聖槍院 九鈴幕間その9
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落下停止
手のひらの上で玩ばれ、パチンコ玉がチャラチャラと音を立てている。
やがてひょいと上に投げられた玉たちは、そのまま落ちずに空中でふわふわと留まった。
やがてひょいと上に投げられた玉たちは、そのまま落ちずに空中でふわふわと留まった。
「弓島君には助けられたよ。私が見てると知ったら、二人とも気まずいだろうからね」
地獄の蓋まで、チャラくなったと言うわけなのか。
「きひひひっ。寝取られ展開でますます不幸に磨きがかかったなァ、哀れな妹よ」
女性の左肩のあたりから、男の声がする。
「これでいいのさ。こうなるのが遅すぎたぐらいだよ。本当に、二人ともバカなんだから」
両手を広げ「まいったね」のポーズで首を振る。
背中で、細長く編んだ髪が尻尾のように揺れる。
背中で、細長く編んだ髪が尻尾のように揺れる。
「まあ、これでお前も、やっと心残りなく輪廻できるってわけだ」
冥府より地上侵攻を目論んだ、邪悪な者が居たという。
その者は、己の手駒を増やさんと、罪なき者すら地獄に引きずり込みもした。
しかし、やがて不正は糺されて、輪廻の環は再び正しく巡りだす。
その者は、己の手駒を増やさんと、罪なき者すら地獄に引きずり込みもした。
しかし、やがて不正は糺されて、輪廻の環は再び正しく巡りだす。
「ようやく兄者ともお別れだ。戻ったら彼に伝えてあげてくれ。
光素ちゃんは元気そうにやっていたってね」
光素ちゃんは元気そうにやっていたってね」
広げた手のひらに、落ちかたを思い出した玉たちが戻ってくる。
それを巾着袋にしまい、傘で地面をトンと突くと、彼女の姿は消え失せた。
それを巾着袋にしまい、傘で地面をトンと突くと、彼女の姿は消え失せた。
――これにて、呪われた双子の物語は終わる。
兄は虫花地獄で、己の為した罪に対する責め苦を正しく受けるだろう。
妹は生まれ変わり、今度は祝福に包まれた人生を送ることだろう。
兄は虫花地獄で、己の為した罪に対する責め苦を正しく受けるだろう。
妹は生まれ変わり、今度は祝福に包まれた人生を送ることだろう。
彼女の人生は短く悲しいものだった。
しかし、永遠にその名が忘れ去られることはなく、
墓前に供えられる花が絶えることはないだろう。
しかし、永遠にその名が忘れ去られることはなく、
墓前に供えられる花が絶えることはないだろう。