胡錦濤と大先生

旧公式年表では「胡錦濤が訪日3日前に北京大を訪れ、面会を求められる」と、あたかも胡錦濤が加藤に会いに来たかのように盛り、各メディアでそれをまことしやかに話し、「党上層部とのパイプがある」という言説の担保としていた加藤。

一面に取り上げられたという、人民日報の扱いは実際どうだったのか。

胡锦涛总书记在北京大学考察纪实(新華社 2008年5月4日)


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(人民日報一面の写真は、加藤嘉一ヲチャーの方から了承を得て転載しました)

「胡錦濤・加藤会談」翌日の人民日報一面。記事の内容は、先の新華社のものと同じである。確かに一面を飾っているが、「胡錦濤・加藤会談」に程遠いことは写真だけでも明らかだ。

読み進めていけば胡錦濤と加藤の単独会見ではなく、記事に加藤の名前や発言は出てこないことがわかる。

そもそも、胡錦濤が北京大学を訪れたのは、北京大学110周年記念式典に出席するためであり、加藤を含めた留学生たちと会ったのはそのついでである。訪日3日前は単に日程上の都合以上の理由は無く、訪日との関連性は無い。

加藤がわざわざ訪日3日前に言及するのは、「自分にわざわざ会いに来た」胡錦濤の「対日観に影響を与えた」とでも言いたいのだろうが、加藤は留学生代表の1人でしかない。

2日前と発言しているソースもあるが、そんなに大事なイベントなら、3日前という設定くらいはしっかり記憶してほしいものだ。

なお、例年五四運動の記念日である5月4日前後に、胡錦濤は北京近郊の大学を訪問し、学生たちと会っている。同年は上述の北京大学110周年とかち合ったため、この年は中国農業大学で五四運動のイベントをこなしている。

「留学生是文化交流的使者,是增进各国人民友谊的桥梁。他希望各国留学生与中国同学相互学习,加强交流,取长补短,共同提高,为促进各国人民友好、推动世界和平与发展作出积极努力」
(留学生は文化交流の使者であり、各国人民の友誼を深める架け橋である。各国留学生と中国人学生がお互いに学び、交流を深め、長所を学んで短所を補い、共に高めあい、各国人民の友好促進と世界平和と発展のために、積極的に努力して欲しい)

という胡錦濤の発言に、勝手に日中関係改善の意気込みを読み取ったとしたら大した人である。と言いたいところだが、中国語メディアでは「留学生代表として交流した」と書いている。大先生のやり口の1つである、日中で全く違う事を言う悪癖がここでも出ている。

加藤は北京大学用に書いた日本留学生加藤嘉一:胡主席温厚的手では、胡錦濤が大学創立記念のために訪れ、「私と数名の留学生は、興奮した」と手記に書いている。胡錦濤は訪日に絡めて自分に会いに来た訳ではないと自覚しているのだ。

また、ここでも「主席の目は、日中友好を促進しようとする固い信念を語りかけていた」と書いており、胡錦濤が加藤に何かを言ったわけでもなく、加藤が勝手に読み取っただけであることがわかる。

結論:胡錦濤が加藤に会いに来た、というのは嘘。
最終更新:2013年09月23日 12:39