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#divid(ss_area){ *第一回戦【洋館】SSその3  由一らが戦う古びた洋館は、想像以上に広大だ。  面積の単位は平方キロメートルで表すのではないかと思われるほど。  個々の部屋や廊下、中庭なども尋常ではない広さであり、遠距離武器を持つ由一が有利だ。  だからと言って、由一は油断していたわけでも、驕っていたわけでもない。  ただ圧倒的に、そして致命的なまでに人生経験が足りなかった。喧嘩慣れしている程度の小学生が、本気で自分を殺しにかかって来る者の恐ろしさなど、微塵も知っているわけがないのだ。  その点で、対戦相手である相川ユキオと倉敷椋鳥の二人に、由一は既に遅れをとっていた。 「あ、あ……い、痛、ぐ、ぎぎぎ、う……」  出血している左腕の傷を抑えながら、由一は悲痛なうめき声をあげる。 「ちくしょう、くそ、くそ、くそ、こ、ろ、殺してやる」  由一はようやく理解する。試合とは名ばかりの殺しあいであると。そして同時に、由一の中に、対戦相手への明確な殺意が芽生えた。  時は遡り、試合開始直後。由一は厨房から調達した包丁三本ほどを携えて館の中を歩いていた。  無論、対戦相手に居場所が察知されないように、できるだけ足音を消している。 「くそー、試合前に下見に来ればよかったかな……」  付け焼刃程度でも、土地勘の有無は大きなアドバンテージになる。だが、由一にはそれがない。  もっとも、行き止まりであったとしても、彼の能力ならばさして弊害にはならないのだが。 「にしても……なんだってこんなことになってんだ?」  彼が見回ったいくつかの部屋や廊下にはガラスが散乱していた。というより、電球や電灯といった照明器具が破壊されていたのだ。  今現在、昼のまっただ中であり、屋敷の中が薄暗いとはいえ多少の光は差し込んでいる。全くの暗闇で何も見えない、ということはない。  しかし、すべての部屋や廊下にガラスが散乱しているわけではないということは、何者かが意図的に破壊したということであり、そしてこんなことをする理由があるのは、対戦相手ぐらいのものだ。  明かりがあっては不都合な能力であれば、それも説明はつく。  どちらにせよ、用心に越したことはない。  由一は慎重に歩を進める。廊下の曲がり角で一旦足を止め、曲がり角の先、そして自分が通ってきた道に誰も居ないことを確認する。  再び廊下を歩き始める由一。念のためもう一度、と後ろを振り向く。  その視線の先には、槍を持って迫る相川ユキオの姿があった。  相川ユキオの姿が視認されたことは、彼にとって大きな誤算だったかもしれない。  由一が通りすぎようとした曲がり角で、自身の「壁」を使ってユキオは姿を隠していた。影の中、影で隠れていた。  そのために彼は屋敷中の灯りを破壊しようとしていた。ノートン卿の「そもそもここは電気が通っているのか?」という発言によって、途中で止めた。  城塞としての壁であれば、こちらの姿は見えない。無色透明な城塞など、存在しないからだ。  由一が通り過ぎた後、「壁」を解除して「槍」を生成した。心臓を貫けば即死、致命傷を与えるだけでも十分だった。  しかし、偶然にも由一が気づいてしまったせいで、槍は左腕を貫いた程度に収まり、致命傷は与えられなかった。  ユキオが追撃を加えようとする前に、由一はユキオから距離をとった。  そして、能力で作った銃を連射しながら逃げてゆく。  弾除けとしての壁を生成しながら、ノートン卿はユキオを叱咤する。 『失敗したではないか』 「ノートン卿が許可出したんですよ。俺は頭が良くないから判断を仰いだのに」 『自分の無能を責任転嫁するな』 「じゃあノートン卿も考えてくださいよ。どうします?」 『ここは撤退しろ。射程勝負では分が悪い。無理に深追いをする必要はない』  了解、と一言添えてその場からユキオは立ち去った。  由一は自らの呼吸を整えるため、そして落ち着くため深呼吸をする。  神経が切れていないためか、左腕を動かすぶんに問題はない。  そして、彼は『銃』を連射するべきでなかったと後悔する。あれは射出速度が速ければ音も大きくなる。そして、音は自らの居場所を教えているようなものだ。  取り乱していたとはいえ、これは失策だった。追って来なかったのは不幸中の幸いだが、もう一人の対戦相手である倉敷椋鳥に居場所を悟られた可能性がある。  無論、それが考え過ぎであればいいのだが。 「考えても埒が明かないな。とりあえず、階を移動するか……」  由一は自らの身体にむけて『銃』を使う。スーっと上に移動し、天井をすり抜ける。すり抜けた先に誰もいないことを確認すると、そのまま上階へと這い出る。どうやら小部屋に出たらしい。  服の一部を裂き左腕に強く巻きつける。申し訳程度の止血処理だが、やらないよりはマシである。  由一は考える。残り一人がどこにいるかわからない。そんな状況で動くほうがいいのか。それとも待機するほうがいいのか。動けばまた先程のように待ち伏せされる。出て行かなければ勝てない。  迷っている最中、それを差し止めるかのように壁が破壊された。  現れたのは大量のモヒカンザコ。モヒカンザコ軍団は雄叫びをあげた。 「ヒャッハー! 食料と水をよこせー!」  倉敷椋鳥は三階の書斎に籠城している。主な理由として「ゲートに入れる物の運搬が楽」「容易に複数個調達できる」という点から、本が大量にある書斎を選択したのだ。  ゲートに本を入れるたびに、モヒカンザコが出てくるので自分の精神状態が心配になったが、ともかく召喚物には困らない。  書斎には彼自身想定していなかった利点があった。書斎は本の日焼けを防ぐため、窓が設置されていない。それはすなわち、「基本的に扉以外からは侵入できない」ということだ。  無論、本は有限だが、部屋いっぱいに敷き詰められた本が尽きる頃には、召喚したモヒカンザコが対戦相手を倒しているだろう。相手がどれほど強かろうが、人海戦術には敵わない。  勝つために手段は選ばない。確実に勝ちを拾いに行く。椋鳥はそう決めている。  モヒカンザコが由一のいる部屋に来たのは偶然だ。ただ虱潰しに荒らしまわっているだけであり、たまたまそこに由一がいたというだけの話だ。  とはいえ、屋敷を荒らしまわっているため、由一がどこに逃げようと、いずれは来ることになっていただろう。  由一はすぐに立ち上がり、『銃』を使う。文字通り厚みがないペラペラのモヒカンザコは、倉敷椋鳥の能力で作られたものだ。  冷静に、しかし確実に素早くモヒカンザコたちを狙撃した。彼の射撃技術からすれば、このモヒカンザコ軍団はただのでかい的だ。  由一は普段狙撃した場合、相手を地面方向に沈めるようにしているが、あいにく床下は二階である。すぐには殺せない。  だから逆に、上空へと移動させる。モヒカンザコの質量は元の物体に依存するため、かなり早く移動させることができた。 「くそっ、何だこいつら!? どんどん増えやがる……!」  モヒカンザコは次から次へと現れる。何十発も『銃』を連射しているのだ。その音のせいで居場所がバレたのだろう。このままでは、どれだけ対応しても埒が明かない。  そこで、由一は自らに向けて『銃』を使う。ゆっくりとした速度で上昇していく。 「あばよ!」  由一は捨て台詞を吐く。モヒカンザコの一人に足を掴まれそうになったが、エアガンを使って目を撃ちぬいて撃退した。  一方、相川ユキオは倉敷椋鳥の居場所を探すため、屋敷の外に出ていた。 「部屋や廊下が壁で区切られた館内よりも、辺りを見通せる外を先に探した方が良い」というノートン卿の提案により、主庭を探索した後、中庭を探索している。  しかし、一向に倉敷椋鳥は見つからない。 「これだけ探してもいないなら、外にはいないんじゃないんですかね」 『どうやらそのようだな』  諦めて館の中に戻ろうとするユキオ。しかし、上空からの風切り音を聞き逃さない。何かが落ちてくるという事を察して、頭部を腕で防御しつつ後ずさる。  地面に落下したそれは、小説の文庫本だった。 「なんだあれ……?」 『気をつけろ、罠かもしれんぞ』  恐る恐る手にとったが、何の変哲もない小説だった。中身を見ても、やはりただの小説だった。 「なんで小説が空から落ちてきたんだ?」 『それを今考えている』  直後、一冊、二冊と本が落ちてくる。それらもやはり、ただの変哲のない本だ。  ノートン卿も相川ユキオも、仮説を打ち立てた。 「本が落ちてくるってことは、どこかから本が無くなってる、ってことですよね、たぶん」 『おそらく、この本をもとに倉敷椋鳥が何かを召喚したのだろう。それで、何らかの理由で能力が解除されたというわけだ』 「空から降ってきた理由はわかりませんが……とりあえず、本の有りそうなところといえば……」 『書斎か』 「ですね」 『確か三階にあるはずだ。わかるか?』 「バカにしないでください。すぐに行ってやりますよ」  ユキオは館の壁際に寄り、能力で『壁』を作った。高く延びていく壁に乗って、三階の窓と同じ高さまで到達する。 そして『槍』をつくり、窓を割って侵入した。  部屋の中はものの見事に荒らされており、二、三人のモヒカンザコが徘徊していた。  襲いかかってきたモヒカンザコを槍で一掃する。  打ちどころが悪かったらしく、モヒカンザコは失神し本に戻った。 「どうやら今度の予想は当たってたみたいですね」 『そうだな。ではさっさと書斎に行け。場所はわかるな』 「だいたい把握してます」  ユキオは部屋の外に出る。だが、廊下はモヒカンザコの軍団がウヨウヨしている。いくらモヒカンザコといえど、この数を相手にしていてはきりがない。 「いったい何体いやがるんだ、こりゃ」 『馬を使え。いちいち相手にしていてはお前とて勝てないだろう』 「そうなるだろうと思ってましたよ……」  影から『馬』を召喚すると、それに跨りモヒカンザコの中を駆け抜ける。  文字通り「蹴散らす」のも悪くないなと思いつつ、書斎を目指して征く。  三階の上は階がなく、由一は屋根に座っていた。  モヒカンザコもこれなら追ってこれないだろうと思いつつ、屋根の上をウロウロしていると、二、三冊の本が落下してきた。  その本を手にとって見るも、どうやら代わり映えしない普通の本だった。どういうことだ、と思考を巡らす。  だが、次から次へと本が落ちてくる。それも上空からだ。  頭部を守りつつ、由一はひとつの結論に達した。 「倉敷は本を使って召喚していた、ということか!」  それに気付いた由一は、書斎探しを始める。彼は屋敷の間取りを知らないため、一つ一つの部屋を確認するしか方法がないのだ。  だからといって、モヒカンザコのいる三階に戻る訳にはいかない。  由一は自分を『銃』で撃った後、屋敷に潜り部屋の中を覗いて確認する、というやり方で確認していった。  虱潰しで確認していくしか無いが、これが一番安全だ、と判断した。 「ヒャッハー! 敵だー!」  書斎前の廊下で、モヒカンザコが叫ぶ。それを聞いた倉敷椋鳥は、敵の接近を知った。  どうやら、書斎に籠城していることがバレたらしい。 「居場所を突き止められたか。だが、この程度で勝った気になるのはまだ早いぞ」  入り口からわずかだけ外を見る。そこには、モヒカンザコ軍団とそれを蹴散らす相川ユキオの姿があった。  そして、同時に両者の目が合う。 「見つけた!」  ユキオは馬から飛び降りると、モヒカンザコを踏み台に次から次へと飛び移り、倉敷椋鳥へと近寄った。  そのまま一気に槍を突き刺―――す前に、一発の銃声。 「あえて姿を見せた、ということに気づかなかったみたいだな」  倉敷椋鳥の右手には、拳銃が握られていた。  移動中の由一にも、その銃声は聞こえていた。  すぐ近く、否、すぐ下から聞こえてきたということは、何者かがこの下で戦っている、ということだ。  覗き見てみると、拳銃を持った倉敷椋鳥と、倒れた相川ユキオ、そして相川ユキオを袋叩きにしているモヒカンザコがいた。  モヒカンザコに袋叩きにされている相川ユキオは、腹に銃弾を食らっている。ヘタしたら致命傷になりかねない。  モヒカンザコ軍団を払いのけるユキオ。このモヒカンザコは本と同じ質量なので、本を払いのけるのと同レベルの力で簡単に払いのけられる。  だが、モヒカンザコは続々と湧いてくる。倉敷椋鳥が再び召喚を始めたのだ。  満身創痍の状態で、湧いてくるモヒカンザコ。そのうち体力が果ててしまうかもしれない。  だが、書斎の中から椋鳥のうめき声が聞こえると、しばらくしてモヒカンザコがすべて本に戻った。  由一はこれをチャンスだと思った。  ここで倉敷椋鳥を始末出来れば、確実に勝てる、と。そこで、由一は賭けに出た。  倉敷椋鳥が書斎に入っていったところまでは由一も確認している。何のためか? 無論、再び召喚を行うためだ。  では、どうすれば確実に倒せるか。倉敷椋鳥は常に動いている。  だが、あるときだけ止まっている。それは、召喚するときだ。  モヒカンザコを召喚する瞬間を狙って、彼は『銃』で撃った包丁を真下に突き落とした。  そして、椋鳥の脳天に包丁が刺さったことを確認し、追撃として、背中を包丁で刺したのだ。  そして、倉敷椋鳥は死亡した。  その後、由一は倉敷椋鳥から拳銃を奪い、満身創痍のユキオに対し降伏を促した。 } &font(17px){[[このページのトップに戻る>#atwiki-jp-bg2]]|&spanclass(backlink){[[トップページに戻る>http://www49.atwiki.jp/dangerousss3/]]}} ---- #javascript(){{ <!-- $(document).ready(function(){ $("#main").css("width","740px"); $("#menu").css("display","none"); $("#ss_area h2").css("margin-bottom","20px").css("background","none").css("border","none").css("box-shadow","none"); $(".backlink a").text("前のページに戻る"); $(".backlink").click(function(e){ e.preventDefault(); history.back(); }); }); // --> }}

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