恐竜・怪鳥の伝説

登録日:2016/04/08 Fri 18:09:51
更新日:2024/04/23 Tue 10:28:51
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目次

【概要】

本作は1977年4月29日に公開された東映京都撮影所製作の特撮映画。
富士山麓・西湖に現れたプレシオサウルスとランフォリンクスの死闘を軸にした動物パニック映画である。
(ちなみに西湖はさかなクンこと宮澤正之氏がクニマスを再発見した湖でもある)


【作品解説】

1975年に『ジョーズ』が公開されて世界的に大ヒットすると、世界各地で『グリズリー』や『プロフェシー 恐怖の予言』といった同様の動物パニック映画が作られるようになった。

この流れに目を付けた当時の東映の社長・岡田茂氏が企画したのがこの映画である。
(同様の経緯で企画・製作されたのが『スター・ウォーズ』インスパイアの『宇宙からのメッセージ』と『エクソシスト』インスパイアの『地獄』)

7憶5千万円もの製作費が組まれたが、理由は不明なものの実質1億5千万円しか掛けられず、出来上がった作品は当時の技術力を考慮しても非常に情けないものとなってしまった。
映画に登場するプレシオサウルスとランフォリンクスは操演で表現されているのだが、この出来がはっきり言って悪く、そのせいでクライマックスの両雄の決戦はチープなんて言葉では言い表せない絵面になってしまっている。

東映には仮面ライダーやスーパー戦隊、さらに遡れば『キャプテンウルトラ』『ジャイアントロボ』『仮面の忍者 赤影』といった名作・傑作特撮を撮る技術があったのに、どうしてこうなった……。

興行収入も散々で、当時の社員曰く 「海外も含めて大々的に宣伝したが恐ろしくコケた」 という。
…が、何故か旧ソ連では公開時に 4870万人の動員があったらしく 、今でも記録的大ヒットとして語り継がれているようである。


日本映画に怪獣映画は数あれど、実在していた古代生物がほぼそのまま(とは言え細部やスケールは違う)で登場する映画は本作が初めてと言っていいかもしれない。

しかし、 タイトルに「恐竜」と銘打っているのに恐竜は登場しない(正確にはプレシオサウルスもランフォリンクスも恐竜ではない)ので、ぶっちゃけ看板に偽りありである。
(もっとも、この時代の恐竜図鑑には首長竜や翼竜を恐竜表記しているものも結構あるため、これはそこまで責められるべき問題でもない)

ちなみに本作の同時上映は、野球漫画『ドカベン』の実写映画。
かのさくらももこ氏もハマったという(エッセイ『たいのおかしら』を参照)が、こちらも出来の方はお粗末なものだったようである。

これは評価点と呼ぶべきかは迷うが、 プレシオサウルスとランフォリンクスに食い殺された損壊死体の描写は非常にグロテスク で、予備知識一切なしで見た際にはトラウマ必至。


【スタッフ】

監督:倉田準二
脚本:伊上勝、松本功、大津一郎
音楽:八木正生
美術:雨森義充
撮影:塩見作治


【あらすじ】

※以下ネタバレ注意

時は1977年の夏。夏だというのに何故か北海道に寒気団が居座り、雪が降った。
時を同じくして富士の青木ヶ原樹海で保護された女性が「大きな石の卵を見た」と言い残し、ショック死する。

空港でそのニュースを見た主人公の芦沢(たかし)は、父が生前主張していたという「西湖の恐竜生存説」を証明できると直感。
恋人である水中カメラマンの小佐野亜希子、亜希子の友人である園田淳子、父の旧友・椋正平らと共に調査に出向く。

「竜神祭り」に沸く西湖周辺ではカップルを乗せたボートが謎の転覆をしたり、何者かに首を食いちぎられたの死体が発見される事件が起きていた。
さらに湖畔で竜神騒ぎを起こそうとした若者グループが怪獣に襲われ、岸にいた一人を残して全滅してしまう。更に観光中の外国人一家も怪獣の姿を目撃し写真撮影に成功する。

その後、西湖での湖底調査中、淳子までが異変の正体・プレシオサウルスに食われるに至り、西湖は警察によって立ち入り禁止となる。
ヘリコプターまで動員した大規模な科学調査が行われるがプレシオサウルスは発見できず、節たちは独断で樹海に調査へ向かう。
そして計画されていたプレシオサウルス攻撃作戦の準備中に、突如ランフォリンクスが出現し……。


【主な登場人物】

◆芦沢節

演:渡瀬恒彦
本作の主人公。ユニバーサルストーン社社員。
父は古生物学者であったが、「西湖に恐竜が居る」というトンデモ説を発表したせいで異端呼ばわり(そりゃそうだろ)され追放されてしまった。
ニュースを聞きつけて父の説は本当だったと確信し、その汚名をそそぐべく、自ら調査に向かう。

◆小佐野亜希子

演:沢野火子
節の恋人の水中カメラマン。
友人でもあり助手であった園田淳子をプレシオサウルスに殺され、その発生源がどこであったのかを突き止めるために芦沢に協力する。

◆園田淳子

演:津島智子
亜希子の友人で助手。
水中撮影を行っていた亜希子をゴムボート上で待っている最中にプレシオサウルスに襲われ、抵抗むなしく食い殺されてしまった。

◆椋正平

演:牧冬吉
芦沢の父の知り合いだった研究者。
調査の際に芦沢と亜希子に協力した。
樹海での調査中にプレシオサウルスに襲われ帰らぬ人に…。

◆坂井秀行

演:中村錦司
富士気象科学研究所の地質学者。
父の友人で、芦沢の恩師でもある。

◆プレシオサウルス(予告では「プレシオザウルス」)

自然環境の変化で眠りから目覚めた恐竜。全長24m、体重23t。
実際には首長竜であるが、本編中では恐竜と呼ばれる。
狂犬病にでもかかっているのかやたらと凶暴で、人間を積極的に襲って喰らう。
西湖と精進湖を頻繁に行き来していたせいでなかなか発見されなかった。
顔はティラノサウルスをはじめとする獣脚類によく似ている。またヒレの先には四本の爪があり、陸上移動が可能。
最期はランフォリンクスと戦っている最中に富士山噴火に伴う震度100の地震が発生し、その地割れに飲み込まれてしまった。
ちなみに造形を担当したのは特撮番組『怪獣王子』や『ジャングルプリンス』などで知られる大橋史典氏で、そのせいか『怪獣王子』のネッシーとよく似ている。
本作は氏が造形を担当した最後の作品となったが、どうやら硬くて動かしづらいという彼の造形物の欠点は治っていなかったようで、
そのせいで操演時に首があたかも 紙筒を無理やり折り曲げているような状態 になっていて、結果としてお世辞にも生物感があるとは言い難いものになってしまっている。

◆ランフォリンクス(予告では「ランホリンクス」)

全長13m、体重2tの翼竜
こちらは化石化していた卵が孵化して蘇ったものである。
プレシオサウルスに負けず劣らず凶暴な性格をしており、空から人間をさらったりした。
プレシオサウルスとの戦いでは嘴で目を潰すなど奮戦するも、最期は共に地割れに飲み込まれてしまった。
こちらも製作したのは大橋氏で、操演用モデルのほかに実物大の足なども作られた。
ポスターには三羽描かれていたが、劇中で出現したのは一羽のみ。
こちらは造形はまずまずだが操演の出来が悪く、生物感が全くないものになってしまっている。
余談ながらプレシオサウルスとランフォリンクスの造形にかかった費用は当時の金額で2000万円とのこと。


【余談】

  • 2004年頃にプレシオサウルスとランフォリンクスのフィギュアがイワクラから発売される予定だったが、
    残念ながら諸事情でお蔵入りになってしまった。広告によると3種類フィギュアを出す予定だったらしい。

  • 作中では富士山噴火のせいで震度100の地震が発生しているが、これは現実に起こった場合、地球が壊れるクラスの代物である。(関東大震災クラスで震度7)

  • 山本弘氏の小説、『MM9』シリーズでもこの両者は富士山麓に出現したことがあった模様。

  • 現実のプレシオサウルスとランフォリンクスはここまで大きくはない。
    プレシオサウルスが2~5m程度で、ランフォリンクスは翼開長40cm~175cmほどである。
    • ケイブンシャから出ていた「世界の怪獣大百科」ではプレシオサウルスは「体長40m、体重7000t」、ランフォリンクスは「体長30m、体重4000t」と書かれていたが、一体これがどこから出た数値なのかは不明。

  • プレシオサウルスは今でも東映太秦映画村の特撮プールに模型が展示されており、一般公開されているので、興味のある方は同地に向かわれた際、彼に会いに行ってみるのも一興だろう。

  • 2011年8月から2014年7月まで、Youtubeの東映公式チャンネル「東映特撮YouTubeOfficial」にて本作は無料配信されていた(現在は終了)。





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最終更新:2024年04月23日 10:28