文責:きょうよ

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1.3 非金融部門の資金過不足

非金融部門とは

・非金融法人部門と金融部門とを区別している。
→これは、金融部門が実物資産より金融資産の蓄積を重視するという特色をもっているからである。

部門別資金過不足の推移

・非金融部門のうちでは個人部門は一貫して資金余剰部門であった。
→言い換えると資金余剰の個人も、資金不足の個人もいたが、合計してみると個人部門では、常に収入が収支を上回り、金融資産売却や負債発行に比べてより多くの金融資産購入を行って、ネットで金融資産を蓄積してきたことになる。
→(5)式で貯蓄が投資を上回ってきた

・非金融法人部門は一貫して資金不足部門であった。
→これは高い成長率が示すように設備投資意欲が旺盛で、金融資産を購入するような資金があればむしろ実物資産購入(投資)に向ける、という企業行動を反映している。

・次に公共部門では1955年代までは資金株速がプラスにせよマイナスにせよあまり大きくなかったが、それ以降は大きく資金不足となり、1975年第二は法人部門を追い越して最大の資金不足部門すなわち借りて部門になった。
→これは財政赤字が続いたことを反映している。

・結局、個人の資金余剰と(非金融)法人の資金不足とは一貫した傾向であったが、法人以外に、1975年代の公共部門と1985年代の海外部門は、それぞれ法人部門を凌ぐ程に大きな資金不足状態にあった。

1.4資金過不足と資産の蓄積

・(2)式からもわかるように、資金余剰の主体は純金融資産を増加させ、資金不足の主体は減少させる。
→前の木の資金株速が資産の増減にどう反映されるか見ておこう。

資金過不足と純金融資産

ある部門で保有する 純金融資産=金融資産-負債 (11)

と定義できこの左辺は資金過不足に応じて増減する。すなわち、

資金不足=純金融資産増 (2)

金融資産と実物資産

・実物資産との関係もここで考えに入れておこう。

ある部門の保有する 総資産=純金融資産+実物資産 (12)

・この式の右辺第二項の実物資産を増減させるのは投資にほかならない。

実物資産増=投資 (13)

・実は(12)敷の左辺すなわち総資産の増分が貯蓄である。

総資産像=貯蓄 (14)

・(12)式を増分ベースに直してに(13)と(14)を代入してみる。

貯蓄=資金過不足+投資 (15)

→これは(5)に一致することが確かめられる。

・資産や負債のように一時店で定義される量を経済学ではストックという。

・これに対して、時点ではなく機関で定義される量をフローという。

・ストックの増減は必ずフローだが、二つのストックの差がフローなのだと考えてはいけない。ストックの差ではなく、期間にわたるストックの増減量がフローになるのである。

国富

・部門によって資産の蓄積は異なるが、日本全体としてどのくらい資産があるかを図ったものが「国富」(national wealth)である。
・国であれ、部門であれ総資産は純金融資産と実物資産の和であるから

個人部門の総資産=A h -L h +K h (16)
法人部門の総資産=A f -L f +K f (17)
公共部門の総資産=A g -L g +K g (18)

(Aは金融資産、Lは負債、Kは実物資産)
・この三つを合計すると国富になる。

・純金融資産は、国内で貸し借りをしている分は相殺されてゼロになる。
→したがって日本全体にとって純資産になるのは、実物資産以外には、対外純金融資産しかないのである。

・なお、ここまでの説明で省略していた細かい点が二つほどある。
・第一は実物資産の減耗で、ストックとして実物資産の存在量を決めるのは過去からの投資だけでなく、時間の経過による減耗の速さも影響する。

・第二は資産の市場価格の変動である。
→資産への追加がゼロでも保有資産の市場価格が変化すれば総資産額は変動する。手持ちの株式や土地の価格が上がれば(キャピタルゲイン)市場価格で図った総資産はその分だけ膨らむのである。




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最終更新:2013年01月26日 19:32