イステの歌

イステの歌(イステのうた、英:Song of Yste)はクトゥルフ神話に登場する架空の書物。

初出は『深淵の恐怖』(ロウンデズ)。

概要


太古のクトゥルフ神話の魔導書。ディルカ一族と呼ばれるその祖先は最も古い人類の魔術師の一族が「イステの歌」を現代に伝えている。この魔導書にはアドゥムブラリに関しての記述が他の書物の記述と違い詳細に書かれている。言語はギリシャ語、ラテン語、アラビア語とエリザベス朝の英語に翻訳されている。

時にネクロノミコンやエイボンの書と並び称される魔道書。ディルカ一族が伝説的な形態から黎明期の三大文明の言語に翻訳し、後にギリシア語、ラテン語、アラビア語、エリザベス期の英語に翻訳した。
一般のオカルト愛好者や最低限必要な背景知識を持たない者にとって、この書物の大部分は退屈極まりなく、読んでも失望するだけである。魅力的な章句はいくつかあり、さまざまな恐怖小説に引用されてもいるが、ほとんどはひどく曖昧なヒンドゥー語の詩の翻訳とありふれた哲学書を混ぜ合わせたようなもので、首尾一貫していない。
ただし読み方を知っている者ならば――適切な質問をするためにはその他ほとんどの質問の答を知っている必要があるように――内容を理解することができる。また適切な読み方で解けばイステの歌はすべての偉大な宗教の根本的な教義を肯定するものである。

アドゥムブラリ


アドゥムブラリについての記述がある。
……これらはアドゥムブラリにほかならず、この生ける影は信じがたき力と悪意を備え、
われらの知る時間と空間の法則に縛られることなし。彼らが楽しみとするところは、
他の世界に住むものに恐るべき罠と種々の幻影をしかけ、他の世界に住むものを彼らの領域に引き入れることなり……
……さらに恐るべきは、彼らがほかの世界や次元に送りこむ探求者であり、
いかなる世界や次元であれ、彼らはその住民の姿に似た、信じがたき力を持つ探求者をつくりあげて送りこむ……
……これら探求者を看破できるのは達人のみにて、達人の鋭き目には、
彼らの姿や動きの完璧さ、尋常ならざる振舞い、異質なオーラと力が、探求者の歴然たる徴なり……
……聖人ジャルカナーンが語るには、これら探求者の一人がナイアグホグアの神官七名をたぶらかし、
催眠の術くらべにひきこみたることあり。ジャルカナーンの言によれば、
二名が罠にかかり、アドゥムブラリの世界に送りこまれ、影の生物に襲われたる後に死体がもどされたるとや……
……いかさま面妖なるは死体のありさまにて、一滴の体液とてないにもかかわらず、
死体にはいささかの傷もなし。されどこのうえなく怖ろしきは、
閉じることなき目と不気味に輝く斑紋にして、目は彼方を凝視しているかのごとくに見え、
全身を覆う奇妙な斑紋はうごめくことをやめず……
最終更新:2013年03月07日 21:52