イタリアンスパイダーマン

登録日:2016/08/21 Sun 16:47:36
更新日:2023/06/29 Thu 12:03:42
所要時間:約 10 分で読めます





イタリアンスパイダーマン(Italian Spiderman)とは、スパイダーマンのような見た目をした別の何かである。


◇概要

1960年代にイタリアで製作され、プリントされた唯一のフォルムが大西洋で船舶事故により行方不明になるも、時を経た2006年に回収、
修復されてインターネットを通じて公開された……という体でオーストラリアにて2008年にもなってから製作された、60年代のイタリア低予算映画“風”のドラマ作品。
インターネット上で全10話が配信された。

色物スパイダーマンといっても、東映版池上版のようにマーベル社から正式なライセンスを所得した作品ではなく、
製作経緯自体も学生達によるアマチュアの製作陣「ALRUGO」が手掛けた、言わば「二次創作」的なパロディ作品。
日本の作品で言えば、『帰ってきたウルトラマン』に対するダイコンフィルム版『マットアロー1号発進命令』、
仮面ライダー』に対する『仮面ノリダー』といった作品群に近い立ち位置だろうか。
また製作国も上述の通りイタリアじゃなくオーストラリアである。
元は、当時オーストラリアのフリンダース大学に通っていたダリオ・ロッソ氏が2007年11月に発表したジョークPVで、
Youtube等で大きな反響を呼んだことで、実際に同人映画として製作される流れになったらしい。

肝心の内容は……とってもカオス
主役のスパイダーマンが蜘蛛モチーフの扮装をした人物という点しか本家スパイダーマンとの共通点が無かったり、
行動がヒーローらしからぬ処かむしろ普通にチンピラそのもの、作品全体に漂う低予算&B級イタリア映画っぽさ、
それでいて異様に力の入っているドラッグ関連の描写など、色々な意味で一度見たら忘れられない作品。

というか、そもそもとしてイタリアンスパイダーマンまでがタイトルにして名前であり、断じてイタリア版スパイダーマンとかでは無い。
なので、タイトルで思いっきり著作権に触れてるような気もするが、実の所は文句を付ける方が言いがかりに近かったりする。
(つまり、前述のスパイダーマッ!こと東映版スパイダーマンを日本版スパイダーマン(JAPANESE SPIDERMAN)と呼ぶことは出来るが、本作はイタリアンスパイダーマン以上の何者でもなく、単なる紛らわしい名前なだけのパロディ作品なのである)

とはいえ、アマチュア作品としての範疇で言えばクオリティは存外高く、シナリオ自体も思いの外面白いのも事実ではある。
断じてスパイダーマンではないが。
最終話のラストではPART 2の製作も仄めかされているが……本気かどうかは不明。

本作の製作陣はその後、アマチュアながらTV局のプロデューサーにスカウトされるに至り、
『Danger 5』というイタリアンスパイダーマン同様の60年代低予算映画をパロディしたミニドラマを製作している。

日本においても発表から程なくして動画サイトなどで知名度を博し、かの東映版ほどではないがカルト的な人気を得ることに。
某動画サイトでは、非公式ながらも日本語字幕が付けられたものもあるので興味のある方は必見。
トータル再生数こそ東映版に譲りながらも、権利者削除の危険が無い分、根強いファンを長年獲得したとも言える。

ちなみにAmazonでサウンドトラックもMP3データとして有料配信されている。
全4曲で300円と比較的安価なので、作品が楽しめたのならば手を出してみては如何だろうか。
実際、60年代テイスト?を再現したサイケな音楽は普通にカッコいい。
尚、CM版だと主題歌ぽいのもあるのだが本編では一切流れない。

当然非公式のパロディ作品なので、マーベル公式が開催したクロスオーバー企画『スパイダーバース』には非参戦。
……なのだが、実のところシナリオライターのダン・スロット氏はイタリアンスパイダーマン参戦を本気で検討していたらしい。
結局「版権の所有者が不明」という理由で参戦には至らなかったのだが、
同じく版権の事情で直接登場が叶わなかったハリウッドの実写映画2作のスパイダーマンが『スパイダーバース』作中で名前のみ言及されている場面もあるため、
もしかしたらイタリアンスパイダーマンも、平行宇宙の何処かでインヘリターズと戦っていた……のかも。そんな訳ないか。



◇あらすじ

イタリアの平和を守るため、今日もまたキャプテン・マキシマムの運営するカジノで暴れまわったイタリアンスパイダーマン。
美女に囲まれて極楽の日々を送っていた矢先、知り合いのベルナルディ博士から
銀河系外から飛来してきた隕石に含まれていた物質を利用し、画期的な薬品の発明に成功したとの報が届く。
世界の平和のため、薬品の護衛を託されたスパイダーマンだったが、宿敵キャプテン・マキシマムもその薬を狙っていた……



◇登場人物

  • イタリアンスパイダーマン
主人公。覆面を被ったヒゲ面の太っちょな中年男性で、蜘蛛のモチーフを象った衣服を着用している。
重度のヘビースモーカーにして酒好きマキアート(コーヒー)好きで女好き、そして暴力上等なバイオレンス気質の持ち主。
第1話からして、キャプテン・マキシマムとのブラックジャック勝負で負けそうになったところを
手製のカードで思いっきりインチキした上で、ショットガンを乱射して暴れまわりフイにしている
(この時、恐らく無関係と思しきディーラーを射殺したり、マキシマムの愛人を殴って宝石を強奪している)
以降も敵の銃弾を愛人を盾に防ぐ特に理由もなく一般人を殴るなど、全体的に素行がよろしくない。
「女性を大切にしろ」が口癖だが、本人もちょくちょく女性を雑に扱っているため説得力は皆無。

腕っぷりは非常に強く、無数のマフィア相手に素手で無双するくらいの強さはある。
作中では素手で敵の首を刎ねるといった芸当を披露した事も。
ショットガンやRPG-7などの火器もなんなく使いこなし、またロールシャッハの如くスプレー缶から火を放ったりもする。
本家スパイダーマンのように、腕から糸などを出したりはしないが、バイクをミニカーサイズに縮めて携帯したり、
法螺貝でペンギンの大群を召喚したり、単身空を飛んだり、蜘蛛を操って敵を襲わせる、嗅覚で遠方の敵を察知する、
テレポート能力に飛行能力、噛み付いた敵を狂死させる、ヒゲをアイスラッガーの如く投げつけて敵を粉々に粉砕する……
などといった正直ほとんど蜘蛛と関係ない超能力を発揮する事が可能。
またニワトリに卵のみならずタバコを産ませる芸当も披露している。好みの銘柄はギャロの「Super Quiet」で、タイアップCMを意識したわざとらしい台詞で紹介した。

ベルナルディ博士に増殖薬を託されるも、キャプテン・マキシマムとの争奪戦の末に薬を奪われてしまい、
マキシマムの本拠地に拘束、ベルナルディ博士を目の前で殺害されてしまうも、隙を付いてジェシカ共々脱出。
その後は今わの際の博士にジェシカの身柄を託され彼女の肢体に舌なめずりしながら了承。敵に電撃的な大逆襲を果たした。

しかし、全てが終わってジェシカとの情交に耽りながら平穏な日々を過ごしていた矢先、
突如イタリアの市街地に巨大化したキャプテン・マキシマムが出現する。
これに対し、博士が遺した「最後の薬」を服用してイタリアンスパイダーマン自身も巨大化これならレオパルドンいらず
市街地を舞台に、巨大イタリアンスパイダーマンと巨大キャプテン・マキシマムが相対する……ところで本編は幕引き。

ちなみに正体は不明……というか、電話の応対にも「イタリアンスパイダーマン」と答えているため、こういう素顔と本名なのかもしれない


  • キャプテン・マキシマム
イタリアンスパイダーマンの宿敵。常にルチャドール風の白い覆面を被っている。第1話では隻眼のイケメンに変装していた。素顔だとするとノリのいいイケメンである。
蛇に変身したり、無数の蛇を操ったり、人間を蛇に変えて携帯するなどの特殊能力を有する。武器は14連装リボルバー。
卑劣で非道な悪役…のはずだが、ブーメランパンツ1丁でイタリアンスパイダーマンにサーフィン勝負を挑むなどコミカルな一面も。

ベルナルディ博士の発明した増殖薬に目を付け、彼を誘拐して姪のジェシカを人質に製造を強要させ、
入手した後は用済みとばかりに博士を殺害する凶悪ぶりを見せるも、その結果イタリアンスパイダーマンの逆襲を受ける羽目になり、
部下を全員殺された挙句、自身もRPG-7の砲撃で本拠地もろとも吹き飛ばされるという最期を迎えた。

……が、実は蛇に変身して辛くも生還しており、後に巨大化して市街地を襲撃
ベルナルディ博士の遺産で巨大化したイタリアンスパイダーマンと激突した。


  • クロコダイル
キャプテン・マキシマムが送り込んだ刺客で、ワニのコスプレをした怪人物。
刺客というか奪われた宝石を取り戻しに来てるので、悪役だが義があるのはこっちなのは言わない約束。しかも倒された状況も下記の始末だし。
本物のクロコダイルに変身可能……というか、出現時には本物のワニの映像だったのに、次の瞬間にはワニの被り物をしたヒョロいグラサンになっていた。
イタリアンスパイダーマンの自宅に不法侵入し命を狙ったが、愛人を盾にしたスパイダーマンに銃弾を防がれ、
そのまま馬乗りにされて電話の受話器コードで首を絞められ、受話器で殴打されながら絞殺された


  • キャプテン・マキシマムの部下
マキシマム同様にルチャドール風のプロレスマスクを被った部下が2人登場し、普段は蛇の姿で携帯されている。
またマキシマムの本拠地を警備していた兵士の一人が、ベルナルディ博士の作った薬で増殖、
イタリアンスパイダーマンを追撃するも、窒息死、射殺、斬殺、毒殺と容赦ない戦いぶりで全滅させられた。


  • ベルナルディ博士
老年の科学者で、イタリアンスパイダーマンとは顔見知り。「女は科学の何の役にも立たない」が信条。
因みに、年寄りの癖にクラブにいたり愛人を助手(助手を愛人に?)してたりとお盛んである。
銀河系外から飛来した隕石に含まれていた物質を利用し、生物を瞬時に増殖させる薬品の発明に成功。
薬を狙ってきたキャプテン・マキシマムに蛇の姿に変えられ拘束されてしまい、
ジェシカを人質にマキシマムに薬の製造を強要され、完成後は用済みとばかりに銃撃されてしまう。
今わの際にはイタリアンスパイダーマンに殴られながらも、最後の薬を彼に託して逝った。
イタリアンスパイダーマンが勝利した際には、幽霊となって彼の前に出現、「オッティモ!*1」と彼を褒め称えた。


  • ジュディ
ベルナルディ博士の助手を務める美人で愛人。
余り科学とかが解っているような風ではない。
博士の開発した薬品を実験で注射され、二人に増殖。増えた方は直後に博士に射殺された。
博士が誘拐された後はフェードアウト。


  • ジェシカ
ベルナルディ博士の姪。メインヒロイン
メロンのようなパイパイの持ち主の美人。
割とバイオレンスな性格で、初登場の際にはナンパしてきたトニー達を平手打ちで返したり、酒瓶で目を殴って潰す等、過激な攻撃を見せていた。
イタリアンスパイダーマンからは初対面の時には殴られるも、その後すぐアプローチされた。本人もまんざらではない模様。
博士に対する人質としてキャプテン・マキシマムに誘拐されるも、イタリアンスパイダーマンにより助けられる。
その後は博士の遺言に従ったイタリアンスパイダーマンと共に、実にエロティックな日々を送っている模様。


  • トニー
髪型が又吉直樹っぽい兄ちゃん。
顔はココリコ田中似でそこそこイケメンなのに色々と台無し。
ドラッグパーティーに参加していた若者達の一人で、ジェシカの胸の指定席に座ろうとしてビンタされた。
その後は、パーティーの夜更けに宇宙からの隕石落下に立ち会ったりもしたが、
以降も懲りずにジェシカをナンパした所をイタリアンスパイダーマンにジェシカ共々殴られたり、
キャプテン・マキシマムに殺された被害者を発見したり、最終話では巨大化したキャプテン・マキシマムに驚いてたりと、要所要所で出番がある。
驚くと指差ししつつ顔を凄く揺らす。


  • ゴブリン
緑のタイツを履いてサングラスを被った謎の男。
黄色いタイツの相方と共に意味ありげに登場するが、その後は一切出番なし。
カラーといい、ゴブリンというワードといい本家スパイダーマンの宿敵を意識したのかもしれないが……。



追記・修正は、スパイダーバースで描かれなかった裏幕で、インヘリターズ相手に
巨大化してレオパルドンと共闘するイタリアンスパイダーマンの勇姿を想像しながらお願いします。

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最終更新:2023年06月29日 12:03

*1 イタリア語で「素晴らしい」「立派な」という意味