ランターンの光

登録日:2015/05/10 Sun 02:22:22
更新日:2024/04/21 Sun 13:20:48
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ランターンのだす ひかりは

5000メートルの ふかさ からでも

すいめんまで とどくほど あかるい。


━ジョウト図鑑より引用━




ランターンの光とは、ランターン(ポケモン)が出す光である。
……さらっと書いたが、実はこれ、かなり凄い、いや、ヤバイ出力である。


何がヤバイのか

「いや、たかが5000mじゃん」と思う人もいるかもしれない。しかし、海水というのは、我々の思っている以上に光を通さないのだ。
具体的に言うと、全ての可視光を平均して3m、可視光の中でもっとも通りやすい500nmの波長の光(だいたいこんな色)でさえ20mで明るさは半分になる
つまり、最も通りやすい色の光でさえ、5000m海水を挟めば、その明るさはなんと2の250乗分の1になる。
なお、「明るさは 距離の2乗 に反比例する」という逆2乗則もあるが、2の250乗分の1という圧倒的減衰と比べると無視できる程度である。


それでは実際に計算してみましょう


計算がめんどくさい、難しい、という人は結論へ。
また、この項目ができるよりも前に、空想科学研究所でも一度研究されている。

条件

まず、ここではランターンの発光がこの色の光のみで、それ以外のエネルギーを放出しないと仮定する。
これが、海中でランターンが発光する際の考えうる最低エネルギーである。

水面1点での明るさ

まずは水面での明るさを計算しよう。今回は、海面に映るランターンの光が夜空のお星様と同じくらいの明るさだとしよう。
その明るさは、5÷10の6乗ルーメン毎平方メートルである。
しかし、このルーメンという単位は、人間の感覚によるものなので、よく使われるワットに単位を変換しよう。
今回の仮定の波長500nmという色は、都合よく暗闇の中で人間が一番認識しやすい光である。
そしてこの色の光を1ワット出すと、それは1700ルーメンに相当する。
よってこの時の明るさは、2.9÷10の9乗ワット毎平方メートルである。

ランターンを中心とした球上の明るさ

さて、ランターンから5000m離れた場所は、この観測点だけではない。
ランターンを中心とする半径5000mの球の球面上がすべてこの2.9÷10の9乗ワット毎平方メートルという明るさを持つ。
よって、この数字にその球の表面積である4×5000の2乗×3.14をかけて、9.1÷10の3乗ワット。
これが間に海水5000mを挟んでいる場合の出力である。
そして最後に、海水5000mを挟む事により2の250乗分の1になっているこの数字を、元に戻せば、ランターンの出力が求まる。

ランターンの出力

さて、これでランターンの出力を求めることができただろう。その出力は、

1.7×10の73乗ワット

色付きで、省略せずにもう一度。

約17,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000ワット

桁が違いすぎる。あまりの桁の多さにSI接頭辞も対応していない。SI接頭辞最大のQ(クエタ)は10の30乗である。*1
日本語で表せるものとしては頻波羅(びんばら)などである。

さらに言えば、これはランターンがこんな色の光だけを出して、熱を発しない場合である。
もちろん、ランターンの光は明らかにこんな色ではないし、熱を発しているかもしれない。
そうした場合は、この数字が更に大きくなる

比較

さて、この出力を他のものと比較してみよう。

1ワットは、1ジュール毎秒であるため、ここではランターンが1秒間発光した際のエネルギーを基準とする。
……と、いいたいところだが、あまりにも大きすぎるため、比較できるものがない。
手にしたカプセルがピカリと光った時のウルトラマンの変身時の光ですら100万ワットの輝きである。

一応反物質化光線(名称不明)で似たようなことをやっているが、それとくらべても

反物質化光線で反物質化したウルトラマンガイア(3.8×10の20乗ジュール)4.5×10の52乗人分

……正直、桁が違いすぎて比較する意味もないし、たとえ比較したとしても相手側が0で近似される
あまりにも天文学的な数字である。

……ん?天文学的?
なら天文学と比較したらどうなのかって?

こうなります。
恐竜絶滅時の隕石衝突(5.2×10の23乗ジュール) 3.3×10の49乗発分
太陽(3.8×10の26乗ジュール毎秒) 4.5×10の46乗個分
ジャイアント・インパクト(月が発生した原因の隕石衝突)(3.2×10の31乗ジュール) 5.3×10の42乗回分
地球を破壊する『猿の惑星』のコバルト爆弾(10の33乗ジュール) 1.7×10の40乗個分
トップをねらえ2!』のバスター雷王星落とし(1.6×10の37乗ジュール) 10の36乗個分
太陽を破壊する『ウルトラマン超闘士激伝』のウルトラキー(1.9×10の41乗ジュール) 8.9×10の31乗個分
太陽系を完全に消し去る『ドラゴンボールZ 舞空闘劇』のセルかめはめ波(3.7×10の43乗J) 5×10の29乗分 
ガンマ線バースト(宇宙最大の爆発)(5.0×10の43乗ジュール) 3.4×10の29乗回分
銀河系全体の質量エネルギー(3.6×10の59乗ジュール) 4.7×10の13個分
宇宙全体の理論上の総質量エネルギー(10の70乗ジュール) 1.7×10の3乗個分

ステカセキングの悪魔のシンフォニーの3×10の−99899乗秒分

もはや天文学的というレベルですら通り越している。
天文学的という言葉がランターンにはふさわしい。
そしてそんなランターンですら足元にも及ばないステカセキングのヤバさが改めて浮き彫りになる。

余談。2009年8月25日6時37分33.5秒に発報された緊急地震速報の予測値、マグニチュード214748364.7(10^322122552ジュール)にはさすがに敵わない。


追記・修正はランターンの「あやしいひかり」を浴びながらお願いします。
※こんなの浴びたら「あやしいひかり」でなくとも目を潰されて混乱します

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最終更新:2024年04月21日 13:20

*1 2022年11月より制定。それまで最大値であったY(ヨタ)は10の24乗。