文責:きょうよ

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1 金融と資金循環

・この章では金融という現象が生じる最も根本的な理由である資金の過不足について説明しよう。
・資金が余る/足りないというのはどういうことか、その結果資産や負債などはどういう影響を受けるか。貯蓄・投資と資金の過不足とはどのように関連しているのか、などの天が重要である。

・本章に出てくる等式はすべて定義式及び恒等式であり、計算としては足し算と引き算しかつかわない。

1.1 経済活動と資金過不足

資金過不足

・ある人のある期間の収入と支出の大小関係を比べることが可能である。
・収入が多い人はその期間について資金余剰であるといい、逆に支出のほうが多い人は資金不足であるという。つまり

収入-支出=資金過不足 (1)

で、資金過不足がプラスの場合を資金余剰、マイナスの場合を資金不足と呼ぶのである。

・資金余剰の人は、余剰分を時期に持ち越すことになる。つまり余剰分だけ金融資産を購入するであろう。
・金融資産でなく、土地や機械のような実物資産を買った場合はどうかというと、それは(1)の右辺(きょうよ:左辺の間違い??)の支出の方に入っているからここには出てこない。

・逆に資金不足の人は資金が足りないので何らかの方法で調達したはずである。借金をしたという場合は、その金額だけ負債を新規に発行したことになる。これをまとめて

資金過不足=金融資産増-金融負債増
=純金融資産増(2)

・この式から、資金不足の人が預金を取り崩したり証券を売却くして都合した、という場合はマイナスの金融資産増と考えればいいことがわかるだろう。

貯蓄と投資

・収入は、国民経済計算で言う可処分所得にほぼそうとうするものである。
→可処分所得は、消費として処分される部分とそれ以外の部分にわけられる。
→経済学ではこの消費されない残差のことを貯蓄と呼ぶ。

・貯蓄とは可処分所得から消費を引いたものである

収入=可処分所得=消費+貯蓄(3)


・支出の方は種類によって消費財と投資材に分けられる。投資材の購入は実物資産のぞうbンになる。

支出=消費+投資(4)


・(1)(3)(4)から

資金過不足=(消費+貯蓄)-(消費+投資)
=貯蓄-投資(5)


・資金余剰主体のことを貯蓄超過主体、資金不足主体のことを投資貯蓄主体とも呼ぶ。

1.2 部門別資金過不足

・いくつかの主体の資金過不足を合計することを考えよう。

各部門での集計

・n個の家計の全体で資金化不足を出すにはそれぞれの過不足を合計すればよい

H_1+H_2+H_3+\dots+H_i+\dots+H_n=H(6)

(H i はi番目の家計の資金過不足)


・企業についても同様に、m個の企業があるとして

F_i+F_2+\dots+F_j+\dots+F_m=F(7)

(F j はj番目の企業の資金過不足)


・最後に公共部門としての地方公共団体や中央官庁を合計すれば、公共部門の資金過不足Gが計算できる。

経常収支

・さて、日本国内のすべての主体がいずれかの部門にもれなく、また重複なく入ったとしよう。そこでHとFとGとの合計は何を意味するのか。 →この3部門は日本のすべての主体をカバーしているから、合計は日本全体の資金株速になる。つまりは国際収支(よりくわしくいうと経常収支にほかならない)

H+F+G=日本の経常収支B j =Σ(収入)-Σ(支出)(8)


・さて世界各国の経常収支を合計するとどうなるだろうか。
→ある国の対外支出は必ずある国の対外収入となるはずだkら、全世界で見れば経常収支の合計はぜろになる。すなわち

B_1+B_2+\dots+\B_k+\dtos+B_q=0(9)

(B k はk番目の国の経常収支)

→これを変形して

B_j=-(B_1+B_2+\dots+B_{j-1}+B_{j+1}+\dots+B_q)(10)

とする。この式の右辺が「海外部門」の資金過不足となる。

資金過不足と金融

・国内3部門に海外部門を加えて合計4部門がある時期に資金余剰になり、また別の時期には資金不足となる。
・そして資金不足の主体は負債を発行し、資金余剰主体は資金不足主体の発行した負債を購入する。
→これが、金融(資金の融通)ということにほかならない。

・なお、資金不足部門のことを赤字部門、資金余剰部門のことを黒字部門と呼ぶことがあるが、その場合の赤字・黒字は企業の決算の赤字・黒字とは全く関係ないことに注意しよう。
→これは経常収支にもあてはまる。経常収支が黒字であるということは国全体で見て外国からの受け取りの方が外国への支払いより多いことを意味するに過ぎず、その結果として余剰になった資金は海外へ流れ出すことになるが、それは利益や損失とは関係がない。

1.3 非金融部門の資金過不足

非金融部門とは

・非金融法人部門と金融部門とを区別している。
→これは、記入部門が実物資産より金融資産の蓄積を重視するという特色をもっているからである。

部門別資金過不足の推移

・非金融部門のうちでは個人部門は一貫して資金余剰部門であった。
→言い換えると資金余剰の個人も、資金不足の個人もいたが、合計してみると個人部門では、常に収入が収支を上回り、金融資産売却や負債発行に比べてより多くの金融資産購入を行って、ネットで金融資産を蓄積してきたことになる。
→(5)式で貯蓄が投資を上回ってきた

・非金融法人部門は一貫して資金不足部門であった。
→これは高い成長率が示すように設備投資意欲が旺盛で、金融資産を購入するような資金があればむしろ実物資産購入(投資)に向ける、という企業行動を反映している。

・次に公共部門では1955年代までは資金株速がプラスにせよマイナスにせよあまり大きくなかったが、それ以降は大きく資金不足となり、1975年第二は法人部門を追い越して最大の資金不足部門すなわち借りて部門になった。
→これは財政赤字が続いたことを反映している。

・結局、個人の資金余剰と(非金融)法人の資金不足とは一貫した傾向であったが、法人以外に、1975年代の公共部門と1985年代の海外部門は、それぞれ法人部門を凌ぐ程に大きな資金不足状態にあった。

1.4資金過不足と資産の蓄積




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最終更新:2013年01月26日 18:52