高島平 四葉プロローグ

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dangerousss3

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プロローグ

 耳慣れぬ爆音に、人々が見上げる空。
 アリのように蠢くモノどもを、ヘリコプターから乗り出して見下ろすブラックでロングなヘアーのぷりちーなぼでーのがーるうーまん少女(長髪の少女)
 高島平四葉。
 手にはビンが入っており、中には何も入っていない――見た目には。
「バイバイ」
 ぽいっと投げられたビンは加速して落下する。
 人がいるところに落ちれば――。
 第二のパンデミック。
 パンデミックは地元から。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 東京。
 四葉を載せたヘリはどこかの小学校の運動場にゆっくりと降りる。
「はあい、ついたよん!」
 操縦士の少年は見た目通りの拙い口振りだ。見た目通りの年齢なら無免だろう。
「あれ? 君たちのとこに連れてってくれないんだ?」
 少しからかい気味に、流し目で操縦士を睨む四葉。
 視線を受けた操縦士ボーイの眼球が一瞬、青に輝き、まぶたを閉じる。
「返答選択中……」
 かっと目を剥き、一息に言う。
「結論が出ました:あやしいひとにはちかづかない、です」
「まあ信用ないか」
 と苦笑しながら、四葉は自分の姿を思い浮かべる。
 肉体的にも精神的にも未熟だと理解しているつもりだ。
 だが、世界征服に着手してもよい頃合だとも自認している。
「でも、ま、これ渡しておくから」
 と、無造作にポケットからビンを取り出す。透明のビン。
 ――四葉が故郷に落としたものと同一だ。
「さっき落としたあれの中身は、このビンと同じなわけ。だからたぶん君たちはもう一度稼げるんじゃ ないかなあ、なんて思うんだけど。どうかな?」
「返答選択中……直通で応答します」
 すると少年の口調が全く変化した。まるで別人がしゃべらせているように。
新ウィルスだと? 二匹目のドジョウは反感を得るだろうな。人口も減ってるし、客がいないと
「じゃあいらない?」
もうぶちまけたのだろう?
うまくいった(感染している)かは知らないけどね。そっちが『改良』してもいいし」
OK。貰っておく
「ひとつ、貸しだよ」
トーナメントでは返さない貸しだがな
「もちろん。大事なのはそのあとだからね」
 四葉は地上に降り、振り返る。ヘリのボディにはWL社のロゴがペイントされている。WL社――ウィルスのワクチンで成り上がったキングオブトワイライトのスポンサーだ。
生きていればまた会うであろう……がんばってね!!」
 四葉は振り返らず、早足でヘリから離れる。
 ――ふと、自分の渡した新ウィルスのビンを投げつけられる気がした。
 勘よりも予測に近い。
 四葉の手元に、ビンが出現したからだ。
 彼女の能力【モア】は、「敵」の武器よりちょっと強い武器を召喚する能力である。
 逆に言えば、能力が発動したらそいつは敵だ、ということでもある。


 いま、操縦士の少年――WL社に対して念ずると、ビンが召喚された。
 見た目には空き瓶だが、何が充填されているか、容易に想像がつく。
「新黒死病ウィルス」よりも強い「新・新黒死病ウィルス」を彼に渡したのだから、
 ――四葉の持つビンには「新・新新黒死病ウィルス」が充填されているに違いない。
「やっぱり、信用されるには優勝するしかないね」
 無造作にビンをお手玉しながら、四葉は初めての東京観光に胸を躍らせた。








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