダの夫婦仲が上手くいかなかったことに関して、マリベルは「あの二人の結婚が上手くいってたら、この世から『失敗』という言葉がなくなるわ。」とのコメントを残している。

*8 明らかにペペへの想いが捨てられないでいるリンダの胸中が表れた名付けである。

*9 開幕のあめふらし戦や、グリンフレーク西の洞窟に一応ボスがいるが、あくまでグリンフレーク編のストーリーは魔物と無関係な人間ドラマになっている

*10 キーファはユバール編で「俺にしかできない何か」を探していたとも語っているため、離脱を決意した理由は『恋』だけではないが…