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第一回戦【時計塔】SSその1」(2013/04/13 (土) 23:21:56) の最新版変更点

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#divid(ss_area){ *『ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合~クロックタワーインフレイム~』 (これまでのあらすじ) ザ・キングオブトワイライト参加者、黒田武志とケルベロス・ミツコは 時計塔内部でラーメン探偵・真野を待ち伏せるが、黒田はラーメンを喰らいBAKUSUIした。 だが、ケルベロスミツコはその刹那にラーメン探偵・真野の攻略の糸口をつかんだのだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 下から感じる冷たいタイル床の感触と背中のリュックから受ける重荷を感じながら、 ぽぽ・光吾は、一週間前の出来事を思い出していた。 希望崎学園「黒樺寮」別名『物置寮』。 そこで発生した大量殺人事件のことを。 その時のことをポポはほとんど記憶していない。 憶えているのは恐ろしいほどまでの”暴力”が吹き荒れたことと彼の大切な 仲間や姉達が次々と虐げられて喰い散らされていったことだけだ。 生き残ったのは彼一人だった。仲間たちと「サヨナラ」の別れすらかわすことなく 唯一人、彼は取り残されたのだ。 だが彼は生まれ変わった。 姉達の魂を吸収・融合することで、ミツゴの魔人ケルベロスと化して。 融合後、その足で寮を出た彼は転校生を名乗った謎の人物の言うとおり、 本大会の渦中にいる。 彼の旅立ちを最後に物置寮に立ち寄る者などもう誰もいないだろう。 涙はない。無情となじるなかれ。 この世紀末の世では大量殺人など、余りにありふれた事件であるからだ。 今、彼は時計塔の中、床に張り付き一人の男を監視していた。彼のスタイルの一つ 手芸者の技能が生きている。今の彼と彼女たちは、探偵であり、手芸者であり、 料理人であり、園芸家であり、未来における数多ある魂たちに対する簒奪者であった。 ケルベロスは、彼とその姉の魂を共有することで常人の3倍のスキルを持つこと を可能としているのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 魔獣ケルベロスは三ツ頭を意味するにあらず他者の魂を喰らう性質そのものである。 「蜜子姉ちゃん、同じ料理人として見た感じ彼の実力はどうかな」 光吾は己の中にいる中華料理人の長女蜜子に語りかける。 「んーどうにも底が見えない相手だな。…ま『むちゃんこツヲイ』級と考えと きゃ間違いないだろ。」 相変わらず大ざっぱな姉だ。続いて次女の満子。科学的知識に富む園芸家で 知能指数も高い。メガネを押し上げながら(注:イメージです)こう分析する 「知能指数も高いわね。戦いの場となった地下のボイラー室、あの手狭な 部屋で戦うことで黒田武志の槍の性能を封じた。あと地の利も完璧。 ”配管工”としての自身のスキルをそこなら活かせると考えたのだわね。」 そして変身タイムは、能力発動から完了までコンマ1秒以下。 この意味わかるわね?と満子の促しに軽く光吾は首肯する。 コンマ1秒以下の間だけ…幾ら能力が高かろうとラーメンであろうと、その 刹那だけは無防備になるはず、ならば取るべきすべは決まっている。 全員で隙を作り、手芸者たる自分がその隙を突く。 ”針に糸を通す様な”作業、それをこなすのは手芸者たる自分の役割だろう。 彼は改めラーメン探偵を見やる。 今のラーメン探偵の姿を見れば、彼がどのような魔人能力を保有しているか 一目瞭然だった。彼の姿は常時の探偵ルックから一変していたのだから。 ゆったりとした青いオ-バ-オ-ル。 腰に差したペンチ。 赤い上着に同じく特徴的な赤い帽子。 そしてチョビひげ。 どこから見ても『配管工』の姿である。 改めて見、思わず唸る光吾。 あの姿を見て探偵の変装と見破れる人間はまずいないだろう。 手芸者視点から見ても完璧な変装といえた。 3人の精神が注視する中、ラーメン探偵にも動きがあった。 探偵は【M】とイニシャルされた帽子を正すと懐に手をやり、そこから アイテムを取り出したのだ。 その取り出したものを見て一同に衝撃が走る。 『キノコ(赤)』 「ッ~~~ツ」 焦る光吾。まさか齧る気か、そんでもって際限なく回復したりするのか、 ならばプランの練り直しが必要となる。だが、焦る光吾を尻眼にラーメン 探偵はソレを目線まで持ち上げると、検分しただけで再び懐に仕舞いこんだ。 ほっと息を― 「「今度は緑だとォォ」」 ―継ぐ暇もなく、2本目のキノコを取り出すラーメン探偵。 蜜子と満子が驚きの声をあげ、光吾は慌てて口を塞ぐ…実際は姉たちは 魂だけなので声が漏れることはなかったのだが、気分の問題だ。 こちらが本命か!?だが、探偵はソレを目線まで持ち上げ、検分しただけで 再び仕舞いこんだ。 「はぁ…次、紫色のでたらどうしましょう?。蜜子お姉様」 「まあ…それはもう『確定』ってことでいいだろ。ミツちゃん。お前も腹くくれ」 何が確定なんですか。どうにも相手のペースに嵌っている気がする、気を つけねば…そう警戒する光吾の目の前を絶妙なタイミングで ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつぅ(甲)と 何かが、通過した。 「?」 一瞬のことだが、彼は目でそれを追いかけてしまう。 そして視線を戻した時には、ラーメン探偵は忽然と姿を消していた。 ―視線誘導(ミスディレクション) ―悔やむ光吾。自らの迂闊さを呪う。 やはりあの男、監視に気が付いていたのだ。しかしなんというウカツ。こんな初歩的な手に ノコノコとひっかかるとは ノコノコと、ひっかかるとは。 「上だな、追うぞ」 蜜子が天上を見やり決然とした態度で断定した。 堅い床だ。流石に潜るわけにはいけないだろう。ならば行き先は必然、 この塔の上階、上となる。 姉の言葉に気を持ち直す光吾、本当にこういう時の姉ちゃんは頼りになる。 流石、姉弟の精神的柱だ。だが、実はこの時の蜜子は違ったのだ。 彼女は覚悟を決めた者の眼をしていた。 ラーメン探偵、彼が発したダイニング・メッセージの意味を正しく受け取ったが故に。 時計塔最上階。 幾つかの踊り場を駆けあがり、出た先そこは時計塔の大時計の裏側に位置する。 時計塔の大時計と言う主役を支える舞台裏の演出家である歯車たちは複雑に絡み合った その動きを止め、機を待っていた。 ケルベロス達はそこに足を踏み入れる。先陣は次女・満子。 冷静沈着さと高い防御能力を併せ持つ彼女はゆっくりと歩を進める。 「さて、どこにいらっしゃるのかしら」 いいつつも歩調は緩めない。さて、どこからくるラーメン探偵。 そして時刻は正午を指し、POPOPOと機械仕掛けの鳩が動き出す。 扉を開閉し前後運動を始める。 「Rassahai!!(「イラッシャイマセ、お待ちしてました」という意味の英語)」 そしてソレは鳩仕掛けの出入り口から現れた。影は一声発すると高く跳躍。 『空中』にそのまま着地し、彼らのほうにくるりと振り返った。 「ドーモ『お客サン』。ラーメン探偵です。」           (クロックタワーインフレイム後半へ続く) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「 Rassahai!! 」 手にオカモチを持ち、探偵ルック姿の男は空中に降り立つと礼儀正しく、 名乗りを上げた。 「ドーモ『お客サン』。ラーメン探偵です。真実を届けに来ました。」 「生憎ッ、間にあってますわ。」 トワイラル・ミツゴは相手の言葉を最後まで待つことはなかった。 猛獣注意! 相手の着地を見てとると次女・満子はメガネを光らせ(イメージです) 素早く鋏を投擲する。それは大きく真野を逸れ、あっさり失速する。 (借りるわよ光吾) だがそれは満子の科学的計算にもとずく絶妙なる投擲であった。 予め鋏には手芸者が使う特別製の糸が結びつけてあったのだ。 グイ。 そして彼女は空中にある何かを手繰りよせるように手を翻し 糸を引きよせる。手ごたえアリ。 束められ、空中に忽然と現れる黄金色に輝く糸。 !?糸、いやこれはラー麺だ。 同時に大きく揺らぐラーメン探偵。 ラーメン探偵、空中浮遊のタネはこれであった。 真野はコートより伸びる糸くずを超ごく細麺として空中に張り巡らし 貼りめぐらすことで、その表麺張力の力によって浮いていたのだ。 ミツコは自らの脚力に麺の弾力による反動をのせると力強く跳躍、 ラーメン探偵の位置まで一気に踊りであた。 手には肉斬り包丁。振るうのは当然、中華料理人の長女・蜜子だ。 ―斬撃!― だがいち早く麺を離脱していた真野にはその刃は届かなかった、 彼女の包丁は空を切り、足場の麺をぷつりと切断する。 交差する二人。 「   」 瞬間、ラーメン探偵は何か彼女に対して声を発した。 (「Gedokuする」か…) 蜜子はその言葉に答えることなく、唇をかみしめ― (「来るぞ。光吾!」「ハイ姉ちゃん」) 弟と切り替わった。 ミツコらとラーメン探偵は今互いに背を向け、自由落下している。 お互い攻撃出来ない状態。 この局面でラーメン探偵が地面到達までに能力発動を行う可能性は 満子の演算によれば実に96%に達していた。 光吾は、 、、、、 糸を操る。 最初に満子が投げた二つの鋏は、まだ生きている。特製の糸で 括りつけられたそれは今、頭上高く上がり、野ウサギを狙う猛禽類 のように死角からラーメン探偵の首筋を狙い急降下している。 まさに三姉弟の連携が可能にした必殺のブラインド・アタック。 だが、真野はここで彼らの思惑とはまるで逆の行動をとる。 カキーン 何か鋏が堅いものに当たり跳ねかえされる音が、あたりに響く。 「はっ?」 真野は“La Amen”を今度は極めてゆっくり展開したのだ。 思わず気の抜けた声を上げる光吾。そして彼は見た、そのラーメンを。 “La Amen”により彼の纏っていたコートが中途から大気に溶け込み、 ZZZZZZZZZZZZAAAAAAA... BBBBBBBAABBBBBBBBBAAABBBBBBBBBBB... ZZZZZZZZZZ ZZZZZZZZZZZZ.. ZZZ BBBAABBBBBBBAAA. ZZBBBAABBBBBBBBBBAAA// ”文字通り”文字と化し、彼の周りを取り巻いているのを。 彼の周りでは打ちだされた『英語』の文字が、力場を伴って浮き出し、 三次元立法魔法陣を構築していたのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 こいつラーメンに英語を練り込んでいたのか これが真野のラーメンがハイブリットと言われる所以の一つ。 まるで遠海を高速で泳ぐ黒マグロの集団じみたマクロの文字列。 これが超高速タイピング術によるショートカット―通称”英速”を実行するのだ。 「空中言語固定装置…まさか完成していたというの…」 化学、薬学などの知識に富んだ満子は茫然と真実の一端を口にする。 「なら気体、これならどうかしら」 満子はリュック内の噴出機を作動し、真野に対し農薬を吹きかける。 気化した薬品なら文字をすり抜け、届くという判断からだ。 しかも、農薬、もし相手が有機栽培なら致命的になりうる一撃だ。 「沸騰(イグニ)。」 だが、及ばない。 彼が英唱を組むと共に周りから凄まじい勢いで水蒸気が噴出し、彼女が散布した 農薬を彼女の元に押しかえす。なんという応用範囲の広さ。 速い、上手い、そしてなんか卑怯。それがラーメン3倍段(クレーム対象)だ。 「ンアー。」 自らの液を浴びて悶絶する満子。 水蒸気はそのまま濃霧と化し、ラーメン探偵と3人の姿を覆い隠していく。 ミツコは再び光吾に切り替わると、素早く後退し、壁を背後にした。 ラーメン探偵の英唱はまだ続いていたのだ。続け様に響く英唱。 ―来る。 つまり、それは略式ではない真野のラーメンの到来を意味していた。 ― 沸騰(イグニ)――          ―茹麺(ハルト)― ―  定義(ベースド)―           ―深化(オプト)― ――展開(リリース)―――。 濃霧の中、光吾は一瞬の隙も見せまいと神経を尖らせる。 ― ― ― その時 ちゃららーらら♪ちゃらららららららー♪ 遠くから響く口笛の音が聞こえた。それは哀愁と胃袋を刺激する懐かしい笛の音だった。 ― ―とても ―――とても そして、気がつくと彼は 『キノコ入り味噌バターラーメン』を手に持っていた。 キノコ? アレこの感じ、どこかで 姉ちゃんたち?ドコ ―探偵、それは真実の配達人― どこかでそんな声が響いた。 ◆葬魔灯もしくは物置寮殺人事件◆ ― ―― ―――― ――――― それは不幸な偶発的出来事であった。 発端は希望崎学園に何処からか紛れこんだ『異物』。 満子が物置寮で栽培していた菜園にそれはごく自然に溶け込んでいた。 その菜園でいつものように野菜を調達した蜜子はラーメンの付け合わせ として野菜を炒め、自慢の一品を寮の人間たちにふるまった。 その『異物』はほとんどの人間にとって単なる軽微な毒だ。 不幸なのは、たまたま偶然”ソレ”に適合する人物がその中に一人だけ いたということだ。 それは100人に1人、1000人に1人と言うレベルの確率で。だけれども 効果は絶大で…彼はそしてそれを口にした瞬間。 『Grrrrrraaaaaaa――rrr!』 ――――― ―――― ――― ああ、そうなのか …彼は悟った。 何故、あれ程、武力に優れた姉ちゃんが無抵抗に殺されたのか 何故、あれ程、知略に富む姉さんが退くタイミングを喪ったのか 何故、忘れうるはずのない光景の中、自分の記憶がああも曖昧だったのかを その理由を。 自分が、必死に糸を振るっていた相手は一体誰だったのかを ラーメンが全てを思い出してくれた。 「そう、物置寮殺人事件、その犯人はこの僕だ。 魔獣化した僕が、皆を、姉さんを …殺したんだ。」 探偵は真実の配達人。 「うあああああああああああ」 彼は頭を抱え、膝をつく。光吾を打ちのめしたのは姉や仲間達への悔恨だけではない。 それは例えて言うなら一種の『恥かしさ』からであった。 自分は何故、全てを放棄してこの場にいるのか。その事実への”気付き”である。 掛け替えのない人達を喪ったら弔いくらいするべきでなかったか…。 そうでなくとも、探偵なら、らしくまずは真実の追及をするべきでなかったのか…。 しかし彼は転校生を名乗るあの女性の言葉を鵜呑みし、この大会に身を投げた。 彼女のあの時の言葉は酷くそう自分にとって都合がよかったのだ。 少し考えれば…立ち止まれば…判ったはずなのに。そのほんの少しが見えていなかった。 目の前の男はどうか。彼は、対戦相手に関わる未解決事件を看過することなく 放置され見向きもされない事件現場に足を運び、現場検証を行い そして遺留品や状況から1週間前の殺人事件の真相を導きだしたのだ。 そうして、彼はこの場に立っている。 世界を救うという善意を、誰かに犠牲の元、達しようとする自分と相対するために。 真実を届けるという自らの矜持と信念を持って 解毒用キノコラーメンというレシピ(回答)を携え、探偵職に携わる者として。 「………あああ」 無論、死んだ二人の姉は事実をしっていたのだ。それでも付いてきてくれた。 見守ってくれてたのだ。あの優しい殺人者達は。世界を敵に回す覚悟で 気がつくと彼はスープまで綺麗に飲みほしていた。空になった丼を眺めると その丼の底には2文字『別離』と文字が書かれていた。 はっと見やると、探偵は、先ほどのラーメンで抽出したのであろう禍々しい紫色 の瘴気を放つ極彩キノコを手に取っていた。 青ざめる光吾。そして叫ぶ。 「やめろ、止めてくれ、それがないと僕はねえちゃんを、ねえさんを、ねえさん達を」 維持できない。 だが、真野はその歎願などまるでなかったようにあっさりと瘴気の素を握りつぶす。 しゅうと音を立て浄化される瘴気。 「うわあぁぁぁぁぁ」 こいつはこいつはこいつは 光吾は、ありったけの怒りを哀しみを負の感情を右手に集中する。 硬化し伸びる手 魔獣ケルベロスは顕在化する前に潰された、だが身体に残った瘴気を集中すれば フェンリル級の力なら、まだ撃てる。そして一矢報いるのだ。 ワレラガタイガンヲサマタゲル、ラーメンヤドモニ 『Grrrrrraaaaaaa――rrr!』 その時!!!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ だが、何も起こらなかった。 光吾の腕が振り下ろされることも、真野が攻撃をよけることもなかった。 振りあげた右手は後ろから伸ばされた腕により固定され、そこから1mmも 動くことはなかったのだ。 「止めとけよ。」 そういうと”声と腕の主”黒田武志はもう一度同じセリフを繰り返した。 「え?」 「お前らの事情はよくわからんが、だいたい判った。だからもう止めとけよ。そういうの」 もういいからお前はちょっとねていろ。そういい黒田は槍を翻すとの光吾の水月を 石突きし強かに強打した。悶絶状態に入ったところを今度は足払い、綺麗に上下半転 させるとそのまま床に叩きつけた。頭をしたたかに打ち昏倒する光吾。 見事な早業。 黒田は、やれやれとため息をつくと今度は真野のほうに向きなおる。 ラーメンを喰らいBAKUSUIしていた黒田武志が何故ここに? 無論、寝ていた訳だから、目を覚まし起き上ってきたという理由以外の何もない。 正確には緑の甲羅っぽい何かが頭にぶつかり目を覚まさせられたからだったが。 爽やかな眼ざめとは言い難いかったのか、黒田は不機嫌そうに言葉を発する。 「はぁ…。ま、こりゃ、てめぇの勝ちだわな…。 俺は完全に伸びてたし、コイツも今のでおねんねだ。」 ボリボリと頭を搔く。 真野は飄々と肩を竦めた。 「てめぇのラーメン喰ってお前の目的とかヤリテーこととかは、だいたい伝わったしな 素直に応援してやってもいいという気持ちもある。 正直、オレはコイツやお前みたいに重たいもんせおっちゃいねぇからな。」 黒田は”コイツ”を見やってから真野に問いかける。 「ただ、コイツにオレは勝っちまったから、コイツは今からオレの舎弟って感じだな。 何でまあ背負っちまったからには筋は通さなきゃいけない。そういうことだ。判るか?」 判るか?と聞かれた真野は沈黙した。 そして一本指を立て、ワンモア(またはヒントください)のジェスチャをする。叫ぶ黒田。 「だ・か・ら『弟分』の敵はとらなきゃいけねえぇ。つーてんだよ。OK?オケー? あゆれでぃ? つーわけで最後に素手喧嘩で勝負だ。」 そして宣言通り自らの得物のグンニグルを投げ捨てると素手喧嘩の構えをとった。 地面に投げ出されたグンニグルが呆れたような声を上げる。 (「無茶苦茶だぞ。今のお前の説明」) (ああ、コイツは「少年の面倒はオレが見る。安心しろ」みたいなこといっているぞ。 どうせ聞こえてるんだろ。ラーメン探偵) 彼の槍の声が聞こえていたのか、ラーメン探偵は肩を竦めてその注釈に応えた。 何が何だかよくわからないが、黒田の言いたいことは何故か”だいたい”伝わった。 「一発殴らせろ。この薄情野郎。いいかイッセッセーノセーだぞ。」 (意訳すると「オレとコイツの想いをお前に託す、だからお前がそれに値するか度量を見せてみろ。友情!」といっている。) ガングニルが再び注釈を入れる。 真野は静かに爆笑した。 そして、ここでこの試合、初めて構えをとる。手にはオカモチはない。 ラーメン屋でなく探偵としてでもなく一人の男として、この気持ちのよい男と向かうために そう。男の勝負は最後は何時だってカラテなのだ。 「友情!」 「友情!!」 そして 勝ったのは真野だった。 ●ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合終了 「銃ニグル」 黒田武志  (敗退:盛大に吹っ飛ばされて左目に大アザ。他に外傷特になし) 「ケルベロス」ぽぽ・光悟 (敗退:心神喪失につきリタイア。なんかウザい兄貴がツイた) 「ラーメン探偵」真野事実 (勝利:ザ・キングオブトワイライト2回戦進出) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【登場人物名鑑】 ・黒田武志 (魔人) 魔槍ガングニルを操る若者。高い技量をもっていたが 地下室という閉鎖空間に誘い込まれ、充分に力をふるうことなく ラーメン探偵の前に敗れる。魔人同士の戦いは常に全力を発揮 できるとは限らない。極めてシビアなのだ。 ・ケルベロスミツコ(魔人) 謎の転校生の手により復活した三つ子の合成魔人(キメラ)。 通常の3倍のスキルを持ち、体内に異界の『異物』を抱き抱える。 魂の吸収を続ければ世界にとって極めて危険な「上客」となる と判断され、ラーメン探偵の手で世界より排除される。 ・真野事実   (魔人) ラーメン探偵。彼のラーメンは「衣」を纏い「食」を通じ「住」 を与える。衣食住を全て満たすような”何か”を目標としているようだ。 何やらこの世界に対する重要な事実を隠し持っているようなのだが… ・??? (転校生) 女性。 詳しくは「クロックタワーインフレイム」エピローグを参照。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ } &font(17px){[[このページのトップに戻る>#atwiki-jp-bg2]]|&spanclass(backlink){[[トップページに戻る>http://www49.atwiki.jp/dangerousss3/]]}} ---- #javascript(){{ <!-- $(document).ready(function(){ $("#main").css("width","740px"); $("#menu").css("display","none"); $("#ss_area h2").css("margin-bottom","20px").css("background","none").css("border","none").css("box-shadow","none"); $(".backlink a").text("前のページに戻る"); $(".backlink").click(function(e){ e.preventDefault(); history.back(); }); }); // --> }}
#divid(ss_area){ *『ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合~クロックタワーインフレイム~』 (これまでのあらすじ) ザ・キングオブトワイライト参加者、黒田武志とケルベロス・ミツコは 時計塔内部でラーメン探偵・真野を待ち伏せるが、黒田はラーメンを喰らいBAKUSUIした。 だが、ケルベロスミツコはその刹那にラーメン探偵・真野の攻略の糸口をつかんだのだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 下から感じる冷たいタイル床の感触と背中のリュックから受ける重荷を感じながら、 ぽぽ・光吾は、一週間前の出来事を思い出していた。 希望崎学園「黒樺寮」別名『物置寮』。 そこで発生した大量殺人事件のことを。 その時のことをポポはほとんど記憶していない。 憶えているのは恐ろしいほどまでの”暴力”が吹き荒れたことと彼の大切な 仲間や姉達が次々と虐げられて喰い散らされていったことだけだ。 生き残ったのは彼一人だった。仲間たちと「サヨナラ」の別れすらかわすことなく 唯一人、彼は取り残されたのだ。 だが彼は生まれ変わった。 姉達の魂を吸収・融合することで、ミツゴの魔人ケルベロスと化して。 融合後、その足で寮を出た彼は転校生を名乗った謎の人物の言うとおり、 本大会の渦中にいる。 彼の旅立ちを最後に物置寮に立ち寄る者などもう誰もいないだろう。 涙はない。無情となじるなかれ。 この世紀末の世では大量殺人など、余りにありふれた事件であるからだ。 今、彼は時計塔の中、床に張り付き一人の男を監視していた。彼のスタイルの一つ 手芸者の技能が生きている。今の彼と彼女たちは、探偵であり、手芸者であり、 料理人であり、園芸家であり、未来における数多ある魂たちに対する簒奪者であった。 ケルベロスは、彼とその姉の魂を共有することで常人の3倍のスキルを持つこと を可能としているのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 魔獣ケルベロスは三ツ頭を意味するにあらず他者の魂を喰らう性質そのものである。 「蜜子姉ちゃん、同じ料理人として見た感じ彼の実力はどうかな」 光吾は己の中にいる中華料理人の長女蜜子に語りかける。 「んーどうにも底が見えない相手だな。…ま『むちゃんこツヲイ』級と考えと きゃ間違いないだろ。」 相変わらず大ざっぱな姉だ。続いて次女の満子。科学的知識に富む園芸家で 知能指数も高い。メガネを押し上げながら(注:イメージです)こう分析する 「知能指数も高いわね。戦いの場となった地下のボイラー室、あの手狭な 部屋で戦うことで黒田武志の槍の性能を封じた。あと地の利も完璧。 ”配管工”としての自身のスキルをそこなら活かせると考えたのだわね。」 そして変身タイムは、能力発動から完了までコンマ1秒以下。 この意味わかるわね?と満子の促しに軽く光吾は首肯する。 コンマ1秒以下の間だけ…幾ら能力が高かろうとラーメンであろうと、その 刹那だけは無防備になるはず、ならば取るべきすべは決まっている。 全員で隙を作り、手芸者たる自分がその隙を突く。 ”針に糸を通す様な”作業、それをこなすのは手芸者たる自分の役割だろう。 彼は改めラーメン探偵を見やる。 今のラーメン探偵の姿を見れば、彼がどのような魔人能力を保有しているか 一目瞭然だった。彼の姿は常時の探偵ルックから一変していたのだから。 ゆったりとした青いオ-バ-オ-ル。 腰に差したペンチ。 赤い上着に同じく特徴的な赤い帽子。 そしてチョビひげ。 どこから見ても『配管工』の姿である。 改めて見、思わず唸る光吾。 あの姿を見て探偵の変装と見破れる人間はまずいないだろう。 手芸者視点から見ても完璧な変装といえた。 3人の精神が注視する中、ラーメン探偵にも動きがあった。 探偵は【M】とイニシャルされた帽子を正すと懐に手をやり、そこから アイテムを取り出したのだ。 その取り出したものを見て一同に衝撃が走る。 『キノコ(赤)』 「ッ~~~ツ」 焦る光吾。まさか齧る気か、そんでもって際限なく回復したりするのか、 ならばプランの練り直しが必要となる。だが、焦る光吾を尻眼にラーメン 探偵はソレを目線まで持ち上げると、検分しただけで再び懐に仕舞いこんだ。 ほっと息を― 「「今度は緑だとォォ」」 ―継ぐ暇もなく、2本目のキノコを取り出すラーメン探偵。 蜜子と満子が驚きの声をあげ、光吾は慌てて口を塞ぐ…実際は姉たちは 魂だけなので声が漏れることはなかったのだが、気分の問題だ。 こちらが本命か!?だが、探偵はソレを目線まで持ち上げ、検分しただけで 再び仕舞いこんだ。 「はぁ…次、紫色のでたらどうしましょう?。蜜子お姉様」 「まあ…それはもう『確定』ってことでいいだろ。ミツちゃん。お前も腹くくれ」 何が確定なんですか。どうにも相手のペースに嵌っている気がする、気を つけねば…そう警戒する光吾の目の前を絶妙なタイミングで ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつぅ(甲)と 何かが、通過した。 「?」 一瞬のことだが、彼は目でそれを追いかけてしまう。 そして視線を戻した時には、ラーメン探偵は忽然と姿を消していた。 ―視線誘導(ミスディレクション) ―悔やむ光吾。自らの迂闊さを呪う。 やはりあの男、監視に気が付いていたのだ。しかしなんというウカツ。こんな初歩的な手に ノコノコとひっかかるとは ノコノコと、ひっかかるとは。 「上だな、追うぞ」 蜜子が天上を見やり決然とした態度で断定した。 堅い床だ。流石に潜るわけにはいけないだろう。ならば行き先は必然、 この塔の上階、上となる。 姉の言葉に気を持ち直す光吾、本当にこういう時の姉ちゃんは頼りになる。 流石、姉弟の精神的柱だ。だが、実はこの時の蜜子は違ったのだ。 彼女は覚悟を決めた者の眼をしていた。 ラーメン探偵、彼が発したダイニング・メッセージの意味を正しく受け取ったが故に。 時計塔最上階。 幾つかの踊り場を駆けあがり、出た先そこは時計塔の大時計の裏側に位置する。 時計塔の大時計と言う主役を支える舞台裏の演出家である歯車たちは複雑に絡み合った その動きを止め、機を待っていた。 ケルベロス達はそこに足を踏み入れる。先陣は次女・満子。 冷静沈着さと高い防御能力を併せ持つ彼女はゆっくりと歩を進める。 「さて、どこにいらっしゃるのかしら」 いいつつも歩調は緩めない。さて、どこからくるラーメン探偵。 そして時刻は正午を指し、POPOPOと機械仕掛けの鳩が動き出す。 扉を開閉し前後運動を始める。 「Rassahai!!(「イラッシャイマセ、お待ちしてました」という意味の英語)」 そしてソレは鳩仕掛けの出入り口から現れた。影は一声発すると高く跳躍。 『空中』にそのまま着地し、彼らのほうにくるりと振り返った。 「ドーモ『お客サン』。ラーメン探偵です。」 &nowiki(){           (クロックタワーインフレイム後半へ続く)} ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「 Rassahai!! 」 手にオカモチを持ち、探偵ルック姿の男は空中に降り立つと礼儀正しく、 名乗りを上げた。 「ドーモ『お客サン』。ラーメン探偵です。真実を届けに来ました。」 「生憎ッ、間にあってますわ。」 トワイラル・ミツゴは相手の言葉を最後まで待つことはなかった。 猛獣注意! 相手の着地を見てとると次女・満子はメガネを光らせ(イメージです) 素早く鋏を投擲する。それは大きく真野を逸れ、あっさり失速する。 (借りるわよ光吾) だがそれは満子の科学的計算にもとずく絶妙なる投擲であった。 予め鋏には手芸者が使う特別製の糸が結びつけてあったのだ。 グイ。 そして彼女は空中にある何かを手繰りよせるように手を翻し 糸を引きよせる。手ごたえアリ。 束められ、空中に忽然と現れる黄金色に輝く糸。 !?糸、いやこれはラー麺だ。 同時に大きく揺らぐラーメン探偵。 ラーメン探偵、空中浮遊のタネはこれであった。 真野はコートより伸びる糸くずを超ごく細麺として空中に張り巡らし 貼りめぐらすことで、その表麺張力の力によって浮いていたのだ。 ミツコは自らの脚力に麺の弾力による反動をのせると力強く跳躍、 ラーメン探偵の位置まで一気に踊りであた。 手には肉斬り包丁。振るうのは当然、中華料理人の長女・蜜子だ。 ―斬撃!― だがいち早く麺を離脱していた真野にはその刃は届かなかった、 彼女の包丁は空を切り、足場の麺をぷつりと切断する。 交差する二人。 「   」 瞬間、ラーメン探偵は何か彼女に対して声を発した。 (「Gedokuする」か…) 蜜子はその言葉に答えることなく、唇をかみしめ― (「来るぞ。光吾!」「ハイ姉ちゃん」) 弟と切り替わった。 ミツコらとラーメン探偵は今互いに背を向け、自由落下している。 お互い攻撃出来ない状態。 この局面でラーメン探偵が地面到達までに能力発動を行う可能性は 満子の演算によれば実に96%に達していた。 光吾は、 、、、、 糸を操る。 最初に満子が投げた二つの鋏は、まだ生きている。特製の糸で 括りつけられたそれは今、頭上高く上がり、野ウサギを狙う猛禽類 のように死角からラーメン探偵の首筋を狙い急降下している。 まさに三姉弟の連携が可能にした必殺のブラインド・アタック。 だが、真野はここで彼らの思惑とはまるで逆の行動をとる。 カキーン 何か鋏が堅いものに当たり跳ねかえされる音が、あたりに響く。 「はっ?」 真野は“La Amen”を今度は極めてゆっくり展開したのだ。 思わず気の抜けた声を上げる光吾。そして彼は見た、そのラーメンを。 “La Amen”により彼の纏っていたコートが中途から大気に溶け込み、 ZZZZZZZZZZZZAAAAAAA... BBBBBBBAABBBBBBBBBAAABBBBBBBBBBB... ZZZZZZZZZZ ZZZZZZZZZZZZ.. ZZZ BBBAABBBBBBBAAA. ZZBBBAABBBBBBBBBBAAA// ”文字通り”文字と化し、彼の周りを取り巻いているのを。 彼の周りでは打ちだされた『英語』の文字が、力場を伴って浮き出し、 三次元立法魔法陣を構築していたのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 こいつラーメンに英語を練り込んでいたのか これが真野のラーメンがハイブリットと言われる所以の一つ。 まるで遠海を高速で泳ぐ黒マグロの集団じみたマクロの文字列。 これが超高速タイピング術によるショートカット―通称”英速”を実行するのだ。 「空中言語固定装置…まさか完成していたというの…」 化学、薬学などの知識に富んだ満子は茫然と真実の一端を口にする。 「なら気体、これならどうかしら」 満子はリュック内の噴出機を作動し、真野に対し農薬を吹きかける。 気化した薬品なら文字をすり抜け、届くという判断からだ。 しかも、農薬、もし相手が有機栽培なら致命的になりうる一撃だ。 「沸騰(イグニ)。」 だが、及ばない。 彼が英唱を組むと共に周りから凄まじい勢いで水蒸気が噴出し、彼女が散布した 農薬を彼女の元に押しかえす。なんという応用範囲の広さ。 速い、上手い、そしてなんか卑怯。それがラーメン3倍段(クレーム対象)だ。 「ンアー。」 自らの液を浴びて悶絶する満子。 水蒸気はそのまま濃霧と化し、ラーメン探偵と3人の姿を覆い隠していく。 ミツコは再び光吾に切り替わると、素早く後退し、壁を背後にした。 ラーメン探偵の英唱はまだ続いていたのだ。続け様に響く英唱。 ―来る。 つまり、それは略式ではない真野のラーメンの到来を意味していた。 ― 沸騰(イグニ)――          ―茹麺(ハルト)― ―  定義(ベースド)―           ―深化(オプト)― ――展開(リリース)―――。 濃霧の中、光吾は一瞬の隙も見せまいと神経を尖らせる。 ― ― ― その時 ちゃららーらら♪ちゃらららららららー♪ 遠くから響く口笛の音が聞こえた。それは哀愁と胃袋を刺激する懐かしい笛の音だった。 ― ―とても ―――とても そして、気がつくと彼は 『キノコ入り味噌バターラーメン』を手に持っていた。 キノコ? アレこの感じ、どこかで 姉ちゃんたち?ドコ ―探偵、それは真実の配達人― どこかでそんな声が響いた。 ◆葬魔灯もしくは物置寮殺人事件◆ ― ―― ―――― ――――― それは不幸な偶発的出来事であった。 発端は希望崎学園に何処からか紛れこんだ『異物』。 満子が物置寮で栽培していた菜園にそれはごく自然に溶け込んでいた。 その菜園でいつものように野菜を調達した蜜子はラーメンの付け合わせ として野菜を炒め、自慢の一品を寮の人間たちにふるまった。 その『異物』はほとんどの人間にとって単なる軽微な毒だ。 不幸なのは、たまたま偶然”ソレ”に適合する人物がその中に一人だけ いたということだ。 それは100人に1人、1000人に1人と言うレベルの確率で。だけれども 効果は絶大で…彼はそしてそれを口にした瞬間。 『Grrrrrraaaaaaa――rrr!』 ――――― ―――― ――― ああ、そうなのか …彼は悟った。 何故、あれ程、武力に優れた姉ちゃんが無抵抗に殺されたのか 何故、あれ程、知略に富む姉さんが退くタイミングを喪ったのか 何故、忘れうるはずのない光景の中、自分の記憶がああも曖昧だったのかを その理由を。 自分が、必死に糸を振るっていた相手は一体誰だったのかを ラーメンが全てを思い出してくれた。 「そう、物置寮殺人事件、その犯人はこの僕だ。 魔獣化した僕が、皆を、姉さんを …殺したんだ。」 探偵は真実の配達人。 「うあああああああああああ」 彼は頭を抱え、膝をつく。光吾を打ちのめしたのは姉や仲間達への悔恨だけではない。 それは例えて言うなら一種の『恥かしさ』からであった。 自分は何故、全てを放棄してこの場にいるのか。その事実への”気付き”である。 掛け替えのない人達を喪ったら弔いくらいするべきでなかったか…。 そうでなくとも、探偵なら、らしくまずは真実の追及をするべきでなかったのか…。 しかし彼は転校生を名乗るあの女性の言葉を鵜呑みし、この大会に身を投げた。 彼女のあの時の言葉は酷くそう自分にとって都合がよかったのだ。 少し考えれば…立ち止まれば…判ったはずなのに。そのほんの少しが見えていなかった。 目の前の男はどうか。彼は、対戦相手に関わる未解決事件を看過することなく 放置され見向きもされない事件現場に足を運び、現場検証を行い そして遺留品や状況から1週間前の殺人事件の真相を導きだしたのだ。 そうして、彼はこの場に立っている。 世界を救うという善意を、誰かに犠牲の元、達しようとする自分と相対するために。 真実を届けるという自らの矜持と信念を持って 解毒用キノコラーメンというレシピ(回答)を携え、探偵職に携わる者として。 「………あああ」 無論、死んだ二人の姉は事実をしっていたのだ。それでも付いてきてくれた。 見守ってくれてたのだ。あの優しい殺人者達は。世界を敵に回す覚悟で 気がつくと彼はスープまで綺麗に飲みほしていた。空になった丼を眺めると その丼の底には2文字『別離』と文字が書かれていた。 はっと見やると、探偵は、先ほどのラーメンで抽出したのであろう禍々しい紫色 の瘴気を放つ極彩キノコを手に取っていた。 青ざめる光吾。そして叫ぶ。 「やめろ、止めてくれ、それがないと僕はねえちゃんを、ねえさんを、ねえさん達を」 維持できない。 だが、真野はその歎願などまるでなかったようにあっさりと瘴気の素を握りつぶす。 しゅうと音を立て浄化される瘴気。 「うわあぁぁぁぁぁ」 こいつはこいつはこいつは 光吾は、ありったけの怒りを哀しみを負の感情を右手に集中する。 硬化し伸びる手 魔獣ケルベロスは顕在化する前に潰された、だが身体に残った瘴気を集中すれば フェンリル級の力なら、まだ撃てる。そして一矢報いるのだ。 ワレラガタイガンヲサマタゲル、ラーメンヤドモニ 『Grrrrrraaaaaaa――rrr!』 その時!!!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ だが、何も起こらなかった。 光吾の腕が振り下ろされることも、真野が攻撃をよけることもなかった。 振りあげた右手は後ろから伸ばされた腕により固定され、そこから1mmも 動くことはなかったのだ。 「止めとけよ。」 そういうと”声と腕の主”黒田武志はもう一度同じセリフを繰り返した。 「え?」 「お前らの事情はよくわからんが、だいたい判った。だからもう止めとけよ。そういうの」 もういいからお前はちょっとねていろ。そういい黒田は槍を翻すとの光吾の水月を 石突きし強かに強打した。悶絶状態に入ったところを今度は足払い、綺麗に上下半転 させるとそのまま床に叩きつけた。頭をしたたかに打ち昏倒する光吾。 見事な早業。 黒田は、やれやれとため息をつくと今度は真野のほうに向きなおる。 ラーメンを喰らいBAKUSUIしていた黒田武志が何故ここに? 無論、寝ていた訳だから、目を覚まし起き上ってきたという理由以外の何もない。 正確には緑の甲羅っぽい何かが頭にぶつかり目を覚まさせられたからだったが。 爽やかな眼ざめとは言い難いかったのか、黒田は不機嫌そうに言葉を発する。 「はぁ…。ま、こりゃ、てめぇの勝ちだわな…。 俺は完全に伸びてたし、コイツも今のでおねんねだ。」 ボリボリと頭を搔く。 真野は飄々と肩を竦めた。 「てめぇのラーメン喰ってお前の目的とかヤリテーこととかは、だいたい伝わったしな 素直に応援してやってもいいという気持ちもある。 正直、オレはコイツやお前みたいに重たいもんせおっちゃいねぇからな。」 黒田は”コイツ”を見やってから真野に問いかける。 「ただ、コイツにオレは勝っちまったから、コイツは今からオレの舎弟って感じだな。 何でまあ背負っちまったからには筋は通さなきゃいけない。そういうことだ。判るか?」 判るか?と聞かれた真野は沈黙した。 そして一本指を立て、ワンモア(またはヒントください)のジェスチャをする。叫ぶ黒田。 「だ・か・ら『弟分』の敵はとらなきゃいけねえぇ。つーてんだよ。OK?オケー? あゆれでぃ? つーわけで最後に素手喧嘩で勝負だ。」 そして宣言通り自らの得物のグンニグルを投げ捨てると素手喧嘩の構えをとった。 地面に投げ出されたグンニグルが呆れたような声を上げる。 (「無茶苦茶だぞ。今のお前の説明」) (ああ、コイツは「少年の面倒はオレが見る。安心しろ」みたいなこといっているぞ。 どうせ聞こえてるんだろ。ラーメン探偵) 彼の槍の声が聞こえていたのか、ラーメン探偵は肩を竦めてその注釈に応えた。 何が何だかよくわからないが、黒田の言いたいことは何故か”だいたい”伝わった。 「一発殴らせろ。この薄情野郎。いいかイッセッセーノセーだぞ。」 (意訳すると「オレとコイツの想いをお前に託す、だからお前がそれに値するか度量を見せてみろ。友情!」といっている。) ガングニルが再び注釈を入れる。 真野は静かに爆笑した。 そして、ここでこの試合、初めて構えをとる。手にはオカモチはない。 ラーメン屋でなく探偵としてでもなく一人の男として、この気持ちのよい男と向かうために そう。男の勝負は最後は何時だってカラテなのだ。 「友情!」 「友情!!」 そして 勝ったのは真野だった。 ●ザ・キングオブトワイライト1回戦・第一試合終了 「銃ニグル」 黒田武志  (敗退:盛大に吹っ飛ばされて左目に大アザ。他に外傷特になし) 「ケルベロス」ぽぽ・光悟 (敗退:心神喪失につきリタイア。なんかウザい兄貴がツイた) 「ラーメン探偵」真野事実 (勝利:ザ・キングオブトワイライト2回戦進出) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【登場人物名鑑】 ・黒田武志 (魔人) 魔槍ガングニルを操る若者。高い技量をもっていたが 地下室という閉鎖空間に誘い込まれ、充分に力をふるうことなく ラーメン探偵の前に敗れる。魔人同士の戦いは常に全力を発揮 できるとは限らない。極めてシビアなのだ。 ・ケルベロスミツコ(魔人) 謎の転校生の手により復活した三つ子の合成魔人(キメラ)。 通常の3倍のスキルを持ち、体内に異界の『異物』を抱き抱える。 魂の吸収を続ければ世界にとって極めて危険な「上客」となる と判断され、ラーメン探偵の手で世界より排除される。 ・真野事実   (魔人) ラーメン探偵。彼のラーメンは「衣」を纏い「食」を通じ「住」 を与える。衣食住を全て満たすような”何か”を目標としているようだ。 何やらこの世界に対する重要な事実を隠し持っているようなのだが… ・??? (転校生) 女性。 詳しくは「クロックタワーインフレイム」エピローグを参照。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ } &font(17px){[[このページのトップに戻る>#atwiki-jp-bg2]]|&spanclass(backlink){[[トップページに戻る>http://www49.atwiki.jp/dangerousss3/]]}} ---- #javascript(){{ <!-- $(document).ready(function(){ $("#main").css("width","740px"); $("#menu").css("display","none"); $("#ss_area h2").css("margin-bottom","20px").css("background","none").css("border","none").css("box-shadow","none"); $(".backlink a").text("前のページに戻る"); $(".backlink").click(function(e){ e.preventDefault(); history.back(); }); }); // --> }}

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