空間操作能力

登録日:2016/09/15 (木曜日) 11:19
更新日:2024/04/21 Sun 13:49:08
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空間を操作したり干渉を行う能力や道具などのこと。
空間支配能力と名前は似ているが全く違い、こちらはほぼ物理的空間の性質のみに限られ概念性は弱い。
このためSFなどに見られるワープ系システムや、ある種の汎用魔法なども本項に含む。
「移動」「転送」に関しては「瞬間移動/空間移動」でより詳しく解説されている。


転送・移動系

禁書』シリーズの白井黒子のようなテレポーターの類がまず該当する。
その中では『絶対可憐チルドレン』の筑紫 澪は、腕から先だけを転移させる事で離れたものを掴んだりする事が多い。
KOFシリーズ』のラスボスキャラの一人・禍忌(KOF)も似たような攻撃手段を用いるほか、相手の背中に開けた空間の穴からエネルギー弾を放つ。
こうした用法は、後述する「魔法の筒(マジック・シリンダー)」と類似していると言える。

斉木楠雄のΨ難』の主人公・斉木楠雄の能力は「転移対象物と同額のものを入れ替える」と、かなり概念性が強い部分があるので微妙なライン。
類似例としては小説『瞬間移動死体』(作:西澤保彦)主人公の「泥酔時のみ全裸状態で転移し、転移先から無作為に選ばれた物と入れ替わる」というのがある。
ちなみにこの作品はSF作家ラリィ・ニーヴンの『脳細胞の体操―テレポーテーションの理論と実際―』というエッセーに基づいている。
東方Project』シリーズの八雲 紫の能力も空間支配レベルの概念能力なので基本的にはほぼ含まない。
ただし「空間に裂け目を作って自分や物をしまう、移動させる」という使い方だけは該当していると言える。

ONE PIECE』のブルーノはドアドアの実のドア人間、隔てる物すべてドアに変えるという能力。見たことのない人ではピンと来ないかもしれないが、手や体で触れたものをドアに変えることでどんな場所でも出入りすることができる。
これだけならただ便利な能力だが、ドアドアの実の真骨頂「空気開扉(エアドア)」により空気にドアを作ることで、どこからでも空気に入り、どこからでも出ることができる。
さらに空気の中に一定時間居続けることも可能という(序盤でやられた割に)実は物凄いことをしており、扉絵で描かれた後日譚ではそれによって同僚を全員生還させている。
アメコミではこれに近い能力者としてMARVEL COMICSのドアマンがいるが、彼は闇の異次元への扉によって体を媒介にしてテレポートや物質透過ができる。
しかしその範囲は通常であれば壁抜けくらいにしか使わないとのこと。

彼に限らずMARVELの空間系能力者はだいたい異次元とつながることをテレポートに使っている。
クロークは暗黒次元につながる体に他人を放り込むという物体収容能力めいた方法を用い、アザゼルはテレポート以外にそこから異次元のエネルギーを持ってきたりもする。アザゼルの子であるX-MENメンバー・ナイトクロウラーもまたテレポーターであるがおおむね本人の移動・格闘戦に使っている。

こうした個人による空間移動を扱ったもっとも影響力のある作品はアルフレッド・ベスターの『虎よ!虎よ!』であろう。
まずは死に瀕した状況で発現した、(作中当初は)距離制限を持った、座標情報を必要とし、物質を巻き込む恐れのあるテレポート能である「ジョウント」を犯罪者含め多くの人が使いこなす上に戦争中というマッポーめいた世界観である。テレポートの潜在可能性は無数のアイデアのあるこの作品の一つの軸である。

宇宙戦艦ヤマト』シリーズのワープや『マクロス』シリーズのフォールドなど、
空間に干渉するものは宇宙系SFで距離をすっ飛ばすのによく使われる。
大長編『ドラえもん』シリーズでも、『宇宙開拓史』などで「空間を歪めてA点とB点を繋げる」といった解説がなされ、似たような使い方は多くみられる。

上述したワープやテレポートにはA→Bが直線的なものが多く見られるが、『遊戯王』のカードのひとつ「マジック・シリンダー」は
イラスト上では左の筒の奥に入ったものが右の筒の手前に出て来ており、効果上も相手の攻撃を返却している。
このため反射ベクトル変換のような能力ではなく「中の空間を曲げて相手側に返している」描写に近いと思われる。
上述した禍忌や紫のようなタイプも、転送用の穴を調整すれば可能かも知れない。

実際に可能であることが描写されているキャラクターとしては、『仮面ライダーウィザード』のファントム(いわゆる怪人)・ベルゼバブがいる。
初登場時には同じくファントムであるユウゴ(フェニックス人間態)の拳を「フェニックス側に開けた空間の穴」に突っ込ませ、逆側の穴から出させている。
また真正面から向かって来たウィザードの剣を空間の穴に取り込んで、ウィザードの背中側にいたビーストに当たるように調整しているため、前述したマジック・シリンダーと全く同じような挙動も出来るようで、→ベルゼバブ→というような一方的な向きだけの挙動に限らない様子。

怪人が穴を開けて手を遠くに出す攻撃をしてきた描写があるが、怪人の固有能力ではなく、作中のアイテムの方が力の源であったというパターンもある。

ルパンコレクションの一つ、項目内にある「あなたに手が届く/Atteindre pour toucher(アタンドル・プール・トゥッシェ)」がそれで、使用者のヤドガーはリーチの拡張のみならず自分への特殊な攻撃でアジトへリターンをかますなど使いこなしまくっていた。

漫画界では『ベルセルク』(項目の②)に出てくる敵勢力のトップクラス「ゴッドハンド」のうち二人が使用しているところが見られる。
一回はボイドが切りかかられたのを反射するかのように逆方向に返し、別の回はフェムトが背面からの斬撃を自身の体より前へと歪めて排出している。
二番目のシーンにはボイドが出現していないことから、最低でもボイドとフェムトの二人は空間制御持ちと考えてよいと思われる。
大穴すぎるところで実はゾッドの方が……いややっぱないか

ゲーム『パワプロクンポケット11』のワームホールもまた直接的に自分の体に穴を作って視界内、あるいは行ったことのある場所に物や人を送り込んでいる。自分を送り込めない、重力の干渉があるため接地面は実体化の必要があるという弱点も語られている。……あれ?これって野球ゲームだよな……?

A→B点の移動はXYZ軸で言えばXY関連である(要するに横移動である)事が割と多いが、上下方向つまりZ軸コントロールを
戦闘転用するケースも見受けられる。

マジンボーンでは空間転移持ちが地上の大型建造物(都会のマンションやオフィスビル)を高さ数十~数百mに転送、
迎撃に向かっていた主人公らを押しつぶす道具として気軽に使っていた。中に人がいっぱいいるのに。
味方に付いていた同じ空間属性のものが中の人をとっさに安全地帯へ転送していなければ大量虐殺もいいところだっただろう。

作中ゲームでの戦闘シーンになるが、シャングリラ・フロンティアの同名メインタイトルゲームシャンフロにおいて、ある強敵との戦闘でディープスローターというキャラクターが隕石を地表付近へ転移してくるという魔法の使用を提案、そして……。
ちなみにディープスローターは作中では貴重な長距離転移魔法(要はルーラ)使いであり、それによるプレイヤーの拠点間移動などによって大金を稼いでいる。

XYZと戦闘に関するエピソードとして、「無責任艦長タイラー」では、ある戦闘で敵から逃げるためランダムワープという危険な賭けに出た事がある。
最悪の場合恒星内部で焼失というオチすらあり得る命がけの一手で、出た座標はX-0 Y-0 Z-0 つまり「一単位も動いていない」。
しかしこの奇跡的偶然によって「空間転移で消費されるはずだった莫大なエネルギー」が周囲に撒き散らされ、敵は大損害を被った。

またファンタジーなどにおいては、A→B→CとならずにA→B→Aとなる……すなわち無限ループに陥る魔法や空間などがある。
正しい道を選択しない限り、延々と同じ場所を移動させられ続ける呪われた森などが見受けられる。

ゲーム界の例としては『聖剣伝説3』の「ランプの花の森」という場所で正しい道を選択しないと無限ループにハマる事になる。
スケバン刑事』で有名な和田慎二の漫画『ピグマリオ』では”ゆがめられた西”というものが登場しており、これはボスのいる方角へ進もうとしても辿りつけなくなる術である。
認識・概念等の改ざんではなく地上のみに影響している空間の歪みのため、作中では地下に住む小人の協力を得て全速力で移動することで突破している。

フィクションでは古代中国ベースの術として(「鬼門」「奇門「八門」など遁甲などの名で)、空間制御迷路が出てくることがある。
NARUTO』には同じ単語が出てくるが、肉体のエネルギー操作技術で恐らく語源だけ同じ。
ラノベ魔法科高校の劣等生』では精神干渉術なので該当しない。
ジャンプ漫画ではNARUTOより昔に『鬼神童子ZENKI』でも出たことがある。

一つだけが正しい道で他は異次元送りになったり永久に迷う異空間になるなどの非常に悪辣な術で、最近ではこの名ではないが虚淵玄脚本の台湾製布袋劇『東離劍遊紀』に関門の一つとして登場。
また、『東離劍遊紀』の第三期では、同一世界の他の地点どころか異世界にまで常時ランダム接続が起こる「鏡」という物体が登場。敵勢力は作中の世界を分断するエリアを無視できる=軍事侵攻に役立つ、ということでその制御技術を欲している。
またそのアジトに偶然踏み込んだ主人公らも、そこら中に数多ある鏡の一つを手に取ってランダム転移で敵から逃げ、その先でまたトラブルが起こるなど転移アイテムがギミックや要素として強めに組み込まれたシナリオになっている。


収納・干渉系

物体収容能力に記載されている能力者・道具などは多くが該当する。
記載のない例としては『宇宙戦艦ヤマト2199』に出てくる次元潜航艦や、それより古い例である(なぜか謎のジジイだけ有名な)『宇宙戦士バルディオス』の主役ロボであるバルディオスおよびコアメカのパルサバーンをはじめ、敵兵器の殆ども「亜空間に入る事で敵の攻撃や探知を回避する」などの目的でこうした機能を持つ。

バルディオスにおいては、地球にはなく主人公マリン・レイガンの出身地S-1星にはある高度技術なので、地球側は敵の雑魚戦闘機にすら奇襲されるわ攻撃が通らないわで逆無双を食らう始末。
親(地球制圧移民に反対して殺された科学者)が原因でS-1星に反旗を翻したマリンのパルサバーンおよびそれを改造したバルディオスだけが頼りだったため、その扱いを巡って地球人たちは
『あいつS-1星人だろ』派と『戦力あいつだけやん』派で反目し合ったり悶着が起きたり『自前で空間制御持ちロボ作るんや!』とやろうとしたりとシナリオ上の争点となっていた。

「亜空間」の運用例は聖悠紀の漫画『超人ロック』にも見られ、こちらは「亜空間フィールド」というある種の空間操作エネルギーを対象の周囲に展開することで探知などを回避している。
上記二作と違うのは、亜空間フィールドはそれ自体が特異なエネルギーの塊であり攻撃にも転用できる事。
亜空間フィールドが命中した物体は「物質間の結びつく力」が激減するため、作中ではこれを食らった大型の戦闘用宇宙船が細いワイヤーアンカーを刺されただけで砂のように崩れ去っている。
‎……中の人も同時に。(超人ロックは絵柄こそ少女漫画寄りだが、死に方は割とグロい事が多い)

ゲーム『Z.O.E.-ZONE OF THE ENDERS-』に見られる技術「ウーレンベック・カタパルト」は「空間を曲げて戻った衝撃で対象を加速させる」というもので、
曲げた先と繋いでの移動ではなく、曲げたことを押す力とする空間干渉の利用をしているほか、OFの基本機能であるシールドとバーストは空間障壁と空間破壊の機能を持つ。
先述の禍忌の超必「ユニバース・ディストーション」も背景が歪んでおり、空気の操作ではなく、空間の歪みからくる衝撃自体がダメージ源となっている様子。

ブギーポップシリーズ』のフォルテッシモは自身にのみ認識できる空間の「罅割れ」に干渉することで空間を操作し、
絶対的切断や空間干渉による防御・反射、高速移動、部分干渉による相手の無力化などやり過ぎなくらい活用している。

時空の連続体を切り離すことで防御不可能の切断攻撃をする「空間切断」という使い方は空間操作による攻撃技のメジャー。
その歴史は古く、日本のサブカル界隈での初出は恐らく原作:菊地秀行・作画:細馬真一の漫画『魔界都市ハンター』(1986~1989)の中盤主要キャラクターの一人、有川三佐が持つ超能力「次元刀」。薄板状の空間の亀裂を投射する一種の飛び道具のように描写された。
後に漫画『幽☆遊☆白書』の桑原和真や『ロザリオとバンパイア』、特撮ドラマ『ウルトラマンZ』の幻界魔剣ベリアロク*1にオマージュされたように、
空間をぶった切る技「次元刀」というネーミングは後への影響が大きい。

原作:七月鏡一・作画:皆川亮二の漫画『ARMS』のキース・グリーンが振るうARMS「チェシャ猫(チェシャ・キャット)」はテレポートのほか、空間そのものを断裂させる事で対象の硬度・物理特性を無視した絶対的切断攻撃を行ってくる。
性質的には収容の項目にあるブチャラティのジッパーによる切断や、ヴァニラ・アイスのガォンなどに近いだろう。
ちなみに能力のパクリ元であるジェームス・ホワンによれば彼の得意とする空間振動のほうが効率的だとか。(の割に終盤で切断を多用してたが。)
チートっぽいと思われる能力だが、作中ではこれを回避したりするリアルニンジャもいる。アイエエエ!人間なのにナンデ?!回避ナンデ!?

「空間」を司るポケットモンスター・パルキアもまた専用技に「あくうせつだん」(亜空切断?)を持つが「まわりのくうかんごとあいてをひきさきダメージをあたえる。きゅうしょにあたりやすい。」とのこと。そんなもん5回も打てるとかポケモンバトルは地獄だぜ

「空間を切る」という発想は他にも応用が効きやすい例がある。

石川賢先生のライフワーク『虚無戦記』の一部である『虚無戦史MIROKU』の主人公・無幻美勒は「空間を斬る術」を用い、切断面そのものを飛ばしたりテレポートにも使う。(真の能力が空間支配能力なのは置いておく)
『禁書』シリーズのキャーリサによる全次元切断術式は三次元以上のあらゆる次元を斬るというよくわからない効果があるが、異次元の残骸物質も発生するのでそれも利用することができる。また同作ゲーム版では「1次元の点」を切ることができれ三次元空間の全ての座標に干渉できるという理論「0次元の極点」も存在している。これは麦野沈利の能力がその可用性に近いとされている。
前述した桑原は終盤の成長で「次元刀」という能力を身につけ、別空間に隠れている妖怪の結界を切り裂いたりしている。
これのオマージュ的技としては『ロザリオとバンパイア シーズン2』に登場した朱染亞愛の「崩月次元刀」がある。
藤田和日郎の代表作『うしおととら』では、獣の槍に妖怪の結界破壊能力があり、石食いやあやかしの結界を切断、無力化している。
この場合の結界は物理的にそこから先へ進めなくなる壁(作中に法力僧が張るバリア系のものも出てくるので区別が必要)というより、
バルディオスなどのように「位相のずれた、感知しづらくなるどこか」に対象を収納するタイプのもの。
上記二匹の妖の結界を切断した際には、今まで見えていた学校の廊下の景色が切断面でズレて行方不明者が出てきたり、
今までレーダーで感知されていなかった数多の沈没船(あやかしの犠牲になった船)が出現したりしている。

アニメ『ALDNOAH.ZERO』では、最初の巨大ロボ敵「二ロケラス」が次元断層的な防壁を展開する。
光も物質も通さない絶対的防御性を誇る反面、光すら見えないので周囲が認識しづらくなるというヴァニラと同じ弱点を抱える。
しかもヴァニラと違って足裏には防壁がない。作中「ダンゴムシ」との蔑称を地球側からもらうほどのドムいズングリ機で、飛行できないためである。
飛べんのに足元削ってたら沈んだり落ちるから仕方ないのだが……。結局この機体はこうした点を主人公・界塚伊奈帆に突かれて敗北している。

ONE PIECE』のトラファルガー・ローの能力も半ば概念系だが、敵の心臓などを生きたまま身体から抜いて手元に保有するなどが出来る。
ただし「バラバラの実」が空間的ではなく物理的にバラバラになっていながら生きているので、空間干渉ではない可能性はある。

勇者シリーズ最終作『勇者王ガオガイガー』のツールであるディバイディングドライバーは空間を湾曲・押し広げることで戦闘用の空間を作ることができるが、戻る時に内部に質量があった場合圧壊、あげく反発エネルギーによる大爆発を引き起こすという。コワイ!

ジョジョの奇妙な冒険』シリーズでは虹村億奏が先述のヴァニラ・アイスに次ぐガォン使い。
彼のスタンド「ザ・ハンド」の右手は空間を削り取ることができるが、その空間が閉じることによることによって結果として瞬間移動・転送も可能とする。

HUNTER×HUNTER』のノヴの能力は自分が作り出した空間に入りそこから別の場所へと移動することができる瞬間移動能力である。
さらに空間の能力を利用して手を合わせたときに空間を発生させ人や物の一部分に当てた時に空間を閉じることによって断ち切ることができる技もある。



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最終更新:2024年04月21日 13:49

*1 ベリアロクが空間切断能力を見せたのは後年の『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』第8話「繁殖する侵略」ラストにて。ナツカワ ハルキウルトラマンゼットが『トリガー』世界から元の『Z』世界に帰還する際に使用した