ニミッツ級空母

登録日:2012/01/23(月) 10:12:23
更新日:2023/07/29 Sat 14:11:26
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ニミッツ級空母とは大正義アメリカ様の外交を支える原子力空母。
そして世界で2番目に古い原子力空母でもある。他に持ってるのはフランスが1隻だけだがな!

番号はCVN68~77。
ちなみにCVN76ロナルド・レーガンは横須賀基地に配備されている。東日本大震災時のトモダチ作戦でも大活躍した彼女が日本を母港にしているのは、奇しき因縁というべきか。


歴史

それでは歴史から見ていこう。
時は冷戦真っ只中の1961年

アメリカ「HaHaHa世界で初めて原子力空母造ったぜ。羨ましいだろ?え?何?見せて欲しい?…見せるかよバーカwww」
ソ連「べ、別に私には核ミサイルがあるから全然悔しくなんか無いんだからねっ!」

アメリカは算盤勘定に頭を抱えながらも、遂に世界初の原子力空母であるエンタープライズ級の建造に成功。
先代に倣ってビッグ・Eと親しまれた同級は合計6隻の建造を予定していた。
一方で当時のソ連における水上艦艇の建艦方針は対潜重視でヘリコプターを除く洋上航空兵力の展開には消極的であり、
空母整備は何度か検討されつつもV/STOL固定翼機として開発されていたYak-36の実用化が確実視されるまで見送られていた
(※Yak-36とモスクワ級の組み合わせは性能不足と判断されたため、Yak-38とキエフ級の整備計画に発展した)。

米海軍「へっへっへ、これで史上初の原子力機動部隊が編成可能やな。2番艦の方も宜しくお願いしまっせ」

米議会「建艦費用が前級の7割増と高騰化したし、原子力推進艦の実績も薄いから2番艦は無しってことで」

米海軍「」

米議会「2番艦は通常動力空母にしといてちょ(※キティーホーク級3番艦アメリカとして竣工)」

後にジョン・F・ケネディと命名された3番艦についてはキティーホーク級を改設計した原子力動力空母として予算が下りたものの、
搭載される筈だった新型機関の完成が遅れたためアメリカにおける通常動力空母の最終艦(※キティーホーク級4番艦)として姿を現している。

その後、1965年。
艦船用原子力機関の進歩によって運用効率が改善されると風向きも変わった。
エンタープライズ級4番艦~6番艦は結果的にニミッツ級へと生まれ変わり、1940年代後半に就役したミッドウェイ級の後継として建造される事となった。
(※レーガン大統領の600隻艦隊構想で空母15隻体制となったため3隻の内2隻は退役を免れており、ミッドウェイ級全艦の除籍は冷戦終結後となった)
そして1967年、ニミッツ級1番艦が起工(1975年就役)。
2009年に就役したニミッツ級10号艦ジョージ・H・W・ブッシュまで、なんと42年もの間、ニミッツ級が造り続けられた。


設計

その巨体はあの戦艦大和を遙かに上回り、全長330m、満載排水量9万トン以上にもなっている。
建造期間が半世紀近くにもなったために設計変更が逐次行われており、5番艦以降はついに10万トンを超えた。
また9番艦と10番艦は次の「ジェラルド・R・フォード」級のテストを兼ねた大規模な変更が行われており、改型と言うくらいには別物になっている。

武装

アメリカの空母は伝統的に戦闘を艦載機や艦隊を構成する他の艦に任せ、空母は艦載機の運用に全力を挙げている。
航空機部隊の指揮は空母座乗の航空隊指揮官が行う。(艦長は艦の指揮運用のみ)
そのため武装も最低限で、防御用のシースパロー短SAM発射機、ファランクスCIWS、RAMといった自衛用対空火器と、
対ゲリラ用の重機関銃、それに対魚雷用の魚雷などを搭載している。

艦載機

2016年現在の標準搭載量は固定翼機(つまり一般に想像される航空機)56機+ヘリコプター15機の合計71機。
そのうちほぼ半分の35機を艦内の格納庫に収容・整備できる(逆に言えば半分は飛行甲板上で野晒し)。
冷戦時代華やかなりし頃は80~100機以上積んでいたが、今は大型化や機種統合などによりこの数が標準、
でも必要に応じて機種変更したり積み増したり日常的にやっている。

艦載機は普通の飛行機と違い、足元強化・フック装備・折りたたみ式翼などの特色がある。

少し前までは飛行機は任務毎に種類が分けられていた(例:対空 F-14/対地…A-7/電子攻撃 EA-6B)が、最近ではマルチロール(多任務化)が進み、
F/A-18ホーネット系列の機体が大半を占めるようになった。
これにより整備効率の上昇、部品の共通化など多くのメリットが生まれた。

【1個空母航空団(CVW)の基本編制】
現在 将来
4個戦闘攻撃飛行隊(VFA) F/A-18×各10~14 4個戦闘攻撃飛行隊(VFA) F-35C×16
F/A-18E/F×28
1個電子攻撃飛行隊(VAQ) EA-18G×4~6 1個電子攻撃飛行隊(VAQ) EA-18G×5~7
1個早期警戒飛行隊(VAW) E-2C/D×4~6 1個早期警戒飛行隊(VAW) E-2D×5
1個対潜ヘリコプター隊(HS) SH-60F×6
HH-60H×2
1個海洋打撃ヘリコプター隊(HSM) MH-60R/S×6~10
1個海上戦闘ヘリコプター飛行隊(HSC)
1個艦隊兵站支援飛行隊(VRC) C-2A×1~2 1個艦隊支援多任務飛行隊(VRM) CMV-22B×3
1個無人艦載多任務飛行隊(VUQ) MQ-25A×5~8

近い将来の話としては、F-35C型の生産が進めば順次ホーネット隊が更新され、また無人機の開発も進んでいる。
他には輸送機(人員や補給物資の小規模な輸送に用いられる)の後継として、CMV-22オスプレイの採用が決定。
無人空中給油機としてMQ-25の艦載が予定されている。
なお将来の編制については構想段階で今後も変更される可能性があり、上記の内訳は2020年のブリーフィングで公表された2030年までの改編予想図に基づいている。

設備

  • エレベーター×4
航空機用。甲板と船内を結び、エレベーター一基に2機乗せられる。
場所節約の為、甲板の舷側にある。

  • カタパルト×4
航空機射出用。300km/hまでたった2sで加速する。
射出回数は1機/60~80s。
つまり4つ併せれば一分間に4機射出できる。
但し第三・第四カタパルトは着艦用滑走路と併用なので着艦作業中は使用不可。
ちなみに現在カタパルトを製造できるのはアメリカのみ。

  • 着艦用ワイヤー×3~4
着艦する飛行機を止めるロープ。
艦載機はみなワイヤーを引っ掛けるフックが装備されている。
非常用に一度エンジンを全開にするため着艦はかなりの衝撃らしく、ベトナム戦争時代は着艦して失神するパイロットが続出したとか。
勿論今は軽減されている。

  • 武器用エレベーター×3
飛行機に装備させるミサイルなどを運搬する。
ちなみに武器庫の場所は原子炉並に最高機密。
でも常識的に考えて底のどこか。

  • 原子炉×2
最高機密。
原子炉区画に入るには特殊な権限が必要。
日本に滞在中のジョージ・ワシントンには有り難いことに日本語でも警告文が書かれている。
ウラン濃縮度は20%以上だとか(ちなみに原発のウラン濃縮度が3%)。
約20年に1度、船体をぶった切って核燃料を交換する。
その間にレーダーなどを更新する。

  • いろんな車両×100以上
空母の甲板ではトーイング車両や消防車など様々な車両が所狭しと活動している。

○施設

乗員は艦の要員+航空要員が合計で5000~6000人。
勿論福利厚生もかなりのもの。
知られているのは
  • コンビニ
  • 郵便局
  • 階級別レストラン×5?
    • 1日18000食が消費される。
  • 病院(歯医者含む)
  • 図書館
  • スポーツジム
  • 礼拝堂
等々、町1つが海上にあるようなもん。

○艦隊

旧日本海軍でいう機動艦隊は現在アメリカでは空母打撃群という。

任務によって様々な組み合わせがあるが、基本編成は
  • 空母×1

  • 攻撃型潜水艦×1~2
    • ヴァージニア級攻撃型原潜、ロサンゼルス級攻撃型原潜、シーウルフ級攻撃型原潜など
    • 前方警戒

  • イージス巡洋艦×1~2
    • タイコンデロガ級巡洋艦
    • 周囲500kmをイージスシステムで監視

  • イージス駆逐艦×2~3
    • アーレイバーク級駆逐艦
    • イージスシステム+対潜

  • 補給艦×1
    • ご飯とか

アメリカ海軍はこれを11組持っている、そのうち10組の中核はニミッツ級。(あと一つは新型のフォード級)
空母だけでなく他の艦も世界最強。
費用も世界最強。
升of升
一体どうなってんだ!
他国においても空母、原潜、水上間戦闘艦に補給艦という構成は変わらないが、
イギリス:2セット フランス:1セット ロシア:1セット しか持っていない。
近年では中国が猛追している(2021年時点で2セット、今後も増加)が、さすがに空母を2桁建造するとまでは言っていない。アメリカが有する打撃群の数は文字通り、桁違いなのである。

そして、この打撃群一つで大体の国を更地にできるという。
なお米軍の空母は核兵器を搭載しない。通常兵器だけで、更地に出来ると言っているのである。やべー!

各艦紹介

  • ニミッツ(CVN-68)
ネームシップ。映画『ファイナル・カウントダウン』に出演したことで有名。
F-14の運用経験もあり、1981年のシドラ湾事件にも参加している。


  • ジョージ・ワシントン(CVN-73)
6番艦。初めて日本(というか横須賀)に配備された原子力空母である。
通常動力型空母キティホーク(CV-63)と交代する予定だったものの、艦内での火災によって予定より配備が遅れた。修理中だったため、トモダチ作戦には参加していない。
2015年に燃料棒交換のため本国へ帰還。ロナルド・レーガンに後を譲った。



おまけ

ニミッツ級の名の由来であるチェスター・ニミッツはWW2における太平洋の最高指揮官(マッカーサー担当の南西部除く)。
最終的に海軍元帥及び海軍トップの海軍作戦部長にまで登り詰めたすごい人。
ちなみに東郷平八郎を敬愛していたことでも有名で、戦後彼の座乗艦だった戦艦三笠が荒れ果てていることを知ると激怒し、海兵隊を歩哨に立たせて荒廃を阻止した他、私財の寄付に加えてアメリカ海軍をも動かして事実上の資金寄付*1を行わせるなど三笠の復元保存に尽力した
そしてニミッツ級で唯一、政治家の名前じゃない。

ニミッツ級の建造費は一番艦で$6億、最終10番艦では$60億。通常動力キティーホーク級の倍以上。
維持費の方は1998年換算で$3億/艦・年、つまり毎年30億ドル=3000~4000億円が10隻の空母を維持するため「だけに」費やされている*2

10隻いる空母はローテーションで整備や休養を行っており、前線で作戦行動するのは通常3隻程度。
内1隻は原子炉の燃料交換を兼ねた大規模な改造工事を4年くらいかけて行っており、完全な戦列外。
今はついこの間まで日本にいた「ジョージ・ワシントン」が順番待ちで下準備を始めているところ。

余談ながら1991年の湾岸戦争の際は、準備期間が半年あったためにローテーションを弄りまわし、当時在籍中12隻のうち半数の6隻を集結させた。
その中には長年日本で暮らしていたミッドウェイも含まれる。
もっとも無理矢理ローテーションを変えた弊害はすぐに現れ、戦後しばらく空母の整備体制は混乱をきたすことになったのだが。

外交的プレゼンス

アメリカの大統領は世界中のどこかで紛争なりクーデターなり起きた場合、まず真っ先に「近くにいる空母は何か?」を問い合わせるのが慣例と言われている。
それほどまでにニミッツ級空母は外交的に大きな存在になっているわけだ。
特に核戦争が非現実的になった現在、空母はただそこに存在するだけで極めて大きな外交的メッセージとなる。
空母打撃群が1個でも国付近にきたら途上国だったら心肺停止するだろうし、新興国だったら失神、先進国でさえゲロを吐くだろう。
まだまだ50年はなんだかんだでアメリカは海上の覇者で居続けると思われる。

一例として、台湾海峡危機において空母2隻が敢えて海峡をつっきり、中華人民共和国に強烈な政治的メッセージを送ったことは事情通の間ではよく知られている。
これで空母の威力を思い知った中国が現在、国産空母建造に意を注いでいる原因とも(同時に対艦弾道ミサイルなる奇天烈兵器を開発したのも米空母を寄せ付けないため)。

後継艦

エンタープライズ級の後継も兼ねたジェラルド・R・フォード級を12隻建造する構想があり、2019年の時点で4番艦まで発注されている。
設計に関してはニミッツを参考にしているがコスト低減や新技術導入を主軸とした様々な相違点がある。
詳しくは本家Wiki参照のこと。




追記・修正お願いします。船体ぶった切る程の大規模な改造工事でなくとも構いませんので。

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最終更新:2023年07月29日 14:11

*1 廃艦となった揚陸艦1隻を日本に寄付した上でスクラップにし、その廃材代を寄付した

*2 http://fas.org/man/gao/nsiad98001/c3.htm