マペット放送局

登録日:2016/10/17 (月) 16:57:00
更新日:2023/05/24 Wed 08:25:48
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マペット放送局(原題:Muppets tonight!)とは、ジム・ヘンソン・プロダクションが1996年に制作した全22話の人形劇である。
日本ではNHK教育テレビジョンにおいて1997年から1998年にかけて、土曜日の夕方18:50から19:15に放送された。


概要

日本でもセサミ・ストリートで有名なカエルのカーミットを始め、ジム・ヘンソンの生み出したマペットたちが多数出演しており、
カーミットメインの70年代番組『マペット・ショー』のマペット陣(野生系ドラマーアニマル、熊のコメディアンフォジー等)も複数続投している。ちなみにマペットMCに人間ゲストのショー番組も『マペット・ショー』からだったり。

本作はマペット達が運営しているテレビ局が舞台という設定で、彼らが制作しているという設定の番組を流すパートに、楽屋や編集風景、局内の守衛室や食堂といった舞台裏で繰り広げられるパート、
さらにはCMや、この放送局の番組を見ている視聴者の様子を描いたパートなどが挿入される。
番組はまともに進行することはほとんどなく、一部の出演者の暴走などでカオスな展開になることが多い。
また出演者のギャラが足りないのか、局の警備員や食堂のシェフなどまでが度々番組出演者に駆り出される。
なのに作中ではなぜか毎回50パーセントを超える視聴率を叩き出している。

そして大きな特徴は毎回のゲストが豪華すぎるということで、アメリカの著名な俳優・ミュージシャン・コメディアン・ジャーナリスト・スポーツ選手らが顔出しで多数出演し、マペットたちと一緒にドタバタ劇を演じる。
またネタとしてはアメリカの映画やドラマ、洋楽のパロディがかなりの部分を占めており、ゲストにちなんだセルフパロディや自虐ギャグが出ることも多い。
果ては80年代の公式ほのぼの(?)アニメ『マペット・ベビー』と90年代の人気実写ドラマ『となりのサインフェルド』を悪魔合体した人形劇『Seinfeld babies』(サンドラ・ブロック回)等というネタまで行われた。
日本では時間帯的にも「子供向け番組」として放送されたと思われるのだが、ぶっちゃけ平均的な日本の子供であれば絶対に理解不能なネタも多い。
一応、ゲストの登場時には字幕で経歴が紹介されるという配慮はなされた。
また、日本語吹き替え版の声優が大塚芳忠、高木渉石田彰緒方賢一などやたら豪華である。

一言でいえば、NHK教育史上でも最もカオスな番組の1つである。


日本語吹き替え版のみならず、アメリカでもソフト化はされていない。
肖像権の問題を考えると、今後も難しそうである。
一方、現在YouTubeのジム・ヘンソン・プロダクションでは事実上の続編と言える「MuppetsStudio」というチャンネルが開設されている(現在は「The Muppets」)。
「マペット放送局」ではテレビを見ている視聴者役だった老人2人(スタットラーとウォルドーフ)がこちらではPCでYouTubeを見ているなど、ファンならニヤリとできる要素が満載。
そして2015~16年、現在カーミットら多数のマペットの権利を持つディズニーがカーミット・ピギーメインの新作テレビ番組『The Muppets』(全16話)を制作・放送した*1


主な登場キャラ(マペット)

本作に登場したマペットは他のジム・ヘンソン・プロダクション作品にも登場しており、全体的なグループブランド名は「The Muppets(ザ・マペッツ)」。
日本語版が制作された作品では『マペットのオズの魔法使い』・2021年10月から「Disney+」で配信開始した『マペットのホーンテッドマンション』で本作と同じ吹替キャストが再起用されている(カーミットのみNHK版セサミの真殿光昭)。


マペット・ショー組

『マペット・ショー』の時代からの常連マペット達。

  • カーミット(声:安原義人)

カエル。故ジム・ヘンソンが最初に生み出し、ハリウッドにプレートを持つスーパーマペット。
毎回のオープニングの挨拶を担当している。
局内のリーダー的存在のようだが、毎回のカオスな展開に頭を抱えている。


  • ミス・ピギー(声:小形満)

ブタ。『マペット・ショー』から登場している古株マペットの一人でカーミットの彼女*2。中の人が男だって?原語版もそうだから気にするな*3
モンローっぽいポーズが好きな女優であり、局内の多くの番組に出演している。
やや自意識過剰で自己本位的な部分はあるが、局内ではわりとまともな部類であり、無茶苦茶な番組企画などに対してツッコむことも多い。
体重はかなり重いらしく無重力空間においても体が浮かないほどである。
ちなみに彼女、後に『フィニアスとファーブのトークしまショー』にも実写スターに交じって(吹き替え担当の人も込みで)出演。1984年・2018年の『マペット・ベビー』では他キャラ共々愛らしい幼児となった(中の人も女性に)。
また日本語吹き替え版の声の人は2020年のウェブ配信番組『マペット大集合!』やDisney+配信版『マペット・ムービー』でもピギーを演じている。


  • ゴンゾ(声:塩屋浩三)

グレート・ゴンゾとも。種族不明長鼻マペット*4
番組中では大砲の弾を受け止めるスタントショー等よく体を張っており、
ある回では趣味が人間大砲なのを生かし(?)、訓練されたリボン&唇付き砲弾を指揮し音楽「若き砲弾達」としてリズミカルに大砲5門を乱射。トリガーハッピー状態で人々を打ちのめした*5(オチで自分にも当たった)。


  • サム・イーグル(声:水野龍司)

鷹。
政治討論番組の司会者を担当しており、性格がぶっ飛んだ連中の多い局内でも屈指のまともなキャラである。
ある回で語った「現代社会におけるヒーローの不在」「手本となる人物がいないからこそ若い世代がろくでなしになる」という論説は、この番組には不似合いなほど考えさせられる指摘であった。
しかし討論に呼ぶゲストが毎回暴走したり放送事故レベルの言動を働いたりと、まともな議論にならずに終了する。
ランディとアンディやボーボーを討論ゲストに呼ぶこいつの人選も相当に問題だが。


  • ドクターブンセン・ハニーデュー(声:江原正士)
眼鏡坊主頭(但し眼鏡の影が目替わり)マッドサイエンティスト。
ビーカー(声:小形満)という「ミ」としか喋らないのっぽの助手がいる。
マッドサイエンティストらしく時にゲストをも巻き込む実験や発明を手掛けるが「ハイパーレーザー銃『死の綿棒』」などネーミング的にも性能的にも危険なモノを大量に抱えている。
ある時はフィアマとサルの前でモヒカンロッカーコスを見せた後、サルに連れられ『プリティ・ウーマン』の替え歌『プリティ・ブンゼン』に乗せて肉体美やコスプレも披露し、
女優アンディ・マクダウェルとのクルージングドラマでは彼女に眼鏡も外され目隠しされボートを島に激突爆破させた。


  • リゾ(声:石野竜三)
ネズミ。
ADを務めているが、総集編回ではうっかり録画ビデオをカールに喰われてしまい、ゴンゾと共に総集編ビデオを創ることに。


  • スタトラーとウォルドーフ(声:北村弘一、西川幾雄)
髭の爺さんといかつそうな爺さん。
いつもテレビでマペット放送局を見ては皮肉を交えた感想などを述べている。




本作メイン組

本作初登場組の他未翻訳作品で先行登場していた面子も含めるが、主に本作で活躍する面々。

  • クリフォード(声:落合弘治)

本番組の司会者。ドレッドヘアー等ヒップホップ系な姿が特徴的。
毎回OPで踊ったりゲスト紹介等をしており、ノリ優先タイプだがこれでもポジション的にはまともな方で、番組内でもカオスな展開に呆れたり、暴走する出演者を諌めたりしている。
ちなみに吹き替え担当はNHK版エルモ(原語版でもエルモと同じ)だが、キャラがキャラなのでブルブラックに近い声である。また『マペット大集合!』では『マペット・ショー』のキャラ「スクーター」の声を吹き替えている。


  • ランディとアンディ(声:石黒久也、荒川太郎)

双子の豚。
AD的な立場であると思われるが、番組にも度々出演する。
だがバカすぎて毎回のように番組を崩壊させる。
ゲストの女優に目から発射されたビームで焼き殺されたこともある。


  • ドクターフィル・バンニューター(声:北村弘一)

マッドサイエンティスト。優しい獣医さん(自称)。
一応それなりの技術力は持っているらしく、事故死したゲストを蘇生させようとしたことがある。
「ドクターフィルの世にも恐ろしい恐怖の実験室」というホラー(?)番組を担当している。
マルチという名前のメイドロボ……じゃなくてフランケンシュタイン似の助手がいる*6
薄暗い実験室に並べられた怪しげな実験機器や、檻に入れられた得体の知れない生物など、見た目こそ一応ホラー番組っぽく作られているが、この手のネタのお約束として「恐怖の」と言いながら全然怖くない番組。それどころか当のドクターフィルが雷のエフェクトに対して「怖いじゃないの」と驚く描写さえある。
「恐ろしい映像」と称して全然怖くない話や馬鹿馬鹿しい話*7を流す、などはまだいいほうで、クリスマスパーティのビデオを流したり*8、妻との馴れ初め話や番組演出の裏話に丸々1話を使ったりと、しょっぱなから話題が明後日の方向にズレていくことも多々ある。
こんな内容なせいか、シーズン終盤にはクリフォードから「恐怖の実験室も段々ワケわかんなくなってきた」と呆れられてしまっていた。


  • ボーボー(声:塩屋浩三)

クマ。
局の守衛であり、普段は出入り口を警備しているのだが、たまに番組に出演することもある。
吹き替え版の元プリンス回では2ch文化の浸透前に「おいらは今そんなギャグじゃ笑わないクマー」と発言したことがある。


  • ジョニー・フィアマ(声:大塚芳忠)

人間。
人気タレントであり(モデルはフランク・シナトラ)、司会者や歌手として活躍している他自前のショーパブも経営している(火事で焼けた)。
ただし彼の担当コーナーは人気が無く、新聞で批判されているらしい。
付き人(猿)であるサルの問題行動にはいつも頭を抱えている。


  • サル・ミネラ(声:高木渉)

チンパンジー。ややこしいが「サル(Sal)」という名前の猿である。
本作ではフィアマの付き人(猿)として登場。
口は非常に悪く、フィアマに対してもタメ口な上に誰彼構わず暴言や暴力を振るうトンデモエテ公。
ただし非常時(「若き砲弾達」)には身を挺してフィアマを庇う等の忠誠心を見せており、ジョニーも「大切な右腕」「付き人の鏡」と述べている。


  • ペペ(声:高木渉)
スペイン系のエビ。ちなみに設定上の本名は「Pepino Rodrigo Serrano Gonzales」でキャラ通称は「Pepe the King Prawn」(クルマエビのペペ)。長い。
局の食堂の料理人だが、なぜかコック仲間のシーモア(ゾウ、声:後藤敦)と漫才コンビを組んでいる。
本作の後も割とミス・ピギーら古参組に次いでフィーチャーされることが多めで、古参組共々公式Twitterも存在
2019年にはカーミットとコンビを組み、ピギー・ビーカーコンビと3次元のラップ番組で対決しており、2020年の『マペット大集合!』にも出演している(吹き替えキャストは別の人)。


  • カール(声:大川透)

おばけウサギ
…と言う設定だが、その見た目は灰色の毛むくじゃらで巨大な人食い鬼にしか見えない。もはやかわいさのかけらもない。
そもそも原語版では「green shaggy monster」…つまり怪物扱いであり、見た目のとらえ方は間違ってはいない*9
ゲストや局員を日常的に捕食している。なにやってんだ警備員(ボーボー)
さらに「素早く答えろ」というクイズ番組に罰ゲーム執行役として出演している。
これはゲスト回答者が制限時間内に正答できなかった場合、罰ゲームとして回答者と全く関係ないキャラが回答者の目の前でカールに食われるという過酷極まりない番組である。しかも視聴率も正解率も悪いらしい。


主なゲスト


  • ミシェル・ファイファー

かつて猫コス怪盗になった経験を持ち、後に初代ワスプとなる女優。第一話のゲスト。
ミス・ピギーとヒロインの座を巡って争う
美人の無駄遣い。男共による告白合戦出場者がブンゼン・ビーカー・すぐ暴れるドラマーアニマルという時点でお察し。


  • ピアース・ブロスナン

五代目ジェームズ・ボンド役で有名な俳優。
アバンタイトルではブンゼンの実験室に招かれ、ちょっとした発明品実験に参加(結果ビーカーの白衣が爆発)。
カーミットとの会話中うっかりブンセン謹製の死の綿棒(ハイパワーレーザー銃)を使ってしまい、幸い本人の頭には被害が出なかったが、耳穴を通して頭を貫通した光線でボーボーが行水中の部屋の壁に穴をあけた。
ノリがいいのか普通にコントな世界に付き合っていたが、クライマックスでは局がロブスターのテロリストたちに占拠されてしまい、
フォジーらの頼みとブンゼンからの装備提供を受け、自らロブスターの着ぐるみを着てテロ集団に潜入し、その姿のまま全員をぶちのめす(処刑用BGM:フィアマの生歌)という「どうしてこうなった」というような映像が繰り広げられた。
特に日本では本番組でも最も有名なエピソードの1つであり、腹筋崩回としてしばしば話題に上る。


  • サンドラ・ブロック

女優。
彼女のゲスト回では、局に「視聴率が50パーセントを切ったら曲を爆破する」という電話がかかってきて、彼女やスタッフたちがあの手この手で視聴率を上げようと悪戦苦闘するという展開。
(すなわち、彼女の代表作である映画「スピード」のパロディである)。
自身も精神科医コントで主役を務め、カーミットから「現象という単語を言うと幻覚が見える」と相談され「現象」と言ったらピンクの謎生き物コンビ(公式名:The Snowths)が出現。
なぜか髪をほどき「現象」とリズミカルに連呼しながらピンクコンビと踊っていた。
オチは実は彼女自身が犯人というもので、自分の出ている番組の注目度を集めるために仕込んだのだった。
今から見ると色々とギリギリなネタである。


  • レナード・ニモイ

スタートレックのMr.スポック役で有名な俳優。
局内でスタートレックをパロった、その名も「ブタートレック」(原語ではピッグ・イン・スペース)というSFドラマが制作された際、
その設定の滅茶苦茶さに文句を言っていたミス・ピギー(原語版の中の人:ヨーダ)の前に突然現れ「スタートレックでもシャボン玉と戦ったことがある」「宇宙ではどんなことが起きてもおかしくない」などとコメントする。
ミス・ピギーには「そんなんだから降ろされるのよ」と一蹴された。

  • イベンダー・ホリフィールド

プロボクサー。コインランドリーで洗濯をしようとしていたところをフィアマの命を受けたサルから罵声や悪戯を受け、サルを洗濯物と一緒に洗濯機へ突っ込んで洗濯を始めた。
その後「タイソンと12ラウンド戦った後みたいなひでえ顔だな」と言われたが為に「いいや11ラウンドで倒したよ」と反論した。いろいろとシャレになっていない。



ミュージシャン。もはや何の番組だかわからない
出演したのは改名した後であり、番組内では当時の正式名称である記号(発音不可能とされる)をカンペに書いて、名前を示す際にはそれを提示するという手法がとられた。
日本語版の字幕では「元プリンス」と表記され、本人及びカーミットの紹介では「かつてプリンスと呼ばれたアーティスト」と紹介した。
音楽業界に対する自虐コメントを口にしたりしている。



いよいよ何の番組だかわからないが、本当に出演したゲスト(だが実際の事件では検察官の一人だった)。
メインゲストのコメディアン「アーセニオ・ホール」が冒頭でいきなり死んでしまい、局のスタッフたちがその死を隠蔽するために右往左往するという設定からしてアレな回に出演し、

「死体があるなら私にまかせろ。他殺でも自殺か事故死にしてみせる」

などというトンデモない自虐ギャグ(と言っていいのかどうかもよくわからない)をぶちかました。

なおアーセニオ・ホールは上述の恐怖の実験室で実験に使われた。



追記・修正はエビの着ぐるみを着てテロ組織に潜入してからお願いします。


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最終更新:2023年05月24日 08:25

*1 但しキャラ的には『マペット・ショー』の直の続編に近く、本作のあたりで登場したキャラの続投はペペやボーボー等サブ組に留まっている。

*2 『The Muppets』では別れており、その部分がストーリーの焦点となった。

*3 マペット達は基本操演者が声も兼任しており、ピギーはマスター・ヨーダと同じ人が操っていたため(本作では他にアニマル・フォジー・サムも担当)。ちなみに『マペットのオズの魔法使い』からはグローバーの操演者が2代目ピギー役を務めている。

*4 後に彼のルーツを探る映画『ゴンゾ宇宙に帰る』が上映された

*5 ちなみにこの時クリフォードは「この曲結構当たったな(Hit)」等と呑気な事を言うもその直後被弾。リゾに「大当たり(Direct Hit)」とツッコまれた。

*6 なお脳ミソはクルミ2個分しかないらしく知能はかなり低い。

*7 感謝祭で自分が食べられることを知らないニワトリや両親をサンドイッチの具材にしてしまった豚の話など。

*8 しかも内容の殆どはドクターフィルが数時間に渡り泥酔しているだけだったりする。

*9 一応ウサギ要素は後のYouTube版「Stand by me」等でも保管されている