文責:きょうよ

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4.1貨幣需要

名目貨幣残高とは公衆が 一定期間に平均して保有する貨幣量をいう。
実質貨幣残高とは名目貨幣残高を物価水準で除したもので、財何単位を購入するに十分な貨幣量を公衆が保有するかを示す。

貨幣需要関数

・結論を先取りしていえば、貨幣需要については、理論・実証の両面から見て以下のような事実が知られている。
→ほかの事情を一定とすれば名目貨幣残高への需要は
(1)物価水準に比例的に増減し
(2)名目利子率が増加すると減少し
(3)実質国民所得が増加すると増加する

・この関係を式に表現すると

M=PL(i,y)    \dots(1)

→ただし、Mは名目貨幣への需要量、Pは物価水準、iは名目利子率、yは実質国民所得である。

・(1)式のLのような貨幣への需要を示す関数を貨幣需要関数と呼ぶ。

貨幣とマクロ経済

・貨幣への需要と供給の交わる市場を貨幣市場というが、貨幣市場の均衡点は、通常の市場と同じく、貨幣への需要と供給の一致する点で与えられる。

・貨幣需要が変化するためには、(1)式よりP、i、yのいずれか、あるいはすべてが変化しなければならない。
・貨幣需要関数はなぜこれらの変数に依存しているのか、これらの変数の中でどの変数に特に依存しているのか、貨幣需要関数はどの程度安定しているのか、などの点が政府の金融制作への指針として実際的な重要性をもってくるのである。

4.2 貨幣数量説

・貨幣数量説には大きく分けて、フィッシャーの交換方程式とマーシャル、ピグー等のケンブリッジ方程式がある。まず、フィッシャーの交換方程式の理論を解説しよう。

交換方程式

・ある経済において一定期間になされた財・サービス取引量について考えよう。
・貨幣経済の性質からいって、財の取引とは売り手から買い手に財が引き渡される一方で、買い手から売り手に対して貨幣が受け渡されることのほかならない。

・種々の財価格の平均として定義される物価水準をPとし、一定期間に取引された種々の材の平均量をTとしよう。この期間に取引された材の総価値はPTである。
→これだけの取引が貨幣経済で達成されるためには、ちょうどそれに等しい価額の貨幣が財・サービスと逆方向に異なった経済主体間を流通しなければならない。

・この経済に貨幣はMだけ存在し、貨幣各1単位は平均してVだけの回数でこの期間に保有する主体を換えるとしよう。このVを貨幣の流通速度という。
→するとこの期間に異なった主体間を移動する貨幣料の総額はMVになる。

・この関係を敷で表現すると

PT=MV   \dots(2)

が常に成立することになる。これをフィッシャーの交換方程式という。

マクロ理論としての数量説

・上記の方程式から以下のことがわかる。
・ほかの変数を一定とすれば、物価は(1)貨幣量と(2)貨幣の流通速度に比例し、(3)取引量に反比例する。

・フィッシャーによれば、貨幣の流通速度は経済の各主体の貨幣を回転する速度に依存し、これは個人の慣習や社会の取引習慣、交通の技術水準などに依存して決定される。
→これらの要因は短期的には安定した量と考えてよい。

・VやTがMの変化と独立に一定の値をとるので(2)式より、貨幣量Mの増加は直ちに比例的な物価水準の増加を呼び起こすと考えられるのである。この命題は貨幣数量説と呼ばれて、古典的な物価水準決定理論として著名である。

・これらの議論では貨幣供給量と貨幣需要量が常に一致していることを暗黙のうちに仮定しているから、(2)式のMを貨幣需要量と解釈すれば、(2)式は貨幣需要の理論にほかならない。

ケンブリッジ方程式

(2)式を書き直すと、

M=\frac{1}{V}PT   \dots(3)

を得るが、取引量Tは実質国民所得yと比例的な関係が安定してあるものとして良いだろう。この比例定数分と(1/V)をまとめてkと書くと(3)式は

M=kPy  \dots (4)


・この(4)式をケンブリッジ方程式といい、kをマーシャルのkという。

貨幣ヴェール観

・貨幣数量説の特徴的な結論は、貨幣数量が決定するものは物価水準や物価水準に比例するそのほかの名目変数に過ぎないという点である。
→このような見方によれば、経済において実質変数は実質変数のあいだで決定され、それに対して、名目変数が貨幣残高に比例的に決定されるのである。

・このように貨幣は名目変数を決定するのみであり、実質変数はそれと無関係に決定されるという考え方を「貨幣ヴェール観」という。

・今日では実証的にみて、貨幣の流通速度が変動することがしられている。したがって、安定的なVを仮定したこのような古典的貨幣数量説は現在では支持されていない。
・またMの変化が短期的にTに影響を与える点も理論・実証両面で通説となっている。




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最終更新:2013年02月02日 21:13