イエス大師

神智学の形而上学体系の中のイエス大師(Master Jesus)は、イエスについての神智学の概念がキリスト教のイエス・キリストと対照的であることを示している。

「古代の英知の大師たち」のハイアラーキーでの立場


神智学の教義におけるイエス大師は「古代の英知の大師たち」(Masters of the Ancient Wisdom)の一人であり、Ascended Master Teachingsではアセンデッドマスター(そのうえ一まとめにしてグレート・ホワイト・ブラザーフッドと呼ばれる)の一人である。イエス大師は神智学徒によって、アリス・ベイリーによって、また"Ascended Master Teachings"の学習者によって第六光線の大師(Seven rays参照)とみなされている。"Ascended Master Teachings"の団体では1959年12月31日まで「第六光線のチョハン」であったと信じられている。エリザベス・クレア・プロフェットによるとこの時レディ・ナダがハイアラーキーにおけるこの役目を完全に引き受けた。Ascended Master Teachingsのエリザベス・クレア・プロフェットによると1956年1月1日にクートフーミとともにマイトレーヤ(彼は「惑星のブッダ」と「宇宙的イエス」の役目を引き受けた)の後を継いで世界教師になった。この信条は伝統的な神智学の支持者やアリス・ベイリーやベンジャミン・クレームの信奉者には受け入れられない。彼らはイエス大師がそれまで通り「第六光線のチョハン」であると信じている。

イエス大師の前の転生


Ascended Master Teachings最大の宗教Church Universal and Triumphantの預言者であるエリザベス・クレア・プロフェットによると、イエス大師はアトランティスの皇帝に二度転生している。一度目は紀元前33050年、二度目は紀元前15000年のことである。彼はその治世において白い魔術師たちとアトランティスに向かっていた黒い魔術師たちとの戦いで白い魔術師を支援した。

アリス・ベイリーによるとイエス大師はかつて紀元前13世紀にヘブライの軍事指導者ヨシュアに、紀元前16世紀に大祭司ヨシュアに生まれ変わった。

Ascended Master Teachingsによるとイエス大師は紀元前17世紀/紀元前16世紀(およそ紀元前1550年から紀元前1650年の間)にダビデ王(紀元前1005年から紀元前965年の間の統治者)にも劣らぬCoat of Many Colors(飾りのついた上着、裾の長い晴れ着)のヨセフに生まれ変わった。

12と13の時代の間の活動


Ascended Master Teachingsによると、イエスははじめルクソールの同胞団(秘儀の学校)で学び、その時偉大で神聖な指導者マイトレーヤと第四根本人種(アトランティス人)のマヌであるLord Himalayaのもとで学ぶためにインドに行った。

イエスの職務


ベンジャミン・クレームとアリス・ベイリーの信奉者はマイトレーヤとして知られる力強い存在が一つの体に二つの存在としてあった――マイトレーヤはキリストであり、イエス大師はナザレのイエスであり、二つの存在による働きの結合がイエス・キリスト――イエスの職務を通してイエス大師にオーバーシャドウしたと断言され、チャールズ・ウェブスター・リードビーターが広めたネストリウス派/グノーシス主義的キリスト論を信じている。

Ascended Master Teachingsを支持者する人々はマイトレーヤの存在を信じるが、しかしながら、彼はイエスの使命を激励したものの、彼が実際にオーバーシャドウすることは無かったと信じている。

イエスの磔


神智学徒とAscended Master Teachingsを信奉する人々はイエス大師がエルサレムでの磔によって第四段階のイニシエーションを受けたのだと同じように信じている。アリス・ベイリーによれば大部分の人々にとって磔である第四段階のイニシエーションは、厳しい人生の否認の試みのようにシンボリックなものだがイエスにとっては文字通りのものであった。

イエスの復活


Ascended Master Teachings organizationsの団体はイエスが自身の肉体を伴って復活と昇天をしたというキリスト教の見方を支持する。伝統的な神智学を背景とするアリス・ベイリーやベンジャミン・クレームはイエスは肉体から復活した時、ティアナのアポロニウスに生まれ変わったと信じている。

復活後の活動


Ascended Master Teachingsでは、復活の後イエスが40日目に昇天したとき、彼はユダヤからカシミールに空中に浮遊して移動し、ここで81歳になるまで生き、そこで世界主サナト・クマーラと共にあるためにシャンバラに昇天したと信じている。

ティアナのアポロニウスをイエスの転生とみなす議論

神智学協会の設立者ブラヴァツキー夫人は1887年にこう書いた。「ナザレのイエスの同時代人アポロニウスは新しいスピリチュアルな学校の熱心な設立者であった彼に似ていた。おそらくイエスよりも形而上学的ではなくより実際的で、彼の性質ではより柔らかさのない完璧なもので、それでも彼は霊性の同じ真髄と、同じく高度に道徳的な真理を教えた」。リードビーターや新しい神智学の教師であるアリス・ベイリー、ベンジャミン・クレームのような幾人かの神智学徒は、イエス大師はナザレのイエスの転生の後にティアナのアポロニウスに生まれ変わったと書いている。彼がティアナのアポロニウスとしての人生を終えるうちにアセンデッドマスターとなった時、第五段階のイニシエーション(復活)を成し遂げたと信じられている。しかしながら、もしもアポロニウスがブラヴァツキー夫人が書いたようにイエスと同時代人であるなら、イエスが彼に生まれ変わることはできない。ベンジャミン・クレームはイエスが紀元前24年から紀元後9年まで生きたと主張することでこれを説き伏せている。クレームによればアポロニウスは紀元後40年からおよそ97年まで生きている以上、これはイエスがティアナのアポロニウスとして転生できることを意味する。もっとも、現代の学問はティアナのアポロニウスが紀元前40年から120年まで生きていたとの知見を与えおり、たとえ通例的なイエスの生存年代がおよそ紀元前6年からおよそ紀元後33年までであるとしても、彼はなおティアナのアポロニウスに生まれ変わることができる。ティアナのアポロニウスとしてのイエスの転生は伝統的神智学、アリス・ベイリー、ベンジャミン・クレームの信奉者によって支持されているが、イエスとしての転生が地上における最後の具現であると信じるAscended Master Teachingsの支持者にとってはそうではない。

ラーマーヌジャとしてのイエスの転生


リードビーターはティアナのアポロニウスとしての転生のあと、ヒンドゥー教のバクティ信仰においてイエスがアヴァターラとして化身して彼に転生するという形式で代表的な聖人である、タミルの宗教改革者ラーマーヌジャ(1017年 - 1137年)として再びインドに生まれ変わったと述べた。リードビーターによると、イエス大師は愛の献身(バクティとは献身的愛情(devotion)を意味するサンスクリット語の単語)を司る第六光線の大師としての霊的な仕事のためにラーマーヌジャとして生まれ変わった。

イエスがラーマーヌジャとして生まれ変わったことは多くの伝統的神智学徒から信じられているが、Ascended Master Teachingsを支持する人々にとってはそうではない。

ベンジャミン・クレームの見方


ベンジャミン・クレームによると、イエス大師はモルモン書に詳しく話されたように 復活後すぐにアメリカ州を訪れたのではなく、数百年後に訪れた。モルモン教徒のように、クレームはこの訪来がケツァルコアトルの伝説の起源を与えたと信じている。

また、ベンジャミン・クレームはイエス大師が1990年からローマで暮らしていると述べている。マイトレーヤがシェア・インターナショナルを作った後、不死の体を持つイエス大師は水瓶座の時代の次の2000年にわたって教皇の座に就くことになるとクレームは断言している。
最終更新:2013年05月21日 18:20