ボーイング747

作成日:2016/05/12 Thu 21:38:23
更新日:2023/11/23 Thu 23:33:14
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ボーイング747(貨物形)(NCA所属機)
*1

ボーイング747とは、米国ボーイング社が開発した大型ジェット旅客機である。
通称「ジャンボジェット」「ジャンボ機*2
ある一定以降の年代の人なら「旅客機」と言われてまず最初に思いつくのがこいつだろう。
特に日本では国内線国際線問わずにそこそこ規模のある空港ならどこでも出現し、JALが世界でも随一の数を導入し文字通り「掃いて捨てるほど日本の空を飛んでいた」
飛行機なので、日本人にとっては余計に馴染み深い機体である。
機体前半部が一段高くなっているフォルムは、他の航空機と見間違えようがない特徴である。
なお日本のみならず当時としては破格の旅客数とその大きさから会社の広告塔やフラッグシップ機となった会社も少なくない。


概要

707で旅客機メーカーとしての地位を確立したボーイングが開発した超大型旅客機。
その文字通り巨大な輸送力で旅客機を庶民の足の一つに仲間入りさせた画期的な機体でもある。
だが4発エンジンは燃費の面で不利(エンジンが増えればそれだけ燃料の消費も増える)なため、
777を筆頭とした大型双発機やB787やA350といった高効率の中型機、
或いは同じ4発エンジンでも年代の差により燃費が改善されたA340・A380などに押され、旅客用からは徐々に退きつつある。
一方貨物用としては「コクピットが二階部分にあるので一階部分を全部荷物室として使える」(=長い荷物をぶち込める、機体の前方をでかいドアにできる)とか
「やっぱり4発エンジンはパワーに余裕があるしエンジントラブルにも強い」という理由で大人気。
いい加減古い設計を引きずるのもということで、787の技術を取り入れた「747-8」型が生産された。

開発の経緯

時は1950年代。
707と367-80で鳴らしたボーイングは「次期戦略輸送機」の採用コンペに747の原型となる機体のプランを提出しロッキード・マーティンの案にぶつけたものの、ロッキード案に敗れ不採用となってしまった。なおこの時の「ロッキードの競合案」とは後のC-5ギャラクシーである。
一方民間航空の世界では、旅客機はプロペラからジェットの時代になり、ジェットエンジンの高出力とも相まって200人近く乗れる飛行機が当たり前になっていった。
乗客を大量に乗せられるということはそれだけ一人あたりの輸送コストも下がるってことであり、当然飛行機代も安くなっていく。
こんな状況の中でバンナム、じゃなかったパンナムことパンアメリカン航空は「将来は誰もが飛行機で旅行するようになる」と踏み、ボーイングに「乗客が増えまくった時のために400人くらい一度に乗れる飛行機って作れない?」と相談を持ちかけた。

ボーイング「…ちょうどいい案がありますよ?ぶっちゃけ軍用輸送機の没ネタなんですけどね」

そう、「C-5との競合に敗れたプラン」をリサイクルして旅客機に仕立てあげた機体こそが後のボーイング747なのである。

パンナムこそノリノリだったものの「定員400人」という数字はボーイングの社内でも「こんなの作って席埋まるのか?」「高すぎワロタで買うやつパンナムくらいしか無くね?」とかなんとか言われてた。
しかし当時のパンナム会長の強い後押しと、「もし旅客用として売れなかったら貨物用に転用すればいいから!ねっねっ!」といって計画は進められた。
というのも、当時は「次に来るのはコンコルド筆頭のSST(超音速旅客機)、ボーイングやロッキードだって計画している」という風潮が強く、
「輸送力に全ステ振りの超大型旅客機はSSTの補佐くらいにしか使えないだろう」というのが大方の見解であり、最初から旅客機から貨物用への転用が目論まれていたのである。
というわけで「SSTが普及したらその時は貨物機に改修する」という前提で計画が進められた。二階部分のコクピットはこれの名残である。
…まあ実際はSSTは効率が悪いので「速さよりも輸送力」に時代が勝手に右斜め下に回り込んでしまったわけですが。

747開発には莫大な費用が投じられており、747本体にとどまらず専用の組立工場建設・747専用運搬車両開発・工場専用線路まで引くほどに力の入れて臨んだ軍用機受注に失敗し、旅客機需要も他社に後れを取っていたボーイング社はこのプロジェクトに社運をかけていた。

ちなみに、ベトナム戦争の真っ只中であり政府要請で計画中止に追い込まれそうになるもパンナム会長が直談判したことで継続することができた。あらゆる意味で綱渡りの、歴史の流れはどこで変化するのか分からないというエピソードの多い飛行機であると言える。


特徴

  • 二階建て構造
747の外観で一番特徴的なのがここ。
元々が軍用輸送機だったのに加え、「SSTが普及したら貨物機に転用する」ということを前提に設計されたため、一階部分は全て荷物室に転用できるようにコクピット(と荷主/兵員席)は二階に作った。
このため機首に大型ドアを取り付けることが可能となり、また長尺物も余裕でぶち込めるようになっている。
なお、同じ二階建てでもA380は最初から「旅客機」として設計されたがゆえにコクピットは一階部分にあり、これが原因で前面ドアを取り付けられないというネックを抱えた事から、結局貨物型の受注はあったもののキャンセルされ、旅客型から貨物型へのコンバートも行われていない(航空科学博物館の解説員の解説より)。

  • 4発エンジン
今でこそ長距離機でも双発機が使われるようになったが、747が開発された当時はジェットエンジンの信頼性はそれほど高くなかった。
双発機のエンジン1機故障の場合〇〇分以内に空港に降りられるようにするというルールがあるが、当時は60分しかなかった。
故に双発機で大洋横断など「論外」であった。
この規制を回避し、どこでも自由に飛べるよう4発エンジンを採用。
なおこの規制に対しジェットエンジンの信頼性は技術更新によって増していったため、色々と緩和が模索されており、
767が初めてこの規制を緩和するきっかけになった。
このあたりのやりとりについては767の記事を参照されたし。

  • 高バイパス比ターボファンエンジン
ターボファンエンジンには大きく分けて2種類がある。
ファンが吸い込んだ空気の大部分をコアエンジン(動力部)に送り込む「低バイパス比ターボファンエンジン」と、
ファンが吸い込んだ空気の大部分をそのまま推進力として吐き出す「高バイパス比ターボファンエンジン」である。
低バイパス比エンジンは特性がターボジェットエンジンに近く高速航行向きで、さらに設計製造も簡単であるがパワーがなくて燃費も良くない。
逆に高バイパス比エンジンは速度は出ないがその代わり推力が大きく省エネである。
747のようなでかい機体を飛ばすのには高バイパス比エンジンが推力や燃費の面で有利である。
ターボジェットや低バイパス比エンジンなんか使った日にはそりゃあまあ燃費と騒音が酷いことになるだろう。
だが高バイパス比エンジンはそれまでの低バイパス比エンジンと較べて設計製造の難度がグンと上がる。
推進力の多くを前方のファンで賄っているということは、当然それなりのパワーがファンにかかるということである。
さらにそのファンをぶん回すためにも、コアエンジンの出力も上げなければならない。今までの低バイパス比エンジンの常識が通じなくなる。
そのためファンブレードの結晶方向を制御する(金属の破壊ってのは結晶の境目から起こるので、例えばファンブレードの長手方向に結晶を成長させてしまえば折れる可能性を格段に減らせる)などの新技術を多数盛り込んで設計されている。

  • 強力な高揚力装置
でかい機体は飛ばすだけでも一苦労する。
そのため強力な高揚力装置を採用し、707などの倍近いサイズでありながらもこれらと同じ2500m級の滑走路でも離着陸可能としてある。
このおかげで大都市圏の空港のみならず地方空港でも滑走路延長で運用可能になったことから日本中で747が飛び交う要因にもなっている。*3

  • 4重の油圧・電気系統
二重系と二重系を合わせてお前を上回る四重系の信頼性だーっ!」。
真面目に言うと各エンジン1機につき1系統の油圧、電気を取出している。
但し初期モデル(-100、-200型)では尾部の油圧配管が上に偏っていたため、そこをピンポイントで破壊されると全油圧を喪失してしまい操縦不能になってしまうという弱点があった。
就航直後に油圧3系統を失う事故があったものの1系統で操作・着陸したこともありこの弱点は見てみぬフリで放置されていたが、
日本航空123便事故で露見、「設計ミス」として改修が行われている。

  • 慣性航法装置
今でこそ民間機どころか車のナビでも当たり前の慣性航法装置、要するにジャイロとかの加速度センサーで加速度を検出して「自分が今どこにいるか」を把握する装置である。
でも民間機ではボーイング747が初採用となった。
理由は「もともと高い機体だからこんなもん誤差のレベルのお値段で済むよね、それに付いていれば運航楽になるし」というものである。
また航法コンピュータは3台セットで搭載され、「多数決」で正しい結果をはじき出すようになっている他、特定の1台が異なる結果ばかりを吐き出し続けた場合はそのコンピュータを故障と見做すようになっている。
…どう見てもMAGIシステムです本当にありがとうございました。

バリエーション

ロングセラーの大人気機種だけあってバリエーションも豊富。

  • 747-100
最初のモデル。ローンチカスタマー(最初に買った航空会社)はパンアメリカン航空。
当初は予定よりも機体重量が増えたり、エンジンの出力がカタログスペック通りに出なかったりしたが水噴射などで対応。
その後はエンジンの交換などによりカタログスペック通りの性能が出るようになった。
日本ではJALが1970年4月に就航させた他、短距離バージョンの100B型も保有していた。

  • 747SR-100
移動需要が有り余るほどあるのに輸送インフラ(空港・高速鉄道・高速道路)の整備が殆ど進んでいない(=一度に大量に乗れる飛行機が必要)1970年代当時の日本向けに開発された、いわば「日本カスタム」の747。*4
SRってのは「ショートレンジ」、つまり短距離用の略。日本仕様の100Bをこっちに含む場合もある。
カスタマーは日本航空だが既に747を導入したいたこともあり導入数は7機、一方全日空は747初導入もあり17機導入し「スーパージャンボ」の愛称を付けていた。
燃料搭載量を減らして着陸料(機体重量が増えると高くなる)を抑え、また頻繁な離着陸に備え降着装置(車輪)やブレーキを強化してある。
機内設備としては座席間隔をギリギリまで詰めて当時の旅客機では最多となる500人級の乗客数を実現。
その代わり短距離用なのでギャレー(キッチン)の設備は最小限度としてある。
なおJALでは123便事故をきっかけに20年ほどで退役したものの、その状態の良さからNASAに購入されてスペースシャトル輸送機に改造された機体がある。
一方ANAでは2006年まで運用され引退直後に運用に入っていた羽田-伊丹線での3発機以上の旅客機運用が出来なくなった。
ちなみにANAではSR-100を-100相当に改造してハワイ便等に使うという本末転倒機が存在したが、
当時ANAが保有する機材で国際線に使用していたL-1011では航続距離が足りず、改造して長距離運用できる機材が747SRしかなかった事情があった。

  • 747SP
パンナムの「行くぜ!東京-NYノンストップ便!」の計画に応えるべく開発された機体。
機体の全長を思いっきり縮めて軽量化し、航続距離を標準機の9800kmから12000kmまで伸ばした機体。
安定性が犠牲になった分は尾翼の延長で対処。
その姿は一見すると漫画の世界の飛行機のようである。こらそこ、リアルぼく官とか言うんじゃない。
だがこの「胴体短縮」はあるとんでもない副次的効果をももたらした。
パイロット「あのーボーイングさん」
ボーイング「?」
パイロット「あんたのとこの新型ジャンボ、発表されているよりもダンチで性能がいいんだけど」
ボーイング「へ、どういうこと?」
パイロット「だから!燃費やたらいいし速度も出るし航続距離めちゃくちゃ長いんだよ!」
調べてみるととんでもない事がわかった。
胴体短縮により二階建て部分のすぐ後ろに主翼がくっつくようになっているが、これがエリアルールに則った形状となり空気抵抗を減らしていたのだ。
(ものすごーく乱暴に言うと、主翼での断面積増加を二階建て部分が吸収して断面積の変化を少なくしていたのである。断面積が急激に変わると空気抵抗が増える原因になる)
この結果は他のモデルにも反映され、意図的に二階建て部分を主翼直前まで伸ばす改修を行った「SUD(ストレッチド・アッパーデッキ)」型も生み出されている。

しかしその一方で定員が中型旅客機並(200人台)と747シリーズの中で最も少なく、旅客数を削って得た自慢の航続距離も-200の改造機(下記参照)の開発でほぼ同等となってしまい、
「いくら性能よくてもこれじゃ儲からねえ」と航空各社から判断されたためか、シリーズとしては最小の生産機数で終わった。
だが決して失敗だったかというと前述のような思わぬ副産物の他にもノンストップによる長距離運行のノウハウ蓄積に貢献し、その手頃なサイズと
4発機という安心感から中古購入で政府専用機や王族専用機になった機体もある。
日本の航空会社からの発注はないけど、イラン航空の保有する機体が成田に顔を出していたりした。そしてイランのお国事情によって約40年も酷使される

  • 747-200B
100の構造を強化し性能向上がされたもので400登場までは標準型とされた。
日本では全日空ではL-1011に代わる国際線機材として導入され念願の長距離国際線開拓に大きく貢献した。
一方日本航空で導入されたうち3機は上記のパンナム747SPに対抗するために300と同じエンジンを搭載し、燃料タンクも追加した「767で言うER仕様」を特注、
航続距離は747SP並みの11000kmとなった。
座席はファースト・ビジネスクラスのみとビジネスマン特化仕様でニューヨーク線専用機として「エグゼクティブ・エクスプレス」の名で運用された。
この仕様がのちに標準になり、座席数は取れないのに航続距離が同等なSPの役目を奪ってしまった故にSPは生産終了することに。
だがその独自仕様が災いし他路線への運航に入れず後に座席を標準仕様にされ更には貨物型へと改造された。
なおBとついているのは計画時の名前が747Bであり名前整理の際に200Bとなったためで200という型は存在しない。

  • 747-200C
ワールド・エアウェイズがローンチカスタマーとなった貨客混合型。
そのため2階席に窓があるのに-Fのようにフロントドアやサイドの大型ドアがあるという不思議な機体。
流石に貨客混合という用途自体がニッチだった故に生産機数は控えめ。

  • 747-300
上記747SPの経験を受けて、747-100の二階席部分を後方に延長したモデル。エンジンもパワーアップ版が標準となった。
カスタマーはスイス航空。
空気抵抗の増加が少ない(っつーかむしろ100型よりも改善された)割に乗客数を増やせるため、各国の航空会社が導入した。
また100、200型に於いても300型と同様の二階席延長改造を施したいわば「なんちゃって300型」もあるが、これが上記の「SUD型」である。
100Bの改造ではなく、新品の300のボディに100相当の装備を行った100B/SUDという世界で2機しかない珍機も存在する。
シンガポール航空では独自に「ビッグトップ」という愛称が付けられていた。
エア・インディアが保有していた機体はエンジン換装やアンテナ移設で、外見は-400D相当に改造されており、ほとんど区別がつかなかったとか。

  • 747-300SR
747SR-100の後継機としてJALが導入した機体だが、導入直後に後述の400Dも導入したため4機しかなかったレア機体。
機体自体は300ではあるが400Dと同様の日本事情に合わせた改修が施されているため機体重量が400Dよりも重い。
だが元々300をベースとしたため400Dの数が揃うと長距離運用のために元に戻された。
先の200Bと共にリゾート路線で運用された機体もあり独自の塗装が施され「リゾッチャ号」と呼ばれた。

  • 747-400
フルモデルチェンジをした747。
見た目こそ従来の300型や100/200のSUD改造型とあまり変わりないが、新技術の導入により機長-副操縦士の2人体制で運航可能となったという劇的な変化を遂げている。
(300型までは機長、副操縦士に加えエンジンの微調整などを行う「航空機関士」も必要であった)
また主翼の端には誘導抵抗を減少させる「ウィングレット」という補助翼が追加され、航続性能や燃費の改善に一役買っている。
ちなみにこのウィングレットの有用性を実証したのは、第二次大戦中のドイツでBv141筆頭の奇っ怪な飛行機をこれでもか!
というほど考えたあのリヒャルト・フォークト博士なんだぜ?
ANAでは「テクノジャンボ」、シンガポール航空では「メガトップ」の愛称が付けられていた。
ぶっちゃけ「ジャンボジェット」と言ったら日本じゃたいていこいつのことを指すかもしれない。
日本の政府専用機に使われていたのもこのタイプ。JALでは400がラストフライトとなった。

  • 747-400D
SR-100の後継機としてJAL・ANAが導入したためSR同様日本専用の747。Dは「Domestic」のDであり、(標準仕様をAとして)-200Bと-300Cの次という訳ではない。
ベースは400だがSR同様に短距離運用の改修が施されており、国内での翼幅制限考慮と短距離運用では効果を得にくいことから
400の特徴であるウイングレットが取り除かれている、ちなみに400から400Dに改修された機体も存在した。
ANAでは創業以来旅客数5億人突破記念として特別塗装を募集で募り採用された案を施された「マリンジャンボ」が400Dに施され全国を行脚した。
一方747が運用できない地方空港でも飛来の要望があったため767に同じ塗装を施した「マリンジャンボjr」が運行された。
その後もANAではこの経験を活かし「ポケモンジェット」を国内主要幹線で運行していたが国際線機材にも施されたこともあった。
ANAでは当初は2015年度まで使う予定であったが、787のローンチが遅れた問題で入れ替えが進まず、飛行時間が耐用制限を超えてしまう恐れがあったため、予定を前倒しして2014年に747Dでラストフライトを行った。

  • 747-400ER(LR)
カンタス航空が6機だけ発注した珍機シリーズの一つで400をベースに最大航続距離を500マイル延長した物。
2002年に量産化されたもののカンタス以外からの発注はなく、2009年に-8が発表され-400が生産終了となったためこの生産数になってしまった。
この型をベースに貨物型がエースフランスからの発注で開発され、こちらはいくつかの航空会社で採用され40機生産されている。
NCAも発注したものの諸事情により導入はキャンセルされ機材は別会社にリースされている。
カンタスは一時期羽田乗り入れはこの747では不十分としA380での乗り入れを要請していたが、2020年のコロナウイルスの影響を受け乗り入れ機材を大型する
どころか需要激減に伴いA330へと縮小、更にA380の運用数も削減され、400ERも運行が終了してしまった。

  • 747-8
747シリーズの最新モデルにして最終モデル。
外見こそ(ry、エンジンがゼネラル・エレクトリックGEnxやロールス・ロイス トレントシリーズなどに変更されたり、主翼の形状もB787に近いものに変更されるなど、
いわば「747の皮を被った787」と言ってもいい機体となっている。
立ち位置としては「A380B777-300の中間程度の機体」という位置づけである。
旅客型である「747-8IC型」は胴体後方に「スカイロフト」と呼ばれる多目的スペースを設けることが可能。
スカイロフトだからと言ってもここにロフトバードを積みこんだり、或いは大乱闘をしたりはできないと思う。

しかしながら航空需要の変化により、一度に多数を乗せるという需要自体が無くなり、
ライバルとされたA380が生産中止が決定したようにこちらも生産終了が決定している。
旅客型の747-8ICは2017年大韓航空へ引き渡した機体がラスト。
貨物型も当初の予定からはやや遅れたが、2022年12月に最終機が生産されて2023年1月31日にアトラスエアに引き渡された。
747-8ICのみだと50機程度、-8F込みで150機程度と、1,574機が作られた747ファミリーからすると寂しい結末となった。

  • 747-○○○F
末尾がFの機体は貨物用。
最初は200Fからスタートして、後に新造機として400F、8Fが生産された。
物によっては旅客用から貨物用に改造された機体(BCF)もあり、実にバリエーションが豊富。
荷物を積むのに2階部分はいらないので*5、400Fであっても200同様のショートアッパーデッキを採用している。-8Fも同様で、-300Fがない理由もこれ。
ただし前出の旅客用から改装された400BCFの場合、この部分の改修は行われていないため、ストレッチドアッパーデッキになっている。
上にも書いてあるが、前の鼻に当たる部分がガバっと開き、ここから荷物を出し入れする。
床にはベルトコンベアのような物がついていて、荷物を半自動的に移動可能なため、貨物搬入の迅速化にも貢献している。

  • 747-400LCF
通称ドリームリフター。
アッパーデッキの途中から機体を「これでもか」とばかりに太らせた子持ちししゃも。
787の部品を各所から空輸するのに使われている。
他の747Fとは違い、貨物はお尻から出すのだが、これがなんと「横に開閉する」。
その様はエビのしっぽを折り取るがごとく。
なんでこれで飛行中の負荷に耐えられるんだと思わざるを得ない。
なお日本では生産拠点が愛知などに集中しているためセントレア空港によく飛来しており、空港に併設されている商業施設にはこのドリームリフターの
フライトシミュレーターが展示されており実際に遊ぶことも可能。

  • シャトル輸送機
その名の通りスペースシャトルのオービタを輸送するために747を元に作られた輸送機で2機存在したがどちらも中古機からの改造で1機は前述した
かつて日本航空で運用された元JA8117・747SRでもう1機はアメリカン航空で運用された747-100である。
オービタを機体上部に搭載するために支柱を設け機体重量が増えるため極力機体内部の不要なものは取り除かれ機体構造を強化。
オービタ搭載時安定性を確保するために水平尾翼に追加垂直安定板が追加され緊急時のために脱出システムが装備されている。
スペースシャトル退役後のオービタ輸送まで運用され現在はどちらも退役済み。
接続部分には「ここにオービターを取り付けよ。注意:黒い側を下にする事」というジョークが記載されている。

  • VC-25
アメリカ空軍が運用する大統領専用機、機体番号82-8000・92-9000の2機が存在し9000は基本予備機で副大統領などの閣僚が搭乗するケースもあるが
原則大統領の使用が優先され特に8000は原則大統領しか使用できない。
ボーイング707を元にしたVC-137の後継機として導入され747‐200Bを元にしているが開発されたのが747-400が出た時期だったため様々な改良がされている。
まずコクピットは一部がグラスコクピット化されており航空士が搭乗するための席が設けられている。
タラップなどがない空港での着陸やテロを警戒して機体の左舷前方にエアステアを装備。
アメリカ空軍が運用する軍用機であるため軍用機で搭載されている各種設備も多く搭載されている。
一方映画などで度々みられる脱出ポッドは実機には装備されていない。
運行は日本の政府専用機同様大統領搭乗機を判別できなくするためといざというときのための予備として2機一組で運行する。
既に後継機として747-8を選定しており2023年前後に運用開始予定、機数は3機に増える。
ただし新造機は1機で、残り2機は新古品を利用するとのこと。

勘違いされがちだがエアフォースワンはこのVC-25を指すものではなく、アメリカ空軍用機に大統領が搭乗した際に与えられるコールサインである。
そんな事態は起こらないと思うが大統領がF-15Eのリアシートに乗った場合、その機体が「エアフォースワン」となる。
なので海兵隊が使用するCV-22オスプレイに乗った時はその機体が「マリーンワン」、海軍が使用するV-107シーナイトに乗った時は「ネイビーワン」、陸軍が使用するC-20に乗った時は「アーミーワン」とコールされる。
あと副大統領が乗っている機体についてはワンの部分がツーに置き換えられる。

  • AL-1
2000年代にアメリカ空軍で747をベースに開発されていた航空機。
型番は「Airborne Laser」を意味しており、つまりはレーザー搭載航空機である。
BMD構想の一環でレーザーによる迎撃を目的とした機体で実験自体は80年代から改造したKC-135で実験を行っておりその後継機として開発された。
当初実験が順調にいけば実戦配備も検討されていたようで実戦配備された場合の運用方法もある程度考えられていた。
地上での実射試験は成功しており、2008年頃に飛行中での実射試験も予定されていた。
しかしどういった事情があったかは定かでないが2010年頃には計画を縮小、今後はAC-130などの航空機にも搭載できるようにレーザーの開発のみ続けられAL-1は
モスボール保管*6になったものの2016年頃に解体されてしまった。


アメリカ軍ではこれ以外にも空中でアメリカ軍を指揮するための空中指令所としての機能を持つE-4を運用している他、かつてはアメリカと蜜月関係を
持っていたものの現在は国交断絶しているイラン空軍では空中給油機として運用されている747も存在している。


ボーイング747の欠点(?)

座席数が多すぎて、万が一の場合に大惨事になりやすい。

これに尽きる。

事実、世界の航空事故の犠牲者数ワースト3はいずれも事故機がボーイング747なのである。
すべての事故を含めてワースト2、単独の航空事故で世界最悪のJAL123便事故(御巣鷹事故)では乗員乗客524名のうち生存者はわずか4名。
乗客数を多めに取っている日本国内線向けの機体ということもあり、一回の事故で500人以上が命を落とすこととなった。
航空史上最悪の死者を出したテネリフェ空港衝突事故も「747同士が正面衝突」した事故であり、ワースト3のニューデリー空中衝突事故も「747と別の旅客機(Il-76)が空中衝突」した事故であった。


ちなみに事故率は他と比べると特筆するほど高くないものの、ベストセラー機である事から事故件数は割と多い。1996年には経年劣化による空中分解事故も発生した(トランスワールド航空800便。某映画の元ネタになった事故)。

※上記の4事故についてはこちらも参照

また、四発エンジンからくる燃費の悪さも弱点として挙げられる。
かつては燃費を十分にペイできるほど乗客が見込めたが、日本の景気衰退と共に乗客数も減少し、B747は割に合わない旅客機となっていった。
太平洋路線に投入するにも、上記で当初60分だった双発機の1発エンジン故障時猶予がB777の時代になると330分まで延長されたのも大きな痛手となった*7
こうなると航路の制限も747と777で関係なくなってしまい、777や787など運航コストと輸送力を考えるとバランスの良い双発機が増えたため、日本国内の航空会社は次々と本機を手放し、
2014年の全日空機の退役をもって日本の航空会社から旅客型B747が消えることになった。
冒頭の写真であるNCA所属機は自社の不祥事をきっかけに747-400Fを全て手放し、747-8Fに全機切り替えており、日本籍の747-400以前の機体は存在しない。

姿を消す747

2019年までは他国で747を運行している会社はまだまだ多く日本でもタイ国際航空やルフトハンザなど定期運用のある航空会社の747は引き続き見ることは出来た。
それでも-400、-8共に数自体は減ってきている。例えばカンタス航空も羽田-シドニー便に747-400ERを投入していたが、2020年3月末で終了。
2020年には新型コロナウイルスの影響により世界中で747の引退が進んでおり、カンタスでは羽田線から引退した僅か3か月後の2020年7月をもって運行終了となってしまった。
英国のヴァージンアトランティックやブリティッシュエアウェイズも運行終了を決定し、同時にA340・A380といった4発機も全て退役させることが決定。
ルフトハンザでも-400の引退が決定、タイ国際航空は引退の予定はないものの羽田乗り入れはA350に変更、更に経営悪化以降機材整理に747が入っているも改革が
進まなかったところに新型コロナウイルスの影響で倒産したことで今後退役する可能性は高い。
とこのように世界的パンデミックの影響で世界中で747どころか燃費の悪い4発機は急速に引退が進むのであった。

一方コロナ禍による生活様式の一変、オンライン市場の急激な活性化による物流構造の大変化などが原因で、世界的に航空貨物需要が増大。
ここに来て貨物機型の747-8Fの生産終了前の駆け込み発注が行われるなど、貨物機としてはまだまだ活躍が予想されそうである。


政府専用機

日本では政府専用機としても使われていた。
日本の政府専用機を運用するのは航空自衛隊千歳基地所在の第701飛行隊、通称「特別輸送航空隊」である。
パイロット、キャビンアテンダントともに自衛官であるが、天皇や総理大臣、他国の国家元首にも応対する職務であるため、
並みのCAをしのぐ厳しい教育が行われる。
他にも747を政府専用機として使用している国はあるがかつての日本のように航空会社の機体をチャーターしてる国もある。
ちなみに日本の場合訓練や回送時でのコールサインは「シグナス(Cygnus)」であるが任務中では「Japanese Air Force」になる。

整備はJALに委託されていたが、同社がB747を手放したことで、整備できる人がいなくなってしまった。
かねてよりの高燃費の問題もあり、2018年に機種を更新することになった。代替機種は、同じボーイング社のB777で内定。
2019年3月24日に無事引継ぎが完了し退役した。
同機は政府専用機として十全な整備が行われていたため機齢に対し状態が良好なためか政府は売却で動き入札があり、貴賓室などの設備を取り除いた後に売却先に引き渡された。
売却先もその状態の良さから機齢からは考えられない値段で売りに出されていた。
なお貴賓室は石川県の小松空港に近い県立航空プラザにてショーケース展示されている。


創作物への登場

ミスター旅客機とも言ってもいい機体なので、ぶっちゃけこいつが登場する創作物は掃いて捨てるほどある。
挙げてたら文字通りきりがない。

ポケモントレーナー的には

前述の様にトレーナー的にはANAの「ポケモンジェット」の素体としても有名だろうか。
機体はJA8965(初代)、JA8962(インターナショナル)、JA8964(1999)、JA8957(ピカチュウジャンボ)、JA8956(お花ジャンボ)。

余談

航空需要増加を見越して747を大量発注したパンナムだったが結果はオイルショックや、初期導入の遅れと故障によって
パンナムの想定したほどの旅客が集まらず計画は失敗に終わる、更にはその後の双発機の性能向上による収益性の悪さ
老朽化による運用コスト増大に苦しめられ747が大きな足枷となって経営破綻した。*8

JALも多くの747を導入したがこちらもいくつかの原因はあったが747の存在が大きな足枷になっており一度経営破綻し
再建されたもののJALの747は全て退役することとなった。
JALは世界最多の747保有数を誇っていたが既存の747退役後最新の747-8は導入しておらず、現在4発機は1機も保有していない。

もっともこれは先述のように747導入期には様々な事情もあり一度に大量輸送できる機種が747しかなかったためそのための導入であったが
その後の環境の変化*9や、747と同等に旅客を運べる777などの経済性の高い双発機登場によって747である必要性がなくなったこと
JALが繁忙期に合わせた機材運用を辞めた経営方針転換も大きい。*10

スティーブン・スピルバーグ監督の映画「宇宙戦争」にはANAで活躍し、退役後にボーイングに引き取られて解体された
747-100SRの残骸が墜落した飛行機という設定で登場している。

先に述べたように引退が進んでいる747であるが長年「ジャンボ」の愛称が与えられ愛されたのは世界でも共通だったようで、2019年に エル・アル航空での引退フライトでは
航跡で747を描いており、カンタス航空でも引退フライトで自社のロゴマークであるカンガルーを描くなど他の機材のラストフライトで見られないイレギュラーな運行を
行っていることが多いことから747は世界中の人に愛されていたことがわかる。

4発エンジンと二階席に魅せられた方、ぜひとも追記修正を求む。

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最終更新:2023年11月23日 23:33
添付ファイル

*1 2017/11/05 編集者撮影

*2 元ネタは19世紀後半に動物園やサーカスで活躍したアフリカ象の名前。因みにボーイング自体は「鈍重なイメージだ」ということでこれらの名称を認めず「スーパーエアバス」としたが、一般にも浸透したこと、後にヨーロッパで航空機メーカーのエアバス社が設立されたことから、現在はボーイングもこれらの名称を用いている

*3 ただし鹿児島空港や広島空港など周辺環境の影響で拡張が難しく、市街地に隣接していた空港を山を切り開き移設した県も少なくない

*4 正確には台北-香港のドル箱路線を持つチャイナエアラインなどにも売り込みを行ったが失敗に終わっている

*5 この2階部分がある所、実は1階の屋根が凹んでいるので、荷物を入れるスペースが減ってしまう。

*6 再使用を考慮し極力劣化を防ぐ方法、米軍ではこのモスボールから再使用する事例は戦艦ミズーリやF-117などがある

*7 なおA350-900は370分で認定を取得。

*8 ただしパンナム破綻は747以外にも老舗航空会社ゆえの高コスト体質と海外路線の不安定さ、国内航空会社買収の失敗や再建中のテロ事件に湾岸戦争など様々な要因もある

*9 平成以降の大型空港の新規開港や大整備、新幹線と高速道路網の整備による国内の移動需要の分散

*10 繁忙期は流石に増便はするものの機材は同型のものか小型の機材を運用している、ANAも同様に繁忙期での機材変更取りやめを宣言をしたこともあったが結局こちらは撤回されている