SCP-2305

登録日: 2017/01/07 Sat 14:20:03
更新日:2024/04/15 Mon 01:38:21
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SCP-2305はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)のひとつ。
項目名は『great ideas that are TOTALY USELESS (lulz) (名案が完前に役に立たなかった件についてwww)』*1。この時点でもうロクなものでないのはお分かりだろう。





概要

まずコイツが何なのかというと、ホチキスで止められたレターサイズの紙束である。
表紙には黒の油性ペンで「名案が完前に役に立たなかった件についてwww」とタイトルが記され、その下には財団のマークが雑な手書きで描かれている。
誤字といいタイトルといい、財団をコケにしたような冊子だが、少なくともその内容とマークからして、財団関係者、あるいは財団を知る何者かが記した可能性が高い。

このオブジェクトの内容はSCP-2305-Aと区分されており、週に1回内容が変化する。
その形式は標準的な財団の文書テンプレートに従ったものであり、最低でもレベル4クリアランス職員によって記されたものだとされている。
その内容が何かというと、財団の収容するEuclidまたはKeterに分類されたオブジェクトの無力化の方法である。

しかしハッキリ言おう。タイトルの時点でバレバレだが、この方法、全く役に立たない。どころか逆効果になる。
この提示された方法、すなわちSCP-2305-A実例は常にこのような記述を含んでいる。

  1. オブジェクトの識別ナンバー。
  2. そのオブジェクトを無力化するために実行可能と思われる方法。基本的には、どのように・いつ・どこで無力化を行うかが非常に詳細に記述されるが、オブジェクトの選択は完全ランダム。また一時的にSafe分類しても選択される。
  3. 記載した方法での無力化事案報告書。全てのケースにおいてこれは完全な失敗に終わるか、裏目に出る。
  4. “このお話の教訓”と題された簡潔な段落。の試みに対する論評から、歴史上の名言、ポップカルチャーへの言及、あげくSCP財団への侮辱まで色々。

コイツ自体はただの文書であり現実には影響しないので、保管庫に置いておき、定期的に実例を書き写して記録するという簡素なプロトコルが組まれている。
ただし、提示された無力化方法は完全に架空のものだが、実行すると同様の流れで必ず失敗する。ならば書かれている方法を修正すればどうだ、と財団は改竄を試みたがこれも失敗。
結局、コイツのもたらす情報は財団にとってよくて無益、普通は有害、最悪はKクラスシナリオのトリガーでしかないため、実験は推奨されていない。




SCP-2035-A実例

オブジェクトそのものについては以上が全てで、特にセキュリティクリアランス制限もかけられていない。
こうなると注目は、コイツが提示した無力化方法とそれがたどる経緯である。こっちには一部にレベル3クリアランスが要求される。
それら、SCP-2035-A実例のいくつかをここから紹介する。ちなみに、あくまで記されているだけであり、財団によって本当に実行されたわけではないので注意。


実例その1
アイテムナンバー:SCP-499「年老いた太陽の男」
オブジェクト概要:太陽と動きが連動する金属球と、48時間かけてそれを押して動かす老人
オブジェクトクラス:Euclid
提言された方法:老人を終了し、機械で金属球を動かす
その結果:世界中が「太陽が動いていない」と認識。昼と夜は変わらず、太陽と地球の関係は変わっていないが、太陽は不変不動と認識され、カバーストーリーは効果なし。
教訓:偽りの心がたくらんだことを、偽りの目が隠すのだ。

実例その2
アイテムナンバー:SCP-1032「終結時計」
オブジェクト概要:ものやことの名を記した22本の針を持つ目ざまし時計。12時を針がさすと、書かれているものやことが終了、別のものやことが書かれる
オブジェクトクラス:Safeを経て現在Euclid
提言された方法:現実歪曲により針を遅延させ、12時を差せないようにする
その結果:針が加速。「宇宙」と「SCP財団」が書かれた針に何か起きた模様。
教訓:Sic transit mundus / 世は斯くの如く移り変わる。

実例その3
アイテムナンバー:SCP-2740「そこにはない」
オブジェクトクラス:Euclid
オブジェクト概要:インディアナ州のリー家の屋根裏。近づくことが不可能であり、無力化や接近を試みても実際には行われない。また影響を受けた人物の存在も忘れられる。
提言された方法:詳細不明。試行についてまとめた結果、これが表記されていた時のSCP-2305は500ページを超えた。オブジェクト特性に従い、これらの試みについては記録されていない=行われていない。
その結果:N/A。観測不能。
教訓:おこなの?

実例その4
アイテムナンバー:SCP-139「あるいは白きディヴの頭蓋」
オブジェクトクラス:Keter
オブジェクト概要:狂気を発生させる頭蓋骨。おそらくダエーバイト文明の誰かの遺骸。
提言された方法:焼却処分する。
その結果:生前の姿となったダエーバイトの軍師「白のセピド」に続き、ダエーバイト文明が復活し世界を支配。SCP-2131「反物質教皇」が逃亡、世界オカルト連合と結託して独裁を開始。さらにカルキスト・イオンが現れサーキック・カルトがダエーバイトへの抵抗運動を開始。財団はこれら三者から狩り立てられている。
教訓:火で殺しても別にいいけれど、不死鳥は火から生まれることをお忘れなく。

実例その5:
アイテムナンバー:SCP-946「公開討論」
オブジェクトクラス:Euclid
オブジェクト概要:向かい合った椅子一組&机と、不定期に表れて討論を続ける男性二人。討論の結果は現実を改変する
提言された方法:説得によって討論をやめさせる
その結果:討論による以前の変化が全てリセット。結果CK-クラス再構築支配シナリオが発生。
教訓:変化はいいことです。変化を受け入れましょう。

実例その6:
アイテムナンバー:SCP-2935「あゝ死よ」
オブジェクトクラス:Keter
オブジェクト概要:死に汚染された入れ子式の異世界とそこに続くトンネル。
提言された方法:不明。前半10ページが空白。
その結果:番号を振られた「ケラーは帰ってきた」というフレーズのみで構成され、さらに各フレーズの提案は他のフレーズと無関係に、長期間にわたり記述されている。
教訓:かかわるな。マジで。

実例その7:
アイテムナンバー:SCP-2513「ともあれ、カルタゴ滅ぶべし」
オブジェクトクラス:Euclid
オブジェクト概要:南から北へ渡ると、カルタゴへの憎悪の念を引き起こす。
提言された方法:爆弾で爆破。
その結果:特性がイタリア全土の橋に拡散。大規模な反カルタゴヒステリーが起き、イタリアはチュニジアに宣戦布告。隠蔽は間に合わず、地政学的混乱が発生。
教訓:Et tu, Foundation? / 財団よ、お前もか。


とまあ、ここまでは「やったらマズいだろ」と言うのが見てわかる。
が、財団に「絶対コイツの提案は実行しねえからな!?」と思わせる決め手となっただろう、とんでもねー内容があった。
それは、SCP-2123「紙一重の宇宙」の無力化提言である。

このオブジェクトについて簡単に説明すると、アメリカにある大型の粒子加速装置である。ただしこの装置、二週間の周期で動作イベントを起こし、それに伴い物質→反物質、反物質→物質へのCP変換を繰り返している。
要するに、YK-クラス・再構築シナリオを2週間周期で起こしていると考えればいい。実際、ある博士が死亡した際には過去改変が起きたことが示唆されている。
下手をすれば宇宙自体が消えてなくなる、というこれに対して、SCP-2305は何を提言したのか?
そしてそうするとどうなるのか?
結果はこれである。

アイテムナンバー:SCP-2123「紙一重の宇宙」
オブジェクトクラス:Keter
オブジェクト概要:定期的に物質⇔反物質のCP変換を起こす大型粒子加速器。
提言された方法:全電源を停止し、原子力によらない爆破により電磁石を破壊。
その結果:爆発的ガンマ線バーストが発生。それは宇宙の至る所に広がり、高レベルの物質/反物質対消滅が発生したと考えられる。これによってSCP-1548「きらいきらい星」、SCP-736「ヤペタスの異変」、SCP-2631「標準収容惑星」、SCP-2092「宇宙の謎かけ」、SCP-2399「故障中の宇宙戦艦」、SCP-2722「SCPS 団結号」、SCP-2460「暗黒衛星」、SCP-319-2「奇怪な機械」がビリヤード方式で連鎖的に暴走、地球は消滅し宇宙のエネルギーは低下。しかし、SCP-2700「テレフォース」が活性化したことで地球付近で宇宙が再生した。
教訓:みんな君達のことが大嫌いなんだ。みんなが。

KeterのオンパレードによるYK-クラス:再構築シナリオである。
そりゃ、こんなもんが書かれてたら実行する気も失せるだろう……。


ところが、手遅れだった事例が一つ。
SCP-2282「ヤギ。」の無力化提言なのだが……。

アイテムナンバー:SCP-2282「ヤギ。」
オブジェクトクラス:Euclid→Neutralized
オブジェクト概要:餌を食べる時に周囲の空間ごと食べており、消化器官が非ユークリッド空間と化して広がっているヤギ
提言された方法:自然死する前に安楽死させる。
その結果:オブジェクトの終了と同時に、体内の非ユークリッド空間が拡張して空間を占拠・歪曲。それらの影響について、巻き込まれた博士らの家族の悲嘆の声や、生産性の低下、そして悪臭の被害などに及び詳細に記録されている。
教訓:おっと、君たちはもうこれはやった後だったっけ。ワロス。

元記事を見ていただければわかるだろうが、財団はよりによってこの方法でSCP-2282を終了してしまっていた。
当然結果はこの提言通りの悲惨なもの。
やっぱこの「名案」は役に立たない、ということと、明らかにこの冊子は知性を持っていることがわかる。


さらに、とんでもないのが一つ。

アイテムナンバー:SCP-2950「ただの椅子」
オブジェクトクラス:Keter
オブジェクト概要:自身に関するミームの内容に従って姿と性質を変える何か。現在は座ることに執着する以外はただの椅子だが、歴代のO5-6だけは真実を知っている
提言された方法:現在の姿の写真を取り、「これは椅子ではない。何も存在しない」とキャプションをつけてネットにアップロード。「何もない」というミームを拡散させて消滅させる。
その結果:人気のあるインターネットミームとなったが、同じ画像に「これは椅子ではない。これは神である」というキャプションとピーテル・デ・グレッベルの絵画作品「父なる神」の画像がついたバージョンが出現。そちらの方が流行してしまった結果ミーム内容が変質、SCP-2950は神となり、YK-クラス:主観的現実再構成シナリオが発生した。
教訓:百聞は一見にしかず。

O5-6以外は決して知ってはならないトンデモオブジェクトの本質を示唆する内容である。しかも秘匿されている真のオブジェクトクラスが明記。
一体この冊子、本当に何なのだろうか……。


追記・修正は名案を思い付いてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2305 - great ideas that are TOTALY USELESS (lulz)
by ObserverSeptember
http://www.scp-wiki.net/scp-2305
http://ja.scp-wiki.net/scp-2305

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最終更新:2024年04月15日 01:38

*1 原文ママ。