20世紀・生きもの黙示録

登録日:2016/08/20 (土) 23:27:00
更新日:2024/03/24 Sun 20:51:03
所要時間:約 5 分で読めます




「20世紀・生きもの黙示録」とは、1996年~1997年頃にNHKBS1で放送された自然科学番組である。




と書くと、「ああ、まあNHKがよく作ってる動物番組ね」と思われるだろう。
まあ別にそれが間違いとは言わないが……この番組の特徴は、

とにかく鬱になる

ということである。

何しろ番組のテーマからして、「20世紀に絶滅した野生動物を毎回一種類ずつ紹介する」という、それだけでもう鬱になりそうな感じである。
それに加えて、その動物たちの絶滅の原因がほとんどの回で人間だったり、ナレーションが淡々としていながらいちいち心に刺さるようなことを言ったりBGMがやたら物悲しかったりする。
一話は10分前後というミニ番組だが、まとめてぶっ続けで見たりしたらしばらく立ち直れなくなること請け合い。

一方20年以上前の番組なので、この番組で絶滅動物として紹介されたが、その後生存が確認された例もある。
よかった……本当によかった……

放送当時はBS番組の視聴率自体がそもそも極めて低かったにもかかわらず、異例とも言える反響を巻き起こしたという。
現在でも、当時視聴していた人の一部からは伝説的激鬱番組として語り継がれている。

そのため、DVD化などを求める声もある……が、マイナー番組故になかなか難しいようである。
VHS化はされており、検索結果を見る限り一部の図書館に所蔵されているようだ。

また、広葉書林から「失われた動物たち」というタイトルで書籍化もされている。
こちらも現在では入手が難しいが、番組の激鬱な雰囲気をよく伝えており、機会があれば一読をお勧めする。



そして2017年7月、NPO法人「科学映画館」のサイト上で、実に本放送以来20年ぶりとなる映像配信が始まった。
権利関係をクリアにした無償配信である。
思い出に残っている人、未見だが興味を持った人は是非一見を。



主な登場動物



  • セーシェルゾウガメ

人間に狩りつくされて絶滅したゾウガメ。
この番組ではこの種の最後の一匹である「マリオン」を中心に語った。
マリオンは他の同族が全員死滅した後もフランス部隊に飼育され、一匹で120年近く孤独に生き続けた。
ちなみにその死は自然死や病死ではなく、砲台の上から落ちたことによる事故死である。
テレビ版では「この事故がなければ、もっともっと生きるつもりだったに違いない」と締めくくられたが、
書籍版では「故郷の島が見えるとでも思ったのか、それとも孤独な生に嫌気がさしたのか」
と、より鬱になるようなコメントを添えられた。
なお、書籍版のこの章は中学校の国語の教科書にも採用されたようである。


人類に狩り尽くされたハト。
最後の一羽である「マーサ」の物語が語られる。
この回は泣ける。

  • ケープアカハーテビースト

アフリカに生息していた牛の一種。
野生の個体群が絶滅した後もとある資産家の所有地で飼育されている個体が生き残っていた。
が、この一家が倒産してしまい、債権者によって55頭いた個体はすべて射殺されてしまった。
後味の悪さは番組中トップクラス。こんな絶滅の仕方はやだ。

  • グァムオオコウモリ

グァム島に生息していたオオコウモリ。
珍味として捕獲・調理されて観光客に提供されて数を減らした。
そして最後の一匹もレストランで調理されて提供されて絶滅する。
上に並んで後味の悪い回。

  • ニューイングランドソウゲンライチョウ

別名ヒースヘン。
乱獲によって数が激減していたが、保護活動によって数を大幅に回復した。
やれやれ、これでもう絶滅の心配はあるまい……と誰もが思ったのだが、
生息地が一つの島に集中していたため、その島で起きた火事で致命的なダメージを受け、瞬く間に絶滅した。
絶滅危機動物を救うには数だけ増やしたってダメという教訓を残した種である。

  • バルバドスアライグマ

アライグマの一亜種。
農作物を荒らす害獣として駆除されて絶滅した。
……が、そもそも固有種かどうかについて疑問があったりする(移入種じゃないか?という説がある)。

  • チチカカオレスティア

ペルーとボリビアの国境にあり、インカ帝国の遺跡との関わりで有名なチチカカ湖の固有種の魚。
外来種の侵入によって絶滅した。
ヨーロッパ人の侵入によって滅亡したインカ帝国と同じ運命を辿ったと言える。

  • ヘルクレーアオオハサミムシ

18世紀に一匹が発見されただけだった昆虫。
20世紀に入って169年ぶりに一匹だけ発見されたが、その後の調査では全く発見されなかった。
その経緯から本当に絶滅したのかどうか、というか本当にいたのかどうかもよくわからない奴。

  • オレンジヒキガエル

南米コスタリカに生息していたカエル。
ある年までは大量に観察されたが、ある年に突如一匹だけになり、そのまま絶滅した。
絶滅理由は不明だが、生息地の保護はしっかり行われていたために人間が原因ではないとみる説が主流。

  • ゴートランドサイイグアナ

ジャマイカのグレート・ゴート島に棲んでいたイグアナ。
人間の移入によって数を減らし、アメリカの軍事基地建設が決定打となって1940年代に絶滅したとされていた。
だがその後、1960年になって生存が確認された。
……が、1990年を最後に再び目撃が途絶えており、今度こそ本当に絶滅したのではないかと言われる。

ちなみに、再発見されたのは猟師の犬が数頭のイグアナを殺したから。
あのー、そのせいで絶滅したんじゃないんでしょうか……。

  • カナリアミヤコドリ

カナリア諸島に棲んでいた海鳥。
スペインによる植民、さらに観光客の増大によって追い詰められて絶滅した。
だがその後も細々と目撃情報があり、番組ではもしかしたら生存しているのではないかとされていた。

まあ、番組放送から20年がたった今でも再発見の情報は無いのであるが……

  • ニュージーランドミナミアユ

ニュージーランドの淡水魚。
入植した西洋人たちが川にニジマスなどの外来種を放ったため、生存競争に敗北して1927年に絶滅した。
一応政府も手をこまねいていたわけではなく、保護法を制定している。
……が、その保護法が制定されたのは、絶滅から25年も経った1952年だった。
「遅すぎるだろ……」と思ったに違いない。

  • ヒガシグリーンランドカリブー

この番組では珍しく、人類が直接絡まない絶滅動物。
グリーンランドにホッキョクオオカミが侵入したことにより、オオカミに狩りつくされて絶滅した。
オオカミに追われる恐怖から餌を探せず餓死した個体もあったという。

  • グランイレレイサー

上と同じく、人類と関係なく絶滅したトカゲ。
メキシコの小さな島に住んでいたが、もともと個体数はかなり少なく、ハリケーンが襲来するごとに数を減らし、
あるハリケーンが通過した後にはとうとういなくなっていた。
こいつに関しては、むしろよく20世紀まで生き残っていたなという感じである。


日本を代表する20世紀の絶滅動物。


  • ネブラスカオオカミ

絶滅したと思われていたが、実際アメリカ中部では絶滅したが五大湖周辺とカナダで生き延びていた。
なお、番組及び書籍版では「シートン動物記」に登場する「オオカミ王ロボ」はこのネブラスカオオカミだとされていたが、
実際にはロボはメキシコオオカミだという説が有力である。

  • バーバリライオン

ライオン最大の亜種。
1922年に絶滅したとされていたが、1990年代に入って純血種かどうかは怪しいものの、モザンビークのサーカス団から再発見された。
さらに2012年には、かつてのモロッコ国王ムハンマド5世の私設動物園において、王への忠誠の証として献上された純血種が数十頭飼育されていることが判明。
現在60頭ほどが生存している。

  • パレスチナイロワケガエル

1955年に絶滅したとされていたが、2011年に行われた、絶滅した両生類を捜索す国際的なプロジェクトによって再発見された。

  • ロードハウナナフシ

1930年に絶滅したとされていたが、2001年になって本来の分布中心であるロード・ハウ島とは別の島で生存していることが確認された。
個体数は30匹前後で、世界で最も希少な昆虫と言われる。



追記・修正は生き物を絶滅から救ってからお願いします。



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最終更新:2024年03月24日 20:51