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「第一回戦【遊園地】SSその3」(2013/05/31 (金) 23:11:19) の最新版変更点
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*裏トーナメント第一回戦【遊園地】SSその3
◆大会ルールについて◆
試合の勝利条件は
・対戦相手の戦闘不能(審判判断)
・対戦相手の殺害
・対戦相手のギブアップ
・対戦相手の戦闘領域からの離脱(試合場による)
のいずれかを満たすことです。
ただし、以下の禁則事項を破っていたことが判明した場合、
その時点で反則敗けとなります。
(試合後に判明した場合でも直前の試合まで巻き戻して裁定)
・試合開始時刻になっても試合場に入場しない(遅刻)
・勝敗確定後の戦闘行為
・参加者含む大会関係者との金品のやり取り
(試合中のアイテム奪取や試合後敗者からアイテムを引き継ぐのは可)
・大会運営者への虚偽申請
・試合中、対戦相手以外の観客等に危害を加える行為
・その他大会運営者が著しい悪徳行為と判断した場合
※ダンゲロスSS3wikiより抜粋
◆試合2日前◆
目高機関御用達のとある病院にて。
「――駒音様の『裏トーナメント』第1回戦の対戦相手は雨竜院 雨弓様と高島平 四葉様です。試合場は遊園地で開始は明後日の午前5時開始となります。」
「おお、そりゃぁ随分と早いねぇ~。まぁ四葉ちゃんはソチラさんとしてはあんまり目立たせたくないよねぇ~」
「その様な他意はございません。表トーナメントとの兼ね合いでご迷惑をおかけいたしますがご了承くださいませ」
白い病室のベッドに伏せる銀髪の少女、偽名探偵こまねに裏トーナメント第1回戦の詳細を伝える黒服の銘刈 耀。
じ、と駒音を見やる。彼女は『精神汚染』を受けこの病院に担ぎこまれたはずだ。
しかし、少なくとも見る限りでは彼女の精神はまるで何事もなかったかのように落ち着いているようだ。
「ん~?そんなに見つめられると照れちゃうな~。あたしが裏に出ることが意外ぃ~?まどろっこしい喋り方を続けてるのが謎ぉ~?それともあたしがファントムルージュから復活できたことが不思議なのかなぁ~?」
「ふふ、全部、と言っておきましょう。では私はこれで」
「あ、ちょっと待ってぇ~。ルールについて一応確認させてもらってもいいかなぁ~」
「えぇ、構いませんよ」
‥‥‥
‥‥
‥
◆試合前日◆
参加選手宿泊施設にて。
ジリリリリリリリリリリリリリリリ
『午前8時になりました 午前8時になりました』
リンリンリンリンリンリン
Ding Dong Ding Dong Ding Dong
目覚まし時計の大合唱の中のそのそと起き上がるのは邪悪な幼女、高島平四葉である。
世界征服を企むような彼女にも朝が弱いという可愛らしい一面もあるのだ。
全ての目覚まし時計を黙らせた後も彼女が不機嫌な顔を浮かべているのは朝の憂鬱だけが原因ではない。
――負けた。自分の駒になるべき人間に負けた。自分は自分が思っていた以上に未熟だった。
――だからと言って、このままでは終われない。
顔でも洗おうと、自分の個室を出る。すると、
「四葉ちゃん、おっはぁ~」
「よお、邪悪幼女」
偽名探偵こまねと雨竜院雨弓がいた。
「‥‥何の用事かしら」
「ほらぁ、これも何かの縁だし負け猫同士交流を深めようと思ってさぁ~」
「明日踏みつぶす予定の相手と仲良くする義理なんてないわ」
「おいおい、俺も交流会だなんて聞いてないぞ。流石にこっぱずかしいんだが」
「まぁまぁ~、WL社とファントムルージュに関わる話でもする、って言ったら、2人とも無視できないでしょぉ~?」
四葉と雨弓の表情がピクリ、と動く。
「あ、試合場の遊園地が試運転もしてるらしいからぁ~お話は遊園地で遊びながらにしよぉ~!徒歩で行ける距離みたいだしねぇ。1時間後に出発するからねぇ~」
雨竜院雨弓は考える。
――あの偽原ってやつがファントムルージュ使いかもしれねぇって話もあったしな。つってもどうせ『裏』があるんだろうが、面白れぇ、それも踏まえて『戦闘』だ。乗ってみるか。
「ま、折角だしな。にしても遊園地なんて何年振りかねぇ」
高島平四葉は考える
――WL社の情報は確かに欲しいところ。それにしてもファントムルージュって何かしら。まぁいいわ、この2人に対して私が戦闘で負ける要素なんてないんだから、絞れるだけ情報を頂くとしましょう。
「し、仕方ないわね、行ってあげるわよ」
こうして裏トナメ遊園地組★ワクワク大交流会が開催されるに至ったのだ!!
◇ジェットコースター
「ま、遊園地っつったらまずあれだよな」
「え」
「おぉ~ナカナカの高低差ですなぁ~」
「わ、私は身長足りないから」
「無人運転みたいだし、誰も文句なんて言わないよぉ~」
「怖えーのか?はっ、意外に幼女らしいところあるんじゃねぇか」
「な、な、そんな訳ないじゃない!乗るわよ、乗って見せるわよ」
「ひゅー、久しぶりに乗ると楽しいもんだなおい」
「いやぁああああ、飛ぶ!、吹っ飛ぶ!!」
「し、しっかり掴まってれば大丈夫だよぉ~。ね、落ち着いとくれよぉ~」
「ん、しばらく使われてなかったからかあっちのレール老朽化してんな。人乗って耐えられんのか?」
「降ろしてえええええ!」
「だ、大丈夫だよぉ~。 多分」
「いやぁぁぁあああああ!」
(※そちらの趣味の人はこの時に四葉ちゃんがお漏らししたとしても良い)
◇幽霊屋敷
「‥‥次、あれ行きましょう」
「幽霊屋敷ぃ、そんな子供騙し面白れぇのかよ」
「う、うんそうだよねぇ~。や、やめようよぉ~」
「目が泳いでるわよ、偽名探偵」
「に、苦手なんだよ&ruby(ファントム){幽霊}とかそういうのはぁ~」
「人にコースター無理強いしておいて自分は逃げるとかいうのかしら」
「そんな無理強いしたっけぇ~!?」
「…よし、行くか!」
「いやぁ~だぁ~」
「ひぃ~」
「ぷっ、こんな子供だましのが怖いなんてかっこ悪いわね偽名探偵」
「ぎゃぁ~~~、&ruby(ファントム){幽霊}がいっぱいだぁ~」
「そんなの偽物に決まって、ってきゃーーーー!!私のことすり抜けた!物理的にありえないわよあの動き、本物よ、本物!」
「はっはっは、すまん、生ぬるすぎたから俺が能力使っちゃったっておい、その物騒なもん出すな!幼女が使うもんじゃねーから!」
「ファイヤー!」
「やめろッ!」
「&ruby(ファントム){幽霊}コワイよぉ~」
(※そちらの趣味の人はこの時に駒音がお漏らししたとしても良い)
◇メリーゴーランド
「‥‥‥え、俺もこれ乗らなきゃいけねーの?」
「断る気ぃ~~?」
「拒否権なんてないわよ」
「し、死にてぇ」
「あはは、雨竜院さんかわいぃ~」
「結構お似合いじゃない」
「死にてぇ」
「四葉ちゃんもかわいいよぉ~」
「なっ!?」
「死にてぇ」
(※そちらの趣味の人はこの時に雨竜院がお漏らししたとしても良い)
◇ランチ
「大分お昼も過ぎちゃったしランチにしようかぁ~。流石に売店とかはやってないと思ってサンドイッチつくってきたんだぁ~」
「あら、気が利くじゃない」
「まぁ正直そんな大したもんじゃないんだけどどうぞぉ~」
「おー、こりゃうめー」
「んー、マスタードがよく効いてるわね」
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『あー、マイクテス、マイクテス。明日試合の実況をさせていただく佐倉光素です。よろしくね!
みなさん楽しそうですねー、私も運営側でなければ混ざって遊びたいところです!
ではみなさんの明日の検討をお祈りいたします!』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「‥‥って完全に遊び呆けてたけど私はWL社とファントムルージュとやらの話を聞きに来たんだった!」
「あぁ~、正直そんなに大した話じゃないんだけどねぇ~」
「おいおい、とにかく話せよ(モグモグ」
「そうだねぇ~。あたしの1回戦の敵が偽原っていう元魔人公安の人だったんだけど、その人の能力が『ファントムルージュを体感させる』能力だったんだよねぇ~」
「へぇ、なるほどな」
「えーっと、本当は知ってるけどそのファントムルージュって何だったかしら」
「昔作られた、見た人の精神を舐り嬲りぶち壊す史上最悪の映画だよぉ~。あらすじは『うんぬんかんぬん』」
「粗筋を聞くだけで気分悪くなってきたわ‥‥」
「しかし、そんなもんまともに体感して、1回戦じゃあの様になってたのによく持ち直したな」
「うん、そこにWL社が絡んでくるんだよねぇ~。どうもWL社は『ファントムルージュの特効薬』を作っていたみたいなんだ。
それでねぇ、私の推理だと偽原さんの大会に出場した動機は『能力で全世界の人にファントムルージュを体感させる』なんだよねぇ」
「…なるほど、WL社はパンデミックで大きな財を成した。もしかするとその2匹目のどじょうを釣ろうとしている可能性があるわけね」
「さすが四葉ちゃん。そういうことぉ~。もちろん全くの仮説にすぎないけど、もし本当だとしたら世界征服をもくろむ四葉ちゃんも、ファントムルージュに借りがある魔人公安の雨竜院さんも、無視できない話でしょ~?」
「そうね」
「あぁ、当たり前だ(モグモグ」
「もちろん私だって偽原さんにはお~きな借りがあるし、絶対に見逃せない。だからさぁ~、同盟を組みたいんだ。試合は試合でやる。だけど誰が勝とうと負けようと、このファントムルージュの件を解決するために。名付けて遊園地同盟だよぉ~」
「へっ、ファントムルージュには借りを返さなきゃなんねぇからな。OK、同盟を組もう。ただし明日勝つのは俺だ」
「いいわよ、その代り2人とも私の下に付きなさい」
「えぇ~、あたしは生涯この人だけに着いてくって人がいるからなぁ~。まぁ~、明日勝った人がリーダーってことでいいんじゃない」
「ま、いいわ。あんたら2人が私に勝てるわけないし」
「そんな傲慢だから1回戦無様に負けんだよ」
「あんたに言われたくないわよっ!」
「まぁまぁ~、遊園地同盟ここに結成ってことでぇ~。じゃぁ今日はもうちょっと貸切遊園地を楽しんじゃお~」
「いいだろう、腹も膨れたしな」
「ふんっ、明日早いんだからほどほどで帰るわよ」
「なんだかんだで四葉ちゃんも結構ノリノリだよねぇ~」
「なっ!」
こうしてこの日、遊園地同盟が結成し、彼女たちは結局日付が変わるぐらいまで遊び続けたのであった。
‥‥‥
‥‥
‥
◆試合当日◆
――高島平四葉は世界征服の夢を見る。
「しぃぃあああああ!!」
雨竜院が幻影を織り交ぜた傘術を繰り出す。
単体でも並みの魔人では避けえぬ傘術が見えぬのだ、必殺の威力を持つ『雨月』!
しかしそれを駒音は何とか躱していく。
その秘密は彼女の能力の『音玉』の運用にあった。
今彼女は雨竜院の動作によって起こる音すべてをシャボン玉になるようにしているのだ。
例えば傘を動かせば空気と擦れわずかにではあるが必ず音が発生する。
それらをすべて小さなシャボン玉とかえ、その位置を認識すればどんなに光学的な幻影を繰り出そうと、実際の行動は駒音に筒抜けなのである。
実際彼女は目をつぶって戦っていた。
音のプロフェッショナルである駒音は雨竜院の能力『睫毛の虹』の天敵ともいえる。
ダァン、ダン、ダァン
続けて響く銃声。駒音は隠し持っていた銃をぶっ放す。
それも、自分の声真似による偽物の『銃声』を織り交ぜながら!しかし、
「雨流」
傘を開き回転させる。そんな簡単な動作で雨竜院は駒音の攻撃を完全に防いでいた。
警視庁「兵課」でも屈指の実力者である雨竜院に、ちょっと毛の生えた程度の銃撃など効かぬ!
「それなりには楽しませてくれるみたいじゃねぇか」
「参ったねぇ~、相性はいいと思ったんだけど、それでも勝つのはしんどそうだなぁ~」
「 茶 番 」
わずか11歳の少女は、口の端を吊り上げて嗤った。
2人の戦闘風景は、当然のように……最初から最後まで、余すところなく捉えている。
彼女は今、対魔人LCV――指揮装甲車の車中にいるのだから。
まぁ、表トナメで使った以上、裏トナメでも使うよねっていう。
《んー。雨竜院雨弓。偽名探偵こまね。君たち2人に告ぐ》
《わたしは、ご存じ高島平四葉――》
《今すぐ降伏しなさい》
《ちょっと期待したけど、あんたたち2人に現代兵器をどうにかする方法なんてないでしょう?》
《茶番はとっとと終わらせてとっとと私の駒になりなさい》
雨竜院雨弓と偽名探偵こまねは目を見合わせて、
「「断る」」
2人は同時に返答した。
「ふぅー、じゃぁ1回死になさ‥ん?」
四葉が指揮装甲車の中でありえない光景を捕えた。
雨弓と駒音の2人の肉体が触手となっていく!
「え」
そして2つの触手が合体する!
「え」
「能力作動。『&ruby(ファントムルージュ 3D){睫毛の虹+音玉/緋色の幻影}』。……&ruby(うんめい){上映}、開始」
「え」
大気中の水分を利用して光の反射や屈折を操り、幻影を見せる『睫毛の虹』を持つ雨竜院雨弓
音をシャボン玉にして保存・運搬ができる『音玉』を持ち、自らの声真似能力であらゆる音が再現できる偽名探偵こまねが組み合わさったなら。
そして、今回再現するのは劣化などではない。偽原によって見せられた原典のファントムルージュ!
――それは、もっとも残酷な世界
ファントムルージュは今ここに受肉を果たした。
「ちょ、ま、え?」
そして、この冗談か悪夢のような展開に四葉が思わず自身の能力を使ってしまったことを誰が責められよう。
事態の打開を求めてとっさに起動した『モア』は
『&ruby(ファントムスカーレット){真・緋色の幻影}』
ファントムルージュすら超える存在を生み出した。
そのあとの展開は早かった。簡単な話だ、ファントムスカーレットが世界すべてを絶望に塗り替えたのだ。
世界はモヒカンと触手に溢れ、ファントムスカーレットを生み出した四葉は『偉大なる母』としてこの退廃した世界に君臨することになる‥‥。
そう彼女は望み通り世界を征服したのだ。
「ち、違う、私が求めていたのはこんなものじゃ――」
そう独白したところで、四葉は目を覚ました。
「はぁ、はぁ、はぁ、なんだ夢オチ‥‥」
ひどく汗をかいていた。
何とひどい夢だろう。
しかし。
自分はまだ夢の中にいるのだろうか?
ここは自分が泊まっている選手部屋のはずだ。
しかしいつもとその様は全く異なっている。
――大量のシャボン玉が浮かんでいた。そしてシャボン玉が生まれている。
その発生源は、大量の目覚まし時計からのようだ。
四葉はそこで真相に気付き、悪夢で火照っていた顔を青ざめさせた。
時計はとうに午前5時を過ぎた時間を指していた。試合開始は午前5時。
高島平 四葉、遅刻のため敗北。
少し時はさかのぼり、
夢ではない現実の遊園地にて。
遊園地はすでに多くのシャボン玉がプカプカと浮いていた。
偽名探偵こまねの『前準備』である。
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『実況の佐倉光素です。ただいまより裏トーナメント第1回戦、遊園地の戦いを始めさせていただきます!
なお参加選手の高島原 四葉さんは遅刻のためこの時点で敗北となります。慈悲はありません!』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「四葉が遅刻か。駒音の野郎、何かやりやがったな」
そうひとりごちる雨弓の眼は爛々と輝いていた。
彼は戦闘狂と言っても肉体同士の攻撃だけが好きだというわけではない。
知略戦、騙しあい、小細工、そういうものも含めて戦闘だと考えていた。
(そしてそういう小細工を力でぶち破るのも大好きである)
自分の胸から鼓動に合わせてシャボン玉が発生しているのを見て、おそらく自分の位置は把握されているのだろうと考える。
ならば無理に身を隠しても仕方がない。狙撃に注意しながら駒音を見つけ出せばよい、と考え遊園地を闊歩し始める。
10分ほど索敵を続けると意外にも堂々と駒音が身を現した。
「四葉が遅刻したのは駒音、お前のせいか?」
「ぴんぽ~ん。『遊園地でめいっぱい遊んだ幼女が次の日目覚ましなしで早起きなんかできるわけないよね』作戦だ~い成功~。
現代兵器なんて勝ちようがないからねぇ~。いやぁ~能力範囲広くてよかったねぇ~。
ま、ホントは雨弓にぃも寝坊してくれればよかったんだけどね~」
「バカ言え、こう見えても公務員なんだ、時間にはうるせーぞ」
そう軽口を言いあう間にも雨弓は傘を構え、駒音はシャボン玉を自分の周囲に集めていた。
「じゃ、始めっとすっか。‥‥『雨月』」
雨竜院が幻影を織り交ぜた傘術を繰り出す。
単体でも並みの魔人では避けえぬ傘術が見えぬのだ、必殺の威力を持つ『雨月』!
そして、実際この試合はこの一撃で終了する。
雨弓が繰り出した傘は駒音の頬を掠め、
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『実況の佐倉光素です。えー、勝敗確定後の戦闘行為を認めましたので、雨竜院雨弓さんは反則負けとなります。
ので繰り上げで偽名探偵こまねさんの勝利、ということになりますねー。で、いいんだよねきららちゃん?』
『うん、それでいいはずだよー』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「‥‥は?」
「というわけで私の勝ち抜けだねぇ~」
「どういうことだ、負けが確定してたのは四葉だけだろ?」
「えへへぇ、実は戦闘開始のアナウンスの直後、私自ら園の外に出て負けてたんですねぇ~
そしてわざと攻撃してもらうために姿を現したのでしたぁ~」
「いやいや、そんなアナウンスなかっ‥‥、そういうことか‥‥」
駒音はニヤリと笑うと、シャボン玉の一つを破裂させた。
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『実況の佐倉光素です。おおーっと、なんということでしょう。偽名探偵こまね選手、自ら園外に出てしまいました。どういうつもりでしょうか。裏トーナメント第1回戦、遊園地の戦いはあっさり雨竜院雨弓選手の不戦勝で決着がついてしまいました~』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「ったく、アナウンスを消音するとはな。
いやらしいトリック使いやがって。お前、探偵より犯人の方が向いてるんじゃねーか」
偽名探偵こまねはわざとらしく口笛を吹いた。
高島平四葉
⇒自分はまだ世界征服を始めるのにはちょっとだけ早すぎたと認識し、とりあえず自分が世界を獲るまで世界を守る決意をする。主にファントムルージュあたりから。
雨竜院雨弓
⇒小娘にしてやられたことにわりと凹みつつも、ファントムルージュとの決着を目指す。
偽名探偵こまね
⇒今回はあんまりひどい目に合うこともなく、遊園地同盟を作って裏トナメ2回戦進出。
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*裏第一回戦【遊園地】SSその3
◆大会ルールについて◆
試合の勝利条件は
・対戦相手の戦闘不能(審判判断)
・対戦相手の殺害
・対戦相手のギブアップ
・対戦相手の戦闘領域からの離脱(試合場による)
のいずれかを満たすことです。
ただし、以下の禁則事項を破っていたことが判明した場合、
その時点で反則敗けとなります。
(試合後に判明した場合でも直前の試合まで巻き戻して裁定)
・試合開始時刻になっても試合場に入場しない(遅刻)
・勝敗確定後の戦闘行為
・参加者含む大会関係者との金品のやり取り
(試合中のアイテム奪取や試合後敗者からアイテムを引き継ぐのは可)
・大会運営者への虚偽申請
・試合中、対戦相手以外の観客等に危害を加える行為
・その他大会運営者が著しい悪徳行為と判断した場合
※ダンゲロスSS3wikiより抜粋
◆試合2日前◆
目高機関御用達のとある病院にて。
「――駒音様の『裏トーナメント』第1回戦の対戦相手は雨竜院 雨弓様と高島平 四葉様です。試合場は遊園地で開始は明後日の午前5時開始となります。」
「おお、そりゃぁ随分と早いねぇ~。まぁ四葉ちゃんはソチラさんとしてはあんまり目立たせたくないよねぇ~」
「その様な他意はございません。表トーナメントとの兼ね合いでご迷惑をおかけいたしますがご了承くださいませ」
白い病室のベッドに伏せる銀髪の少女、偽名探偵こまねに裏トーナメント第1回戦の詳細を伝える黒服の銘刈 耀。
じ、と駒音を見やる。彼女は『精神汚染』を受けこの病院に担ぎこまれたはずだ。
しかし、少なくとも見る限りでは彼女の精神はまるで何事もなかったかのように落ち着いているようだ。
「ん~?そんなに見つめられると照れちゃうな~。あたしが裏に出ることが意外ぃ~?まどろっこしい喋り方を続けてるのが謎ぉ~?それともあたしがファントムルージュから復活できたことが不思議なのかなぁ~?」
「ふふ、全部、と言っておきましょう。では私はこれで」
「あ、ちょっと待ってぇ~。ルールについて一応確認させてもらってもいいかなぁ~」
「えぇ、構いませんよ」
‥‥‥
‥‥
‥
◆試合前日◆
参加選手宿泊施設にて。
ジリリリリリリリリリリリリリリリ
『午前8時になりました 午前8時になりました』
リンリンリンリンリンリン
Ding Dong Ding Dong Ding Dong
目覚まし時計の大合唱の中のそのそと起き上がるのは邪悪な幼女、高島平四葉である。
世界征服を企むような彼女にも朝が弱いという可愛らしい一面もあるのだ。
全ての目覚まし時計を黙らせた後も彼女が不機嫌な顔を浮かべているのは朝の憂鬱だけが原因ではない。
――負けた。自分の駒になるべき人間に負けた。自分は自分が思っていた以上に未熟だった。
――だからと言って、このままでは終われない。
顔でも洗おうと、自分の個室を出る。すると、
「四葉ちゃん、おっはぁ~」
「よお、邪悪幼女」
偽名探偵こまねと雨竜院雨弓がいた。
「‥‥何の用事かしら」
「ほらぁ、これも何かの縁だし負け猫同士交流を深めようと思ってさぁ~」
「明日踏みつぶす予定の相手と仲良くする義理なんてないわ」
「おいおい、俺も交流会だなんて聞いてないぞ。流石にこっぱずかしいんだが」
「まぁまぁ~、WL社とファントムルージュに関わる話でもする、って言ったら、2人とも無視できないでしょぉ~?」
四葉と雨弓の表情がピクリ、と動く。
「あ、試合場の遊園地が試運転もしてるらしいからぁ~お話は遊園地で遊びながらにしよぉ~!徒歩で行ける距離みたいだしねぇ。1時間後に出発するからねぇ~」
雨竜院雨弓は考える。
――あの偽原ってやつがファントムルージュ使いかもしれねぇって話もあったしな。つってもどうせ『裏』があるんだろうが、面白れぇ、それも踏まえて『戦闘』だ。乗ってみるか。
「ま、折角だしな。にしても遊園地なんて何年振りかねぇ」
高島平四葉は考える
――WL社の情報は確かに欲しいところ。それにしてもファントムルージュって何かしら。まぁいいわ、この2人に対して私が戦闘で負ける要素なんてないんだから、絞れるだけ情報を頂くとしましょう。
「し、仕方ないわね、行ってあげるわよ」
こうして裏トナメ遊園地組★ワクワク大交流会が開催されるに至ったのだ!!
◇ジェットコースター
「ま、遊園地っつったらまずあれだよな」
「え」
「おぉ~ナカナカの高低差ですなぁ~」
「わ、私は身長足りないから」
「無人運転みたいだし、誰も文句なんて言わないよぉ~」
「怖えーのか?はっ、意外に幼女らしいところあるんじゃねぇか」
「な、な、そんな訳ないじゃない!乗るわよ、乗って見せるわよ」
「ひゅー、久しぶりに乗ると楽しいもんだなおい」
「いやぁああああ、飛ぶ!、吹っ飛ぶ!!」
「し、しっかり掴まってれば大丈夫だよぉ~。ね、落ち着いとくれよぉ~」
「ん、しばらく使われてなかったからかあっちのレール老朽化してんな。人乗って耐えられんのか?」
「降ろしてえええええ!」
「だ、大丈夫だよぉ~。 多分」
「いやぁぁぁあああああ!」
(※そちらの趣味の人はこの時に四葉ちゃんがお漏らししたとしても良い)
◇幽霊屋敷
「‥‥次、あれ行きましょう」
「幽霊屋敷ぃ、そんな子供騙し面白れぇのかよ」
「う、うんそうだよねぇ~。や、やめようよぉ~」
「目が泳いでるわよ、偽名探偵」
「に、苦手なんだよ&ruby(ファントム){幽霊}とかそういうのはぁ~」
「人にコースター無理強いしておいて自分は逃げるとかいうのかしら」
「そんな無理強いしたっけぇ~!?」
「…よし、行くか!」
「いやぁ~だぁ~」
「ひぃ~」
「ぷっ、こんな子供だましのが怖いなんてかっこ悪いわね偽名探偵」
「ぎゃぁ~~~、&ruby(ファントム){幽霊}がいっぱいだぁ~」
「そんなの偽物に決まって、ってきゃーーーー!!私のことすり抜けた!物理的にありえないわよあの動き、本物よ、本物!」
「はっはっは、すまん、生ぬるすぎたから俺が能力使っちゃったっておい、その物騒なもん出すな!幼女が使うもんじゃねーから!」
「ファイヤー!」
「やめろッ!」
「&ruby(ファントム){幽霊}コワイよぉ~」
(※そちらの趣味の人はこの時に駒音がお漏らししたとしても良い)
◇メリーゴーランド
「‥‥‥え、俺もこれ乗らなきゃいけねーの?」
「断る気ぃ~~?」
「拒否権なんてないわよ」
「し、死にてぇ」
「あはは、雨竜院さんかわいぃ~」
「結構お似合いじゃない」
「死にてぇ」
「四葉ちゃんもかわいいよぉ~」
「なっ!?」
「死にてぇ」
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◇ランチ
「大分お昼も過ぎちゃったしランチにしようかぁ~。流石に売店とかはやってないと思ってサンドイッチつくってきたんだぁ~」
「あら、気が利くじゃない」
「まぁ正直そんな大したもんじゃないんだけどどうぞぉ~」
「おー、こりゃうめー」
「んー、マスタードがよく効いてるわね」
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『あー、マイクテス、マイクテス。明日試合の実況をさせていただく佐倉光素です。よろしくね!
みなさん楽しそうですねー、私も運営側でなければ混ざって遊びたいところです!
ではみなさんの明日の検討をお祈りいたします!』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「‥‥って完全に遊び呆けてたけど私はWL社とファントムルージュとやらの話を聞きに来たんだった!」
「あぁ~、正直そんなに大した話じゃないんだけどねぇ~」
「おいおい、とにかく話せよ(モグモグ」
「そうだねぇ~。あたしの1回戦の敵が偽原っていう元魔人公安の人だったんだけど、その人の能力が『ファントムルージュを体感させる』能力だったんだよねぇ~」
「へぇ、なるほどな」
「えーっと、本当は知ってるけどそのファントムルージュって何だったかしら」
「昔作られた、見た人の精神を舐り嬲りぶち壊す史上最悪の映画だよぉ~。あらすじは『うんぬんかんぬん』」
「粗筋を聞くだけで気分悪くなってきたわ‥‥」
「しかし、そんなもんまともに体感して、1回戦じゃあの様になってたのによく持ち直したな」
「うん、そこにWL社が絡んでくるんだよねぇ~。どうもWL社は『ファントムルージュの特効薬』を作っていたみたいなんだ。
それでねぇ、私の推理だと偽原さんの大会に出場した動機は『能力で全世界の人にファントムルージュを体感させる』なんだよねぇ」
「…なるほど、WL社はパンデミックで大きな財を成した。もしかするとその2匹目のどじょうを釣ろうとしている可能性があるわけね」
「さすが四葉ちゃん。そういうことぉ~。もちろん全くの仮説にすぎないけど、もし本当だとしたら世界征服をもくろむ四葉ちゃんも、ファントムルージュに借りがある魔人公安の雨竜院さんも、無視できない話でしょ~?」
「そうね」
「あぁ、当たり前だ(モグモグ」
「もちろん私だって偽原さんにはお~きな借りがあるし、絶対に見逃せない。だからさぁ~、同盟を組みたいんだ。試合は試合でやる。だけど誰が勝とうと負けようと、このファントムルージュの件を解決するために。名付けて遊園地同盟だよぉ~」
「へっ、ファントムルージュには借りを返さなきゃなんねぇからな。OK、同盟を組もう。ただし明日勝つのは俺だ」
「いいわよ、その代り2人とも私の下に付きなさい」
「えぇ~、あたしは生涯この人だけに着いてくって人がいるからなぁ~。まぁ~、明日勝った人がリーダーってことでいいんじゃない」
「ま、いいわ。あんたら2人が私に勝てるわけないし」
「そんな傲慢だから1回戦無様に負けんだよ」
「あんたに言われたくないわよっ!」
「まぁまぁ~、遊園地同盟ここに結成ってことでぇ~。じゃぁ今日はもうちょっと貸切遊園地を楽しんじゃお~」
「いいだろう、腹も膨れたしな」
「ふんっ、明日早いんだからほどほどで帰るわよ」
「なんだかんだで四葉ちゃんも結構ノリノリだよねぇ~」
「なっ!」
こうしてこの日、遊園地同盟が結成し、彼女たちは結局日付が変わるぐらいまで遊び続けたのであった。
‥‥‥
‥‥
‥
◆試合当日◆
――高島平四葉は世界征服の夢を見る。
「しぃぃあああああ!!」
雨竜院が幻影を織り交ぜた傘術を繰り出す。
単体でも並みの魔人では避けえぬ傘術が見えぬのだ、必殺の威力を持つ『雨月』!
しかしそれを駒音は何とか躱していく。
その秘密は彼女の能力の『音玉』の運用にあった。
今彼女は雨竜院の動作によって起こる音すべてをシャボン玉になるようにしているのだ。
例えば傘を動かせば空気と擦れわずかにではあるが必ず音が発生する。
それらをすべて小さなシャボン玉とかえ、その位置を認識すればどんなに光学的な幻影を繰り出そうと、実際の行動は駒音に筒抜けなのである。
実際彼女は目をつぶって戦っていた。
音のプロフェッショナルである駒音は雨竜院の能力『睫毛の虹』の天敵ともいえる。
ダァン、ダン、ダァン
続けて響く銃声。駒音は隠し持っていた銃をぶっ放す。
それも、自分の声真似による偽物の『銃声』を織り交ぜながら!しかし、
「雨流」
傘を開き回転させる。そんな簡単な動作で雨竜院は駒音の攻撃を完全に防いでいた。
警視庁「兵課」でも屈指の実力者である雨竜院に、ちょっと毛の生えた程度の銃撃など効かぬ!
「それなりには楽しませてくれるみたいじゃねぇか」
「参ったねぇ~、相性はいいと思ったんだけど、それでも勝つのはしんどそうだなぁ~」
「 茶 番 」
わずか11歳の少女は、口の端を吊り上げて嗤った。
2人の戦闘風景は、当然のように……最初から最後まで、余すところなく捉えている。
彼女は今、対魔人LCV――指揮装甲車の車中にいるのだから。
まぁ、表トナメで使った以上、裏トナメでも使うよねっていう。
《んー。雨竜院雨弓。偽名探偵こまね。君たち2人に告ぐ》
《わたしは、ご存じ高島平四葉――》
《今すぐ降伏しなさい》
《ちょっと期待したけど、あんたたち2人に現代兵器をどうにかする方法なんてないでしょう?》
《茶番はとっとと終わらせてとっとと私の駒になりなさい》
雨竜院雨弓と偽名探偵こまねは目を見合わせて、
「「断る」」
2人は同時に返答した。
「ふぅー、じゃぁ1回死になさ‥ん?」
四葉が指揮装甲車の中でありえない光景を捕えた。
雨弓と駒音の2人の肉体が触手となっていく!
「え」
そして2つの触手が合体する!
「え」
「能力作動。『&ruby(ファントムルージュ 3D){睫毛の虹+音玉/緋色の幻影}』。……&ruby(うんめい){上映}、開始」
「え」
大気中の水分を利用して光の反射や屈折を操り、幻影を見せる『睫毛の虹』を持つ雨竜院雨弓
音をシャボン玉にして保存・運搬ができる『音玉』を持ち、自らの声真似能力であらゆる音が再現できる偽名探偵こまねが組み合わさったなら。
そして、今回再現するのは劣化などではない。偽原によって見せられた原典のファントムルージュ!
――それは、もっとも残酷な世界
ファントムルージュは今ここに受肉を果たした。
「ちょ、ま、え?」
そして、この冗談か悪夢のような展開に四葉が思わず自身の能力を使ってしまったことを誰が責められよう。
事態の打開を求めてとっさに起動した『モア』は
『&ruby(ファントムスカーレット){真・緋色の幻影}』
ファントムルージュすら超える存在を生み出した。
そのあとの展開は早かった。簡単な話だ、ファントムスカーレットが世界すべてを絶望に塗り替えたのだ。
世界はモヒカンと触手に溢れ、ファントムスカーレットを生み出した四葉は『偉大なる母』としてこの退廃した世界に君臨することになる‥‥。
そう彼女は望み通り世界を征服したのだ。
「ち、違う、私が求めていたのはこんなものじゃ――」
そう独白したところで、四葉は目を覚ました。
「はぁ、はぁ、はぁ、なんだ夢オチ‥‥」
ひどく汗をかいていた。
何とひどい夢だろう。
しかし。
自分はまだ夢の中にいるのだろうか?
ここは自分が泊まっている選手部屋のはずだ。
しかしいつもとその様は全く異なっている。
――大量のシャボン玉が浮かんでいた。そしてシャボン玉が生まれている。
その発生源は、大量の目覚まし時計からのようだ。
四葉はそこで真相に気付き、悪夢で火照っていた顔を青ざめさせた。
時計はとうに午前5時を過ぎた時間を指していた。試合開始は午前5時。
高島平 四葉、遅刻のため敗北。
少し時はさかのぼり、
夢ではない現実の遊園地にて。
遊園地はすでに多くのシャボン玉がプカプカと浮いていた。
偽名探偵こまねの『前準備』である。
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『実況の佐倉光素です。ただいまより裏トーナメント第1回戦、遊園地の戦いを始めさせていただきます!
なお参加選手の高島原 四葉さんは遅刻のためこの時点で敗北となります。慈悲はありません!』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「四葉が遅刻か。駒音の野郎、何かやりやがったな」
そうひとりごちる雨弓の眼は爛々と輝いていた。
彼は戦闘狂と言っても肉体同士の攻撃だけが好きだというわけではない。
知略戦、騙しあい、小細工、そういうものも含めて戦闘だと考えていた。
(そしてそういう小細工を力でぶち破るのも大好きである)
自分の胸から鼓動に合わせてシャボン玉が発生しているのを見て、おそらく自分の位置は把握されているのだろうと考える。
ならば無理に身を隠しても仕方がない。狙撃に注意しながら駒音を見つけ出せばよい、と考え遊園地を闊歩し始める。
10分ほど索敵を続けると意外にも堂々と駒音が身を現した。
「四葉が遅刻したのは駒音、お前のせいか?」
「ぴんぽ~ん。『遊園地でめいっぱい遊んだ幼女が次の日目覚ましなしで早起きなんかできるわけないよね』作戦だ~い成功~。
現代兵器なんて勝ちようがないからねぇ~。いやぁ~能力範囲広くてよかったねぇ~。
ま、ホントは雨弓にぃも寝坊してくれればよかったんだけどね~」
「バカ言え、こう見えても公務員なんだ、時間にはうるせーぞ」
そう軽口を言いあう間にも雨弓は傘を構え、駒音はシャボン玉を自分の周囲に集めていた。
「じゃ、始めっとすっか。‥‥『雨月』」
雨竜院が幻影を織り交ぜた傘術を繰り出す。
単体でも並みの魔人では避けえぬ傘術が見えぬのだ、必殺の威力を持つ『雨月』!
そして、実際この試合はこの一撃で終了する。
雨弓が繰り出した傘は駒音の頬を掠め、
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『実況の佐倉光素です。えー、勝敗確定後の戦闘行為を認めましたので、雨竜院雨弓さんは反則負けとなります。
ので繰り上げで偽名探偵こまねさんの勝利、ということになりますねー。で、いいんだよねきららちゃん?』
『うん、それでいいはずだよー』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「‥‥は?」
「というわけで私の勝ち抜けだねぇ~」
「どういうことだ、負けが確定してたのは四葉だけだろ?」
「えへへぇ、実は戦闘開始のアナウンスの直後、私自ら園の外に出て負けてたんですねぇ~
そしてわざと攻撃してもらうために姿を現したのでしたぁ~」
「いやいや、そんなアナウンスなかっ‥‥、そういうことか‥‥」
駒音はニヤリと笑うと、シャボン玉の一つを破裂させた。
ピン↑ポン↑パン↑ポン↑ッ♪
『実況の佐倉光素です。おおーっと、なんということでしょう。偽名探偵こまね選手、自ら園外に出てしまいました。どういうつもりでしょうか。裏トーナメント第1回戦、遊園地の戦いはあっさり雨竜院雨弓選手の不戦勝で決着がついてしまいました~』
ピン↓ポン↓パン↓ポン↓ッ♪
「ったく、アナウンスを消音するとはな。
いやらしいトリック使いやがって。お前、探偵より犯人の方が向いてるんじゃねーか」
偽名探偵こまねはわざとらしく口笛を吹いた。
高島平四葉
⇒自分はまだ世界征服を始めるのにはちょっとだけ早すぎたと認識し、とりあえず自分が世界を獲るまで世界を守る決意をする。主にファントムルージュあたりから。
雨竜院雨弓
⇒小娘にしてやられたことにわりと凹みつつも、ファントムルージュとの決着を目指す。
偽名探偵こまね
⇒今回はあんまりひどい目に合うこともなく、遊園地同盟を作って裏トナメ2回戦進出。
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