文責:きょうよ

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第一部 総論

第一章 憲法と立憲主義

一 国家と法

・一定の限定された地域(領土)を基礎として、その地域に定住する人間が、強制力を持つ統治権をもとに法的に組織されるようになった社会を国家と呼ぶ。
・国家という統治団体の存在を基礎付ける基本法、それが通常、憲法と呼ばれてきた法である。

二 憲法の意味

・憲法の概念は多義的であるが、重要なものとして三つ挙げる

・形式的意味。これは憲法という名で呼ばれる成分の法典を意味する場合である。

・実質的意味。実質的意味の憲法には二つのものがある。
→固有の意味。国家には統治権力とそれを行使する機関が存在する。この機関、権力の組織と作用および相互の関係を規律する規範が固有の意味の憲法である。

→立憲的意味。立憲主義のしそうに基づく憲法であるが、その最も重要な狙いは、政治権力の組織化というよりも権力を制限して人権を保障することにある。

・憲法の最も優れた特徴は、その立憲的意味にあると考えるべきである。その特色を次に要説する。

・中世において、国王といえども従わなければならない高次の法、根本法があると考えられた。
・根本法が近代的な憲法へ発展するには近代法ないし自然権の思想によって新たに基礎づけられる必要があった。
→この思想によれば
→①人間は生まれながらにして自由かつ平等であり生来の権利(自然権)をもっている。
→②その自然権を確実なものとするためには社会契約を結び、政府に権力の行使を委任する。
→③政府が権力を恣意的に行使して人民の権利を不当に制限する場合には、人民は政府に対抗する権利を有する。

・立憲的憲法は、その形式面では成文法であり、その性質においては硬性である。なぜか。
・成分憲法をとる理由としては社会契約説があげられる。
→それによれば、社会契約を具体化したものが根本契約である憲法であるから、契約である以上それは文書の形にすることが必要であり望ましいとされる。
・硬性である理由も自然権および社会契約説の思想の大きな影響による。
→憲法によって作られた権力である立法件は根本法たる憲法を改正する資格を持つことはできず(それは国民のみに許される)、立法権は憲法に拘束される。

三 憲法の分類

・憲法の意味を理解をたすけるために、憲法はいろいろな観点から類別されてきた。

・伝統的な分類
→①形式の点から、成典か不成典か
→②性質の点から、硬性か軟性か
→③憲法の制定主体の点から、欽定憲法か民定憲法か協約憲法かなど
→こうした分類は必ずしも現実の憲法のあり方を実際に反映するというものではないことに注意しなければならない。

・憲法の定める国家形態に関する分類
→①君主制か共和制か
→②大統領制か議院内閣制か
→③連邦国家か単一国家か
→これらも憲法の分類自体としてそれほど大きな意味を持つものではない。

・戦後、憲法が現実の政治過程において実際にもつ機能に着目した分類が主張されるようになった。
・レーヴィンシュタインの提唱する三類型
→①規範的憲法。政治権力が憲法規範に適応し、服従しており、憲法がそれに関係するものすべてによって順守されている場合
→②名目的憲法。成分憲法典は存在するが、それが現実に規範性を発揮しないで名目的にすぎない場合。
→③意味論的憲法。憲法そのものは完全に適用されていても、実際には現実の権力保持者が自己の利益のためだけに既存の政治権力の配分を定式化したに過ぎない場合。

四 憲法規範の特質

・近代憲法は、何よりまず、自由の基本法である。
→組織規範・授権規範は憲法の中核をなすものではない。それは、人権規範に奉仕するものとして存在する。
→自然権を実弟かした人権規定は、憲法の中核を構成する根本規範であり、その核心的価値が人間の人格不可侵の原則である。

・憲法が自由の基本法であるということは同時に、憲法は国家権力を制限する基本法であることを意味する。
→本来近代憲法は自然権を実定化するという形で制定された。
→政治権力の究極の根拠も個人(国民)に存しなくてはならないから、憲法を実定かする主体は国民であり、国民が憲法制定権力の保持者であると言われる。

・憲法は最高法規であり、国法秩序において最も強い形式的効力をもつ。
→最高法規としての憲法の性質は、憲法が実質的に法律と異なるという典に求めなければならない。
→憲法が最高法規であるのは、その内容が、人間の権利・自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する規範を中心として構成されているからである。
→憲法97条は、96条98上の実質的な根拠を明らかにした規定

五 立憲主義と現代国家 法の支配

・法の支配の原則は、専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を用語することを目的とする原理である。
・法の支配の内容として重要なものは
→①憲法の最高法規性の観念
→②権力によって犯されない個人の人権
→③法の内容・手続きの構成を要求する適正手続き
→④権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重

・法治国家の観念は方によって権力を制限しようとする点においては法の支配の原理とおなじ意図であるが、次の二点において異なる。

・民主的な立法家庭との関係
→法の支配は民主主義的と結合するものと考えられたことであるが、法治国家は国家作用が行われる形式または手続きを示すものに過ぎず、いかなる政治体制とも結合しうる。

・「法」の意味
→法の支配の「法」は合理的でなければならず、ひいては人権の観念とも結びつくが、法治国家の「法」は形式的な法律に過ぎない。ただし、実質的法治国家においては内容の正当性を要求し法の支配の原理とほぼ同じ意味を持つようになっている。

・自由国家の下では経済活動が広く容認され、自由・平等な個人の競争を通じて調和が実現されると考えられ、国家は社会の最小限度の秩序の維持時と治安の確保という警察的任務のみをおうべきものとされた。(消極国家。夜警国家)

・資本主義の高度化により、憲法の保障する自由は、社会的弱者にとっては、貧乏の自由、空腹の自由でしかなくなった。自由国家は、国家的な鑑賞と計画とを必要とする社会国家へと変貌することになり、行政権の役割が増大した。

・立憲主義は消極的な権力観を前提としている。国家による社会への積極的な介入を認める社会国家主義が立憲主義と矛盾しないかが問題となる。
→立憲主義の本来の目的は、個人の権利・自由の保障にあるので、社会国家の思想とは基本的に一致する。

・立憲主義と民主主義は密接に結びついている。
→①国民が権力の支配から自由であるためには民主制度を必要とする
→②民主主義は個人尊重の原理を基礎とする




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最終更新:2013年01月27日 17:06