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バイアグラ(SC69年~SC146年)

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バイアグラ(SC69年~SC146年)
所属勢力:在野(抵抗軍→ララウィン)→海賊→ア族残党軍→ショーン・プロベット連合→銀河政府

地球出身の女海賊。
大戦を通じて多くの勢力を震撼させた凄腕の女海賊であり、
海賊女帝(カイザーリン)の異名で恐れられ、
そして、4人の王子の運命に関わり、世界を運命を変える事となった。
歴史書は記す
「もし、彼女がアズマに助けられなければ歴史は変わっていただろう
 ララウィンが彼女に助けを求めていれば歴史は変わっていただろう
 彼女がアルビオンを助けなければ歴史は変わっていただろう
 彼女がプロベットを助けなければ歴史は変わっていただろう」

元は地球の片田舎に住む普通の少女であったが、
故郷の村を拠点にしていた抵抗軍の取り締まりのとばっちりを受け捕縛され
危うく処刑されかける。
そこをアグデッパ皇太子アズマに助けられ、アズマより王太子ララウィンに預けられ
その執り成しにより抵抗軍とは無関係であるとして釈放される。
既に帰る家と家族を失った彼女は自らを助けてくれたアズマの後を追って海賊となる事を決めた。
そして別れ際、ララウィンにそれを伝えると、ララウィンは苦笑いをしながら
「海賊になっても良い事なんて無いよ?」と言う。
だが、「他に方法が無い。このまま物乞いか荘園でこき使われる位なら私は海賊になる」とバイアグラが伝えると
ララウィンはこう言った「解った。だけど、地球に大難があった時は助けて欲しい」
バイアグラは一礼をすると地球のスラムへと姿を消していった。
そして、バイアグラはこの約束を生涯忘れる事は無かった。

当初は他の海賊組織(その中に無名時代のマクレイが居た)を渡り歩いていたバイアグラだが、やがて独立。
地上で海賊行為をしていたが、その際に地球軍の輸送部隊を襲撃。
偶々護送中だったアブダーが王子アルビオンを発見し、彼を自らに重ねたバイアグラは彼の復讐の意図を組むと
彼を雑用として船に乗せた。
バイアグラはアルビオンを弟、息子、そして1人の男として愛し可愛がり、アルビオンに様々な知識を教えた。
GWの乗り方、GBの操縦方法、銃の撃ち方、女を堕とす方法から、人の殺し方まで色々教えた。
アルビオンもバイアグラを実の姉の様に慕い、初めて手柄を立てた時は
真っ先にバイアグラに報告。彼女も笑顔でそれを褒めた。
「この時が一番楽しかった」とバイアグラは後に語っているが、歴史家ラブはこう言う
「これが悲劇の始まりであり、世界の再生と崩壊への序章である」・・・と
この時、アルビオンの笑顔の下で黒いものが成長していた。
SC90年、力を貯めたバイアグラは宇宙へ上がり宇宙海賊となる。
だが、同時にアルビオンことマカーフィが独立。
「次に会うのは戦場。敵同士殺しあうになるかもしれないわね…」
マカーフィと最後の盃を交わしたバイアグラは彼を送り出した。
そして悲劇は次の段階へと進んだのである。

SC90年、恩人ララウィンの治める地球でブラウンの専横が激しくなる。
この時バイアグラは、ララウィンから要請があれば応じる心算だったが、
ララウィンは頑なにバイアグラ(とアズマ)に頼ることを拒み続けた。
「地球に大難あった時…」今がその時ではないのか?
だが、遂にララウィンから助けを求められる事は無く
頑なにバイアグラとの関係を絶っていたララウィンは
乱心したとしてブラウンに殺されてしまう。
ララウィン処刑後、一度だけマカーフィに会った。彼曰く
「興味本位でララウィン軍の援軍要請を引き受けた事があったが、
 アズマの名もお前の名も一切出さなかった」
マカーフィもララウィンに問うたと言う
「アズマは行方不明になったお前の兄アズマだと言う噂が…
 いや、本人に間違いないだろう。何故、助けを求めないのか?」
「兄が生きていたら幸いだ。だが、確認方法も連絡手段もない」
とララウィンは首を振ったと言う…
後にアズマは言った。
「連絡方法も確認方法もあった。一度、回線をジャックして挨拶でもしようかと思ったら
 喋る前に向こうから回線を切った。再度、ジャックを試みるも回線にプロテクトを掛けられた」
そして、立ち去るマカーフィに問うた
「よく仇の国の要請に応じたな。復讐は諦めたのか?」
「様子見までだ。別にララウィンに恨みがある訳では無いからな」
「仇を倒すのはお前の自由だ。早まるなよ…」
手を振って帰ったマカーフィだったがこの時、既に決心していた事を
バイアグラは知る由もなかった

SC96年、マカーフィが覇王ブラウンを殺害。積年の恨みを晴らしたが
これを海賊ギルドが問題視し、海賊マカーフィの追放が決定する。
バイアグラはギルドの使者としてマカーフィに「ギルド追放」を伝える役目を受ける。
「確かに私はお前に復讐する為の力と知識を与えた。
 だが、あの時あの場でブラウンを殺せばどうなるか解っていたはずだ」
心配するバイアグラの問いにマカーフィは声を荒げ答えた。
「父を殺され母を奪われ10余年。俺は唯、機会だけを伺ってきた。
 あの時、あの場を逃せば次は何時だ?1年後か、10年後か?
 俺はそんなに待てない!!」
「ブラウンが王位に着く前に復讐すれば全ては上手くいった。
 ララウィンの援軍要請を受けたのだろう?
 あの場でなくとも戦場で幾らでもチャンスはあったはず…
 数年待てば最も惨めな最期だって与えられた。
 今の状況だと貴方のせいで何万人もの人間が無意味な死を迎えることになる」
「何人死のうと知った事か!!おれはブラウンさえ殺せればそれで良かったんだ
 何故、誰も褒めてくれないんだ。母も… お前も!!」
返答によっては見逃す、いや… 一緒に逃げる事も考えていたバイアグラだが
既にマカーフィが狂気に飲みこまれている事に気が付いたバイアグラはマカーフィとの別れを決意する。
「そうか、もう解り合えないんだな… さようならだ」
そして、マカーフィと共に居た気の強そうな女性にこう伝えた
「私の代わりに彼の心の支えになって欲しい。彼には支えが必要だ…」
気の強い女は返答する「つまり、貴方は逃げるのね?」
バイアグラは答える事無くその場を後にした。

SC100年、宇宙は激動の時代だった。
力ある旧来の覇王が次々に倒れ、新たなる新世代の覇王が台頭。
乱世の盛者必衰の理が現実のものとなっていた。
それは地球でも例外では無かった。
一時はソースからイーズまで全宇宙の1/3を支配した地球帝国もテンオウ軍の猛攻の前に大敗。
タイタン、ガニメデを失うと瞬く間に崩壊していった。
そして地球覇王プロベットは降伏を決意。200年に渡り栄えた地球帝国の呆気ない最期であった
地球陥落から間もなく、バイアグラの元に一人の男が現れた。
男の名はヒップ。地球軍八卦衆の3代目長官である。
ヒップは「我々を助けて欲しい」と頼むもバイアグラはかなり渋った。
いや、寧ろ引き受ける事自体が嫌だった。
自らの故郷を奪った地球帝国を助けるなんて虫唾が走った。
それにマカーフィの親の敵の国と聞けば尚更だった。
だが、ヒップがある言葉を言ったことでバイアグラは気が変わる。
「国に難ある時、貴方に助けを求めろとの先王ララウィン陛下の遺言です」
恩人ララウィンの名を出されては断れずプロベットへの謁見を決意する。

プロベットに会ったバイアグラは彼を冷やかな目で見ていた。
昔、援軍をプロベットに頼まれた事があった。
若いだけで力もなく、ただ王の一族と言うだけで即位した。
そして、自らの行いは全て正しいと信じて疑わない、まるで死んだ魚の様な目。
こんな人間に力を貸すのは嫌で援軍要請も断った。
今も何もかも失い、家臣・領民を見捨て王としての責務も放棄した。
にも拘らず「助けてくれ」とか都合がよすぎる…。
そして、なによりマカーフィの敵の子。理念、相性以前に気分が乗らなかった
だが、プロベットの言葉でバイアグラは協力を決意する
「貴様は力がないから滅んだ。返り咲いても結果は同じ、元の木阿弥と言うんだ」
「そうだ。余に力がないから国は滅び、民は虐げられ、家臣も路頭に迷う事となった
 だから頼むのだ。余の力に…国を守る剣となって欲しい。こう言う事を繰り返さぬために」
「貴様が王位に返り咲けば皆助かると?増長の極みだな」
「余を逃がす為に多くの命が散った。そして今、この時も地球では領民がア族の協力者として虐げられ
 家臣は敗軍の将として殺されている。余は唯…彼らを助けたいだけなのだ。余を助けてくれとは言わない。
 だが、余に希望を見出し命と引き換えに逃がしてくれた領民、家臣の為に生き恥を晒さねばならない。
 お願いだ!!この国を助けて欲しい」

アモスから「帰還には3個艦隊が必要だ」と言われたバイアグラは
海賊仲間であるアズマとマクレイにも協力を要請。
当然、アズマもマクレイも渋ったが、バイアグラが
「私が助けたいのはプロベットの命じゃない。彼を守ろうとた人々の命を守りたいの。
 彼らの、私達の故郷の地球の人々の命を…」と説得。
両者も嘘偽りがあった場合は抜ける事を条件に協力を申し出た。
だが、帰還の目途がある程度付いたある日、プロベット王妃エセラが産後の肥立ちが悪く病に倒れる。
薬を探しまわったプロベットだが、時既に遅くエセラは亡くなってしまう。
エセラの骸を抱えながら泣きわめくプロベットにバイアグラは狂気の目を見た。
このままでは彼もマカーフィの様に闇に食われてしまう。
気が付くとバイアグラはプロベットに鉄拳を食らわせたと言う。
「貴方の感傷など、この乱世の世界では銃弾の価値もないわ。貴方はここで立ち止まるつもりなの?
 国を助けたいと言ったのは嘘なの!?」
暫くして冷静さを取り戻したプロベットはバイアグラに「すまなかった」と謝るとこう言った。
「この世界は間違っている。余は宇宙をこの世界をすべて破壊する」
バイアグラはこう思った「この若き王は狂気に喰われる前に狂気を食った」と…。
そして理解した。
「ララウィンは知っていた。ブラウンの専横よりも自らの死よりも
 辛い目に遭うであろう覇王が現れる事を…
 だから自分が辛い時に助けを求めなかった。未来に掛ける為に」

アズマ、マクレイ、そしてバイアグラの海賊3個艦隊の協力を取り付けたプロベットは
バイアグラら海賊艦隊とバッカスら残党軍の支援を受け、火星を掌握し国の再興を果たす。
そして、地球を奪還したプロベットから仕官を進められたバイアグラは
「私達は海賊であり、多くの罪を犯してきた。私達が罪を償わずに軍人になる事に納得し無い者も多い。
 どの様に家臣達や私達を納得させるのかお聞かせ願いたい」と問うた。
少し考えたプロベットはこう切り出したと言う。
「余の家臣となって1人の命を助ける毎に罪を一つ償った事にしよう。
 此度、卿らは地球奪還作戦に参加し地球30億の民を救った。
 よって、これまでの罪は全て償ったものとし不問とする」
こうしてバイアグラら3人はプロベットに召し抱えられた。

プロベット軍で分将として召し抱えられたバイアグラは、ガニメデ及びタイタンの奪還に参加。
ソース恒星系の再制覇に多大なる貢献をした。
そしてSC120年悲劇は突如として訪れる。
ドーラが死に広大なドーラ王朝が分裂すると、独立した王の中にバイアグラの聞き覚えのある名があった。
「覇王マカーフィ、ナレッソにて独立・・・」
マカーフィが生きていた。それだけでも衝撃だったが、マカーフィはタイタンを急襲し
プロベットに宣戦を布告。敵同士となってしまう。
この戦国乱世、其の位は覚悟をしていた心算だったが、実際そうなってみると
如何に自分が分かった振りをして逃げていたかが良く分かった。
そして、そんな彼女をあざ笑うかのようにプロベットはある決断を下す
「覇王ショーンと首脳会談を行う」
ドーラの後継と目される覇王ショーンと、地球ア族宗家プロベットとの電撃的な首脳会談は
全銀河を震撼させた。もし、会談が成功すれば流れは大きく此方に傾くだろう。
だがそれは、会談を拒否するマカーフィとの完全な決別を意味していた。
バイアグラは会談の成功を祈っていた。その方が良い事を解っていたからだ。
だが心の何処かで思っていた「失敗すればいいのに…」
そうすればマカーフィと話し合う余地があるかもしれない…と

SC121年。ショーンとプロベットの連名により銀河中に声明が発表される。
『ジパング、地球両政府は両国の解体を宣言。国家機能、国軍を統一し連合政府の設立を宣言する』
会談は大成功であった。
「本当に国を破壊してしまったのですね」
共同会見後に問いかけたバイアグラにプロベットは笑いながら答えた。
「まだ、地球とジパングを破壊したに過ぎない。余が目指すのは全宇宙の破壊だ。
 争う全ての国々を破壊し無に帰すほかない。余は全ての国々を蹂躙する。」
この時、バイアグラは自らの足が震えている事に気付いた。
「飲みこまれた狂気は更なる狂気を産んだ。私が恐れているのはプロベットの狂気に?
 それとも、その狂気によって齎される戦いに?」

会談成功により、流れは連合政府(通称:ショーン・プロベット連合)へ大きく傾いた。
バイアグラも分将位を保証され連合に参加。だが同時にマカーフィと完全な敵対関係となってしまう。
この時、バイアグラは何時もに無く弱気だった。
「マカーフィと話し合う事はもう出来ないのでしょうか?」
この問いに連合国盟主で事実上の覇王であるショーンも頭を抱える。
「私もマカーフィとは戦いたくない。彼とは嘗て手を取りあい、ドーラ殿の許でも共に戦った盟友だったのだ。
 残念ながら向こうはそうは思っては居ないようだが…」
「もう、戦うしかないと?嘗ての友の国を蹂躙するしかないと?」
「残念だが、会談に応じない以上は仕方がない。物事は上手くいかぬものだ…」
翌月、プロベットを総司令とする討伐部隊が出兵。
バイアグラは、プロベットが総司令と言う事実に驚いたが、
総司令にプロベット自身が名乗りを挙げた事にもっと驚いた。
「自ら討伐部隊司令の地位に名乗りあげられたそうですね。兄弟だからですか?」
「兄弟同士の殺し合いに名乗りを上げるのは滑稽か?後詰を務めるアズマにも聞かせてやりたいな
 奴は自らの妹で、余の従妹に当たるジュリアが兄の妃となった。私と同じ兄妹同士の殺し合いだ
 兄弟間の問題はやはり兄弟間で決着を付けるべきだ。道を誤った兄と妹に…」
「道を誤った?」
「如何にも。バイアグラよ、兄マカ・・・いやアルビオンは3度道を誤った。何か解るか?」
「…お聞かせ願いますか?」
「1つ、大局を見ずに復讐に走った事。2つ、復讐を成しながら自らの正体を明かさず、
 王位にも就かず逃げた事。そして最後に余を殺さなかった事だ」
「自らを殺さなかった事が誤りだと?」
「そうだ。もし、兄があの時あの場で余を殺していたら、余は此処には居なかったであろう。
 余が殺されていれば、敵として会い見える事も無かったであろう。
 兄は自らの敵を減らすチャンスを逃した。これを誤りと言わずに何と言おうか?」
「そう…ですね。全て私の責任ですね」
「…私の責任とな?」
「兄君アルビオンを助けたのは私、復讐する為の力を与えたのも私、
 そして、彼を止めずに逃げた私… 全ては私の責任」
「…バイアグラよ、現時刻を持って艦隊司令及び副官の任を解く。速やかに本国へ帰還せよ
 戦場で情に流されれば命を失おうぞ」
「…ふふふ、貴方に叱られる日が来ようとはね。あの泣き虫の王様が一丁前の事を言うようになったわ」
帰還したバイアグラの下に届いたのは『連合軍大勝。マカーフィ捕縛のニュースだった』
そして、マクレイから聞かされたのはプロベットもアズマも、
最後までマカーフィとジュリアらを説得した事だった。
「なんだ。やっぱり、彼らも人間なんだ。彼らも兄弟とは殺しあいたくないのだ…」
そして、恭順を拒否したマカーフィの死刑が決まる。

捕縛されたマカーフィは中で暴れたのか牢屋の中は酷く散らかっていた。
面会に訪れたバイアグラの問いにマカーフィは何も答えず
唯、やり場のない怒りを雄叫びにして上げ獣の様に暴れまわるだけだった。
「ずっと、あんな状態なの?」
「いえ、バイアグラ様が訪れる前までは一様、受け答えはしていた様ですよ
 とは言ってもどの問いにも『うるさい』とか『さっさと殺せ』と言うだけみたいで、
 聞く限り会話が成立しているかと言えば否ですが…」
「私以外に誰が面会に来たか解る?答えられる範囲でいいわ」
「はい、プロベット様にアム様、身内や旧臣の方々が中心ですね。
 それ以外でしたら、バッカス将軍でしょうか?」
「バッカス?」
「えぇ、ジェニファ王女の夫バッカス将軍です。バイアグラ様が来る30分ほど前でしょうか」
バイアグラはバッカスが嫌いだった。
アスランの時代から地球の歴代覇王に仕え、裏で暗躍した最悪の謀略家。
常に他人を見下し、領民も愚民と蔑み、プロベットやショーンにも自分が気に入らなければ
裏切ると公言している傲慢な人間だ。
そして今は、ラーの元妻でアキの娘で同家の当主であるジェニファ王女と政略結婚し、
アキ・ラー家の家督を事実上継承(表向きはジェニファのまま)。
連合政府においても序列はショーン、プロベットに次ぐ3番目とかなり高い位に就いていた。
だが、不思議な事にプロベットやショーンには大変好かれ、民衆からも絶大な支持を受けていた。
そして、ジェニファ王女を含むアキ・ラー家の人間とも関係は良好であった。
正直バイアグラから見たら彼は人間のクズであり、彼が好かれる理由が全く理解できなかった。
何故、彼がマカーフィに面会を求めたのかも疑問である。
「あぁ、そう言えばバッカス将軍が帰ってからみたいですよ。急に暴れ出したのは…」
「何を話していたか解る?」
「さぁ… 立ち会った看守を呼びましょうか?」
「えぇ、お願いするわ」
そして、バイアグラはショーンとプロベットにある役目を自ら申し出た。
それは、マカーフィの死刑執行人の役目だった。

    ・    ・    ・    ・

死刑の日、昨日まで牢獄内で暴れていたマカーフィは
まるで、歩く気力を失うほどに腑抜けていた。
一晩中暴れ精も魂も尽きてしまった様だ。
「ごめんね。マカーフィ…」
バイアグラの謝罪の言葉にもマカーフィは全く反応しなかった。
彼の為を思って取った行動が結果的に彼を追い詰め苦しめた。
彼は狂気に飲みこまれ、全てを失った。
「私にはこうするしか、貴方を助ける方法が無い」
全てが手遅れだった。何もかもを失った彼はもう何も出来無いだろう。
救うにはこうするしかなかった…
そして、マカーフィは断頭台に固定され、後は首を刎ねるだけの状態になっても
全く動かず声も発しなかった。
最後の準備が整った時、バイアグラは目を瞑り優しい声でこう言った。

「マカーフィ… 愛していたよ…」

マカーフィは僅かに笑みを浮かべバイアグラにしか聞こえない位の
か細い声を呟くと同時に首を刎ねられたと言う。

「ありがとう…」


処刑が終わり顔を洗って服を着替え外に出ると、
下士官に渡された書類を見ながら歩くバッカスを見つけた。
次の瞬間バイアグラはバッカスを思いっきりぶん殴っていた。
「貴方は最低だ。何処まで人の心を踏みにじれば気が済むんだ!?」
バイアグラの鬼の形相に腰を抜かした下士官は逃げ出したが
バッカス派顔色一つ変えずに壊れたメガネを拾い掛け直すとこう言った。
「はて、何の事を言っているのか小官にはサッパリ理解できません」
「立ち会った看守から聞いた。マカーフィに言ったそうだな。
 『お前は私の思い通りに動いた』と…
 彼を利用して、その気持ちまで踏みにじるのか貴方は!!」
あぁ、その事か。とまるで忘れていた事を思いだしたかのようなバッカスはこう言った。
「お礼を言ったんですよ。私が今の立場になれたのも彼のお陰ですからね」
「そうやって、他人を見下し、利用し、蹴落として来たのだろう。
 人の心を踏み躙るのもいい加減にしろ!!」
「踏み躙るとは人聞きの悪い。彼は十分役に立った人間と思っているから
 お礼を言ったんです『感謝しているよ』とね」
「・・・!?貴様ぁ!!」
振りあげた拳を何者かに後ろから握られバイアグラは振り返った。
「両者ともいい加減にしないか!!」
そこには下士官に呼ばれ駆けつけたプロベットとジェニファが居た。
「軍務省内での私闘行為は国家・領民への反逆に等しい。
 聡明な貴女なら解っている筈だ!!」
「しかし、プロベット陛下!!私は彼が許せません。
 他人を見下し、心を踏みにじる事しかしない彼が」
「落ち着け!!奴は性格に難あれど、国家の忠臣、功臣であるぞ。
 彼無くして、我々の和解は無かった。解らない貴女ではあるまい」
バッカスはアスラン王の時代から歴代覇王に仕えた忠臣であった。
今回、ショーンとの連合国構想を支持した和解の立役者でもある。
そんな事は解っている。だが、同時にマカーフィとの対立を決定的にした男だ。
揉めているプロベットとバイアグラの正面でジェニファは夫バッカスを立たせると
平手打ちを食らわせていた。
「どうして、貴方はいつもいつも… 周りを敵に回すような事しかしないのです」
「これは否こと… 私が敵を作るのではなく、私の周りに敵が居るだけの事だ」
「そう言う物言いが無用な軋轢を生じさせ敵を生むのですよ。人間時には優しさが必要です。
 貴方の尻拭いをする私の身にもなってください」
「我が妻らしからぬ言葉。優しさだけでは政も愚昧なる民を手なずける事適わぬ。
 非道と恐怖、畏怖と尊敬によってこそ国は動くのだ。お前も解っている筈だ。」
「解っています。非道と優しさは陰と陽・表裏一体。非情になる事も必要です。
 ですが貴方には優しさが足りないと言っているのです!!」
まったく… と、ため息をつくとジェニファはバイアグラとプロベットの方を向き謝罪した。
「夫の失言、彼に変わり謝ります。ここはアキ家当主の私の顔を立てて拳を収めてください。
 後日、償いはさせます故…」
そう言うとジェニファは夫を連れ立ち去った。
「今でこそ彼はアキ・ラー家とバ族の家督を握っているが、
 本来は表舞台に立つ事は無いほど家柄が低いのだ。故に幼き日より政争と謀略の中で生きてきた。
 己が身を守るため上を目指すため非情になるしかなかったのだ。
 だが本来、彼は誰よりも優しい人間だ。民を愛しているからこそ非情に徹しているのだ」
「でも、彼はマカーフィの心を壊した。私が来たときには彼の自我はもう壊れていた。
 せめて最後の夜ぐらい一緒に盃を交わすくらい出来たかもしれない。
 そうすれば、彼を助けられたかもしれない、彼を救えたかもしれない。なのに!!
 マカーフィを自らの手で殺してやることでしか彼を救えなくなった」
「怒りを収められぬか?ならば余を殴れ。思いっきりだ!!」
バイアグラはプロベットが体が吹っ飛ぶほど思いっきり殴った。

後日、プロベットはバッカスに問うた。なぜマカーフィの精神が壊れるほど追い詰めたのかを
バッカスはプロベットにこう問うたと言う
「仮にマカーフィ物事が全て上手くいき、逆に陛下の物事が上手くいかず敵に捕らわれたとしましょう
 陛下は明日処刑される身です。身内や嘗ての家臣の方が次々に会いに着ます。
 陛下は耐えられますか?」
プロベットは言葉を無くし額から変な汗が流れた。
「マカーフィとて同じです。陛下が生き恥を晒せたのは私を含め助けようとする者と
 助けたい者があったからです。それを全て失った時、陛下は耐えられますか?
 ご自身でもお解りでしょう。答えは否です」
「だが、何もバイアグラと会ってからでも良かったではないか
 そうすれば、彼女の気も済もう」
バッカスは首を振って答えた。
「最も大切な人、大切に思ってくれている人、愛している人の眼中で生き恥を晒すなど
 屈辱以外の何物でもないでしょう。
 聞けばマカーフィを育て慈しんだのはバイアグラ殿だとか…
 彼から見たら第2の母であり、姉であり、愛した人だ。
 そんな人に全てを失い生き恥を晒すなど屈辱以外の何ものでもありません」
納得の出来無いプロベットだがバッカスは続ける。
「私がショーン殿から恭順の意思のある捕虜を召し抱えよとご命令を受け
 捕虜になっている者達に会いに行った時、偶々マカーフィの檻の近くを通りました。
 遠目でしたが見てられませんでしたね。揃いも揃って『考え直せ』だ『共に戦おう』だとか…
 ああ言うのを『バカの一つ覚え』と言うんです。
 私は他人に同情はしないし、する気もありませんが、アレは流石の私も同情しましたよ。
 マカーフィからしたら『死ね』と言われるより屈辱ですからね
 興味本位で見に行ったら想像以上に神経衰弱してました。おそらく、彼の精神が壊れるのも
 時間の問題でしょう。
 そんな状況でバイアグラ殿、つまり彼にとって最も大切な人が面会に来たらどうなります?」
「バイアグラが兄の精神を破壊した可能性もあると?
 しかし、愛する人の言葉だからこそ耳を貸す可能性もあるのではないか?」
「無いですね。
 ハッキリ言わせてもらいます。どうせバイアグラ殿も『考え直せ』と『共に戦おう』と言うにきまってます
 意図していなくとも『生き恥を晒し辱めを受けて死ね』と言っているのと同じです
 もし、バイアグラ殿の言葉でマカーフィの精神が壊れた時、同時にバイアグラ殿の精神も壊れるでしょう
 マカーフィはもう処刑される身、言い方は悪いが必要のない人間。だがバイアグラ殿は必要な人間です
 だから私が代わりに汚れ役を引き受けたんです」
「バッカスよ、貴様のそれは本心か?それとも言い訳か?」
「さぁ、どうでしょう。お好きな様に解釈していただいて結構です
 納得してもらうとは思わないし、納得して欲しいとも思いません
 あぁ、そうそう。バイアグラ殿にだけは言うのは止めてください
 それこ撲殺されてしまいますからね」
プロベットが立ち去った後、天井を見上げるバッカスにジェニファが語り掛けた
「お優しいのですね。なのに、そうやって仮面を被り続ける」
「お前と言い、ラブと言い、私を優しいとか善人だとか言う…
 感性がおかしいのではないか?」
「でしょうね。でなければ貴方の妻になどなりません」

ドーラの旧領を回復した連合軍は南下を開始、ドーラの仇敵クルトニオ領への侵攻を開始した。
バイアグラもプロベット派の重鎮として南下に参加。
一時はサウズへの侵入を果たすも、バニアウとの協定により撤退。
以降、バニアウとは膠着状態となる。
だが、この膠着状態により世界は崩壊へと向かう。
SC131年重鎮でバイアグラがもっとも嫌ったバッカスが視察中に凶弾を受け亡くなってしまう。
マカーフィの息子及びその残党を名乗るグループから犯行声明が出された。
「こう言うのを因果応報と言うのだ」と思っていたバイアグラだが、
密葬の日程は知らされていない筈なのに多くの者が弔問に訪れ、
国民もその死をとても悲しんだのは意外だった。
そして、プロベットから「バッカスは敢えて汚れ役を引き受けた」と聞かされるも
「それでも彼を許す事は出来無い」と首を振った。
「納得出来無ければ恨んでくれても構わない。お前が奴を許せないならばそれでいい
 それがバッカスの望みだ」
プロベットの言葉にバイアグラの目からは涙が出た。悔し涙かどうかは解らない。
後日、アキ・ラー家を中心に武力による報復の主張がなされ
ショーンも「国民に慕われた国家の功臣への敵対行為は国民への敵対に等しい」として承認。
ナレッソに潜伏する抵抗軍は一掃されたがマカーフィ残党がどうなったかは不明である。
だが、同組織を名乗る事件は以降起きていない。

SC142年、プロベットが全ての役職を辞すると言い出した。
本人曰く「余一人に権力が集中しすぎているから返上する」との事だ。
実際、プロベットは地球を中心に膨大な権益を持ち、同国の最大派閥を率い
副盟主として事実上の最高司令官の地位と強大な権力を持っていた。
今まで問題にならなかったのは盟主ショーンとの関係が良好であり、
プロベットが権力を乱用せず謙虚に振る舞っていたからである。
バイアグラも唐突に権力を手放すと言ったプロベットを問い詰めた
「今、貴方に辞められては国民たちは不安になります。
 私達も同じです。『国民はいずれ自ら羽搏くべきだ』と申されましたが
 まだ、その時は来ていません」
これに対しプロベットが声を荒げ返答する。
「だが、結果的に国民の思考回路はマヒしたままだ。
 余が居るから任せておけば安心。困った時はショーン殿を頼れば安心。
 それでは今までの王制と変わらぬ。
 ならば余は引き下がり国民に考えさせるべきだ。余はもう待てない!!」
「かと言って権力を手放して、どうこうなる問題でもありません。
 国民たちは羽搏く方法を知りません。
 空の飛び方を教えない親鳥が何処にいましょうか!!」
最終的にプロベットが折れる形で一応の解決を見たが、
ショーンもプロベットも今後、どの様に国民に権力を移譲させるか苦慮する事になる。
そして悲劇は突如として訪れた。

プロベットが会議中に、急性くも膜下出血で倒れ、まさかの急死。56歳と言う若さであった。
そこでバイアグラが見たのは、後任人事をめぐり右往左往する役人たちと
何も出来無いでいる国民たちであった。
プロベットに権力が集中していた為、それを失い国家機能がマヒ寸前になっていたのだ。
「プロベット陛下は見越しておられたのか?」
もし、あの時プロベットが権力を手放していたら…
確かに今よりはマシになっていたかもしれない。だが、当時の人が後にこうなるとは予測できない。
それに、何も決まっていない状態で権力を手放すなどあり得ない状況だった。
プロベットの長女プリアを艦隊司令に、リヨンヒとの息子ケンセイに家督を継がせることで
なんとか後任人事を巡る混乱を治めたかと思ったら
今度はショーンも演説中に心臓発作を起こしあえなく死亡してしまう。
屋台骨を失ったショーン・プロベット連合では各派閥が後継を巡り対立。
ケンセイを即位支持するア族・日本民族派とショーンとアーメイの息子ウエラーを支持するショーン派、
バッカスとジェニファの息子ダラムを支持するアキ・ラー派が対立
なんとかバッカスの養子であるマクガイバの取りなしで踏みとどまっている状態であった。
だが、時を同じくして覇王バニアウも急死
バニアウの養子でアベヤクーンの息子サイガスを推す旧派と同じく養子のラミウスを推す新派が対立
更にアカフリとモニカの息子で同国に亡命中のヘルムートがバ族の正統継承権と王位継承権を主張。
こちらも艦隊司令サジェムと彼の副官グルーの取りなしで同じく踏ん張っている状況で
分裂・内戦も時間の問題だった。
「世界が壊れていく…」
そして遂にウエラーを推すニングが帝都ジパングでウエラー即位を宣言。
これにケンセイを推すア族・日本民族派が異を唱え地球にて挙兵。
遂に内戦が勃発する。
この時、バイアグラは同じく内戦の危機にある旧バニアウ王朝に対する抑えとして
マイスに駐屯していたが内戦により地球への帰還航路が封鎖され孤立してしまう。
補給も儘ならない中、敵の挟撃を受け旗艦を損傷。
内部の空気漏れが発生し、酸素濃度が徐々に低下していった。
「ははは… 誰にも看取られず無酸素状態で窒息死か。私に相応しい惨めな最期だ…
 今まで多くの人間の運命を弄び、多くの犠牲を出した天罰が下ったのだな」
だが運良く現場宙域で撤退作業を行っていた主君プロベットの娘プリア率いる
連合軍本体に救出される。
「死に場所を見つけたと思ったけど、人生は思うようにはいかないわね…」
地球帰還後、病院へ運ばれるも戦闘中に追った傷の治療が思うように進まず症状は悪化。
SC146年、軍病院の一室でバイアグラはテレビを見ていた。
番組内ではバッカスの養子マグガイバが演説をしていた。
『我々、アキ・ラー家、ア族・日本民族連合、ショーン家及び
 バニアウ家のサイガス王子、ラミウス王子、バ族アラブ本家のヘルムートは戦争の中止をここに宣言。
 ソース、イーズ、セントラル及びサウズ、ウェズ、ノーズ各勢力毎に同盟を組み
 銀河政府の樹立を宣言する!!』
「そう、戦争は終わったのね…」
看護師が病室を訪れるとバイアグラは息を引き取っていた。享年77歳。

ラブはこう締めくくる
「戦争が終わり、平和が訪れた事を見てから亡くなったのは
 彼女に取って幸せであったろう

 例え、それが偽りの平和であっても…」

マクガイバの手腕によって均衡を保っていた銀河政府は
マクガイバの死去後、再び混乱に陥ったとある歴史書は記している






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