失敗国家

登録日:2011/10/06 Thu 10:27:01
更新日:2024/03/19 Tue 10:34:44
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失敗国家とは、文字通り政府が国家の運営に失敗し、その責務を果たせなくなってしまった国家のことである。

+ 目次

◆失敗国家とは

別名「破綻国家」「崩壊国家」「脆弱国家」
我らが日本国にも深刻な社会問題や政治上の失策は数多く存在する。が、本項で取り上げる失敗国家にはとても敵わないし、ここに我が国が挙がる事も無い。
なぜなら失敗国家は完全に国が国として機能しなくなっている国家の事を指すからである。
この「国として機能しない」という言葉の意味するところは、政治家同士の争いで政治が進まないなんて生易しいレベルではなく、
「国に頼るより俺自身でやった方が早いぜヒャッハー!という価値観が国民全体に染み込んでいるレベルを指す。

そもそも(まともな)国家というものは、権力を持っている政府が国家の構造*1を制御し、政府が果たすべき基本的な責務、
例えば正常な法体系の維持や国民への公共サービスの提供などを果たしているものである。
これによって国家の三要素と言われる「領域」「人民」「権力」を維持していることで国家として認められるのである*2

失敗国家には国土全体に対して権力を行使できる統治機構なんてものはない
せいぜい首都近辺にしか影響力がなく、独断で行動する地域の有力者、すなわち軍閥の方が実質格上になっていて警察を送る事すらできない。
戦国時代の日本を思い浮かべればわかりやすいと思うが、統治機構である天皇家や貴族は最早単なるオカザリとなり、国の正規軍であり事実上の三権を掌握する室町幕府は京の町一つ支配できず、地方は戦国武将が血で血を洗う激戦地帯。
つまりは、そんな戦国時代を21世紀の今になってもリアルでやっているような国こそが失敗国家という訳である。
つーか「軍部(武士)が王家(皇室)から離反して武力でこれを屈服させて政権を掌握(=鎌倉幕府創立~承久の乱)」しておきながら、
6世紀半もの間終ぞ易姓革命を起こさず大政奉還により自発的に政権を王家に返上した日本というのは世界史上例外中の例外である。

他にも
  • 肝心要の統治機構は賄賂や私腹を肥やす者ばかりで腐敗だらけ。かと言って彼らを追い出したら統治をする者がいなくなる。
  • 徴税権はあっても名目だけで、徴税しようにも徴税する官吏に力がなく「払うのは嫌」の一言で徴税を断念するしかない。あるいは経済が破綻していて「無い袖は振れない」ため徴税しようが無い。
  • 財源なんてものはなくせいぜいODA(先進国からの貸付)や資源収入がある程度なので、国が行うべき公共サービスを提供できるわけもない。このような状態なので、夜の衛星写真で見ると首都以外真っ暗闇が当たり前で、病気になっても医者に診てもらえなかったり、安全な水や適切な公衆衛生が手に入りづらく子どもの栄養失調・はしかなどによる病死も少なくないため、平均寿命は40代後半〜50代前半、60代に食い込めていれば上出来。
  • 外交をしようにも国家代表を送れない、あるいは国家代表の代わりに複数の「自称国家代表」が現れる
  • なぜ国が消滅しないのかといえば、国際的に国家主体として認められているからにすぎない*3
そんなレベルの国家が本項目の失敗国家なのである。


◆失敗国家ランキング

失敗国家の指標として失敗国家ランキング*4が存在してしまっている。
これはアメリカの平和基金会(FFP)が2006年から毎年発表しているもので各国の状況を数値化してランキングしたもの。
ちなみに、ソマリアは失敗国家ランキングで6年連続1位に輝いている。
「あの」ソマリアですら6年連続程度なのかよと突っ込んではいけない。その後も3位以下になってないし。

なお、実際は情報が乏しく全貌が不明な地域も割とある*5為、仮にこれの上位に書かれていなくても、まだまだ危ない所は存在する。
あと国際的に国家承認されてないとかで、そもそも載ることができない国というか「自称国家」も存在する。
その他にも幾つかの条件があるため載ってない国家がある。コソボとか台湾とか西サハラとか。
イスラエルに関しては、2020年まではヨルダン川西岸地区を併せた「イスラエル・ウェストバンク」として掲載されていたが、2021年からは「イスラエル」と「パレスチナ」で別に掲載されている。

12項目にそれぞれ点数がありそれでランキングを出していく以上偏差値を割り出すのも可能だが、高いのに悪いと違和感があるため、120-対象国の12項目の合計点数から出された偏差値を以下に記載する。

日本は179か国中161位(2023年、以下同じ)で30.5点(偏64.7)。2006年がピークで、その後のリーマン・ショックや東日本震災、熊本地震の影響などで評価は少し落ち気味になっているが、失敗国家と言える様な状態では全くない。
イギリス148位(偏60)、ドイツ166位(偏67.2)、フランス162位(偏65.4)、イタリア146位(偏差値59.7)と、欧米の先進諸国とさほどの差はないのである*6
なお世界一の大国アメリカでさえ141位(偏58.6)という順位からもわかる通り、「国がお金持ちかどうか」ではなく「国民が快適に生活できるかどうか」を示す指標である事を留意されたい*7
またアメリカ自身も同じ年月で日本とほぼ同程度評価を落としている。

栄えある最下位は2011年~2022年まではフィンランドだったが、2023年にノルウェーが13年ぶりの最下位に復帰した(偏71.4)。*8
隣のスウェーデンも含めて北欧三か国は順位が低い。
+ 各地域での最低点の国
地域 国名 得点 全体の順位 偏差値
アジア シンガポール 25.5 165 66.8
ヨーロッパ ノルウェー 14.5 179 71.4
アフリカ モーリシャス 38 154 61.1
アフリカ(大陸) ボツワナ 55.3 122 54.4
北アメリカ カナダ 18.9 173 69.6
ラテンアメリカ ウルグアイ 34.4 157 63.1
オセアニア ニュージーランド 16.7 176 70.5

悪化した国としては、ロシアから侵攻を受けたウクライナはもちろん、経済破綻したスリランカもそれに次いで大幅に上昇し、警報クラスの90点台まで上がってしまった。

ちなみに上記の失敗国家ランキングは、12の項目を10.0点満点で数え、合計120.0点満点。点が高い程危険。
なので1項目だけ10点近い物があっても他の項目が低ければ、合計点は低くなり失敗国家ではなくなる。意外と忘れ易い点なので注意。
例えば2023年の日本は「人口構成圧力の増大」が5.9点と高めだが、他の項目が平均2.2点と低いため合計30.5点となっている。

逆に言えばこのランキングの上位に存在する国家、すなわち失敗国家というものは、大半の項目において失敗している国家だと言える。
ちなみに2023年第1位のソマリアは120点満点中111.9。10.0点満点の2つを含め、一番低い項目でも8.6点。
もはややばくない項目が存在しない。まあトップランカーはだいたい全項目がやばいのだが。
トップ20は当たり前のように8点台、9点台が存在し、点数の低い項目でも5点を下回ることは滅多にない。

我々にとって比較的身近なヤバい独裁政治の国、北朝鮮ですら2023年現在で37位(87.0点、偏41.2)。
「国家の正統性」が9.8点を取るなど確かに国家としてかなりやばい状態ではあるが
  • 国内の不満分子がそこまで強くない
  • 育った人材が海外に逃げていない
  • 難民による社会不安が起きていない
といった良くも悪くも独裁国家として機能している(=国家権力・組織が統治機構として機能している)がゆえにトップランカーからは一段落ちる評価をされている


◆失敗国家の指標

上記の失敗国家ランキングの指標として掲げられているのは以下の12項目。
なお、日本の点数は2023年準拠である。

1.安全保障装置の状態

軍や警察といった安全保障の為の組織がしっかり機能しているか?汚職はないか?

アイコンは警察官。

日本は1.5点。
全国各地に警察署や交番が存在し、自衛隊も強力である。
どちらも中央政府の統制下にあり、汚職や不正も皆無でこそないが、十分軽微と言える水準である。
「これでも?」と思われる方もいるだろうが、高得点がついてしまう国は「街中で一般市民が警察に適当な刑罰の名目で捕まり、収監の目こぼしとして賄賂を要求される」「軍人が略奪まがいやストライキを平気で行う」「捜査機関が検挙自体できない」とかそういうレベルである。
大多数の人々が「刑務所の受刑者なんて、自分たちと縁もゆかりもない」等と考えられる日本は恵まれた国である。

2.利己的(派閥的)なエリートの台頭

私利私欲や偏った政治思想を満たす為だけの政治家や官僚が力をもっていないか?
また、権力闘争や政治的な争いが起き、政治運営に支障を来していないか?

アイコンは対立し合う2人。

日本は2.6点。日本の政治家も多々批判されているが、利己的なエリートとはみなされていない。
訳の分からないことを言って選挙に出る人たちもいて、そういった人々が当選する事も無くはないが、それでも国会で有力な勢力を取ったりはしていない。
与野党の大論戦をみていて「どこが?」と思う人もいるかもしれないが、高得点をとっている国は与野党が議会で怒鳴り合いどころか、銃で命の取り合いをする世界である。

3.不満分子の存在

選挙などで選ばれておらず正統性を持たないテロリストや革命組織が力を持っていないか?

アイコンは握り拳。

日本は1.9点。日本では野党の議員も選挙で選ばれているし、選挙で負ければ与党もちゃんと政権を明け渡す。
その政党や議員がポンコツであるケースもなくはないが、そういう政党・議員にしたって次回選挙で負けるなりクビになるなりして立場を失えば大人しく姿を消す。そこが日本が点数が低い所以である。
オウム真理教や革マルの様な選挙に基づかない過激派組織自体は無くもないが、力を持っているとまでは言えない。
ここ5年近く点数が下がり続けており、2022年には安倍晋三前総理大臣が遊説中に射殺されるという大事件が起き、その9ヶ月後には岸田首相が演説中に爆弾を投げ込まれているが、それでも点数は下がっている。*9
そもそもこのランキングが始まったのは2005年で、オウム真理教の幹部らは前年に死刑判決を言い渡されている。もしオウムらがテロを起こした1994〜95年にこのランキングがあったら5〜7点程度になっていただろうか。

高得点を取っている国ではテロリストや反政府勢力が国内に跋扈し、それを抑え込めずに政府軍とドンパチしたり、頻繁にテロや要人暗殺事件が起こるとかそんなレベルである。

4.経済状況の悪化と貧困

経済の低迷によって貧困や失業にあえぐ者が増えていないか?また、麻薬や人身売買などといった違法なビジネスが横行していたり、単一の産品や産業に依存していないか?

アイコンは落ちるチャート。

日本は3.5点。
さまざまな貧困は日本国内でもかなり問題になっているが、それでも国家が責務を果たしていないという程の状態ではない。近年の物価上昇についても主要国では一番インフレを押さえ込んでいると評価されている。

政治上の経済・金利政策の失策や増える子ども食堂を見てこれでも?と思うかもしれないが、高得点を取っている国は多くの国民がその日暮らしを余儀なくされ、そもそも子ども食堂のような社会インフラがほとんどなく、失業率も特に若年層は2桁%が多く、いわばモノカルチャー経済でその産品の国際価格次第で国民の生活が大きく左右されるとかそんなレベルである。


例えば先進国の中でも高い失業率に苦しんでいるイタリアは5.2点、スペインは4.5点、労働環境などで高い評価を得ているフランスも一貫してほとんど日本と同得点だったりする。


5.不均一な経済発展

国民全体が経済発展の恩恵にあずかれているか?一部の権力者や都市部の住民にばかり富が集中していないか?

アイコンは円グラフ。

日本は2.9点。日本全国物価はさほど変わらないし、どこに行っても公的サービスが受けられる。
均一性はかなり高いと言えるだろう。
無論アメリカは日本よりやや高得点となっている。
高得点をとっている国ではこうした富が都市部にしか行き届かず、地方の住民はもはや無政府状態での暮らしを余儀なくされているケースもあり、空から航空写真を撮ると富裕層と貧民層の住居がまるで別世界かのようにくっきり分かれていることもしばしばである。


6.人材及び頭脳流出

国内で育った人材が海外に逃げていないか?

アイコンは飛行機とカバン。

日本は2.7点。
現段階ではどうという訳ではない。日本が島国であることに加えて、日本語が日本国内でしか通じないという点もあるだろう。
ただ、近年は大学などの研究者や優れた人材が安い賃金に耐えかねて逃げているという指摘が多くなってきている。

高得点をとっている国だと、教育水準が高く国を支える人材になれる人たちほど国を見捨てて海外に職を求めて渡航、場合によっては亡命してしまうのである。

7.国家の正統性

現在の権力者は国家の正統な代表者と言えるか?
政権が政治プロセスを透明にし、国民の支持を受けているか?*10

アイコンは投票箱。

日本は0.3点。皇室も幅広く支持されているし、選挙はさほどの混乱なく適正に行われ、そのような選挙で与党は国民的支持を受けている。
失敗国家や高得点を取っている国だと一つの政党からしか出馬者が出ない名ばかりの翼賛選挙だったり、選挙結果を不正だと攻撃する等の形で堂々と無視して政権に居座ろうとする権力者がいたり、そもそも選挙が行われず、政権はクーデターで奪取されているケースさえある。
日本の指標で最も点数が低く、オランダ、スイス、デンマークと並び堂々の世界トップタイである。

8.公共サービス

医療・教育・水と公衆衛生・輸送インフラ・電気などといった国民にとって不可欠な公共サービスが整っているか?

アイコンは道路。

日本は1.8点。人が住んでいればどこの地域にも学校や病院、水道局などの公共設備がしっかりある。
抜けがない訳ではないが、それでもかなり整っている部類だ。
東日本震災直後は5.0点まで急上昇したがその後しっかり点数を落とした。

9.人権及び法の支配

国民に表現や報道(言論)の自由や信仰の自由、裁判を受ける権利などの基本的人権が法律で保障されているか?
国内のどこに行ってもそれらの保障がきちんと機能しているか?

アイコンはテミス*11像。

失敗国家や高得点を取っている国の場合、言論(報道)や表現の自由は容赦なく弾圧される。
処罰も裁判なしであいまいな法律に基づいて行われる。あるいは裁判とは名ばかりであり、本人の言い分も聞かれず、弁護人もいないようなケースがしばしばだ。ネット上では大変厳しいネット検閲を敷いたり*12、政府に都合の悪いニュースを揉み消すこともザラにある。
また特定の宗教の教義や地域の不合理な因習に基づいて政治が行われ、結果として女性等が爪はじきにされる例も多々ある。ブラジャーをした女性を鞭打ち刑に処したり、レイプ被害者を死刑に処すなどの行為が横行している。*13

日本は2.8点。男女平等・労働者・犯罪被害者・難民に代表される外国人の権利保障など、国際的に十分でないとみなされている権利保障も少なくない。
それでも、裁判は誰でも訴えられ、裁判なく刑罰に処されることはないし、生存権や表現の自由など、幅広い権利が実効的に保障されている部類である。
良くも悪くも安定していて15年間点数の上下が0.5点に収まっている。*14
ちなみに余談であるが、死刑制度は先進国目線では肩身の狭い制度であり、死刑存置国はほぼ必ず点数が3点以上になるという特徴がある*15
死刑存置国ながら3点未満の日本はやはり高評価であると言えるだろう。*16
オウム真理教のメンバーなど15人の刑を執行した2008・2018年とその翌年のランキングでも大きな上昇は無かった。
なお上記で触れた大変厳しいネット検閲を実施していると見做されている国は12ヵ国あり、それらの国々の平均点は8.2点である。

10.人口構成圧力の増大

人口が多すぎたり、人口構成が高齢者や未成熟者ばかりで労働人口や社会保障が持たなかったりしていないか?
また、国民が平等に食料品を手に入れられ、安全な水にアクセスできているか?
病気が蔓延していたり、自然災害に対して脆弱になっていないか?

アイコンは大人と子どもの男女。

日本は5.9点。唯一まずい事になっている。主な原因はいわゆる少子高齢化。
なお震災直後は8.3点と本項目の失敗国家とタメをはれる状態にまでなっていた。

11.難民および国内避難民の大量移動

戦乱や大災害などで難民がキャパシティを越えてやってきたり、避難民が国内を移動し、不安定になっていないか?

アイコンは難民テントと難民。

日本は2.6点。当初は1.0前後だったが、東日本大震災で4.0点になって以降3~4点前後で、近時は下降傾向である。
島国と言うこともあって国外からの難民流入などは少数だが、震災後の点数上昇は震災そのものより原発問題が大きいのだろう。

12.他の国家又は外部の主体の介入

外国から侵略もしくは政府に反発する組織に対する外国の援助や経済制裁などの深刻な政治的圧力を受けていないか?また、国連や他の国からの支援に依存していないか?

アイコンは降り注ぐ矢印。

日本は2.0点。北朝鮮からのミサイルや北方領土、尖閣諸島等の領土問題こそあるものの、島国である日本は外部からの圧力にはかなり強い。
震災直後を除けば国際的な支援も特に必要とはしていない(2012年は4点まで上がっていた)。
在日米軍との関係も一部軋轢があるものの基本的には良好であるし、かといって完全に依存している状態ではない。

ウクライナなどは、ロシア侵攻によって2022年の7.5点から2023年は10.0点まで跳ね上がってしまった。*17

無論世界最強国ことアメリカはこの指標が最も点数が低く、世界でもトップクラスである。

2023年は3,4,5,9には10点の国家は存在しない。

これらの点数が
  • 90点~120点だと「警報」
  • 60点~89.9点だと「要注意」
  • 30点~59.9点だと「安定」
  • それ以下だと「持続可能」
と評価される。
日本は最盛期は持続可能の域に入っていた事もあったが、現在は持続可能に限りなく近い「安定」ランクである。
G7各国は軒並み「安定」以下だが、G20まで広げると「持続可能」〜「要注意」まで千差万別となる。下はカナダの173位(18.9点)、上はトルコの52位(81.2点)。


◆失敗国家と普通の国家の違い

指標だけ見せられてもイメージが湧きにくいかもしれないので、もう少し簡易で一般に見やすい基準を考えてみよう。
分かりやすい失敗国家と普通の国家の違いとしては
  • 警官と軍人に給料が払えている
  • 教師に給料が払えている
この二つが大きなポイントであるらしい。

警官と軍人は国家権力の象徴にして国の統治の手足となる。例え反乱が起きたり、外国から侵略があったり、犯罪が起きても彼らがしっかりしていればとりあえずは鎮圧できる。
末期のカダフィ政権のように「逆らう市民をカラシニコフで掃討するだけの簡単なお仕事です。日給一万円」とか募集しているようでは、そこにまともな人材が集まっていない証拠であり、国がマズいというのは簡単に想像がつく。
警官も軍人も武器を所持している。給料を遅配したりすれば簡単に反乱を起こされたり、無法者に武器を与えただけという結果になってしまう。
失敗国家にありがちな「軍部・軍隊出身者のクーデター」からもそれがわかるだろう。
さらに警察も軍人も、法や政府に従い命令を遂行する為にはそれなりの頭脳がいる。
訓練を受けた専門家である民間軍事会社ならまだしも、そこらへんの市民をろくに教育もせず警官や軍人にするのは人員に困っている証拠なのだ。
そして国家にとって「暴力の独占*18」というのは非常に重要な要素である。
暴力を独占できていないという事は政府以外に武力・暴力を持つ勢力がいるという事で、その勢力が国家権力に成り代わりうるという事だからだ。
そんな状況では治安維持もできないので、自警団や民兵が出現する。彼らは国家からの法律の統制も無い為、略奪や残虐行為も行う無法者集団同然になってしまう事が多い。
ろくな教育も受けていない末端の兵にまで統制を行き渡らせるのは至難である。他の自警団との諍いで更に治安が悪化してしまう事もある。
行き着く所は軍閥による群雄割拠である。

もう片方の教師というのは、教育によって国の方針を子どもに伝える存在であり、また人材育成の点からも極めて重要な存在である。(旧西側諸国は北欧諸国や東欧諸国に比べて教師の社会的地位が低い為分かりづらいが)
というか、教師に給料を払えている=学校が維持できているという事であり、すなわち国内各地にある学校の維持管理が出来ているという事になる。
つまり統一された政府が国内各地をきちんと統治している証拠にもなるのだ。
教育施設というのは割と切り捨てられ易い部門*19なので、そこがしっかりしているという事は政府が安定している事の証明になる。

政治家が多少駄目だったり政権がすぐに交代してしまうような国でも、それを支える各種の専門知識を持つ官僚組織がしっかりし、政治家が官僚の言う事にある程度でも従っていれば安定した国になる。
失敗国家の多くは、「官僚組織?何それ美味しいの?」レベルの国である事は忘れてはならない。
そういう国家では国内にまともな産業が無い事が多く、国家組織=国内最高の就職先であり、支持者に職を与える為に官僚の地位をばらまいている事すら多い。
そうして官僚になった者に力量など望めない為、情実による気まぐれ政治や賄賂が横行する事になる。


◆独裁国家と失敗国家

強権的な独裁政治体制は日本や先進国目線からすれば妥当な政治体制ではないと取られがちである。
だが、失敗国家かどうかという観点からすると深刻な経済破綻でもやらかさない限り失敗国家ランキングの上位に食い込むことは少ない面がある。
指標のうち「国家の正統性」は低評価になるし、統治体制によっては「人権及び法の支配」等は低評価になりやすい(いわゆる一党独裁の場合2023年度では点数は最低でもシンガポールのそれぞれ4.3、4.1点である)。
一方で、独裁者もそこまでバカではないケースが多いし、国民の自由は保障されない代わりに強力な統治が敷きやすくなり、ある程度政治安定する為だと思われる。
不満分子の抑圧や経済不均一、国内の有能人材確保、急速な公共サービスの整備などもある程度強権で対処可能である。
血が流れない分平和と割り切れる限りは国民的な支持も得やすい。
北朝鮮が一線を越えないで済んでいるのもこれが理由であろう。
ルーマニアではチャウシェスク独裁政権がルーマニア革命によって倒れた後、一時的とはいえ国民生活は逆に苦しくなったとも言われている。

「独裁国家かつ失敗国家」というケース自体は確かにありうるが、「統治能力など元々ない名ばかり独裁者で、有力者が祭り上げただけ」「元々失敗国家を何とかしようと仕方なく強烈な独裁に頼っているが、それでも立て直せない」というタイプも多い。
あるいは独裁で持ちこたえていた国でも独裁者の死亡等で強権力が誰にも引き継がれずに瓦解し、そのまま失敗国家一直線という事もある。
例としては、現在は失敗国家ではないものの、チトー死後のユーゴスラビアがわかりやすいだろうか。民族紛争の火種があるとこうなり易い。


◆代表的な失敗国家

以下、スコアと順位、偏差値は2023年のものとする。また、上記の失敗国家の例示から人間開発指数、民主主義指数、腐敗認識指数(データは2019年)、平均寿命、乳児死亡率を掲載する。

○イエメン

スコア:108.9点(2位、偏32)
人間開発指数 0.442
民主主義指数 1.95
腐敗認識指数 16/100
平均寿命 66.13歳
乳児死亡率 45.7/1000人

インド洋と紅海を繋ぐバル・エル・マンデブ海峡の東側でアラビア半島の端っこにある国。2019年〜2021年失敗国家ランキング1位
その立地から古代ローマ時代より海上交易の中心地、物資集散地として大いに栄え、また香料の産地でもあった事からローマからは「幸福のアラビア(Arabia Felix)」とまで呼ばれ、その取引での資金流出がローマ衰退の原因になったとすら。

だが裏を返すと大国の勢力争いに巻き込まれやすく、名目上の宗主国だったオスマン帝国とイエメン王家その他の土着勢力が小競り合い、19世紀になるとエジプト(ムハンマド・アリー朝)、イギリスも参戦。
結果南北分断に陥って冷戦期も北はサウジアラビア、南はソ連の庇護下に入り、1990年代に入りようやく悲願の統一となる。
しかし統一や湾岸危機による混乱が収まると、北イエメン時代から大統領という名の独裁者であったサーレハによる支配がイエメン全土に拡大しただけという始末。なおかつ土着勢力が相変わらず実権を持つ部族主義的社会に宗教対立も抱えた国情にお決まりの国内格差で内部の不満は拡大する。
そこに「アラブの春」の影響でサーレハは退陣。南部出身のハーディ副大統領が暫定大統領になるも、復権を狙うサーレハはあろうことかかつては迫害したザイド派*20系反政府宗教勢力のフーシ派*21と接近した。
ハーディ暫定政権がパッとしない中で徐々に勢力を拡大させていたフーシ派は軍や政界の支持・影響力の強いサーレハが味方になったことで2015年にクーデターを起こし、同時にアル・カイーダやISILといったイスラム過激派も勢力を拡大させ内戦に至る。

一時はボートで脱出する羽目に陥ったハーディ暫定大統領がサウジアラビアの主導するスンナ派アラブ諸国の軍事支援によりなんとか挽回したり、そのハーディー政権寄りだった南部暫定評議会がUAEの支持を得て独自路線を打ち立てたり、スンニ派諸国の動きが面白くないイランがフーシ派を支援したり、和平を仄めかしたサーレハ前大統領をフーシ派が暗殺したり……と平和的解決の目が見えぬまま紛争は続き、
2019年現在は
  • ハーディ政権派・有志連合
  • フーシ派
  • AQAPやISILなどのイスラム過激派
  • 南部再独立派の南部暫定評議会
による4勢力入り乱れるこれまでで最悪の状況となっている。
2022年には各勢力の消耗で一度は一時停戦に至るも半年ほどで終了、小康状態のまま対立は続いていたが、2024年遂にアメリカとイギリスがフーシ派の拠点を攻撃。今後の動向によっては変動が考えられる。


ソマリア

スコア:111.9点 (1位、偏30.9)
人間開発指数 N/A
民主主義指数 N/A
腐敗認識指数 13/100
平均寿命 57.4歳
乳児死亡率 72.7/1000人

失敗国家ランキング6年連続1位。2023年にも1位に返り咲き、その間も2位と1位を行ったり来たりしている絶対強者
リアルGTAカオスモードマニアック。権力の及ぶ範囲が首都を中心として半径数百メートルなんて事もあった。
あの最強国・アメリカ合衆国が諦めた国でもある。
詳しくは項目で。


○シリア

スコア:107.1点(5位、偏32.8)
人間開発指数 0.543
民主主義指数 1.43
腐敗認識指数 13/100
平均寿命 72.7歳
乳児死亡率 18.4/1000人

地中海東岸の一角にあり、かつては「肥沃な三日月地帯」とも呼ばれる古代オリエントの中心地帯の一角で、かつ地中海交易やシルクロード交易の要衝だった。
なのでオリエントの覇権を握らんとする国家が太古よりぶつかり合い、加えて途中からエルサレムとかいう係争地が南に出来る始末。
それでもオスマン帝国が中東一帯の覇権国家として君臨していた時期は良かったが、第一次大戦で帝国が崩壊すると雲行きが怪しくなる。

イギリスやハシーム家との紆余曲折の末に地中海東岸を勢力圏とするフランスの委任統治領(という名の植民地)となるが、多彩な宗教や部族民族を利用した分割統治を敷いたものだから社会的な亀裂が発生。
でもってフランスへの反発心は収まらなかったので戦間期から独立が取りざたされており、1946年にフランスから独立。
しかし独立直後から7回もクーデターや反乱が発生し、非常にゴタゴタしていた。
1963年3月8日に革命によりバアス党が政権を握るが、握った後も党内でも対立が発生し1966年と1970年にクーデターが発生。ハーフィズ・アル=アサドが大統領となるもその後も虐殺が発生した。
そのハーフィズ・アル=アサドは2000年に死去し、後を継いだ息子のバッシャール・アル=アサドは最初は民主化を進めていたが、アメリカのフセイン政権打倒を受けて独裁政治に転身して、言論統制や権力強化をしてしまう。
2011年にアラブの春が起きると政府に対する不満によって内戦が勃発。ISILによって国の一部を支配されてしまう。これによって大量の難民が発生しトルコなどに流れ込んだ。
また、これに伴いパルミラを筆頭とした各種遺跡の破壊行為が行われ、いわゆる危機遺産に認定される状態に。
ロシアやイランによる援助でISILは壊滅し、国土を奪い返したものの、未だに北部が激戦区になっており、解決の目処は立っていない。
2022年には反政府デモが再燃。死傷者が出ており予断を許さない状態になり、衛生状況も悪くハイチと並ぶコレラ蔓延地帯に。
さらに2023年年明け早々にダメ押しのようにトルコにまたがる広範囲の大地震が発生、シリア側の被災地は反政府勢力の縄張りなこともあり支援が行き届かない状態になっている。


南スーダン

スコア:108.5点(3位、偏32.2)
人間開発指数 0.388
民主主義指数 N/A
腐敗認識指数 11
平均寿命 57.85歳
乳児死亡率 63.3/1000人

2011年に住民投票によりスーダンから独立。
建国から現在まで内戦・紛争、ハイパーインフレ等政経共に数多くの問題を抱えている、近年における失敗国家の代表格
登場直後に失敗国家ランキング4位に入ると、ソマリアのランキング1位の連続記録を2014年に止めた挙げ句、2015、2017、2018年も1位になってしまった。
2019年にはイエメンが1位になったが、情勢が大きく変わった訳ではない。2020年まで続けて3位だし、2023年も同じく3位。


コンゴ民主共和国

スコア:107.2点(4位、偏32.7)
人間開発指数 0.462
民主主義指数 1.4
腐敗認識指数 19/100
平均寿命 60.68歳
乳児死亡率 63.8/1000人

かつてのザイール。
レオポルド二世の私有地「コンゴ自由(嘘だッ!!)国」のなれの果て。やっぱり内戦の繰り返し。
こと1998年から2003年の第二次コンゴ内戦は「アフリカ大戦」の異名を持つ、周辺諸国が派兵と介入と諸勢力支援を繰り広げた大戦争だった。
2018年にようやく選挙で決着がついた…か?けど19年のランキングは中央アフリカを抜き去り5位、23年はさらに4位に上昇
なんもかんも宗主国のベルギーが悪いといえば悪いが、独立から内乱まで1週間も持たなかった辺り、独立を性急に行ってしまった事*22も原因かもしれない。


○中央アフリカ共和国

スコア:105.7点(8位、偏33.3)
人間開発指数 0.372
民主主義指数 1.43
腐敗認識指数 24/100
平均寿命 53.28歳
乳児死亡率 77.5/1000人

20世紀の袁術、皇帝ボカサ1世を産んだ国。
元々クーデターや宗教対立で治安がよくなかったが、2013年に国内のゴタゴタにより一時期無政府状態に陥ってしまい経済もガタガタに。
資源に乏しい為それを目当てにした大国の介入も見込めず、キリスト教徒を中心としたアンチバラカとイスラム教徒を中心としたセレカの抗争が今なお続き、難民の増加にも歯止めがきかない。
2014年から17年まで4年連続失敗国家ランキング第3位を堅持し続け、その後も5位6位と上位の一角。
国民の約9割が1日2ドル未満で暮らさなければならないと言えばヤバさが分かるだろう。
また、上記でも触れた通り公共サービスの提供もままならず、テロによって学校や病院が襲撃される事件も多発していること、極貧層が多いことから2021年現在平均寿命は約53歳と世界最下位である。
「1日2ドル未満」というのは「世界貧困線」という、最低限の生活を行えるか否かのボーダーラインである。
経済状況を打破するために2022年には世界で二番目にビットコインを法定通貨として導入…するも、そもそも仮想通貨に必要な大量の電源を確保できず失敗に終わっている。

チャド

スコア:104.6点(9位、偏差値33.8)
人間開発指数 0.403
民主主義指数 1.67
腐敗認識指数 20/100
平均寿命 54.24歳
乳児死亡率 67.4/1000人

リビアの南、スーダンの西隣。
例によってトップの政権基盤偏重による国内対立が起こり、カダフィが油を注いで独立後5年で内戦突入。
それ以来大統領が変わる時は毎回クーデターという惨状で、7代目のデビ大統領も世界の独裁者ランキング上位であった。
2020年には死刑制度を廃止したりもしているが、それでも「人権及び法の支配」も含めて点数はほとんど下がっていない。
…そして2021年には前線を視察中に負傷し死亡。何と軍人である息子と彼が率いる暫定軍事評議会が跡を継いだ。
デビ政権はクーデターで政権を獲得した後に「一応」選挙を行っており、憲法も制定している。そして憲法に従えば本来は「国会議長が暫定大統領→大統領選挙」という流れになるという。
それに逆らった……つまりまたクーデターである。
でもって反政府勢力はまだまだ絶賛活動中。
霊圧が消える人ではないが、テロと地雷で霊圧(命)が消えかねない。
近くに死神がたくさんいそうである。友達になりたくねえな!
地味に失敗国家ランキングで2桁になった事が無いという有難くない実績がある。


スーダン

スコア:106.2点(7位、偏33.2)
人間開発指数 0.505
民主主義指数 2.47
腐敗認識指数 20
平均寿命 65.31歳
乳児死亡率 39.9/1000人

エジプトの南隣、南スーダンの北側。
2006年、2007年失敗国家ランキング1位。その後ずっと3位だったが、最近は徐々に落ちてきている。
しかしダルフール紛争が長期化しているうえに南部で採掘していた石油が南スーダンの独立によって無くなりどう考えても紛争フラグが立っている
というか上記の南スーダンと一緒に、内戦と国境紛争の真っ最中である
また、刑法の27条に、被害者と同じ方法で死刑に処すと言うハンムラビ法典ばりの刑罰が存在している(余談だが、そのような趣旨の日本の漫画、助太刀09が存在する)。
2023年には遂に軍人達が率いる暫定政権と民兵組織が停戦を破り全面衝突。日本を含めた多くの外国人が安全の為スーダンを離れることに。

○アフガニスタン

スコア:106.6点(6位、偏33)
人間開発指数 0.502
民主主義指数 0.32
腐敗認識指数 16/100
平均寿命 64.83歳
乳児死亡率 45/1000人

20世紀に入りイギリスから独立、王政を敷くも内情は部族主義的で、急進的改革派によるクーデターが起きてからは一気に政情不安定化。
親ソ派が政権を得るも内部対立が絶えず、見限ったソ連は1979年に侵攻・直接介入し支配を行うも、各地で反ソ連を掲げる勢力がゲリラ戦を展開していた。
1989年にソ連がアフガニスタンから撤退すると、その直後から各勢力が戦後の主導権を握ろうと国内で紛争が多発する様になる。
イスラム神学校出身者による非軍閥のタリバン政権が一時はアフガニスタンの九割を掌握したものの、サウジアラビアを放逐された札付きの反米テロ組織アル・カイーダを匿い続けたのが運の尽き。
2001年にアル・カイーダによる同時多発テロでブチ切れたアメリカがアフガニスタンに侵攻しタリバン政権は崩壊。
アメリカはハーミド・カルザイを首班とするカルザイ暫定政権を成立させるも、タリバンを始めとする反政府勢力はカルザイ暫定政権をアメリカの傀儡政権と見做して従わず、また暫定政権自身も汚職の横行などで国民の支持を得られず各地でテロを繰り返される。
結果的に国内の治安は急速に悪化し、首都カブールの周辺以外はカルザイ政権の支配が及ばず無政府状態に陥った。
一応2019年9月にアメリカとタリバンが和平基本合意をした。ただこのまま落ち着くとは誰も思っていない

2021年、米軍撤退と時を同じくして、予想通りと言うべきかタリバンの攻勢が始まり、首都カブール、および国土のほぼ全域を制圧。ガニ大統領は国外脱出。再びタリバンがアフガンの政権に戻るという結果に……。
よりによって8月15日。つまり第二次世界大戦が終わった日の出来事である。*23
報道ではアフガンの民衆が群がるのを無視してアメリカの飛行機が飛び立つ映像が流れ、「アメリカはアフガンを見捨てた」と非難する声や「戦う気のないアフガン政府にこれ以上アメリカ軍が肩入れする義理はない」など、様々な意見が飛び交っている。
さらに2023年10月7日には北西部ヘラート州で非常に珍しいM6.3の四つ子地震が発生。シリアと同じくかなりの被害が出ており、予断を許さない状態となっている。


○ジンバブエ

スコア:96.9点(16位、偏差値37)
人間開発指数 0.573
民主主義指数 2.92
腐敗認識指数 23/100
平均寿命 61.49歳
乳児死亡率 37.9/1000人

旧ローデシア時代*24「南アフリカ以上」とも呼ばれたアパルトヘイトと白人による土地寡占で悪名を馳せていたが、黒人反政府ゲリラとの内戦の末に改名・独立し、黒人への参政権付与後は融和路線に成功。
農業に有利な国土に支えられたローデシア経済*25もあってアフリカでも屈指の安定した国を実現した。
……そのはずだったが2000年代辺りからムガベ長期政権のひずみが見え始め、第二次コンゴ内戦への介入や白人地主の土地強制徴用などやらかした末にハイパーインフレを起こす。
何度通貨切り下げをやってもインフレが止まらず、2009年には100兆ジンバブエ・ドルなんて紙幣が出る始末。
もはや外貨でないと商取引が成立せず、国民からもいらねえと言われ、ゴルゴ13あるエピソードの題材になり、イグ・ノーベル賞のネタにもされた末に2015年6月11日についにジンバブエ・ドルは廃止された。
2019年6月にRTGSドルが制定され外貨の使用が禁止されたが、あっという間にインフレ率300%に達してしまい、2020年3月にUSドルの使用が認められるようになった。かつてほどではないにせよまた超インフレの兆しが見え始めている。

しかしムガベは政権に居座り続け、「いつまでやるんだ、てかいい加減寿命が近いだろう」と誰もが思っていた2017年に後継争いからクーデターが発生。93歳の老独裁者はようやく政権から追放された。
そして、2019年9月6日にシンガポールの病院で死去。享年95歳。
その豹変っぷりと寿命の長さから「本人は既に暗殺されていて、替え玉がやっていたのでは?」などとも言われた。


○ナイジェリア

スコア:98.0点(15位、偏36.6)
人間開発指数 0.525
民主主義指数 4.11
腐敗認識指数 24/100
平均寿命 54.69歳
乳児死亡率 72.2/1000人

アフリカ最大の人口とGDPを誇り、最近は石油に頼る経済からの脱却を進めているアフリカの大国。タレントのボビー・オロゴンの出身国であり、日本からの出稼ぎ労働者なども多いため、割と日本とも馴染みの深い国でもある。
しかし徴税機構がザルなので政府の歳入は未だ石油に大きく依存しており、さらに政治の汚職により石油収入150億ドルのうち100億ドルが使途不明のまま消えていく
経済大国であるため国内の市場そのものは大きいが、国民の半分が貧困層なため購買力が低く、市場を活かしきれていない。
学校教育の水準は比較的高くIT教育も盛んだが、学卒者の4分の1は失業状態で、それらがインターネット詐欺等に関わる高度な教育を受けた犯罪者と化している(所謂『ナイジェリアの手紙』が有名)。
国内は多数の民族・言語・宗教が入り乱れる闇鍋で、特にイスラム教徒の多い北部では『ナイジェリアのタリバン』ことボコ・ハラム*26が跳梁跋扈している。
GDPが高ければ豊かという訳ではないというのがよく分かる悪い例といえる。


○ハイチ

スコア:102.9点(10位、偏34.5)
人間開発指数 0.501
民主主義指数 3.48
腐敗認識指数 20/100
平均寿命 64歳
乳児死亡率 46.7/1000人

失敗国家中南米代表のような国。
アメリカ合衆国に次いで南北アメリカ大陸で独立を達成し、「世界初の黒人による共和制国家」という輝かしい肩書を持つ。

大航海時代、コロンブススペインによってイスパニョーラ島が「発見」されると、元々住んでいた人達が文字通り「絶滅」させられたのが受難の始まり。
でもって17世紀に入ると絶賛衰退中のスペインは大同盟戦争で占領された本土やネーデルランドの代わりにハイチを割譲し、フランスの植民地になる。
その後フランス革命の機運に乗って独立する(ハイチ革命)……が、この時すでに深刻な人種間地域間対立を抱えており、ナポレオンにより一度鎮圧されたり、独立達成後も内紛に突入したり、スペイン系住民の手でイスパニョーラ島の東側が分離独立、ドミニカ共和国を建国したりとちっとも安定しない。
加えて革命時に旧体制回帰防止と往時の報復として奴隷解放や統治層であった白人の処刑や農地を接収したのが見事に裏目に出て、独立承認と引き換えにフランスから巨額の賠償金を課せられ、重くのしかかる返済負担が不幸を決定づける。
更にドイツ帝国がちょっかいかけるわ、それを警戒したアメリカに1915年に占領されるわと大国に振り回され続けている。
おまけにそのアメリカが首都への権力と産業の集中や軍部の強化*27と失敗国家フラグを一通り立てた結果、
安定した政権が少なく、独裁政権すら続くことが難しい有様で、建国以来混乱が200年ほど続いている状態に近い。
1958年から1986年の間のデュヴァリエ父子による独裁は、当時「北半球最悪」とも謳われた。
それも軍事クーデターによって倒されるものの、その後も軍事クーデターと反政府組織の武装蜂起が度々起こっている。
そしてそのほとんどにアメリカの関与が判明、もしくは疑われている。本当にこの国は…

2010年にはM7.0の地震と津波に襲われており、首都に直撃したことと社会インフラの脆弱さもあって死者・行方不明者数約32万人という近代では類を見ない甚大な被害を被った上、国会議事堂の倒壊により政治機能が麻痺*28、更にはよりによって国連の救助隊がコレラを持ち込み大流行。ダメ押しの如く1万人以上の病死者を出した
ハイチの情勢が現在まで不安定を極めているのは、この大規模災害と復興の遅れのせいだからという見方も強い。

2021年7月、現職であったモイーズ大統領が自宅で武装集団の襲撃を受けて暗殺される事件が発生。2月にもクーデター未遂が発生していた中での出来事であった。
追い打ちをかけるかの如く翌月にはM7.2の地震が発生し、再び大きな被害を受けている。結果スコアと順位が大方の予想通り大幅に上昇した。
案の定地震の復興はろくに進んでおらず複数のギャング組織が跋扈。一般庶民の家に押し入り強盗やみかじめ料要求、石油基地を占領して流通が止まったり、老若男女問わず輪姦して撮影し脅迫など無茶苦茶に拍車がかかっている。
医療体制も完全に崩壊しており、前述の通りコレラなどの感染症が蔓延しまくっている。
そして2024年、大統領不在にもかかわらず首相が帰国出来ずにそのまま辞職と言う状態になり、実質的な無政府状態に。
ちなみに上述したドミニカ共和国は失敗国家ランキングでは110位(60.7点、偏52.1)。つまり、問題点はそれなりにあるものの国家運営としては成功している部類。
リアル環境テロリストことホアキン・バラゲール大統領の独裁政治による強引な環境保護政策*29により、自然保護とそれらを基盤とする産業の振興にも成功し、一時は「ドミニカの奇跡」と持て囃された。
国境線における豊かな森林が残るドミニカ側と不毛のハゲ山と化したハイチ側の印象的なコントラストは『不都合な真実』でも取り上げられた。
まあドミニカはドミニカで米軍占領や軍部独裁、内戦と波乱に満ちた歴史で、軍部独裁の流れを汲むバラゲール政権も格差の拡大や対立する革新派の非合法な排除などなど後ろ暗い面が多いのも事実ではあるが……
いずれにせよハイチよりは遥かにマシな状況の国家であるため、ハイチからドミニカへの(不法入国含む)人口流出にも歯止めがかからない状況となっている。


○イラク

スコア:91.4点(27位、偏39.3)
人間開発指数 0.697
民主主義指数 3.51
腐敗認識指数 23/100
平均寿命 70.6歳
乳児死亡率 21.3/1000人

チグリス・ユーフラテスという大河に恵まれた「肥沃な三日月地帯」の一角でメソポタミア文明発祥の地。
とはいえオリエントの諸勢力が切り取り、ぶつかり合う場所なのはシリアと大差ない。

第一次大戦で宗主国だったオスマン帝国の崩壊後、委任統治を任されたイギリスは、アラブの名族ハシーム家のファイサルを王位につけイラク王国を樹立させる。
が、元々スンニ派、シーア派、クルド人を内包した立地*30に加えて親英反英勢力の対立があり、第二次大戦頃にはクルド人反乱や反英クーデターが起きたりしていた。
そして第二次大戦後に「反英・汎アラブ」なナセル率いるエジプトと「中東の狂犬」イスラエルがブイブイ言わせ始めるとクーデター(7月14日革命)により王国は崩壊。
その後もクーデターが4回も発生する不安定さで、クルド人との戦争で功を挙げたバアス党員で軍部のフセインが実権を握る。

そのフセイン政権もイラン・イラク戦争辺りから狂い始め、湾岸戦争でアメリカから危険視された末に2003年のイラク戦争で政権崩壊。
2004年にイラク暫定政権が成立したものの、フセイン政権で主流派だったスンニ派はこれに反発。
隣国シリアからイスラム国家樹立運動が起こると旧フセイン政権の残党がこの運動に合流。イラク、シリア両国の国境付近を武力制圧して「国家」樹立を宣言した。
このISIL*31は一時は両国のかなりの部分を制圧したものの、アメリカ主導で有志連合からの集中攻撃を受け消滅した。
これを受けてか順位やスコアは概ね一貫して右肩下がりになっており、後述のコートジボワール同様2022年には上位20位から消えた。
だが政情は相変わらず安定はしておらず、現政権は政治の汚職の蔓延によって国民の支持を得ているとはお世辞にも言えないため、
「フセイン時代の方が良かった」と漏らす国民も相当おり、若年層の失業率は約35%ほどと雇用問題も非常に深刻な状態で、安定の道はまだまだ遠い。


○コートジボワール

スコア:87.1点(36位、偏45.3)
人間開発指数 0.498
民主主義指数 4.22
腐敗認識指数 36/100
平均寿命 57.78歳
乳児死亡率 57.9/1000人

昔は独裁者の下で発展を続けており、西アフリカでも安定した国だったが、独裁者が死んでから迷走開始。
クーデターと内戦をやった挙げ句、失敗国家ランキングが始まった2005年度では1位を獲得。つまり失敗国家ランキング初代チャンピオン
2010年の前大統領と現大統領との内戦というどっかのRPGのような展開があったが、前大統領の失脚・拘束で収束した後は順調に順位を落としていき、2016年には上位20位から消えた。2022年にはいよいよ30位からも消えている。
なお、これらの情勢の推移には同国のサッカー代表選手・ディディエ・ドログバ*32の尽力によるものも大きな要因となっている。


ナウル

人間開発指数 N/A
民主主義指数 N/A
腐敗認識指数 N/A
平均寿命 N/A
乳児死亡率 23.8/1000人

詳しくは個別項目参照。
1990年代前半までは、島から算出するリン鉱石の輸出で世界有数の富める国であり、国民は無税・医療と教育無料、更には全年齢に年金支給…と
政治家と公務員と医療関係者以外働く必要がなく(公務員ですら、外国人が3割ほどいたり…)、
毎日の食事に至るまでその辺の外国人経営の飯屋で適当に済ます、国民総ニート状態の国家であった。

しかし、1990年代後半に事態は一変する。
リン輸出産業の衰退により経済崩壊、財政破綻、インフラ崩壊と外国からの援助がなければ明日の食事にも事欠きかねない状態へと突入。
更には1世紀近くまともに働いた事がない国民が大半な為、そもそも「働くって何?」状態。(国内の労働者はほぼ中国を中心とする出稼ぎ労働者が担っていた)
一応政府が小学校の高学年で働き方を教える授業を行い、将来の国を担う子供たちの労働意欲を与えようという対策がなされていた。
しかし、労働意欲を育んだ所で国内には働く場所がない。国の産業構造がリン産業に頼り切っていたためそもそも他の雇用などなく、国内失業率も2011年で90%
更には
  • マネーロンダリングで儲けようとしてアメリカから怒られる
  • ならばと国籍やパスポートを格安で、しかも誰でも簡単に取得できるようにして人を呼び込もうとしたらテロリストの格好の隠れ蓑に利用される。かの9.11にも関与したとしてまたアメリカに怒られ、銀行取引を停止された。
  • 突如連絡が取れなくなり「太平洋の島国が消息不明」「クーデターが起こったか?!」などと情報が錯綜するも、情報インフラの維持費が払えずに死んでいただけだった
  • 中国と台湾に国家承認と断交とを繰り返して手玉に取り援助を引き出す
  • ナウル共和国政府観光局日本事務所のTwitter公式アカウントのフォロワーが人口より1桁多い
  • ナウル共和国政府観光局日本事務所の公式サイトの開くスピードが阿部寛のホームページと肩を並べるほど速い
と、話題に事欠かない国家である。

そして失敗国家的にこの国最大の特徴と言えるのは、あまりに情報が無い為に失敗国家ランキングに載ってすらいない事だろう*33
既に挙がっている国々と異なり、島国ということもあって戦争や暴動、外圧と言った物騒な方面の問題は特に生じておらず、治安自体ならかなりマシなため、「深刻な経済破綻」とそれによる影響だけならば40位前後と予想はされるが。

元はと言えばオーストラリアとかがリン鉱石の無計画な採掘を行ったのが原因なので、オーストラリア政府は支援を続けている。
リン鉱石の無計画な採掘のせいで土壌の大半が石灰岩で覆われているのも発展を阻害しているし。
なお、リン鉱石の更なる採掘のおかげで現在の経済はある程度回復基調にあるが、こちらも尽きるのは時間の問題と見られ予断を許さないのが現状である。


◆余談

チャベス政権末期から大統領死去後にかけて政治の混乱と常軌を逸した貧富の格差とインフラ崩壊が取り沙汰され、
地元の犯罪集団ですら「必要な備品を確保できない」「あまりにも物がなく、何をやっても何も盗めないため、強盗をする意味が無くなってしまった」「というか、強盗に必要な弾丸などの支出と強盗によって得られる物の収入のバランス的に、強盗をするだけ赤字になる」
コメントするまでに荒れまくった近年話題のベネズエラであるが、2021年現在トップ20には入っていない。
ただし順調にポイントは上がっているので予断を許さない。29位(90.5点、偏39.7)だし。

またミャンマーも近年ではロヒンギャ族虐殺や軍事クーデターにより予断を許さない状況になった。案の定2022年にはスコアが大幅に上昇して100点台になり、2023年現在は12位(100.2点、偏35.6)まで上昇し、*34過去最高順位だった08・09年の13位を塗り替えてしまった。





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最終更新:2024年03月19日 10:34

*1 主権国家体制という。

*2 これに加えて「他国と関係を取り結ぶ能力」、すなわち外交能力も含んだ4つとも言われる。

*3 第一次世界大戦前後より前ならばともかく、現代において「独立国家」の重みはものすごく重い。政治体制に問題があるから国家として認めないなどということはできないのである。そして一度独立国家になれば、政権を倒した後の新政権も「独立国家としての地位」を使いたいので独立国家の後継を名乗るようになり、簡単に消えない

*4 2014年からは脆弱国家ランキングに名称変更

*5 ジャーナリスト等の専門家ですら危険すぎて割に合わない等の理由であまり立ち入らなかったり、政府に統計を取るだけの能力もなかったり、政府発表に情報操作が強く疑われるなど。

*6 フランスは黄色いベスト運動とその影響が評価範囲に入っていないことに注意

*7 アメリカは日本とは比較にならない程の格差社会であり、また国民皆保険が存在しないため貧乏人はろくに医療も受けられず、自己破産の6割は医療費が原因である。また平均寿命は先進国の中で最も短く、超学歴社会なので学歴が低いとまともな職に就くのが難しい。

*8 ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ロシアの隣国であるフィンランドも国防の不安が生じたとみられていると思われる。それでも0.3点が1.0点になった程度だが。

*9 裁判は未だ始まっていないが、犯人の動機が政治目的ではないと報じられているのも影響している可能性がある。

*10 民主制であることが基本だが、民主制でなくとも政権が国民の支持を受けていれば高得点にはなりにくい

*11 右手に剣、左手に天秤を持った、正義や司法の女神

*12 国境なき記者団による政府のネット検閲レーティングで、最も厳しい検閲を実施しているとされるレーティングのこと。通称「インターネットの敵」

*13 そうした国では、婚姻外交渉は厳罰の対象となり、レイプ被害さえも「婚姻外交渉」とみなされ、被害者まで死刑とすることが容認されてしまうことがある。国家権力は処罰しなくとも、民間で「婚前交渉をするなんて我が家の恥なので殺すしかない!」という「名誉殺人」が支持されてしまい、国家権力の取り締まりむなしく横行ということもある。

*14 日本では実感がわきにくいが、国によっては法制度が政権交代などによって目まぐるしく変わることがある。

*15 むろん、死刑そのものだけで低評価という訳ではなく、マンパワー不足などから人権保障ができず、結果として死刑を使わざるを得ないような国もある

*16 死刑存置国の中では2.6点のバルバドスに次ぐ第2位である。

*17 全体ランキングも92位から18位まで急騰。単年でのポイント増加ワースト記録(27.3点)である。ちなみに日本も単年でのポイント増加歴代3位の記録を持つ(2011年、東日本大震災が原因)が、それでも12.5点である。

*18 一定の領域内において武力の使用を国家が独占すること。日本の場合、警察は規則に則って犯罪者を拘束したり何十年も監禁して労働させたり、場合によっては「死刑」という形で殺すことができる。これを国家組織以外の個人や組織が実行した上、それを国家組織が認知したのに法律に従った裁判にかけることすらできないような状態になると「失敗国家」となるわけだ。

*19 日本ですら、教育予算や研究予算を巡って教員の増員予算を求める文科省と、予算には効果が無い、少子化なんだから削減しろと主張する財務省の熾烈なバトルが恒例行事になっている。

*20 シーア派の一派で、代々のイエメン王家が指導者であるイマームに就いていたが、現在のイエメンでは少数派。なおイランは同じシーア派でも別派閥の12イマーム派を「国教」とする

*21 北部の国境地帯から起こった宗教運動組織。大体反アメリカ、反イスラエル、反スンニ派

*22 コンゴの独立運動に圧され独立が決定してからの準備期間は僅か半年だった

*23 ただしこの認識は日本のみで、日本がポツダム宣言に調印した9月2日を終戦記念日とする国が多い

*24 旧ローデシアの内、北はザンビア、南はジンバブエとして独立した

*25 長期間に渡る世界中からの全面経済制裁や反政府ゲリラとの内戦にしばらくは耐えられる程度の経済力はあった。南アフリカ共和国とポルトガル領モザンビークの支援もあったが

*26 あのISILと並び称される程の凶悪なイスラム教過激派組織。自爆テロは勿論の事、警察署や学校を襲撃して多数の死傷者を出したり、2014年にはとある女学校の生徒らほぼ全員を奴隷として売り飛ばすとの名目で拉致、強制結婚や性的暴行を行っている。

*27 現在まで続く地方の衰退や、後の軍事独裁政権成立は大体このせい

*28 首相ですらホームレス状態に陥るという有様だった。

*29 違法伐採業者のキャンプを軍用ヘリで襲撃し壊滅させる、環境保護政策に反対した政治家にあらゆる圧力をかけて辞任に追い込む、貧しさから止む無く国立公園内に住んでいた人々に銃を突き付けて立ち退かせる、等々

*30 イギリスの名誉のために付け加えると、シーア派はともかくクルド人までもを纏め上げる事を危惧する声もあったのだが、親スンニ派の専門家に押し切られた

*31 別名ISIS。『イスラム国』と呼ばれていたこともあったが、誤解の原因となるためこのように表記される

*32 折しもランキング1位となった2005年にW杯本選へコートジボワールが初出場を決める事となった当時28歳の立役者であり、今なお国民的英雄と讃えられている

*33 ナウルだけではなく、国家規模の非常に小さいミニ国家15カ国は情報が足りないため上記の通り評価対象外。

*34 これは同年の北朝鮮(87点)より悪く、東アジアで一番不安定な国家と言える