川村ヒデオ

登録日:2011/06/11(土) 15:51:55
更新日:2024/01/08 Mon 21:46:47
所要時間:約 6 分で読めます




勝たねば、誰も認めてくれはしないのだ。





林トモアキ先生のライトノベル作品「戦闘城塞マスラヲ」、「レイセン」の主人公。

二代目聖魔王を決める大会、「聖魔杯」に「ウィルス」という特異なパートナーを引き連れ、最後に会場入りした男。その人を殺せそうな鋭い双眸には未来視の魔眼を宿しているといわれ、大会でも一目を置かれる存在。その正体は謎に包まれているが、どんな状況にも動じずに的確な判断を下すことから、数々の戦場を潜り抜けてきた殺し屋だという説も存在する…。






「にっひっひ、ネットでの情報操作なんてウィル子にとっては容易いことなのですよー。本当ならwikiのデータを全て食べてしまいたいところですが、ここはマスターについてじっくりとあることないことたっぷり、」

「否。断じて否」

「ああ、マスター! なぜプロパガンダの邪魔をするのですか―!」

以下ネタバレ注意


川村ヒデオ、その正体はヒキコモリである。



CV:赤羽根健治(『ヒマワリ:unUtopial World』5巻連動オーディオドラマ)

●軌跡

高校卒業後上京してきたはいいが34社すべてに書類送検段階で落とされ、親からの仕送りも止まり食料の備蓄も絶え、ビニール紐で首吊り自殺を試みるも失敗。新たな方法を探す途中に電子の精霊である「Will.CO21」(通称ウィル子)に出会い、彼女をパートナーとして流されるがままに「聖魔杯」に参加。
その後はプロの軍人や勇者(現ぷー太郎)が威圧感を感じるほどの恐ろしい目つきの悪さと、生来の鉄面皮を生かしハッタリと機転で勝利を収めていく。そのうちにヒデオのことは大会でも噂になり、吸血鬼「ヴェロッキア」を倒したことでかつて神殿教会の預言者のみが持つといわれていた「未来視の魔眼」を持つ者だという噂も併せて大会優勝候補とまでなった。

しかし前作「お・り・が・み」の主人公である鈴蘭に敗北を喫し、魔眼などのうわさが全てうそだったことが露見。さらには大会の裏で暗躍していた「アルハザン」という組織の怒りを買ったことでウィル子と離れ離れにされたうえで地下深くへ閉じ込められる。

気力を失っていたヒデオはそこで燃え尽き…が、ウィル子からのメッセージを受け取ったことで復活。同じように地下に閉じ込められていた者たちを率いて脱出し、かつアルハザンの目論見を看破。さらにはアルハザンの首魁「アーチェス」の呼び出した最古の神「ロソ・ノアレ」を自らの犠牲によってウィル子と共に打倒する。

そのまま消滅し、もはや復活することはかなわないと思われたが、ロソ・ノアレに気に入られたことで場の空気を読まずに復活。天使に逆ギレされた。またそのときロソ・ノアレと契約したことで聖魔王に贈られるはずだった副賞である神器「聖魔杯」など比べ物にならないような大きな力を得る。さらにはロソ・ノアレがヒデオの「魔眼」、加えて「二代目聖魔王」であることを認めたため、大会に優勝こそしていないものの事実上の「二代目聖魔王」、「魔眼王」となる。このことはずっと後の世界の物語である「ミスマルカ興国物語」で「二代目聖魔王は魔眼を持っていた」という記述があるため、周りからも認められた模様。

大会終了後は、また社会復帰しようとするがまたしても10社連続で不採用となり、大会中に世話になった伊織魔殺商会の口利きで「宮内省神霊班」に所属することになる。公務員である。勝ち組である。
また天界へ上り神へと昇華したウィル子に代わりロソ・ノアレの端末である闇理ノアレを自らの精霊としてつけている。その他ほかの精霊に遠くから話しかけることができていたり、初対面の精霊に「憑きやすそう」と評されたりと意外と本当に精霊使いの素質らしいものはあるらしい。

だが『レイセン』ラストでは以前自分が相対した相手がきっかけで起きた環境テロによる大惨事に心打ちのめされ、一時はノアレにも見放され「暴力による決着を強いられる」も、ギリギリで踏みとどまり一柱の神を救い、
本気で「暴力でないとどうしようもない」と思いつめていたテロ実行犯にも、「暴力でしか訴えられない時点で手遅れだ」と一喝。
犯人自体は意味深な動機を告白しかけるも結局逃走したが、事件後事態への関与をもみ消すため自分を狙った総理大臣に対して、天界を出て来たウィル子から得た裏情報をネタにし交渉、「あなたは外道になりたいのか(意訳)」と説教して更なる混乱を防いだ。
そしてエンディングでは公務員を辞し、ウィル子の助けを得て諸々の事態に決着をつけ「組織」と対するため鈴蘭と共に第2回聖魔杯開始を宣言。
4年後開催された第2回聖魔杯を描く『ヒマワリ:unUtopial World』では3巻ラストから登場し、自身も再び聖魔杯に参戦。終盤の副主人公(ないし真ヒロイン)的立ち位置となっている。

そしてテロ実行犯に放った喝は、『ヒマワリ:unUtopial World』の時代まで犯人こと同作の主人公日向葵(ヒマワリ、アオイ・ヒナタ)の心をへし折る一端にもなり、
へし折られてもなお暴力しか使えず彼の言葉が傷になっている彼女にも「守るべき姿勢」・「こんな人達がいる未来であってほしい」・「私に勝った人」と影響を与え、ラスボス相手に共闘、最終的に彼女の覚悟に救われることとなった。





●人物

ヒキコモリ、貧弱*1、目つき極悪、口下手とかなりの負の要素の持ち主だが、「戦闘城塞マスラヲ」・「レイセン」合わせて、
「ヤンデレ警察官」「ツンデレ巫女」「爆発系女子高生」「元気系ぼくっ娘」「ドSクール」「ドSツンデレ」 「オタク自衛官」と数多くのイロモノ女性から好意(?)を寄せられている。羨ましい。
しかし本人は日夜「リア充氏ね」の精神であるため、あまり進展することはなく、結局全登場作通して人間の伴侶は出来なかった。
まあウィル子という(見た目は)美少女が傍にいるし、彼女を喪いかけた際は本気で心が折れていたが、こっちはこっちでラブというより友愛や家族的な感じだったり。
またラブとは違うが『ヒマワリ:unUtopial World』エンディング時点で計3人のマッドサイエンティスト(アウター・ケミカル系倫理観0ロリ・ロボット工学の天才老人)に気に入られていたり。

登場キャラの殆どがぶっとんだ性格をしている林トモアキ先生の作品の中ではかなりと言っていいほどの常識人…
というか他の主人公陣が楽しい事好き過激メイド(鈴蘭)・理性重視の毒蛇の王子(マヒロ)・真面目過ぎる徹底抗戦兵士(ヒマワリ)とかなり踏み外しており、
他3人の様に踏み外す切っ掛けとなった悲惨な過去とかもあまりないため、相対的に一番まともかつ平和に過ごしてきた主役と言える*2。…就活失敗引きこもりが普通過去に見えるのが恐ろしい世界であるが。
それゆえに誰よりも「人の善意」を信じており、説得やはったりの際も基本情に訴えたり感情面からの考察で対応している。


だがそのため普段は周りの人間に振り回されてばかりであり、登場した3作全てにおいて最終巻では過酷な状況に打ちのめされ一時心折れてしまう程良くも悪くも一般人である…。

そう、普段は

日常パートでは突っ込み。シリアスパートでは悩み苦しみながらもかっこいい姿を見せる彼だが、

いざ彼自身がはっちゃけると晒しし者としてビックガンマグナムを所望したり、上司である睡蓮のパイタッチを狙ったり、その彼女を闇っぽい触手であれやこれやしたいと思ったり…

割と普通以上に変態である。ていうか作中屈指の変態紳士と化すことも多々ある。

また、酒が入ると電波と化し、パジャマ神やヒキニパ神のシンパとなる。この状態になると普段はヒデオを振り回すウィル子やノアレも手がつけられなくなる。ていうかドン引く。

『レイセン』では妹の存在が発覚。幸いにも兄に似ず(どことなく眉など似てはいるが)可愛らしい女子高生(近々受験)だった。ヒデオをさらっと修羅場に追い込んだ。


●名言集


「……本当なら、僕だって……君のような神様から、名剣を授けられる……。そういう……正義のヒーローにっ」

「必殺、パイタッ」

「自慢じゃないが、こう見えて僕はスライム相手に一発KOされた男だ」

(僕は信じる……!)僕なら出来ると!!

ただいま、世界!俺は、帰って来たぞっ--!!

「俺の……勝ちだっ……」

「神になれ、ウィル子。君の手で僕という枷を喰い破れ。さぁ、見せてやろう。大会に敗れても、僕たちこそが最高のパートナーだったことを見せてやろう。何が最強の神だ。最新最高の神の力を見せてやれ。あの日、僕たちが出会えたことは、何にも勝る奇跡だったと教えてやれ。そうだ。それでいい。さよならだ、ウィル子! 本当に……ありがとう」


「そう、与えられた条件は誰でも同じ。この時代の、この地球というフィールドだけ。そして社会というルールの中で、残機0で、明確な目的はなくても……まあ、遊んでて楽しいかどうか。どうなれば楽しくなるか。という、それだけの。だから、少なくとも僕は……あなたの言うような、誰かを殺すなんてルール違反や、無敵のチートを使っても。楽しくないと思う。だから、いいんだ」

「働くだけの元気があるなら、誰が好き好んでヒキコモリになどなるものかッ――!!」

「黙れ。一人身同士が傷を舐め合うだけの負け犬どもめ……愛とは正義であり正義とはジャスティスだ。この隣にいるお方を誰だと心得る。名護屋河家四十四代当代美人お嬢様巫女退魔師にして貴様らの主たる名護屋河鈴蘭総帥の妹君で宮内庁心霊班の先輩様だ。勝ち組であるこの僕に楯突く権利も義務も自由も資格も責任も貴様ら負け組にだとあるものか。この、敗北主義者めっ……!」

「ひきにぱー、ひきにぱー、ひきにぱー?」

「だったら、手遅れなんだッ!!」




引きこもり緒続け、一度は捨てた自分という名の人生を。

今度は“奇跡”という名に変えて、新たな一歩を歩み始める。

これはそんな、川村英雄という青年の項目――。






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最終更新:2024年01月08日 21:46

*1 但し『ヒマワリ:unUtopial World』の時期には諸々の騒動や訓練で多少鍛えられており、人並みくらいにはなっている。

*2 特にマヒロとヒマワリは状況こそ違えど過酷な過去・環境からかなりシビアな思考がデフォルトになっており、ボケる余裕のあるマヒロも真剣な場ではボケつつボケや無茶の意味・効用を考えている。