ウルトラ6ばんめの弟はだれか?

登録日:2016/07/24 Sun 23:22:13
更新日:2021/06/20 Sun 20:13:23
所要時間:約 7 分で読めます





ウルトラ6ばんめの弟はだれか?とは、『小学二年生』1973年3月号に掲載された読み切り漫画である。
著者は、同年より『小学三年生』誌で『ウルトラマンタロウ』の漫画連載を務めることとなる宮添郁雄(現:みやぞえ郁雄)。


◇概要

タイトルから何となく察する方も多いと思われるが、この漫画は『ウルトラマンA』終了から、『ウルトラマンタロウ』開始までの
秘められた物語を描いたミッシングリンク……とまでいうのは大袈裟ではあるものの、
つまるところ当時放送終了を迎えた『A』から、次回作『タロウ』への引き継ぎを描いた読み切り作品である。

一年間の放送を経て、1973年の3月末に無事放送を終了した『ウルトラマンA』。
そして、その次に放送される新作で主役を務めるであろう、新たなウルトラ兄弟の末弟が一体どのようなヒーローなのか、
当時の児童誌でもこぞって特集がされており、当時の読者の期待が否が応でも高まったことは相当に難くない。

今でこそニチアサ特撮などでも見られる「前番組から新番組への引き継ぎ」の儀礼は、当時の映像作品では決して多くはなかったが
ウルトラシリーズ、特に第2期はとりわけシリーズ間の世界観が地続きであることが特集記事などでも強調されており、
こうした漫画媒体という形で、エースからタロウへのバトンタッチがなされたというのも、ある意味では当然のことかもしれない。

そして、本作は『A』と『タロウ』のミッシングリンクであると同時に、
恐らくは進級で『小学二年生』から『小学三年生』に移行したであろう児童読者に向けられた、
『小三』にて連載開始される宮添郁雄の漫画版『ウルトラマンタロウ』に繋がる、いわばプロローグ編でもある。

宮添氏の『タロウ』も内山氏に負けず劣らずの独自性を築いていたようで、
宇宙警備隊から離反した賞金稼ぎ・ウルトラマンウルフの登場や、
超闘士激伝』や『メビウス』に先駆けてエンペラ星人がレギュラー敵役として扱われるなど
各種書籍の紹介でも僅かに取り扱われることがあるが、残念ながら2016年時点で書籍収録は実現していない。

タイミング的にTV版『ウルトラマンA』終了とほぼ重なるタイミングで『小二』に掲載された本作だが、
実は同じ誌面には、あの故・内山まもるが手掛けた漫画版『ウルトラマンA』の最終回も載っていた。

そちらの内容も、映像作品と展開は違えど「一年間の戦いで傷ついたエースが、光の国に帰還する」というものであり、
『A』側のラストカットのアオリにも、本漫画に読者を誘導する旨のコメントが記載されているため、
恐らくは編集サイドも、当時の読者に対して2つの漫画を続けて読んでもらうつもりだったのだろう。
もっとも、厳密な意味で繋がっている訳では無いため、続けて読むと小さな違和感が皆無な訳でもないが……

本作の書籍収録は、2003年刊行のムック本『ウルトラ博物館』(小学館)において成されている。
こちらでも内山版『A』最終回と同時収録されているため、続けて読むことで当時の雰囲気に想いを馳せてみるのも良いかもしれない。



◆『ウルトラ6ばんめの弟はだれか?』あらすじ



ウルトラマンエースは光の国へ長いたびをつづけていた。
一年間、地きゅうでたたかい、ようやく帰ってきたウルトラマンエースをまつのはなんだろう?

異次元人ヤプールとの一年の長きにわたる戦いの日々を終え、ようやくM78星雲・光の国に帰還したウルトラマンエース
地球からの長旅を終えた彼を、光の国の一般ウルトラ戦士たちは「お帰り、ウルトラマンエース!!」と温かく出迎え、
エースもまた、長旅で疲れが癒えないだろうというのに、済ました顔で迎えてくれた同僚たちに快く握手で返す。

……もっとも、この漫画と同時掲載された内山版『A』の最終話は、
二たび地球に送りこまれたベロクロンを前に、責務を果たさんがために特攻覚悟で出撃した竜五郎隊長の命を救うため、
北斗自身もまた重傷を負い、光の国よりの帰還命令を受けながらも決死の変身をし、ベロクロンを倒して地球を去る

という悲壮感溢れるものであるため、意気揚々とした態度のエースには少なからず面食らってしまった読者もいるのでは……
とはいえ前述の通り、話が厳密に繋がってる訳では無いので仕方ないのだが。

何はともあれ、一年間のお勤めを終えたエースを労うゾフィー隊長は、疲れているところ悪いと前置きして、
エースにウルトラ兄弟、新たな「6人目の弟」を選ぶための会議に参加してもらいたいと伝えた。
他の兄弟たちはエースの身体を支えるような格好で、光の国の会議場へと足を運ぶ。

かくして、ウルトラ兄弟6番目の弟を宇宙警備隊から選出する大会議が、ゾフィー進行のもと開始された。

ゾフィーは、新たに兄弟に加わるに相応しい、適当な人物を参加者に募ると、参加していたウルトラ族の者からは
ウルトラキングなんかいいんじゃないか」「いや、ウルトラジャックがいい」「ウルトラマンXだっていいぞ
と、候補が続々挙げられてゆく。
まさか後年に全員本当に登場するとは、流石の宮添先生や小二編集部も思ってなかっただろう。
しかし後付ゆえ仕方ないとはいえ、長老のキングや既に兄弟のジャック兄さんの立場は……

が、ゾフィーは「ううむ、あまりいいのは、いないようだ」と判断、後日再び会議を行うと宣言し、閉会する。

会議を通しても結局決まることの無かった、ウルトラ兄弟新たな6番目の弟に相応しい人材。
ゾフィーはそのような者がいないかと思い、光の国の町中を散策する日々……

そんなある時、プラズマ核融合装置の設置場所に訪れた際、
装置を見学していた一人の幼いウルトラ族に、突如地中から出現した怪獣・ギロンガ*1が襲い掛かろうとする現場に遭遇。

子供を襲おうとする凶悪怪獣を止めるべく、いざ馳せ参じようとするゾフィーだったが、
それよりも先に、激しい輝きと共に一人の勇敢な若者が姿を現した。

レッド族特有の顔立ちに、頭部にそびえ立つ二対のウルトラホーン……
そう、それは今でこそ我々にとっても馴染み深いが、当時の雑誌読者にとっては全く未知の存在だったであろう
新たなるウルトラ戦士……ウルトラマンタロウ、その人であった。

スワローキックでギロンガに奇襲を仕掛けたタロウは、恐ろしい形相の怪獣にも全く臆せず、その身一つで立ち向かう。
暴れまわる怪獣の尻尾攻撃から、身を挺して子供を庇うその姿に、一度は驚いたゾフィーもその勇敢さに舌を巻き、
あえて助けに入ることなく、タロウの戦いぶりをもう少し見続けようと判断。
幸い、タロウは子供を庇いながらも怪獣ギロンガに善戦を続け、最後は手刀でギロンガの首を撥ねて決着をつけた。

一部始終を見届けていたゾフィーは、この男こそがウルトラ兄弟6番目の弟に相応しいと決断。
早速タロウを会議場に連れてゆくと、皆に直々に推薦する。
(ちなみにこのシーン、タロウがボディビルのラットスプレッドを思わせるポーズを取っており、妙に逞しい)

参加していたウルトラの父も、自分の息子であるタロウが連れられてきたことに驚きの色を隠せない。
会議の出席者からは、まだ齢若いタロウを選ぶのは早計ではないかという声が挙がったが、
ウルトラの父は、確かにタロウはまだ若年だが、エースもまた若くして地球で立派な戦いぶりを見せた、
だからタロウも同じく、地球で立派なウルトラ兄弟の一人として頑張ることができるだろうと、自身もまた彼を強く推す。
そして、その意見には他のウルトラ兄弟も、全く異論がなかった。

こうして、名誉あるウルトラ兄弟6番目の弟として、地球へと派遣されたウルトラマンタロウ。
長い宇宙の旅を経て、地球に着いた彼を待ち受けてるのは、果たしてどんな怪獣か――――――


ウルトラ6ばんめの弟のウルトラマンタロウは、「小学三年生」4月ごうからはじまります!!
「小学三年生」4月ごうからはじまるウルトラマンタロウを、一しょうけんめいおうえんしてね!!

余談だが、『小学三年生』1973年5月号では地球にくる前のタロウのバックボーンを独自解釈した
ウルトラマンタロウのおいたち」という特集記事が組まれているが、
こちらでもギロンガを倒した一件に触れられており、雑誌を購読していた読者に対するサービス精神が感じられる。



追記・修正は、兄弟入りを逃した結果デビューが40年以上も先送りになってしまったエックスに想いを馳せてお願いします。

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最終更新:2021年06月20日 20:13

*1 作中描写を見る限り、特に宇宙から光の国に侵入したなどの描写はない。ひょっとして光の国に生息する「野生の怪獣」なのだろうか。