おとら狐

おとらぎつね

種別
別名  
住所 愛知県
特徴  白または雉子猫色の狐で、主に病人に憑くが、稀に健康な人に憑く場合もある。憑かれた者は左目から目脂を出し、左足の痛みを訴える。行者によって憑き物落としをしてもらうが、どうしても離れないときには遠州磐田郡水窪町山住神社から山住さん(お犬さま)を迎えれば必ず離れるという。 ▽天正3年の長篠合戦の際、長篠城の鎮守稲荷に住んでいた狐は城の天守から戦の見物をしていたが、鉄砲の流れ弾に当たって左目を失明した。それ以前に左足を負傷していたため、片目片足となってしまった。合戦の後、長篠城は廃され、稲荷の末社も打ち捨てられてしまった。この仕打ちに激怒した狐は、城の近くに住む万兵衛という分限者の娘おとらに取り憑き、以後も次々と近所のものに憑いて、おとら狐と呼ばれるようになった。おとら狐は長篠の合戦の話を好んだが、他にも様々な身の上話を人間の口を借りて語ったという。足を負傷したのは長篠城大奥での軍議を盗み聞きした際、障子に映る影に気付いた城主に斬られたから、或いは烏に化けて弓の名手である林藤太夫高英の家の塀で鳴いたところ、藤太夫に射られたからだという。信州犀川の岸で昼寝をしている時、猟師に狙撃されて死んだともされるが、これは孫娘の狐(同じくおとら狐と呼ばれた)が人に憑いて語ったことであるという。また、死亡したのではなく、この時の傷で左足を負傷したとする説もある。
資料 『郷土研究』4巻6号「おとら狐の話」早川孝太郎
最終更新:2011年08月19日 13:05