妖星ゴラス

登録日:2011/06/15(水) 00:40:19
更新日:2023/09/05 Tue 00:17:08
所要時間:約 6 分で読めます





あなたは人類滅亡級の隕石地球に衝突する映画といったらどんな映画、また解決方法を思い浮かぶだろうか?

有名な作品でいえば、『アルマゲドン』『ディープインパクト』の隕石を爆破、『地球最後の日』の抽選で当たった者による地球脱出があるだろう。


しかし、我らが変態国家日本にはもっと凄い手段で地球を天体衝突から救った映画がある。
それが1962年3月21日に公開された東宝映画「妖星ゴラス」である。




【目次】

1.【あらすじ】

ある時質量は地球の6000倍(木星20個分!!)で3/4の大きさになる移動する天体、ゴラスが発見される。
調査の結果、ゴラスは何と地球に衝突することが判明する。
対策が検討される中で、この危機を救うべく日本からある驚くべき提案がなされるのだった。
地球を移動させて衝突を回避させると


2.【概要】

本作は日本では数少ない天体衝突を描いた作品である上に、上記の手段で危機を救うSF大作である。
この地球を移動させるというアイデアは東大の教授に裏付けを頼み、なんと可能であるというお墨付きをもらっている。

怪獣や戦争映画が中心となっていた東宝特撮作品であるが、本作では天体衝突の危機や大津波等を中心にしたスペクタクルを描いた作品である。

本作では特撮スタッフもはりきり、ステージ全てに南極のセットを作り機材が入らなくなったというエピソードもある。
また、水没した東京は利根川の水中にセットを組むという手段で表現された。

科学によって地球を救うという、科学に希望を持てた時代の作品であり、
地球の危機に対しても前向きに解決しようとする姿勢が、今の時代となっては少々眩しい作品である。

本作は考証に裏打ちされたセンス・オブ・ワンダー、陽性で且つ錬られたシナリオ、充実した特撮(マグマ除く)により、
東宝特撮の中でも良作と言える作品だろう。

また、平成ゴジラ等で有名な川北紘一の初参加作品でもある。


後の『ゴジラ FINAL WARS』では、X星人から地球に迫る脅威としてゴラスの名前が出る。
X星人のでまかせと思われていたが、終盤モンスターXが偽装していた天体がDVDでは真の妖星ゴラスであるとされている。

小説は『GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ』では、2042年に地球に激突すると計算されゴジラ以上の脅威として戒厳令が敷かれていた。
人間と同様に、その脅威を感じ取ったゴジラと怪獣Мが互いに喰らい合い、勝利し、力が統合されたゴジラによって、荷電粒子砲で破壊されている。


オマージュ作品としては、山本弘の小説『地球移動作戦』がある。
こちらでは本人の作風等もあってか「地球移動作戦を世界に認めさせるまでの苦闘」が書かれたり、怪獣の代わりとしてカルト集団の妨害が起こっている。

またその前に書かれた吉岡平の『宇宙一の無責任男』シリーズのラスト3作(「無責任大統領タイラー」・「風速四十光年」・「永遠なれ無責任男」)では、
「銀河を次々飲み干す移動ブラックホール」に対して「銀河ごとワープして逃げる」という本作をイメージしたらしき解決案がとられている(ここでも敵はカルト集団)。 

原ゆたかによる児童書『かいけつゾロリ ちきゅうさいごの日』では本作と同様の方法で隕石を回避した。
実際は結果オーライなのだが、その奇跡を起こしたものは……ゾロリなのでお察しください。


3.【登場人物】

◆田沢博士(演:池部良)
地球の危機に対して地球の移動で回避するという方法を提案した人。
少々やる気なさげな池部良氏の淡々とした演技が、冷静さと堂々さを醸し出しており、危機なのに何となく安心出来る。

◆金井達麿(演:久保明)
ゴラス調査に向かった宇宙船鳳号の船員。
ゴラスに接近した際にショックで記憶を失う。

◆園田雷蔵(演:田崎潤)
宇宙船隼号の船長。最初にゴラス近付き、正確のデータを測定するために接近し過ぎたために犠牲となった。

◆園田博士(演:志村喬)
生物学の博士。マグマ出現にワクワクしていた。


4.【登場メカ・怪獣】

◆隼号
当初は宇宙観測のために打ち上げられた日本の宇宙船。ゴラス発見に伴いゴラス観測をし、地球に貴重なデータを残した。
ゴラスに接近し過ぎたために犠牲となった。

◆鳳号
ゴラス観測のために打ち上げられた宇宙船。こちらは任務を果たし帰還した。
船長役に平田昭彦氏、副長役には佐原健二が起用されている。

◆VTOL機
国連所属の飛行機。マグマ出現に際し調査と撃退を行った。強力なレーザー攻撃が可能。
本機の木型は『ウルトラマン』のジェットビートルでも使われた。

◆ジェットパイプ基地
南極に作られた地球移動の為の切り札。海水から得られる水素を利用したジェット推進により地球を移動させる。
世界中が協力しての突貫工事で建設され、途中では様々な事故やマグマ出現に困らされた。

プロパンガスを利用してジェットの表現が行われ、風の影響を受けないように屋内撮影をした所、撮影所が蒸し風呂状態になったとのこと。


◆南極怪獣マグマ

身長:50メートル
体重:2万5千トン

南極に基地が建設され、ジェットパイプが起動した後の熱で目覚めた怪獣。
巨大なトドかなんかにしか見えないが爬虫類である。
ジェットパイプ基地を襲い、地球移動の行程を大幅に遅らせる。VTOL機のレーザー攻撃で倒された。

本作最大の蛇足であり、批評家からの評判も悪く、海外での公開ではカットされている。
なんでこんなものが入ってしまったかというと、クランクアップ前に東宝上層部の「円谷特撮なら怪獣でしょ」の声で無理やりねじ込まれたため。
本多監督は反対していたそうである(出すと決まってからは積極的に関わっているが、登場自体は後年のインタビューにおいて、本作について「南極であの動物さえ出なかったら、自分でも一番好きな作品」とコメントしている)。

本作から特撮現場に参加した川北紘一によると、このマグマと志村らが絡む一連のシーンは、本編監督の本多ではなく、円谷が演出を行ったそうである。
頭部造形は利光貞三、胴体は八木寛寿、八木康栄による。スーツアクターは手塚勝巳、中島春雄。
体色は褐色系、目は電飾で青色に発光する。ジェットパイプの炎が燃え移るのを防ぐため防火剤が塗られている。
2尺サイズのギニョールモデルも用意され、細かい動きはこちらでこなしている。ギニョール操作者は造形スタッフの開米栄三。

特殊美術スタッフだった村瀬継蔵は、このマグマの牙の素材に、本邦で初めて「ポリ樹脂」を使用し、それまで表現できなかった鋭さを実現している。
特技監督の円谷は「どこでそんな象牙見つけてきたんだ?」と驚き、新素材によるものであることを説明され、大喜びしたそうである。

そんなこんなで天下の円谷英二が本気で作っただけに無駄に特撮の出来が良く、映画の出来と切り離したところではそれなりに人気がある。

準備稿では単に「恐龍」と記されており、爬虫類という設定はその名残と言われている。
着ぐるみは『ウルトラQ』のトドラに流用された*1。『怪獣総進撃』にも当初は登場予定だった。

東宝オールスターバトルロワイヤル小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では2024年に北朝鮮に出現。
北朝鮮を徹底的に蹂躙して滅ぼした後、韓国・ソウルに進撃。合衆国が在韓邦人の保護を理由に戦術核の使用に踏み切る事態を招いてしまった。
最終的には戦術核行使によって殲滅された模様。


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最終更新:2023年09月05日 00:17

*1 ちなみにトドラも当初は怪獣の登場予定がなかったところを急遽登場が決められた。