エネミー・ゼロ

登録日:2016/11/28 Mon 20:34:34
更新日:2024/04/09 Tue 17:24:47
所要時間:約 5 分で読めます





■エネミー・ゼロ


『エネミー・ゼロ』は、96年12月に発売されたプレイステーションセガサターン用アドベンチャーゲーム。
“E0”とも表記されている。
ジャンルはインタラクティブ・シネマとされており確かにスキップすら許されない長いムービーを見せられ続けるが、プレイ的にはFPS視点によるアクションパートが主体となる。
企画、開発は『Dの食卓』のヒットで注目されていた株式会社ワープ。
60万本を売り上げたとされる。

脚本とゲームデザインは社長でもある飯野賢治だが、あからさまに某有名映画を彷彿とさせる設定や演出を採用しつつも、インタビューでそれらの疑惑「知らない」と答えてしまった事については多くの批判が集まった。

ゲームとしての出来は“かなり良い”のだが、意図的に調整された難易度の高さと、前述のパクり有名作品や過去作品を意識せざるを得ないといった要素からか、ゲームとしての評価は厳しい目で見られがちである。

事実、廉価版となるサターンコレクション(サタコレ)や、移植版となるPC版(Windows95/98対応)では、後に発売される程に難易度が緩められている

音楽は世界的なピアノ演奏家にして作曲家のマイケル・ナイマンが担当している。
これは、飯野自身が6時間もかけて説得した事で実現したとの逸話が伝わる。
ゲーム中は基本的に無音だが、OPやEDの他、印象的な場面で流れる楽曲は人気が高い。ミスマッチな使い方をされているものもあるが。

【解説】

『Dの食卓』で注目されたワープ。……と云うよりは、時代の寵児となっていた飯野賢治の名前を前面に押し出した次なる作品として注目された。
当初は3D処理能力に優れたPSでの販売を企画されていたが、PSでの『Dの食卓』移植版の希望出荷本数を呑んでくれなかった事に端を発するいざこざから、SCE主宰のPSエキスポでの発表時にSSへの鞍替えを報告すると云う、過去に類を見ない型破りな宣伝を行ったことで語り継がれる。

3D処理能力に劣るとされるサターンでの発売ながら、レンタリングムービーを繋ぎ合わせてキャラクターの演技部分を見せる、と云う手法で描かれた映像美は現在の視点から見ても充分に驚嘆すべきものがある。まだまだカクカクではあるけれど味があっていいじゃない。

一方、ゲームの内容は勿論、シナリオ的にも某映画そのまんまだったり、エネミーのキャラクターが某映画的だったり、他にも有名映画的な要素が垣間見られる事については多くのツッコミ厳しい意見も寄せられた。*1

ゲームの難易度は前述の様に極めて高く、特に敵の姿を視認できずに音のみで距離や方向を探らねばならない要素は、否が応にもプレイヤーの緊張を高める演出として高く評価された。

ただし、この演出も前述の某映画での演出やゲームとしてもデコことデータイーストがPCエンジンで発売した『サイレントデバッガーズ』*2と云う先駆者が居り、同ゲームのシステムについては飯野も参考にしたことを認めている。

とは云え、本作の映像美と演出が見せる独自の空気感は紛れもなく本作のみのもので体験出来るものであることは否定のできない部分である。

難易度については、前述の視えないと云う要素よりも、使用する銃の弾数が少ないというか無駄弾を射つ余裕が全く無い事やセーブとロードに厳しい制限がある事の方にある。

セーブ条件はこの手のシステムを採用する中でもとりわけ厳しく、挙げ句にやり直しにすら条件を付けた仕様については“やり過ぎ”との意見が多い。
喩え難易度が高くても、死んだ場面からやり直せたり、お気に入りのセーブデータをロード出来る仕様であったならば今程の批判を受けなかったのでは無いかと思われるのだが……。
これらがまさに、後の廉価版と移植版に条件を緩められた部分である。

【物語】

任務を終えて地球に帰還する途中の大型宇宙船“ヴィークル・ジ・アキ” ……しかし、船内で突然緊急事態が発生。
ローラら乗組員はコールド・スリープから強制的に目覚めさせられる。
乗務員のパーカーと通信を試みるローラだが、音声の回線が不調なのか端末には映像しか映し出されない。
突然、パーカーの部屋のドアが吹き飛ばされる。
なにかに怯えるように銃を構え、発砲するパーカーだが、その銃口の先には何も居ない……だが、次の瞬間“姿の見えない敵”に首をもぎ取られてパーカーは死んでしまう。

混乱したローラは他の乗務員とも連絡を取ろうとするが、回線が不調等パスワード掛けられてたり、イジメられてアクセス拒否られてるとかの理由で連絡が取れない。
……パーカーの状況を確認するため、ローラは勇気を持って外に飛び出していく……!

【登場人物】

■ローラ・ルイス(声:駒塚由衣)
■キンバリー・ハード(声:幸田直子)
■パーカー
■マーカス
■デヴィッド・バーナード(声:大塚明夫)
■高橋・ジョージ(声:大塚芳忠)
■ロニー(声:玄田哲章)

※『Dの食卓』とは違い、殆どのキャラクターに豪華声優が付いた。
演じているのは洋画吹き替えでも主役級を務める役者ばかりの為、本家リ○リーとサ○・コナーが共演し、エイ○アンの代わりに○レデターが襲いかかって第三次世界大戦が勃発……と云うには地味な雰囲気ながら、演者は素晴らしいの一言である。言うまでも無いが。
尚、ローラ同様に本作に登場したキャラクターと演者の殆どは次回作となる『Dの食卓2』にも役柄を変えて登場している。

【用語解説】


■ヴィークル・ジ・アキ
ゲームの舞台となる宇宙船。
見た目も機能的にも心臓がモチーフ(直喩)

■VPS
VEXX Positioning System=生体探知器の略。
「音」の間隔と音階の高さで敵の存在を知らせる装置。
イヤリングのような形をしており、使用者の耳に装着して使用する。
ピン……ピン…ピンピンピンピン…ピンピンピンピンピンピンピピピピピピピピ
左右の区別が付かないのでプレイヤーの判断力が物を云う。

■ボイスレコーダー
状況を記録する事が出来るが、セーブばかりか、ロードをするのにもレコーダーのバッテリー残量が減っていく。
バッテリー残量が無くなると、そのデータはセーブもロードもできなくなってしまう。
難易度を高くするとバッテリーも当然のように減らされる。

■エネルギー銃
エネルギーを溜めなければ射てず、溜めすぎても射てなくなる素敵仕様。
進行に応じて幾つか持ち替えることになるが、総じて射程距離がかなり短い上に、敵の移動速度も存外に速い為に扱いにはコツが必要となる。
更に、難易度がノーマル以上だと入手直後のエネルギー残量が0の為に充電するまで使えないのが基本。
更に更に、フル状態でも弾数は少なく、僅か1発しか射てない銃まである。
一応、最終盤には弾数無制限の銃も登場するがその頃には周囲の状況が……。

■エネミー
“ヴィークル・ジ・アキ”で兵器としての利用の為に輸送中だった謎の生物。
極めて狂暴で攻撃的。
姿が見えないのが最大の脅威だが、幼体には擬態能力が無いのか姿が見える。
因みに、倒した瞬間薄っぺらい雑なポリゴンでしか姿が解らないのが勿体無いが、エネミーのデザイン原案は数々の特撮作品やゲーム等のクリーチャーデザインで人気を博した韮沢靖によるものである。
元々は肉体の一部を欠損したエネミーが、その部分を補うべく人間を襲うという設定だったらしく、設定画で見ることが出来る。

【余談】

  • 発表時の衝撃的な販売ハード変更宣言で業界に伝説を作った『エネミー・ゼロ』だが、
もう一つの伝説となっているのが、電話のみの受注販売で20個のみが売り出された『20万円限定BOX』である。*3

現在でも限定版は何か知らんが無闇に購買欲を掻き立てられる売り方ではあるが、税込20万6000円(消費税3%込み:96年当時)と云う値段設定は流石に類を見ない。
尚、この限定版は飯野賢治自身が数名のスタッフと共にレンタルした2tトラックにブツを乗せて、直接購入者の家まで来て直接手渡されたとの事。

既にバブルも弾けてた時代に景気のいい話だが、雑誌にその時の写真が掲載されていたにもかかわらず、都市伝説的に語られる事もあったらしい。
……とは云え、ネットの普及に伴い当時の購入者がブログに品物と共に当時の購入の思い出を綴っていたりするので興味をもったら覗いてみよう。




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最終更新:2024年04月09日 17:24

*1 ※ただし、こうした例は国内外に多く見られる為、批判の大部分は参考にしたことを否定するような意見を述べた事についてではなかったかと思われる。

*2 ※宇宙船内の3D方式のダンジョンを歩き、音を頼りにモンスターを射つ。

*3 ※文字通り木箱に入っている。