モロヘイヤ

登録日:2016/07/16 Sat 22:02:35
更新日:2023/06/23 Fri 23:02:07
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モロヘイヤとは、アオイ科ツナソ属の一年生植物である。和名は縞綱麻(しまつなそ)。

柔らかい若葉や茎を食用とする葉野菜。
梅雨明け前から盛夏にかけて旺盛に生育し、旬もこの時期になる。

原産地は西インド~北アフリカとされており、特にエジプトでは紀元前から食用に栽培され続けている。
古代エジプトの王が病床に伏した際、モロヘイヤのスープを服用し続けたら回復したという言い伝えから王様の野菜ともいわれる。
とはいえ別に王族しか口にできない高級食材だったというわけではなく、
むしろ身分の貴賤を問わず親しまれてきた、所謂エジプト人のソウルフードの位置付けにある。

日本に伝来したのは1980年代と比較的最近だが、
普及に努めた飯森嘉助博士(拓殖大名誉教授)らの尽力により、今や当たり前のように食卓に並ぶようになった。

日本での主な生産地は、群馬県、愛知県、三重県等。


【食材としてのモロヘイヤ】

 青々とした葉や茎を食用とする、緑黄色野菜の一種。
 最大の特徴は、糖タンパクの一種であるムチンに由来するヌルヌルネバネバにある。
 これはオクラやなめこのそれと同じものであり、刻むほどに粘りはよく出てくる。
 一方で味については、青菜特有の青臭さと若干の苦みを除けば特にクセは無く、
 ヌルネバにさえ抵抗が無ければ比較的万人に受け入れられやすい。


 そして最大の特長は、質量ともに尋常ではないほど高い栄養価である。


 ビタミンならば、A(β-カロテン),B1,B2,B3(ナイアシン),B5(パントテン酸),B6,C等。
 ミネラルならば、K,Ca,Mg,Mn,Fe,Cu,Zn等。
 これら全てが他のどんな野菜と比較しても含有量はトップクラスにある。


 栄養価の高さに定評のあるほうれん草にと比較しても、ほとんどの栄養素においてダブルスコア以上で上回るほど。
 このため飯森博士より栄養分析を依頼された女子栄養大学の吉田企世子博士は、当初ミスを疑い分析をやり直したとか。
 先述の王様の病状を回復させたという言い伝えがあるのも納得である。

 一方でほうれん草同様に、シュウ酸を比較的多く含む。
 シュウ酸が電離することで生成するシュウ酸イオンは、アルカリ土類金属のイオンと難溶性の塩を形成することで知られており、
 大量摂取するとシュウ酸カルシウムを形成することでCaの吸収を阻害したり、尿路結石の原因となったりしてしまう。
 もっとも、茹でると大半が茹で汁に溶け出すので、下記のスープや天ぷらを毎日大量に食べたりしない限りは
 そこまで神経質になることはないのだが。

あまり日持ちしないので買ったらすぐ使いきること。



【植物としてのモロヘイヤ】    

 極めて生命力の強い植物であり、栽培は非常に容易で、家庭菜園の入門にもあげられる。
 どれだけ強いかと言うと、

 ・高温には滅法強い。むしろ暑いほどよく育つ。

 ・乾燥にも強い。盛夏の時期でも1日水やりを忘れたくらいなら平気。

 ・多湿な環境も好み、蒸し暑い日本の夏でもへばることなく旺盛に育つ。

 ・中東原産なだけあり、砂漠のような痩せた土地でも育つ。連作障害?何それ?

 ・病気は一切しない・・・とまでは言わないが、特に気を付けずとも普通は罹らない。

 ・害虫対策は、見かけたら捕殺するくらいで事足りる。
  元々害虫が寄り付きにくく、小さな穴をあけられることはあっても「食い荒らされる」と言う程の事はまず無い。

 ・放っておくと2m以上まで伸びる。摘心すると四方八方に枝分かれする。

 ・シーズン中は刈っても刈っても次々に生えてくる。

 という感じである。


 唯一の弱点は、暑い地域の植物なので低温には滅法弱いこと。

 15℃以下の環境では発芽率,生育率とも激減し、10℃を下回ればほぼ0となる。
 霜が降りようものなら全滅不可避。

 なので、種蒔きや苗の定植は十分暖かくなってから行うのが鉄則である。



【モロヘイヤを使った料理】

 ・モロヘイヤスープ

  モロヘイヤ料理の代名詞にして、エジプト人のソウルフード。
  細かく刻んだモロヘイヤによる、とろみのある食感とのど越しがスープの味と調和した逸品。
  本場ものはダシと言えばウサギのそれと決まっているとのことなので、日本風にアレンジするなら鶏ガラになるだろうか。


 ・おひたし

  塩水で軽く茹でてアクを抜いた後、細かく刻んで粘りを出してから食す。
  青菜特有の臭みを消すためにおろし生姜を添え、ポン酢や醤油でいただくと美味。
  他のネバネバ・トロトロ系食品(長芋、オクラ、納豆など)と混ぜたり、ご飯や冷奴、そうめんの上にかけるのも美味。


 ・天ぷら

  葉っぱ1枚1枚よりも、収穫した小枝ごと揚げるのがいいだろう。
  サクサクした食感と、断面から滲み出るムチンの粘りと甘味が箸を進める。
  油もの故胸焼けにはご用心。


 ・炒め物

  葉と茎の部分を分け、茎の固い部分は使わないでおこう。
  肉、海産物、野菜、卵のどれとも相性がよく、味付けも和洋中エスニックを問わない。
  炒めるとモロヘイヤのネバネバが抑えられて食べやすくなる。



 その他味噌汁、サラダ、スムージーなどいろいろと。



【モロヘイヤに関するトリビアとか】

 ・モロヘイヤの日本伝来は、オイルショックがきっかけ

  1970年代に起こったオイルショックにより日本人の中東への関心が高まったことがきっかけで、
  当時はアラビア語を学ぶ学生(社会人の夜間学生含む)が増えていた。
  そんな中飯森博士は彼らにアラビア語を教えると同時に、有志を募ってアラブ料理の食べ歩きも同時に行っていた。
  しかし、あまりいい店に出会えなかったのか有志達からの評判は今一つで、「もっと美味しいものは無いんですか?」と詰問された飯森博士が、
  自身が留学時代に味わったモロヘイヤスープの味を思い出したのが、全ての始まりになった。ということ。


 ・モロヘイヤには毒がある

  現在ではよく知られているが、モロヘイヤの特定部位(新芽,成熟した種子と実莢)にはストロファンチジンなる物質が含まれている。
  これは強心配糖体の一種であり、摂取すると鬱血性心不全を起こし、下手をすると死亡する危険性がある。
  幸いにして人間の死亡事故例はないが、平成8年に牛が種子を誤食して死亡した例があり、子供の誤食には注意が必要である。
  とはいえモロヘイヤの種子(というか食用とする若葉と茎以外の全部位)は非常に硬い上、
  味は飯森博士曰く「激しい苦みがあって、一粒すら間違っても食べられない代物」らしいので、誤食の危険はかなり低そうだが。


 ・クレオパトラも好物だった(?)

  モロヘイヤについて語られるとき、世界三大美人として有名なクレオパトラの好物だとか、それが彼女の美の秘訣だったように語られることがある。
  が、実際はクレオパトラが食べていたことを証明する資料は見つかっていない。
  ただし、飯森博士がエジプト考古学者の吉村作治博士にその点について質問したところ、
  「直接示す表現は無いが、クレオパトラの時代には既にモロヘイヤが食材として認知されていたことは分かっているので、
   (好物だったかどうかは別として)間違いなく食べていただろう。」との回答を得ている。


 ・ゲームの回復アイテムにもなった

  SFC用ゲームソフト「MOTHER2 ギーグの逆襲」には、回復アイテムにズバリ「モロヘイヤスープ」がある。
  砂漠地帯の都市スカラビの特産であり、お値段は20ドルとお手頃。性能は、まあ、うん…




ネス「ポーラ、そろそろ体力なくなってきたんじゃない?」
プー「ライフアップをかけてやろう」

ポーラ「モロヘイヤスープじゃなきゃ、イヤ
ネス「ここ魔境ですけど…」
ジェフ「買いに行けと…?」


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最終更新:2023年06月23日 23:02