コルト・シングル・アクション・アーミー

コルト・シングルアクション・アーミー(英語: Colt Single Action Army)とは、西部開拓時代に使用されていた回転式拳銃。生産は現在でも継続されている。通称は「ピースメーカー」。1892年から20年ほどアメリカ陸軍に制式採用されており、この際の制式名はM1873。

概要


装弾数は6発。弾薬には.45LC(ロングコルト)弾を使用するが、ウィンチェスターライフルと弾薬の互換性を持たせるため、.44-40弾を使用する物も存在していた。当初は黒色火薬を用いた弾薬を前提とした設計であったが、後に無煙火薬にも対応した。能動的な安全装置は持たない。

当時、金属薬莢式リボルバーの開発でスミス&ウェッソン社に遅れをとっていたコルト社が、従来の自社製パーカッション式リボルバーのシリンダー上部にフレームを渡して強度改善を図る形で、本銃のデザインが考案された。撃鉄をハーフ・コックにしてから回転式弾倉後部のローディングゲートを開け、そこから弾薬を1発ずつ装填、排莢する方法を採用しているが、同時期に存在したスミス&ウェッソン社製のリボルバーや、レミントン・ニューアーミーなどは、弾倉の軸をスイッチ一つで抜き、弾薬を弾倉ごと交換する機構を持っており、同時に全ての弾薬を再装填できた。また、交換式のメカニズムはパーカッション方式と相性が良く、予備のシリンダーを多数所持しておく事で素早い装填が可能になるため、金属薬莢の普及後も、一定期間はコルトSAAのセールス上の有力なライバルとなっていた。

その反面、SAAの固定フレームと単純なメカニズムによる信頼性、.45LC(ロングコルト)弾の威力は、1911年に制式拳銃がコルト・ガバメントに更新されるまで、アメリカ軍の将兵から評価を得ていた。

バリエーションそれぞれに愛称が与えられ、民間向け.44-40口径モデルの「フロンティア」(フロンティア・シックス・シューター)、民間向け.45口径モデルの「ピースメーカー」、砲兵向け約5.5インチモデルの「アーティラリー」、騎兵向け約7.5インチモデルの「キャバルリー」、キャバルリーより長い最低8インチ、最高14インチの長銃身型を総称した「バントライン・スペシャル」、エジェクターレスの「シェリフズ」等がある。民間向けのモデルはまとめて「シビリアン」とも称され、代表的な4.75インチをはじめとする各種銃身長が用意されていた。口径では.45LC弾や.44-40弾を使用するものの他に、.22口径モデルなど36種のバリエーションが存在する。また、シングルアクション故に使用者のスキルによってシューティングが大きく左右されることに由来して、体格や腕力の差を均一化するという意味から「イクォライザー」(equalの変化形)という別名も存在する。

特許はすでに切れており、コルト社以外からもコピーモデルが発売されている。また、コルト社は100丁以上からカスタムモデルの製造を請け負っていたため、記念モデルなどとして彫刻、象嵌、メッキ、象牙グリップの装着などの装飾を行ったものも存在する。

西部劇になくてはならないものとされるアイテム「荒野」「砂漠」「馬」「銃」の一つ、その西部劇を制した銃としてウィンチェスターライフルと並べて挙げられることが多く、「西部劇の代名詞」とまで言われている。

経歴

1872年にアメリカ陸軍の採用試験が行われ、翌年の7月23日にはコルト社に8000丁の発注が行われた。その後1890年までに37060丁を納入している。1896年に無煙火薬用にフレームが強化され、シリンダーピン止めネジがフレーム貫通式に変更となった。1940年には第二次大戦のためいったん製造中止となるが、1947年に生産が再開し、これはポスト・ウォー(戦後)モデルと呼ばれた。

バントラインスペシャル

「バントラインスペシャル」と呼ばれる長銃身型は、西部劇の小説家ネッド・バントラインが特注したもので、西部開拓史に貢献した者に授けるための5挺のみが生産されたと言われる。保安官ワイアット・アープも使用していたとされ、他のバントラインスペシャルが12インチ銃身で使用の際には更に短くされていたと言われる中、アープのバントラインスペシャルは16インチ(約40センチ)で、射撃姿勢を安定させる鉄棒製スケルトンストックをつけたとも言われる。 贈られたのはワイアット・アープ、チャーリー・バセット、バド・マスターソン、ビル・ティルグマン、ニール・ブラウン。 しかし『ピストルと銃の図鑑』(小橋良夫・関野邦夫共著、池田書店)24版は、コルト社の当時の記録には12インチ銃身を持つ拳銃を制作した記録は無いとし、作家バントラインの創作である可能性を提示している。
最終更新:2013年05月23日 21:39