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パメラ(SC81~SC154年)

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パメラ(SC81~SC154年)
所属勢力:在野→アベヤクーン→クルトニオ→バニアウ(サイガス派)→銀河政府(サウズ恒星系政府→政権中枢)

元々は惑星ナーハンの田舎に住む村娘だったが、
村が非常徴収の対象になった際、両親を殺されアベヤクーンの大奥へ入れられる。
その後、彼女はその美貌・床技・才能を駆使し国を乗っ取り息子を傀儡とし政を行った。
この様な経緯から悪女、女傑と罵られたが、晩年その才能を評価され銀河政府の中枢へと入り
以降、「銀河政府偽りの平和」と言われる40年に渡る繁栄の礎を築いた。
故にその評価は、後世の歴史家の間でも分かれており、
「国を簒奪した悪女」「ドーラの共和国を転覆させた悪党」「銀河政府を牛耳った女狐」と
ショーン、プロベット寄りの歴史家からは批判されているが、
「サイガスの忠臣」「批判意見は全体の功績を見ていない」「彼女の経歴も甘味するべき」と擁護・評価する歴史家もいる
(評価が割れる点は地球~連合政府のバッカスと似ている)。

惑星ナーハンの田舎町に平民の子として生を受ける。
「見てお父様。パメラ、学校で一番になったのよ」
「お母様、大変でしょう?パメラも手伝うわ」
後に様々な謀略を巡らせる彼女だが、この時は勉強が好きで、家業を良く手伝う何処にでもいる1人の少女にすぎなかった。
そんな彼女の転機となったのが、後世の歴史家からも酷評されているジックマンによる非常徴収である。
SC95年、アベヤクーン軍の筆頭軍務官であったジックマンは主君の機嫌を取るべく、
パメラの住む地区に非常徴収命令を出す。
この非常徴収とは名ばかりの略奪行為はかなり酷く、
「金も物も女も何も供出できない家は唯の穀潰しであり、国家に存在してはならないゴミである。粛清すべし」
とのお触れが出され、供出できなかった家族が皆殺しにされたのは当然ながら、
少量しか用意できなかった家も「役立たず」呼ばわりされ殺された。
パメラの家は父が野菜の直売所をやっていた事から何とか供出したにも関わらず
娘が居ることを知った憲兵に供出を強要され、これを拒否した両親は殺害されパメラもジックマンの許へと連行された。
ジックマンは「この娘は陛下の御趣味とは合致せぬが一人くらい数合わせに良いだろう」と述べたと言う。
「数合わせ…?私の両親はそんな理由の為に殺されたの?」
パメラは連行される車の中で両親を失った寂しさと悔しさからずっと泣いていた。
そして、お呼びがかかるまで収容されていた牢屋で泣いて居たある日、一人の若い男性士官が訪れる。
「さぁ、早く出るんだ。ここに居ても慰み者になるだけだ」
その男はバイザーで目を隠していた。だが微かに見えた瞳には憎悪と激昂に満ちていた。
「部下の裏切り… 父親の殺害…」彼が自らと同じ境遇だと一瞬で理解したパメラは
「ここから自分で出る。誰の手も借りない」
彼の助けを受けるのを拒否した。
パメラも目の前の男と同じように復讐する道を選んだ。
別れ際、パメラが名を問うとその男は「バニアウ」と名乗った。

それから数ヵ月後、遂に覇王アベヤクーンからお呼びがかかる。
嘗てはア族一の知将と言われたアベヤクーンも既に耄碌し加齢臭と口臭を漂わせる老害と化していた。
パメラは激痛に耐えながらアベヤクーンに奉仕した。
そして、床技を磨きやがてアベヤクーンを籠絡させる。全ては復讐がなせる業である。
パメラが大奥に入って4年が経つ頃にはアベヤクーンも彼女に夢中となり、毎晩通うようになった。

SC100年パメラはアベヤクーンの子を懐妊する。
「待っていろ、耄碌覇王め。どっちが本当の穀潰しか教えてやろう」
そしてパメラはアベヤクーンの子を出産。後に王位を継ぐクルトニオの誕生であった。
王子の出産にアベヤクーンは歓びパメラを王族に封じる。
パメラは復讐の次の段階としてバニアウと手を組む事を考える。
バニアウの復讐の意図を知っていたパメラはバニアウの身辺を調査し
彼が覇王アブラムの遺児である事、そして旧アブラム家臣達と密会している事を突き止め呼び出した。
「私と手を組め。そうすれば宇宙を手にする事が出来る」
「生憎だが、私は復讐の意図はない。他に用が無いなら失礼する」
この時、要求を拒否したバニアウの後ろに一人の少年が隠れるように立っていた。
「何の用だったんだバニアウ?」
その少年の問いにバニアウは優しく答えた。
「大した用ではありません。私に弟君の御守までも押し付けると言いましたから断りました。
 さぁ戻りましょう殿下。まだ勉強が残っております」
立ち去る直前、パメラはその少年と目があった。まるで怯えるような哀れむ様な目でパメラを見ていた。
「バニアウめ、正妻の子の御守を押し付けられているのか。復讐に走る男が所帯じみた事を…」
この時、バニアウが守り役を務めていた少年こそアベヤクーンの正妻ファーリの子サイガス
後に戦乱を勝ち残り銀河政府2代国家元首となる男である。
この時、パメラは彼が主君となり、心の底から尊敬出来る良き理解者となるなど夢にも思わなかった。

パメラは王族となった事で様々な権限を得て政治に口出しするようになる。
彼女にのめり込んでいたアベヤクーンは彼女の言い成りとなり「よきに計らえ」と言わんばかりに
パメラの言いなりになっていった。
だが、これに危機感を募らせた人物が居た。アベヤクーン妃ファーリである。
嫡子サイガスの将来を不安視したファーリはパメラの暗殺を画策。だが、これに関してもパメラの方が上手であった。
ファーリはパメラを股座だけで上り詰めた女と勘違いしていた。また元々政争に疎かった事もあり、
やる事なす事すべてがザルであり、すぐにパメラに露見する事となる。
この時、パメラはバイオノイドの権威モーゼの弟子マルオを籠絡させ彼に護衛用のバイオノイドを作らせていた。
そうとは知らないファーリは暗殺を決行。哀れな刺客は風穴を開けられ返り討ちになったと言う。
暗殺失敗に焦ったファーリはアベヤクーンに意見するも、パメラが手を回していた事もあり精神病院に送られる。
そして、間も無く自殺する事となる(公には病を悪化させたことによる病死)。
だが、その死因には不審な点が多かったが、真相は闇に葬られた(後にパメラと和解したサイガスも全く追及しなかった)。
意気消沈するアベヤクーンにパメラは寄り添い、遂に王妃となる。

王妃となったパメラはアベヤクーンから治安の悪いカスマン宙域への視察を告げられる。
これを天佑と判断したパメラはバニアウに日程を密告し暗殺するように仕向けた。
結果、アベヤクーンはバニアウに裏切られ死亡。パメラが背後で糸を引いていたとは知らずに世を去った。
すぐさま自らの子クルトニオを王位に告げ全権を掌握。邪魔になる他の王子、王族を追放する。
バニアウが消息を絶ったと報告を受けたパメラは「帰ってきたら殺してやろうと思った」と述べているが
何処か寂しそうであったとされる。

太后となったパメラはマルオに作らせていた女性型バイオノイド・ACT-05メロウを使い各地で暗躍。
各国の優秀な士官の洗脳引き抜きや破壊工作などを行い勢力を拡大していった。
その中で最も評判が悪かったのが海賊オンゴゴの洗脳、それに伴う各国輸送船の襲撃である。
当初は海賊の蛮行だと思われていたが、オンゴゴが元々穏健派の海賊であった事から徐々に不審がられ、
彼がパメラに雇われている事が発覚。各国から抗議が寄せられるが、パメラは知らぬ存ぜぬで通した。
対外的にその手法は綺麗とは言えなかったが、逆に内政はかなり真っ当であり寧ろ安定していた。
パメラ(正確にはクルトニオ)治世下での暴動は確認されておらず、民はパメラを支持していたと言う。
故に自らの意思でクルトニオ王朝の門を叩く者もおり、旧アドルセム家臣団など優秀な人材も集まっていった。

SC104年カスマン宙域でバニアウが決起。
そして、追放したアベヤクーンの忘れ形見であるサイガスがバニアウの養子として擁立される。
惑星マレングが奪取されるとパメラは自らクルトニオの名代として赴きバニアウと同盟を結ぶ。
西方の憂いを絶ったパメラはイーズ恒星系へ侵攻。旧ラー王朝を征服しその大部分を領土に収めた。
パメラは人心掌握の天才であった。他国工作員による世論誘導も自らの強弁をもって封じ込めた。
征服した国の民にも自らの弁術を使って前覇王の無能さを説き、自国の有能さを説いた。
多くの民は彼女の説明に納得し熱烈に支持をした。
そして、サウズ東部とイーズの大部分をその手中に収めたクルトニオ王朝はやがて4強の一角となる。

SC121年、パメラは肥沃なセントラル恒星系への侵攻を計画する。
そんなクルトニオ王朝の前に立ちふさがったのが4強の1角ドーラ王朝であった。
この時、クルトニオ王朝は周囲を強国に囲まれ何れかの国と決戦することを強いられていた。
西部のバニアウ王朝は人員の数質ともに最も優れている。レナジやモレア、マック、サイガス率いる旧アベヤクーン残党に
バニアウに引かれ集まった優秀な将官たち、何れ戦うにしても今はその時では無い。
北部の後プロベット王朝はバニアウに及ばずとも人員の質はかなり優れている。
アズマら海賊艦隊や老将八卦衆、最凶の謀略家バッカス及び旧ラー王朝残党
勢力は小さいが最も勢いがある。今戦えば他の勢力に付け入れられる隙が生まれ不利となるだろう。
セントラルのドーラは、当時最大勢力を誇った。
情報によれば、この勢力は交渉が決裂したプロベット軍への侵攻の準備をしているらしい。
そして、何よりプロベット側の策略で将兵たちが疑心暗鬼に駆られている。
最も攻めやすいのはドーラだが、覇王は女…
パメラは女ながらに覇王を務めるドーラに興味を持った。
だが、彼女の思想が「王制廃止、民生復古」だと知ると幻滅した。
「優れた統治者かと思ったが、唯の愚か者だな。
 民を導かぬ統治者など、存在その者が悪だ。民に取って不幸以外の何ものでもない」
そして、パメラはメロウにドーラ暗殺を指示。
パメラ最大の暴挙と言われるドーラ王朝の崩壊が起こる。

ドーラが死に同国は瞬く間に崩壊・分裂し内戦を始めた。
すぐにセントラルへの侵攻準備を始めたパメラの元に予想外の報告が2つ舞い込んできた。
ドーラから分裂したショーンは各国に自制と協力を求めていた。
これ自体はパメラも知っていた。
「弱者の苦し紛れだな。精々足掻きもがくが良い」
悪あがきをする弱小勢力。放っておいても勝手に滅ぶだろう。
そう思っていたパメラだったが、間も無く舞い込んできた情報に表情を曇らせた。
「覇王プロベットが惑星ジパングに上洛。ショーンと歴史的に和解す…」
そしてもう一つ。
「覇王バニアウが同盟を破棄。宣戦を布告す…」
どう言う訳かバニアウの下にドーラ殺しの真相が漏れていたのである。
一説では事情が全てパメラ有利に動いている事を不審に思ったバニアウ家臣達が各地に間者を派遣し
命がけで突き止めた結果だと言う。
戦場以外での覇王殺しをバニアウは「冒涜・蛮行であり、信用を損なう行為。組むに値せず」として
北伐を中止しクルトニオ王朝への侵攻を開始した。

ここに来て各国がパメラの予想に反する動きをしてきた。
だが、パメラは特に焦っていなかった。
バニアウとの決戦は既に想定済みであり、予定より早かったに過ぎない。
ショーンとプロベットの和解も同連合政府のセントラル平定が少々早まるだけ、
「焦る事は無い。連合政府とやらがセントラルを制す前にバニアウを潰せばいいだけだ」
予想通りバニアウとクルトニオの決戦はクルトニオ側がかなり有利であった。
パメラもノーズのトットンを焚き付けウェズへ進行させバニアウの戦力を2分させた。
そして自らも艦隊を率いバニアウを包囲し敗走させることに成功する。
だが、ここで再度予想外の出来事が起こる。
パメラが当分侵攻してこないと踏んでいたショーン・プロベット連合政府がクルトニオ領への侵攻を開始したのだ。
セントラル平定が予想より早く完了した事と、バニアウがドーラ殺しの真相を連合政府に暴露した為である。
連合政府の侵攻を想定していなかったクルトニオ軍は急きょイーズへ戦力を裂くも敗退。
結果、サウズ方面の戦力も敗退し総崩れしたのである。
追い詰められたパメラは惑星ナーハンに籠城し徹底抗戦をする。
持ち前の知略と策謀でバニアウの数度に渡るナーハン制圧戦を退けるも物量に勝るバニアウ軍の猛攻に
遂に惑星ナーハンは陥落した。

ここで通説ではパメラは『クルトニオに全責任を擦り付け敗走した』とされているが、
異を唱える歴史家もいる。
『先にクルトニオが捕らえられ処刑された。全責任を擦り付けたと言うのは後世の創作・後付である』
『クルトニオが処刑される際に母を庇い全責任を被った。結果擦り付けた様に見えただけである』
だが一方で
『無能だったクルトニオがそこまでするとは考えにくい』
『無能・バカと罵られていたクルトニオを庇う方がどうかしている』
との意見もある。
また、『サイガスがパメラを生かす口実の為にクルトニオに罪をかぶせた』
との説もあり特にバニアウ王朝のサイガス、パメラ寄りの歴史書はこれを支持している。
ただどの説にしろ、パメラは「クルトニオに罪を擦り付けた」と言う事を否定し無かったと言う。

ナーハン陥落後、王宮を脱出したパメラは少数の御供と共にナーハン各地を敗走していた。
バニアウ軍もパメラの捕縛に全力を挙げた。特にアベヤクーンの子サイガスが血眼になって探していた。
ナーハンの全路地裏・地下道、故郷近くの村落周辺に別荘近くなど至る所を探したが発見に至らなかった。
だが宇宙港近くの路地裏で密航を企てていた所を発見され対に捕縛。
ナーハンに駐留していたバニアウ軍本隊の元へ連行される。

バニアウやサイガスの元へ引きずり出されたパメラは笑っていた。
「私の人生はここで終わるのか… やる事はやった。なかなか楽しい人生だった」
するとサイガスがパメラの元へ歩み寄った
「私が憎いかアベヤクーンの忘れ形見よ。
 既に私の復讐は成就した。思い残すこと等何も無い。さぁ、さっさと殺すがいい
 そうすればお前の気も済むのだろう」
パメラは笑みを浮かべながら目を瞑った。死ぬのを覚悟したが、切り落とされ他のは自らに掛けられた手錠であった。
「どう言うつもりだ。私に情けを掛ける心算か?」
「情け?貴様にかける情けなど持ち合わせていない。
 確かにお前の事は殺したいほど憎いが、ここで貴様を感情のままに殺しては憎い貴様らと同じになってしまう。
 それに、このまま死なせてな貴様の思うつぼだ。
 かと言って貴様をただ生かしておくのも気に食わん。ならば仇であるこの私に一生仕え
 生き恥を晒し、屈辱を味合わせる為に殺さない事にした。」
とサイガスは答えた。
自分は殺される者とばかり思っていたパメラは驚きを隠せなかった。
いや、訳が分からず頭が混乱していた。
「アベヤクーンの忘れ形見よ。教えてくれ、どう言う事だ?」
「私に仕えよ。お前は必要な人間だ。心身ともに草臥れるまで私の為に働け」
パメラは初めて自らが必要だと言われた。必要とされている事を知った。
こんな自分でも必要とされている事が信じられなかった。
「この私が必要な人間なのか?仇であるこの私が…?」
信じられずに居るパメラを見てサイガスは続ける
「貴様が父を殺し、ドーラを殺したのは誰の為だ?
 憎き仇の子を産み育てたのは何の為だ?自分が好きかってする為か?
 いや、違うな。理由はどうであれ、国をより良くする為だ。
 もう自分の様な目に遭う人間を産まない為だろう。
 私に力を貸せ。そうすれば、お前の理想は私が実現しよう」
そう言ってサイガスは自らの手を差し出した。
パメラにその手はとても大きく見えた。そうだ、私は贅沢がしたくて戦ってきたのではない
好き勝手にするために国を牛耳ったんじゃない。
パメラの目からは涙があふれた。この人は私を理解してくれた… やっと見つけた。
その手を取るとパメラは跪いた。
「このやり場のない苦しみ、激痛、羞恥、憎悪、憤怒。貴方全てが引き受けてくれるのですね。
 永遠に続くかと思ったこの絶望から私を解き放ってくれるのですね?」
サイガスはパメラを抱き寄せるよ優しく語り掛けた。
「パメラ、民の苦しみを知る貴様はこれから先、必要となるだろう。それがお前の罪滅ぼしであり償いだ
 お前はこれ以上、苦しみ汚れる必要はない。私がお前の苦しみ、汚れ、絶望、その全てを引き受け代りとなる。
 お前は民の希望となり、私がお前の希望となろう」
「はい殿下、我が身も心も全て殿下の御意のままに…」
全てを吐き出したパメラは少女の様に泣いた。
そして長きにわたるサウズ戦役は終戦を迎えたのである。

バニアウと連合政府との間でクルトニオ討伐後の交渉が行われた際、
連合政府からはパメラの引き渡しか、軍事裁判の開廷を求められたが、
サイガスは「貴国の言うドーラ暗殺は、クルトニオの仕業である」と押し通して、これを拒否。
連合政府の要求を悪質な難癖と切り捨てた。
最終的に連合政府がパメラが暗殺の実行犯であるとの確定的な証拠を得られなかった事もあり断念し
パメラは連合政府に引き渡されることはなかった
(パメラのによるドーラ暗殺の証拠は、暗殺事件を突き止めたバニアウ王朝が握っており、
 パメラを召し抱える方針のサイガスが隠していた事から表沙汰にならなかった)。

サイガスはパメラ召し抱えを養父バニアウに直訴。
その際、パメラはバニアウと20年ぶりに顔を合わせた
「サイガスに忠誠を誓った様だな。あの子は素質があるか?」
この問いにパメラは笑みを浮かべながら答えた。
「それは、お前が一番知っているるのではないか?
 実の父王に恐れられ、実の母に愛情を注がれずに育った殿下は
 自らを守るためにその才を開花させた。この私が救われるほどに豊かな才と清らかな心を持っている。
 精々出し抜かれぬ事だ。あの子はお前が考えているよりも遥かに大きな男だ」
これを聞いたバニアウも納得したように返した。
「そうか、貴様から見てもサイガスは見込みがあるか。本当に末恐ろしい子だ
 天下を取るのは余では無くあの子かもしれないな」
そして謁見を終え出ていこうとするパメラにバニアウは問う
「お前は以前、余に言ったな。『私と組めば宇宙が取れる』と
 それは今も偽りないか?」
振り返ったパメラは
「偽りはない。お前と私の才があれば敵など恐れるに足りない。
 だが、その時に玉座に座っているのはお前とは限らないぞバニアウ」
と答えると笑いながら退出した。

これによりバニアウ軍分3位のサイガス派家臣として召し抱えられるが、
パメラへの風当たりは冷たかった。
サイガスと対立していた義弟ラミウス派ばかりか、身内のサイガス派内部にも
パメラ召し抱えに難色を示す者が多かった。
「パメラは父君アベヤクーン様ばかりか母君ファーリ様の仇ですぞ」
だが、サイガスはその全てを退けたと言う。
「確かにパメラは両親を殺し国を乗っ取った。彼女に憎しみが全くないかと言えば嘘になる。
 だが、父が死んだのは自らが蒔いた種だ。民を蔑ろにし冒涜した結果である。
 いわば自業自得と言うやつだ。
 卿らは両親を殺された私にはパメラを敵討ちをする権利があると言う。
 ならば、我が父に両親を意味もなく殺され、辱めを受け耐え忍んだパメラにも
 敵討ちをする権利があるのではないか?
 母上も父の蛮行を見て見ぬ振りをし、何故パメラが復讐に囚われたか知ろうともせず
 母上に悪気は無かったのかもしれぬが、結果的に父は増長しパメラは耐え難い苦痛を味わった
 これは無意識・無自覚の悪意である。
 仮にパメラを殺して私に何の得があるの言うのだ?
 復讐心に任せ有能な人材を失うなど愚か者のする事だ。
 それに卿らは何か誤解をしている。私はパメラを許すとは一言も言っていないし、許すつもりはない。
 もし、パメラを敵討ちなり処刑なりで殺すのは一時しのぎの憂さ晴らしで唯の自己満足である。
 挙句、パメラの罪をそれ以上問えず、許すことになる。
 故に彼女に死ぬ権利は与えない。仇の私に仕え生き恥を晒すのだ。
 私と帝国の為に尽くし心身ともにボロボロになって死ぬ。
 これは恩情では無い。罪とそれを償う罰だ。」
自らを擁護するサイガスにパメラも聞いた。
「殿下、私へのお気遣いは無用です。嫌われる事は慣れております故…
 寧ろ殿下にご迷惑がかかってしまいます」
それを聞いたサイガスはパメラを諭した。
「パメラよ。死んで償える罪など存在しない。
 お前の経験、その才、近い将来役立つ良きが来よう。その時、貴様は今までの罪を償う事が出来る。
 それまでお前は生き恥を晒さねばならない。
 憎悪を復讐を甘んじて受けとうなどと思うではないぞ」

バニアウ王朝においてサイガスの次にパメラに理解を示したのは
意外にもサイガスの妻でバニアウの長女であるドリス王女であった。
ドリスの初陣の際、サイガスの推挙でパメラが副官の艦隊司令として彼女を補佐する事となった。
パメラが副官と言う事に当然、反対意見が挙がった。嘗て王妃ファーリを策を用いて蹴落としたのだから当然である。
だが、サイガスが「もしパメラに謀り事のありし際は腹を切る」と押し切り決定した。
ある時、ドリス王女がパメラに
「他の者は、その方を悪くしか言わぬ。何故か?」
と問うたと言う。
「浅ましい女ゆえ色々な悪事をしてまいりました。
 多くの者を欺き蹴落とし、利用して捨てて参りました。
 父君の陛下やサイガス殿下もその一人でした。
 故に私を憎む者が多いからでしょう」
とのパメラの返答にドリスは意外な言葉を掛けた
「そうか、その方も辛かったのだな」
「妃殿下は私を軽蔑しないのですか?」
「何故、妾がその方を軽蔑するのか?
 妾が軽蔑するのはその方を追い詰め屈辱を味合わせたにも関わらず
 その方を働きを全く評価せず誹謗するしかしない愚か者どもだ」
同情ではなく自らの実績を確りと評価したパメラは心の底からドリスに感謝した。
周囲の予想に反しパメラは裏切らず見事な采配でドリスを補佐。
帰還したドリスは「第1の功績はパメラである」と父バニアウに報告。
これによりパメラは分2位へと昇格した。

サイガス夫妻からの信頼を得たパメラはその懐刀として補佐し
時には暗躍しその勢力拡大に貢献した。
パメラの功績で最も高くされているのが平民対策であった。
『非常徴収禁止令』税金不足を補うため平然と行われていた悪しき慣習。
歴代王朝も表向きは禁じていたが、実際は黙殺され公然と行われていたのである。
これに対し、パメラはサイガスを通じ覇王バニアウの詔として出し徹底化し、厳しく取り締まった。
異を唱える者は解任し結果的に平民省の役人の1/3がクビになったと言われる。
民は(表向き詔を出した)覇王バニアウに感謝し、汗水を流して尽くした。
街には活気が満ち、士気も大いに上がった。
『自由商売法』を出し、企業を誘致。経済を活性化させ国力を高め税収を上げた。
それまで、ホスエン、バルゴ、ゼファー、地球と言った大経済圏を持つ連合政府に
遅れを取っていたバニアウ王朝も、それに迫る経済規模を誇る様になる。
サイガスがノーズのトットン平定を命じられた際はアカフリ子息ヘルムートを使う様に進言。
トットンに恨みのあるヘルムートは先鋒を務めキルビスを制圧。
指揮官であったサイガスの評判も上がり、自らを先鋒に任じてくれたと言う事で
ヘルムートはサイガスに恩義を感じるようになり、将来的に役立つこととなる。
王妃レナジの父キシが亡くなった際はキシ派の人材引き抜きの為に暗躍。
サイガスの義弟ラミウスの悪評を触れ回り同派の勢力拡大を防ぐなどした。
そして、バニアウ王朝におけるパメラ最大の悪行(と言われている)が
バニアウの遺言捏造疑惑である。

SC144年、連合政府で副盟主プロベットと盟主ショーンが亡くなったのと時を同じくして
覇王バニアウも病に倒れる。
病状は思わしく無く日に日に症状は悪くなる一方だった。
侍医から「今日明日の命でしょう」と言われたある日の事だった。
パメラは議会での公務があるサイガスに変わり名代としてドリスと共にバニアウの枕元に居た。
「私も歳を取ったがお前はそれ以上に老いたな。どんなに優れた能力を持っていても寿命には勝てぬか」
他派閥の家臣達も集まり重苦しい沈黙が流れる中、パメラはバニアウの口が動いている事に気付いた
「皆、静まれ!!陛下が何か申されている」
そう言って席を立ったパメラはバニアウの枕元に立った。
「(声を出すのもつらい様だな)」
そしてパメラは耳を口元に近づけ聞き耳を立てた。
「・・・・・・・・・・・。」
この時、バニアウが何を言ったかは定かでは無い。だが何かを聞いたパメラは
「解りました。その様に伝えます」
とその場から立ち上がるとドリスの元へと歩み寄った。そして…
「もし、陛下に何かあれば連絡を…」
とドリスと1言2言会話するとパメラは部屋を出ていった。
「殿下から賜った大恩、その恩情に応える為に貴様の王位を頂くぞバニアウ」

そして、パメラはサイガス派の面々を集めると遺言の内容を告げる
「パメラ殿それは間違いないのですか?」
「この耳で聞いた間違いない。ドリス妃殿下から連絡があり次第動くぞ」
「しかし、勝手に動いては謀反の疑いを掛けられる恐れが…」
「謀反?皇太子であるサイガス殿下に即位いただく為に動くのだ
 何故、謀反の疑いを掛けられようか。
 その様な物言いをする輩の方が謀反人である。
 陛下の遺言の嘘真に関わらず王位継承権の低いラミウスは確実に動くぞ。
 それからでは遅い。
 サイガス殿下に安心してご即位いただく為にも迅速な行動が求められる」
そしてパメラは、秘密裏に憲兵司令部を押さえその時を待っていた。
「早くて、数時間後。遅くて明日か… 待つ時は何時も長いな。」
そして数時間後、ドリスから連絡が入る
そしてドリスに艦隊司令部の掌握を頼むと自らは憲兵を従え議会に乱入した。
止めに入る警備兵に対しパメラは
「非常事態である」と威圧し下がらせると議会を制圧。
呆気に取られていた議場の議員からマイクを強奪するとパメラは叫んだ
「たった今、バニアウ覇王皇帝陛下が崩御した」
バニアウの容態が悪い事を知っていた議員たちも死んだと聞かされザワ付き始める。
「陛下の最期のお言葉である。『次期王位は長子サイガスに継がせるものとする』
 これは、遺言であり後継者指名である!!」
玉座より一段下の王族席で座っていたサイガスは立ち上がりパメラの元に歩み寄ると
「大義である」と告げ、元の席では無く上座の覇王の席に座った。
「これよりサイガス皇太子殿下改めサイガス覇王皇帝陛下のお言葉は君命である。
 従わぬ者は大逆罪に等しいと心得よ!!」
この場に居合わせた議員たちもパメラの剣幕と手際の良さに、なす術も無く従うしかなかった。
当然、寝耳に水なのがサイガスの義弟でバニアウのもう1人の養子ラミウスであった。
「これはパメラによる遺言のでっち上げ、王位簒奪計画である」と反乱を起こそうとするが
パメラの方が上手であった。
すでに帝都カスマンの主要部はサイガス派に抑えられ、
艦隊司令部もドリスに掌握されて居た為、私領であるウェズ恒星系へ敗走するしかなかった。
この様にパメラ、サイガス、ドリスが不自然なまでに手際が良い事から前述した様に
パメラによる遺言捏造疑惑が掛けられている。
しかし、パメラが捏造し他と言う証拠も無ければ、捏造し他と言う証拠も無い。
故にパメラはこの遺言の件に対しては強気の姿勢を崩さなかった。

議会、艦隊司令部、帝都を掌握したサイガスにパメラは
「養母君レナジの確保し、彼女に王位継承を認めさせるべき」
と進言し太后レナジを確保。これにより、サイガスの王位継承は承認され
サイガスは覇王の座に君臨した。
即位直後のサイガスの元に緊急事態の連絡が入る。
「ノーズ恒星系の治安維持を行っていたノーズ方面軍司令官ヘルムートが謀反」
これに怒ったサイガスは討伐部隊をノーズへ派遣しようとするがパメラはこれを制止した。
「サウズとノーズの間は既に義弟ラミウスに奪取され、ノーズは本国から切り離されております。
 防衛する為に兵力を裂けばラミウスや他の勢力に付けいる隙を与える事になるでしょう。
 ヘルムートの独立を認めるべきです。
 ノーズの痩せた土地など奴にくれてやればいい」
これにより、サイガスは同盟を組む事を条件にヘルムートの独立を承認。
結果的にヘルムートはサイガスに感謝し大恩を感じる事となる。

サウズを平定したサイガスはウェズ恒星系へ侵攻を開始。
ヤリ、マレング間で激しい戦闘を繰り広げていたが、
この事態を憂いたマックの養子サジェムが各国に停戦を呼びかける。
サイガスは「我こそが正統なり、従わぬ者は反乱分子として殲滅する」と突っぱねたが、
サジェムは同じく内乱状態に陥っていたショーン・プロベット連合のマクガイバと話をつけ
互いの戦闘への不介入の条件として即時停戦を各国に再度呼びかける。
「あの鉄壁バカめ、よりによってイーズの政府と話をつけたか。
 まぁ良い。何も武力を用いる事ばかりが、サイガス陛下を全宇宙の統治者にする方法ではないからな」
パメラはサイガスに停戦の受け入れるよう進言し、サイガスは停戦に応じた。
こうして、内戦は2年を経ずに集結した。

停戦後の枠組みを話し合う会議は紛糾した。
各国恒星系政府による連合国家の発足が決まったのだが、議員定数、票割、国家元首の座を巡り
各国が対立したのである。
「会議は踊る、されど進まず…
 踊ると言うよりは子供の喧嘩だ。俗物どもが好き勝手騒ぎ立てているだけだな。
 ドーラよ見ているか?民に政を委ねた結果がこれだ」
会議から帰って来たサイガスから元首の選出方法を聞かされたパメラはサイガスに問う。
「陛下は国家元首と言う身分になりたいですか?」
この問いにサイガスは「当然だ」と返答するとパメラはこう返した
「ならば、今度の会議でこう言うのです。『自分は元首の地位は要らない』と」
「パメラ、正気か?私は全銀河を統べる元首の座を手にする方法を聞いているのだ。
 にも関わらず要らぬと言えと言うのか!?」
納得の出来無いサイガスがパメラを問い詰めるとパメラは答えた
「陛下がその地位を望むのなら尚更です。今各国は内戦終結直後で武力を持っています。
 些細な事で再度内戦となるでしょう。特に義弟ラミウスが陛下に従うとは思えません。
 長年対立してきたショーンとプロベットのバカ息子たちも同じです。
 現段階で陛下が国家元首になっても誰も従いません
 はっきり言わせてもらうが、陛下には彼らを従える程の人望も力もありません」
「仁徳・才能で養父上に勝てるとは思ってはおらぬが、随分な言われようだな。
 だが、お前の言いたい事は解った。ならば奴らを従わせるには如何すれば良い?
 お前の事だ、何か良い案でもあるのだろう?」
ズバリ言われたサイガスは頭をかきながらパメラに案を聞いた。
「仮に選挙があったとしましょう。陛下の目から見て、自分以外で当選するとしたら誰だと思いますか」
「恐らくイーズ恒星系政府元首ダラムの義兄マクガイバだろう。
 奴はあのバッカスの養子として帝王学を叩きこまれショーンやプロベットにも寵愛されていたからな」
「ならば、マクガイバにその座を譲り国家元首“代理”の座に就けるのです。」
「代理…?成程、奴を選挙までの繋ぎにするのか。
 奴の功績と能力をもってすれば、戦後処理など簡単に解決するだろうな。
 しかし、そうすれば奴の名を高める事にならんか?
 奴がその功績を理由に元首選挙に正式に出馬する可能性もあろう?」
「マクガイバは傲慢な男ですが人々の評判を大変気にします。そこで、わざと選挙の日程を遅らせるのです。
 同時に風聞を流します『選挙の日程が遅れているのは、マクガイバは独裁体制樹立を計っているのではないか』と
 すると、マクガイバはその評判を気にして元首代理の座から退き選挙への不出馬を表明します。
 仮にマクガイバが退く気を見せなかった場合、及び戦後処理に失敗した場合は陛下が動けばよいのです。
 『戦後処理を終え、民政移管をしなければならないのに、その座に居座り独裁体制樹立を目論んでいる』と理由を付ければ
 独裁体制にアレルギーのある今の民衆どもなら雪崩を打って陛下を支持するでしょう」
「つまり、面倒事を奴に押し付け、お役御免後は退場頂く訳だな」
「ご明察恐れいります。それに、マクガイバを推したのは陛下です。
 陛下がマクガイバを推しなければ戦後処理も儘ならなかったでしょう。
 民衆どもにその事をアピールするのです。そうすればマクガイバの実績も全て陛下の物になります
 選挙に大変有利になるでしょう。選挙の結果は民意、ラミウスも連合政府のバカ息子共も従わざるを得ません」
「良い案だ、それで行こう」
翌日の会議でサイガスは『どの各恒星系からも国家元首を選出しない。恒星系の代表はあくまでも恒星系の代表に過ぎない』
と演説し、マクガイバを国家元首代理にする案を提出。
賛成4、反対2(ウエラーとケンセイ)で可決され、マクガイバが国家元首代理に選出された。

マクガイバの手腕は素晴らしく、1年を得ずにして各国間の調停を追え後は票割となった。
「マクガイバは何とかなったにしても、選挙で脅威となるのは人口の多いセントラルのウエラーだな」
顎に手をやり考えるサイガスにパメラは告げる
「ならばウエラーの領土を削ってはどうでしょう?」
「おいおい、随分簡単に言ってくれるな。確かにウエラーの領土は削りたいが
 幾ら何でもそれは無理だろう?私は奴の親でも無ければ主君でもない」
パメラの意見に驚くサイガスだがパメラは笑みを浮かべながら続ける
「なにも難しく考える必要はありません。
 不公平な人口比の調整でマクガイバを納得させる充分な理由になります」
「なるほど、先入観を捨て物事は簡単に考えろと言うわけだな。流石はパメラだ」
「それに陛下、まだ物事は決まっておりません。
 今は各恒星系による合議制、今の間に陛下が政権を取った後では困難な政策や
 不都合な政策をマクガイバの責任で決めさせておくのです」
「そうだな。その為にマクガイバを代理に就けさせたのだ。
 アイツには我々の尻拭いをしてもらおう」
しばらく考え込んだサイガスはある妙案をパメラに告げる
「良い事を思いついたぞパメラ。この際だからウエラーのバカの領土を全部召し上げよう」
「全部ですか?」
領土削減を提案したパメラも、まさか全部召し上げなど考えていなかった為に驚きを隠せなかった
「そうだ。セントラルにあるウエラーの領土を全て召し上げ、イーズの僻地へ移封させるんだ。
 あそこはダラムの領土だが、ナレッソやバニモならばダラムも嫌とは言わないだろうし、
 異動の理由は『ソースのケンセイの相互監視』で充分だろう」
自分の提案したものを更に発展させるサイガスの才にパメラは大いに感心した。
「国替えと言うわけですね。素晴らしい案です陛下」
「序でに他の国の領土も人口比調整を名目に召し上げよう。
 従わなければ武力を用いるまでだ。
 お前の言う通り物事は難しく考える必要はない」
「重要拠点を押えれば、他国の監視にもなりましょう。
 早速、今度の会議で他国に飲ませましょう。」
サイガスはマクガイバに人口比調整を名目にウエラーの国替えと
他国の惑星召し上げを求める。
サイガスが連合政府正規軍の派兵をチラつかせた事と
惑星マレングを自発的に連合政府に割譲した事で、他の国も納得し従ったが、
セントラルからイーズへの大幅な減封を求められたウエラーは強く反対し、
武力による抵抗も辞さないと言い出した。

会議からの帰り道、王宮の廊下でサイガスは後ろを歩くパメラに話しかけた
「やはり、ウエラーは突っぱねたな」
「我々と一戦交える事も厭わないでしょう」
こんな事ならウエラーも領土召し上げで済ませておくべきだったとボヤ気ながら
サイガスは玉座に腰を掛けた。
「武力を用いて恫喝すれば折れると思ったが・・・。
 ウエラーを排除するのは簡単だが、そうすれば諸侯に不安と猜疑が生じ謀反が相次ぐかもしれん。
 そう言う事態を防ぐ為にもウエラーには国替えを納得してもらわなければならない」
「恐らくウエラーも我々が本気で潰しに来ないと気付いて居るのでしょう」
「そうだな・・・ だが何も戦艦で撃ち合いするだけが戦では無い。お前の口癖だったなパメラ」
「そうです。お任せ下さい陛下」
サイガスの意を組んだパメラは早速行動に移った。

パメラはバイオノイドと選りすぐりの工作員を集めるとウエラーの身辺調査を行った。
そして、ウエラーがケンセイとダラムの対立を煽っている事、条約違反の兵力増強を事
など色々突き止めた。
「流石パメラ。貴様ほど優秀な女は銀河広しと居ないだろう」
「恐れいります。これも全て陛下の御為に」
サイガスはパメラの手腕を褒めた
「聞けば、ウエラーも我々に策を嗾けていた様だが?」
「はい。しかし、奴らの行動は全て筒抜け、ウエラーは諜報員の扱いが下手と見えます」
「パメラに謀略戦を挑むとはウエラーも命知らずだ。
 我々を出し抜いている心算で、ただ泳がされているだけなのだからな」
この時代、ラーもショーンも亡くパメラに謀略戦で勝てる者など存在し無かった。
「他勢力への約定違反、兵力増強による条約違反。
 ウエラーを追い込むにはいいネタが出来た」
上機嫌のサイガスにパメラは続ける。
「陛下、ウエラーの妹ベスパを存じておりましょう」
ウエラーにはベスパと言う妹が居た。温和で国民からの人気も高かった。
一説では若い軍高官と交際していると言う話だ
「あぁ・・・ あの母親似の妹姫か?彼女がどうしたのだ?」
「はい、兄ウエラーと大変親しいようで・・・」
「ふむ、そんなに親しいのか?」
「噂では肉体関係があるとか無いとか?」
これを聞いたサイガスは満面の笑みを浮かべた。
「条約違反よりウエラーには効きそうだな。
 パメラ、ウエラーの領土内で風聞を撒け。元首が実の妹と情を通じているとな」
「御意に」

噂は忽ちセントラル恒星系中に広まった。
元首選挙でセントラルの票を当てにしていたウエラーには大打撃であった。
これにより、ウエラーの人気は失墜し、ベスパは恋人と別れたという。
セントラルでは反ウエラー運動が起こり、ウエラーは苦しい立場に置かれた。
そして、直後に行われていた会議でウエラーの条約違反が次々に発覚。
「領民はウエラーに反発しており、セントラルの統治は困難である。
 ウエラーの懲罰目的でイーズへの国替えは止む無し」
との意見が挙がり、ウエラーもこれに弁明が出来ずに了承。
ハーゲン、ウイバン、バルゴ、ザクソン、ホスエン、ジパングを召し上げられ
ナレッソ、バニモ、デクレアのイーズ北部3惑星に大幅減封された。
最終的にペレス、スパン、ラバウル、ラエ、マレング、ハーゲン、ウイバン、ザクソン、バルゴ、ホスエン、ジパングを銀河政府の天領とし
惑星ジパングを銀河政府の帝都と定めた。

すると後日の会議で今度はヘルムートの武力増強による条約違反が発覚。
一説では、ウエラーが道連れを図って暴露したとも言われている。
ヘルムートは「ノーズ恒星系の治安維持目的であり、他国への侵略意図はない」と弁明した。
会議後・・・
「ノーズ恒星系は先王バニアウが最後に征服した地で治安が悪いのは事実だろうな」
先の内戦の件でヘルムートと同盟関係にあるサイガスはヘルムートを擁護したいが、
ウエラーやケンセイら旧ショーン・プロベット系の国が厳しい処遇を求め猛反対していた。
「正直、ノーズ恒星系政府の軍事力など知れている。
 それに増強されたのは治安時事目的の地上部隊であり、惑星の維持程度で他国への侵攻能力などない」
「恐らくはウエラーが道ずれを図ったのでしょう」
「だが、暫定政府に無断で軍備増強をしていたのは事実だ
 重いか軽いかは知らんが、何らかの懲罰はあるだろう」
これを聞いたパメラはフッと笑みを浮かべ進言した。
「陛下、事実であるならば良いのですね?」
「何か妙案でもあるのかパメラ?」
「『ノーズ治安が悪い。故に軍備増強が必要である』と言うのが事実であれば良いわけです
 事実であるのならば誰も文句は言いません」
その翌月、ノーズ恒星系のセタで大規模テロと抵抗軍の決起が起きた。
一説ではパメラが地元抵抗軍を秘密裏に決起させワザと治安を悪化させたと言う。
この時、ヘルムートが条約違反でジパングへ出頭し、ノーズ正規軍も縮小させられていた事もあり
後手に回り大損害を受けた。
これにサイガスは銀河政府正規軍を派遣し抵抗軍を壊滅させノーズ政府へ惑星を引き渡した。
「ノーズの治安は悪く早急な対応が求められていた。
 ヘルムート殿が政府に無断で軍備増強を図った事は問題だが、
 早急な対応を求められていた事も事実であり、対応は適切であった」
とヘルムートを擁護。
これにヘルムートは感謝し立候補を取り下げサイガス支持に回ったのである。

そして内戦終結後の大まかな戦後処理は終了し、各国の領土・票割が確定。
マクガイバは退任し、数百年ぶりと言われる選挙となった。
結果は目に見えていた。領土を削られ苦しい立場のウエラーはケンセイと互いを誹謗中傷し共倒れ
最終的にはマクガイバを推したサウズ恒星系政府元首サイガスと
マクガイバを輩出したイーズ恒星系政府元首ダラムの決戦投票となる。
だが、前述の通り立候補を取り下げたヘルムートがサイガスの支持に回り大差でサイガスが当選。
2代目国家元首となり、事実上最初の国家元首として就任した。
「見ていたかバニアウ。お前と私が手を取れば宇宙を取る事など容易いと言っただろう。
 そして、その時に玉座に座っているのはお前とは限らないと」
『サイガス国家元首閣下万歳!!』
喝采を送る群衆に手を振るサイガスを眺めるパメラは感無量であった。
「パメラ、お前の才を生かせる時が来た。その才をもって私に尽くし国の為に働け」
「はい、陛下。このパメラ、陛下の御為、全銀河領民の為、精一杯働かせていただきます」
パメラは銀河政府で大臣のポストを賜りサイガスの為に働いた。
選挙結果に不満を持つウエラーとケンセイを副元首ポストで釣り黙らせた。
「権力欲の強いバカどもを黙らせるには役職で釣るのが一番いい
 所領安堵を求めたダラムの方が数倍も利口だ」
と欲の皮の突っ張ったウエラーとケンセイをパメラは鼻で笑った。
政策面では、過去のパメラの経験から出された『奴隷解放令』『人身売買禁止令』『平民地位向上法』
これらの法案によって奴隷商人、違法遊郭、悪徳海賊などが多く取り締まられた。
特に平民から喝采の拍手を送られた。これらの法案・勅令は『パメラ法』と呼ばれ
後世の政治家・国々でも賞賛され採用されている。
また、『私闘禁止令』『各恒星系政府諸法』によって各国の監視・取り締まりを行い
各国の戦力の拡大及び反乱の抑制を行った。
国家元首となったサイガスはパメラの出す案を正しいと思ったら次々に採用した。
だが、パメラとも言えど人間であり、提出した法案に不備がある時もあった。
だがその際もサイガスはパメラのせいにせず自らの責任を被り、法案の訂正を行った。
サイガスの支持率は上がり、4年後の任期満了に伴う選挙でも当選し2期目も務める事となった。
パメラはこの上なく満足であった。

SC154年サイガスが国家元首に就任し6年(2期2年)経った。
順調な滑り出しだったサイガス政権だったが、2期目を過ぎると、やはりサイガスの政策に不満を持つ者が増えていった。
ア族・日本民族派ら王党派、ウエラーら正統派、ラミウスら反体制派…
支持率も当初は7割近かったが、5割を切るようになり
表向きは平穏を保っていたが徐々にサイガスに対する不満は高まっていた。
「『サイガス陛下が長期政権を目論んでいる』か。未だ2期しかしていないのに気の早い事だ
 だが、これ以上は確かに危険かもしれない。王制アレルギーの強さは予想以上だな」
その日パメラは大臣執務室で今後の方針を考えていた。
「そろそろ潮時かもしれんな… 陛下も私も…」
そう言うとパメラは天井を見上げた。
物音に気付いた秘書官が振り向くとそこには倒れ込んだパメラの姿があった。

『国家元首サイガスの側近パメラが病に伏せる』
このニュースは銀河中を駆け巡った。
『サイガスを裏で操っていた女狐が死にかけだそうだ』
『あの女さえ居なければ、サイガスも終わりだ』
パメラによって失脚した者は多く不満が大いに燻っていた。
一説にはパメラの死後にサイガスに対するクーデターの動きすらあったと言う。
パメラの意識は戻らず昏睡状態が続いた。
その日、パメラが意識を取り戻したと聞いたサイガスは公務の放り出しパメラの元へ駆けつけた。
パメラは元気そうに見えた。サイガスはパメラの手を握り問いかけた。
「パメラ… 私だ」
「陛下…」
「すまない。お前には苦労を掛けているのに、自分の事で手一杯で気付いてやれなかった」
その言葉にパメラは笑みを浮かべながらサイガスの手を握り返した。
以前の彼女からは想像できないほど弱々しかった。
「陛下、陛下は私を絶望から助けだし、私に未来をくれた… 私に希望をくれた…
 陛下に出会えて本当に良かった… 今度は私が陛下に未来を… 」
「止めないか、もう最期みたいな言い方…」
サイガスは最後まで言う前に気付いた。パメラの命がもう長く無い事に
パメラはサイガスの手を弱々しく力いっぱい握った。
「これは、私からの最期の警告だ… 国家元首、サウズ元首の地位から退け…」
これを聞いたサイガスは驚いた様に沈黙した。そして、深呼吸をして落ち着くとパメラに問うた?
「それが私に取って、最も最善の方法なのだな?」
大きく頷いたパメラを見たサイガスは「解った」と目を瞑り
「これまで、仇の私に良く仕えてくれた。本日をもって貴様の任を解く…」
そしてもう一度呼吸を落ち着かせパメラの手を握り感謝を告げた
「…大義であった」
この言葉にパメラは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、陛下… パメラは幸せでした…」
その瞬間、「ふぅ…」と息を吐いたパメラの手から力が抜けていくのをサイガスは感じた。
それは、まるで眠るように静かであったと言う。
SC154年6月23日の事であった、享年73歳。故郷の惑星ナーハンに葬られた。
悪どい経歴を批判される一方で、その高い功績から評価の割れる人物であった。

翌6月24日サイガスは銀河政府議会に国家元首辞職願を出しその地位から退いた。
パメラ死後に行われるはずだったクーデターはサイガス退任によって大義名分を失い空中分解。
報奨目当てに内部の裏切りが発生し、悉く取り締まられた。
これにより、サイガスは銀河政府より身の安全を保証されたと言う。
サイガス退任後、パメラの出した法案は後継政権も追認され、
パメラの意思はSC181年の銀河政府転覆以降も生き続けた。






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