ドゥームメタル

登録日:2015/02/19 Thu 23:08:23
更新日:2023/12/19 Tue 20:11:33
所要時間:約 5 分で読めます




ドゥームメタル(Doom Metal)」とは、ヘヴィメタルのサブジャンルの一つ。

「過激」で「速い」イメージを持たれがちなヘヴィメタルの中において、「遅さ」「鈍重」「怪しさ」などをテーマにしたサブジャンル。

当項目では近似ジャンルである「ストーナーロック」「スラッジコア」なども合わせて説明する。

また、ドゥームジャズ(ダークジャズ/ノワールジャズ)、ドゥームコア、ダーク・アンビエントなどメタル以外のジャンルとも関連がある。


概要

ドゥーム(doom)』とは「運命」「悲運」「破滅」を意味する単語であり、
その名の通り暗く陰鬱なテーマを扱うバンドが多い。
このジャンル名はCandlemassの1stアルバム「Epicus Doomicus Metallicus」に由来すると言われている。

確立された時期には諸説あるが、その萌芽はヘヴィメタル誕生とほぼ同時期に芽吹いた。
多くのバンドがヘヴィメタルの祖と崇めるBlack Sabbathの記念すべきデビューアルバムの一曲目。
世間がBlack Sabbathと出会ったその曲こそが、ドゥームメタルの元祖にして頂点「Black Sabbath(邦題:黒い安息日)」である。

棺おけでも引き摺るようなおどろおどろしいリフと、呪詛にしか聞こえないヴォーカル。
オカルティックな雰囲気とドラマティックな展開。

それを継承したのがドゥームメタルとその周辺ジャンルのバンド達である。

主たる特徴

前述の通り「重さ」や「遅さ」を重視した音作りが特徴。
引きずる様なリフやサイケデリックだったりオカルティックだったりする雰囲気も大きな特徴である。

楽器類

演奏に使用される最も一般的な楽器は、言うまでもなくギター、ベース、ドラムだが、キーボードやシンセサイザーを使用することもある。
ギターとベースは、同じリフをユニゾンで演奏することが多く、しばしばダウンチューニングを使用することがある。
まぁ、ベースは音圧稼ぎがほとんどだけど。

ボーカル

正統派ドゥームにおいては、Black SabbathやPentagramなどの影響もあって、クリーンなボーカルを好む傾向にあるが、
デス・ドゥームやフューネラル・ドゥームでは、唸り声や叫び声を使用する。
中には、オペラみたいなスタイルで歌うバンドもいる。

歌詞のテーマ

苦痛、鬱病、恐怖、など、大体のテーマが陰鬱。

中には宗教的なテーマを扱うバンドもいる。
恐怖を呼び起こすために、最後の審判について書いたり、死の象徴として十字架や十字形の墓石を使用したり。

そして、忘れちゃいけないのがお薬
これはストーナー・ドゥームにおいて最も一般的であり、歌詞には薬物が齎す様々な影響が綴られている。

主な内包ジャンル

正統派ドゥーム

何をもって正統とするかは多少議論の余地はあるものの、概ね前述のBlack Sabbathの音楽性を引き継いだバンドを指す。
ヘヴィかつおどろおどろしい演奏とオカルティックな歌詞が特徴。

代表的バンド
Black Sabbath(初期)
Pentagram
Saint Vitus
Cathedral(2nd以降)

エピック・ドゥーム

80年代に登場したCandlemassが確立したジャンル。
初期Black Sabbathのおどろおどろしさとロニー・ジェイムス・ディオ在籍時のBlack Sabbathのドラマチックな展開と伸びやかに歌い上げるオペラ的歌唱を特徴とするサブジャンルで、Candlemassは「Iron MaidenとBlack Sabbathを足したような音楽性」と言われていた。
しかしながらCandlemass以降有力なバンドが出てこなかったため、ドゥームメタル内でもややマイナー。

代表的バンド
Candlemass
Heaven&Hell(ロニー期サバスのメンバーが結成したバンド)

ストーナー・ドゥーム(ストーナー・ロック)

ストーナー(Stoner)とは麻薬常習者を指す英単語。
Black Sabbath(特に麻薬趣味が加速した3rd以降)と同時期に活動したサイケデリック/ガレージ・ロックバンドからの影響が強く、ファズなどで作り出された分厚いディストーションや大麻使用の酩酊感を表現した楽曲が多い。
他のサブジャンルほど「遅さ」に重きを置かれず疾走曲も多い。
ストーナー・ドゥームとストーナーロックの境界は曖昧で、ストーナー・ロック自体はどちらかと言えばハードロック/ガレージロックのサブジャンルでありルーツがグランジと似通っている為、メタルの延長でストーナーを聞き始めた層とガレージ/グランジバンドを探しているうちに出会った層が混在するジャンルでもある。
両者で喧嘩でも起きそうなものだが、になっているので問題無い。(偏見)

代表的なバンド
Kyuss
Sleep
Electric Wizard
BongZilla
Fu Manchu
Orange Goblin

スラッジ・ドゥーム(スラッジコア)

ハードコアパンクをルーツに持つ、ドゥーム特有の引き摺るような「遅さ」に重きおいたジャンル。
そもそもはハードコアパンクバンドBlack Flagが代表作「My War」にてBlack Sabbath的なスローでおどろおどろしい曲を披露した事に端を発する。
そのルーツ故に音作りもラフで、シンプルなリフのバンドが多く、他のハードコアの発展ジャンルと共に「パワー・ヴァイオレンス」と括られることもある。

代表的なバンド
Black Flag(My Warのあたり)
EyeHateGod
Down*1

デス・ドゥーム

Obituary、Autopsyといった初期デスメタルバンドの中にはドゥーム的なおどろおどろしさを取り入れたバンドも多くそれをメインにすえたのがこのジャンル。
この他Paradise Lost、My Dying Brideといったバンドはそこに北欧特有の荒涼とした冷気を取り入れてゴシックメタルを作った。

代表的バンド
Cathedral(1stのみ)
Paradise Lost
My Dying Bride(共に初期のみ)

フューネラル・ドゥーム

Funeral=葬儀・葬式を意味する名を冠するサブジャンル。「遅さ」「暗さ」をトコトンまで突き詰めたジャンルで、シンセサイザーなどで暗く沈痛な雰囲気を演出するのが常套句。
その音楽性からダーク・アンビエントなどと親和性が高い。

代表的なバンド
Thergothon
Nortt

ブラッケンド・ドゥーム

上記ジャンルとブラックメタルが結びついたもの。
歌唱がブラックメタル特有の金きり声のようなダミ声になったり歌詞が反キリスト的になるなど違いはあるが、違いは曖昧

代表的バンド
Forgotten Tomb
Woods of Ypres

ドローン・ドゥーム

ドゥームメタルの極地。「重さ」「遅さ」の極北・究極とも言うべきジャンル。とにかく重く最小限の少ない音数で延々と反復されるメロディが特徴。
そのノイジーで圧倒的な音圧と鈍重さからしばしば「拷問」「圧殺」の枕言葉が付く。
アバンギャルドメタルの一種として扱われることもある。

代表的なバンド
Earth、Sunn O)))
Khanate

代表的なバンド

言うまでもなく最高かつ問答無用のレジェンド。彼らの歩んできた道がドゥームと繋がる神的存在。
「Black Sabbath」「Master of Reality」「Heaven And Hell」は必聴。

  • Cathedral
グラインドコアの祖、ナパーム・デスのヴォーカルだったリー・ドリアンが結成したドゥームバンド。
1st「Forest Of Equilibrium(邦題:この森の静寂の中で)」で世界最速から世界「最遅」のデス・ドゥームへと変貌を遂げるが、2nd「The Ethereal Mirror」以降はサイケ/ハードロック寄りになっていき、「Uh!…Disco SuparNova!」とか言っちゃう。
またリー・ドリアンはドゥームやサイケバンドの作品をリリースするレーベル「Rise Above Record」を設立し、ドゥーム全体の活性化に寄与した。
代表作は「Forest Of Equilibrium」「The Ethereal Mirror」「Endtyme」

  • Sleep
ストーナー・ロック界の伝説的なバンド。スリーピースでありながら分厚い音像と大麻の酩酊感漂う楽曲で99年に解散した今もファンは増え続けている。
2nd「Sleep's Holy Mountain」の完成度もさることながら、彼らを伝説的バンドにまでのし上げたのは


アルバムに1曲のみ、ほぼ同一リフと同じようなリズムを延々52分以上繰り返す名盤(?)「Jerusalem」である。


アルバムコンセプトも「葉っぱでキメッキメの隊商が聖地エルサレムへ、極上の大麻を求めて砂漠を旅する」という明らかにおかしいもの。
ちなみに後年リマスタリングと施し、さらに11分ほど長くした完成形「Dopesmoker」がリリースされている。

  • Kyuss
ファズで歪ませた分厚いギターとサイケデリックでありながら乾燥しきった独特の空気を持つアメリカのバンド。
彼らの特異な音楽性は、彼らの出身がカリフォルニア州の砂漠パームデザートだったことから「デザートロック」と呼ばれた。
名前が読みにくい事が「Kyuss」とかいて「カイアス」である。「キュス」とか言うと砂漠に埋められるぞ。
代表作は「Blues For The Red Sun」「Welcome To Sky Valley」

  • Queens Of The Stone Age
Kyussのギタリストだったジョッシュ・オムが中心となって結成されたバンド。シンプルなリフとリズムを延々と繰り返しながらも捻くれたようなメロディが依存性を生む独特なバンド。
元Nirvana、現Foo Fightersのデイブ・グロールが参加した、2002年発表の「Song For The Deaf」ではグラミー賞を獲る快挙を成し遂げ、ストーナー界では初の快挙となった。
もっとも本人は「ストーナー」と呼ばれるのを嫌っているようだが(前作「Rated R」で『コ、コ、コ、コ、コカ~イン♪』と歌ってた人に言われてもなぁ)

代表作は「Rated R」「Song For The Deaf」「Era Vulgaris」

  • Bongzilla
「Bong(大麻を吸う壷みたいな器具)」と「Gozilla(怪獣王)」の合わせた名を持つアメリカのバンド。
名前の通りとにかく大麻大麻アンド大麻。1stアルバムのジャケットは大麻だらけで音も煙たくてむせかえるほどのストーナーっぷり。
代表作は「Stash」

  • Electric Wizard
圧倒されるほど歪んだ音の壁と煙たいサウンド、オカルティックな雰囲気。オジー期Black Sabbathを拡大解釈したような重厚ドゥーム。
代表作は「Come My Fanatics...」「Dopethrone」

  • Fu Manchu
「ふーまんちゅ」というロリの舌ったらずなつぶやきのような可愛い名前にそぐわぬ爆走ブギー・ストーナーバンド。
代表作「The Action Is Go」「King Of The Road」

  • Candlemass
怪しくドラマチックな展開でエピック・ドゥームというジャンルを作り上げたスウェーデンの伝説的メタルバンド。
巨漢シンガー、メサイア・マーコリンのオペラ的で伸びやかな歌唱と、どっかの宗教団体の教祖のようなアリババスタイルも特徴的だが、Therionなどで活躍した超実力派シンガー、トーマス・ヴィクストロムなど他のボーカリストも実力派揃い。
代表作は「Nightfall」「Ancient Dreams」「Death Magic Doom」

  • Thergothon
フィンランド出身の元祖フューネラル・ドゥームバンド。
BPM40くらいの遅く暗く破滅的な音楽性は多くのバンドに影響を与えたが、デモとフルアルバムを1枚ずつしかリリースしていないため余計にカルト化・伝説化している。
代表作「Stream From The Heaven」

  • Sunn O)))
極重・極遅の轟音と宗教的パフォーマンスでドゥーム界に君臨する孤高のバンド。CDの帯やライナーに「拷問」だの「圧殺」だの物騒な言葉が並ぶが実際の音を聴けば正に的を得た表現と言える。
再生ボタンをおした瞬間から「ズヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
といったノイズまみれの轟音地獄(天国?)が広がっていく。
彼らも名前が読み難いが「O)))」は発音せず「サン」と読む。
代表作「Fight Of The Behemoth」「Altar(日本のロックバンドBorisとの合作)」「Monoliths & Dimensions」

日本が生んだ最高のオカルティックハードロック/ヘヴィメタルバンド。
Black SabbathとKing Crimsonをルーツに持ち、江戸川乱歩などのからも影響を受けた特異なスタイルで現在も活動中。
代表作「人間椅子」「黄金の夜明け」



水パイプを手に人生から落ちこぼれてゆく。追記・修正にみちた国まで煙を追いかけて…

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最終更新:2023年12月19日 20:11

*1 ほとんどハードロックだが文献によっては「スラッジメタル」とも