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裏準決勝戦【特急列車】SSその2 - (2013/06/15 (土) 21:42:49) のソース

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*裏準決勝戦【特急列車】SSその2
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『戦闘開始から1秒』

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24.特急列車
戦闘領域:列車から周囲30メートル以内

高速で走る長大な特急列車。食堂車や寝台車も備わっている。
無人で走行しており、運転席で列車の操作をすることは出来ないらしい。
ノンストップで走り続けるこの戦場からは振り落とされないように注意。

「確かにパンフレットにはそう書いてあったなああああああああ!!!!!!!」

『ノンストップで走り続けるこの戦場からは振り落とされないように注意。』

「だからってこの開始位置はおかしいだろおおおおおおおおおお!!!!!」

俺は、いや俺達三人は推定時速150キロで転がっていた。特急列車の屋根の上をだ。
転送と共に超高速でかっとぶ足場に着地したんだ、そりゃコケて列車後方へと転がる。
魔人特有の頑丈さで足首を傷めずには済んだがこれは不味い。
俺は検事故の回転の速い頭脳で残された時間を計算する。

特急列車が7両編成とする。
日本の列車は一両大体20mなのでこの特急列車の長さは20×7=140m
列車は俺の目測で時速150キロ、秒速に直すと150キロ÷3600≒42m
俺達の転送地点は先頭車両の運転室真上の屋根だったから140mをそのまま使い
140÷42≒3.3
つまり3秒ちょっとで俺達は最後尾から転がり落ち、その1秒後には列車から30m
離れて場外負けとなってしまう訳だ。

ここまでの暗算に2秒。近年は探偵の頭脳ばかり注目されてるが、そのライバルである
検事もこれぐらいは出来るんだぜ。ってやべええええええええ!!

「いや、実は大丈夫なんだけどな。俺には事前に準備したアレがあるし。
えっ、アレが何かって?フッフフ、じきに分かるさお前らにもなっ!」

事前に用意していたこの状況を打破できるものなんて存在しないが、
この『やけに引っかかる言葉』から大きめのフックを作り出し
6両目と7両目の連結部分の窪みに引っ掛ける。

何とか留まる事に成功した俺は後ろを振り返る。
どうやら列車が7両編成という計算上の仮定は正しかった様だ。
暗算が0.5秒遅れていたら俺は後ろに転がり落ちてしょっぱなから
脱落していただろう。

そして後方から誰も落ちる様子は見えず、この連結部にも俺しかいないって事はだ、
あの二人もさっきの状況に対応し俺よりも先に停止するのに成功した訳だ。
前方に目を凝らすと列車の真ん中の当たりに肉付きのいい女のシルエットが、
その奥、先頭の方にもう一つ女のシルエットが見えた。

「最初に留まるのに成功したのは聖槍院九鈴、次にゾルテリアで最後は俺か。
この位置は正直言って不利かもな。だが俺は逆境ほど燃えるタチなんでね!!」

俺は『燃える太刀』で連結部の屋根を大急ぎで焼き切りだす。
電車内部ならともかく、電車の外で最後尾なんて不利以外のなにものでもない。
連結部は薄く柔らかく作られているとはいえ、それでも人が抜けられる穴を作るのは
一苦労だ。だが、一刻も早く電車の中に入らないとならない。
いつ前の二人がこっちに飛び込んでくるか分かったもんじゃない。

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『戦闘開始から9秒』

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表のトーナメントでは準備の差で敗北し、裏の一回戦では罠に偶然気づけた事で
勝利した。流石にこうなれば私も自分の能力が絶対有利じゃないという事に気づく。
このトーナメントに勝ち抜くには入念な準備と覚悟が必要。
今こうして列車の真ん中辺りの連結部位に留まれたのも、事前に『うぃきぺであ』
というもので戦闘フィールドについて調べ、外に出された場合を想定していたから。

「にしても、半端ないわね。あのトング女」

私がオッパイを連結箇所の窪みに引っ掛けるよりもずっと早く、あの女は靴を脱ぎ捨て
足の指に挟んだミニトングと両手のトングを使って僅かの時間で体勢を立て直した。
そして、最後尾でギリギリ助かってた彼が電車の中に入ろうと何やらギコギコと
武器をノコギリの様に使っているのをチラ見して、私も何とかして電車内に入った方が
いいとか思ったけど方法が思いつかないでいた所、トング女こと聖槍院九鈴は
足のトングを上手いこと使って高速で走る列車の上を普通に走って来た。

「ちょ、もしかしてこの場所で闘うの!?」
「許せない。汚い言葉を物質化して散らす彼も、醜悪な外見で見るものの衛生を
損ねるであろう貴方も。これ以上のゴミ増産が行われる前に私が倒す」
「私の事は存在自体否定!?」

ムッカー、温厚な私もこれには流石に激怒ぷんぷん丸。
足場が不安定だろうとその喧嘩買ったるからね!
私は連結部の窪みにどっしりと構え彼女を迎え撃つ。

「さあ、アナタはどんな性技で私にダメージを与えるのかしら?」
「その予定は無い。というか、貴方には醜い本性を出さずに戦闘不能になってもらう」
「出来ると思ってるの?」
「無論」

様子見で繰り出したレイピアを避け聖槍院九鈴のトングが開き私の右肩を挟み込む。
やはり性属性からは遠い攻撃だ。
私はライトアーマーの肩パットを外してのトングからの脱出を試す。
だが、私が肩パットを外そうとするより先に九鈴のトングが肩パットだけを残して
私の右肩から離れた。そしてタフグリップが解除されたのだろう、
肩パットはトングによって私の後方に投げ捨てられる。
でも性技を使わないと言っておいて鎧を外す事に何の意味が?

「それでは、これより私の技が通じるか試させてもらう」

剥き出しの右肩に再びトングが向かう。

「でも、流石に油断しっぱなしじゃないのよ、私もね!」

何をするかは分からないが鎧を奪った箇所にトングが来る事は分かっていた。
私はその機動の下をくぐり抜けてトングを持つ腕に体重を乗せたフックを放つ。

「固っ!」

ごちーんと岩を殴った様な感触、ZTMが無ければ私の拳が砕けていただろう。
そして岩の様に硬かった九鈴の腕は折れても腫れてもいなくて、
動きに支障なく私の右肩を再度つかんでいた。ちくしょうwちくしょうw

「トング術はあらゆるゴミを拾い、離さず、分別し、そして捨てる。
その際に強化されるのはトングだけではない、トングの延長上の腕も」
「ふーん、でこっからどうするの。トングでの物理じゃあ私には効かないけれど、
…はっ、まさかこのまま私を持ち上げて場外に投げ捨てるつもりね!」
「それも考えた、けれどまずは」

九鈴の腕が右肩に固定されたトングをこねくり回すとバリッと音を立てて
私の右肩から何かが引き剥がされた!!右肩に纏っていた黒タイツと一緒に
引き剥がされたソレ、ソレは目には見えないが何かはすぐ分かった。
トングが離れた箇所のタイツが破れ、そこから見える部位に血が滲みズキズキと痛む。
物理攻撃を無効化し性ダメージに変えるはずの私の肉体がだ。

「そんな、私の身体を包む魔力膜をつかみ剥がしたというの!?
掃除人だなんて言ってアンタ本当は何者よ!!」
「聖槍院九鈴。トング道流派、聖槍院流の正統後継者。正真正銘の掃除人」
「アンタみたいな掃除人がいてたまるか!どう見てもレベル15以上の
錬金術師(アルケミスト)じゃない!」

私のいた世界では、メインジョブのレベル15はその分野において王として
崇められ無知なる民衆には神の所業と思わせられるレベルである。
ZTMを父から伝授された時、あの糞ブタ銭ゲバ変態オカマジジイはこう言っていた。
この術はレベル13相当の紋章性術師(スペルマ・スター)のスキルと
女騎士のジョブ特性を組み合わせて開発した、物理はもちろん、
性属性以外の術で破壊出来る術式ではないと。
そのZTMをこんな形で突破するなんて! 

「全く、ファントムとかいう亜神級の呪いは飛び交うし、
医者は因果を逆転する奇跡を呼吸をする様に行うし、
光素とかいうのは高位精霊としか思えない存在だし、とんだファンタジー世界だわ!」
「なら今すぐギブアップして帰ればいい。貴方には回収されるべき場所がある」
「やっぱ私の事ゴミ扱いしてるっ!?でも、アンタと距離を取るって一点は賛成ね」

私は一歩下がり連結部から二両目の先端へと移る。
幸い、逃げる手段はもうすぐそこまで来ていた。

「って訳で、一時撤退!」
「逃がさない、貴方は私が」

九鈴がトングを持つ手を伸ばし捕まえようとするが、それよりも早く
私はその場で思いっきりジャンプ!迫ってくるトンネルの縁に頭からダイブ!


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『戦闘開始から20秒』

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肩パットが飛んできた後に続いて本体が飛んできた。
何やら劣勢だったゾルテリアはトンネルに激突する事で特急列車の慣性から離脱し、
九鈴から撤退していた。よって、トンネルと共にケツが150キロで俺に迫る。
多分重さも150キロはありそうなケツは明らかに俺目掛けて降下。
ブレーキと俺への大ダメージを狙った上手い一手だなと感心してる場合じゃねえ!

「諦めんなよ!頑張れ頑張れば絶対出来る!頑張れば司法試験も合格出来るし
裁判で魔人を有罪にだって出来る!ネバーギブアップ!」

『燃える太刀』二本目を既に作った切れ込みに刺し、二刀で穴を押し広げる。

「間に合えっっっ!!!」

結論から言うと間に合わなかった。
連結部の穴は俺の顔面とゾルテリアのケツが連結した時の衝撃でようやく開通し、
俺達は二人揃って連ケツしながら連結部の狭い空間に転落する。

後頭部から床に落ちる、いてえ!続けざまにゾルテリアのケツが乗っかる、くせー!

「わお、ラッキースケベね坊や」

こんなのラッキースケベじゃねえ、それと坊や呼ばわりすんな。
俺はオッサン扱いもガキ扱いもされたくない微妙な年頃なんだよ。
そう反論したかったが口と鼻がケツで圧迫されて声が出せなかった。
おまけに両腕も体重が掛けられ動かせず、両足はある程度自由だが蹴りは届かない様に
絶妙な体勢でのしかかっている。流石は家庭持ちの数百歳。見事な寝技だ。
…あれ?ロジカル使えないし、ひょっとして俺って今詰んでる?

「そのまま話を聞いて、いつあのトング女が来るか分からないから手短に言うわ。
私と協力してあの女と戦ってくれない?賛成なら右足で床を鳴らして。
協力してくれないなら…」

ピッ ブビッ ブピピッ
く、くせえーーーーーーーーーーーー!ゾルテリアのケツの割れ目から出る放屁が
俺の鼻にダイレクトアタックしてきたくせえー。

「今すぐ協力してくれないならこのまま10トン爆弾をお見舞いしちゃうわよ」

ブープスプススー

そ、それは間違いなく大会最悪の敗因になってしまうじゃねえかくせえー!
同盟するかどうかはともかくせえー、俺は取り敢えずくせえー

ブピピピピブモッ

くせー一刻も早くこのくせー状態からくせー脱出するくせー為足で床を鳴らすくせー。
くせー直後くせー、くせーケツがどけられくせー俺はくせー自由くせーを取り戻した。
クサクナーイ。

「ぷはぁー。で、色々聞きたいがそもそも何で俺に共闘の話を?」
「その前に最後尾の車両に移りましょう。ここは話し合うには狭いから」

移動しながら俺は考える。
これまでの戦いを見てのイメージではゾルテリアは組むよりも組まれて
対策される側の存在だ。あのバリアーがある限り無策で突っ込んで一人で勝ち上がる。
斬り合いで劣勢だとはいえこんな話を振ってくるキャラじゃない。
罠か?だが俺をハメるメリットが無い。
あのまま尻で圧殺していれば少なくとも俺に対してはラッキースケベ勝利を得ていた。

「これよ」

ゾルテリアは怪我をした右肩を見せる。…おい、何で物理無効バリアー持ってる
こいつがこんな怪我してるんだ。ああ、そうか。九鈴がこれをやったのか。

「トングでZTMを分別し、捨てられたわ。あのままやってたら右肩以外もやられて
削り殺されていたと思う。お願い、共闘してくれない?」


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『戦闘開始から34秒』

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私の提案は彼にとって魅力的なものだろう。
さっき偶然が重なったとはいえ完封負け寸前になった彼にとって、
私との戦いの再開は避けたい所のはずだ。
表と裏の一回戦を見た感じ、様々な属性の武器を召喚する『けんじ』(剣士の亜種?)
という職業に就いているようだが、私のZTMを破れる可能性は低そうだし
近距離戦闘では偽原や九鈴のレベルからは一段劣る。

私は単独では勝つ方法の見えない九鈴を排除する戦力を得られ、
彼は目の前の危機をスルーし、上手くすれば私と九鈴の共倒れも狙える。
彼は頭も悪く無さそうだし、きっとこの提案を受けてくれるはず。

「共闘ねえ…」

あれ?あんまり好感触じゃない模様。何が気に入らないのだろうか。

「何か問題でも?」
「二人であのやっかいなトングを退場させるのはいい。
それじゃあどうやってアレを倒すのか考えはあるのか?」
「ああ、そういう事ね。心配しないで、策はあるわ」
「ほう、聞かせてもらおう」
「アイツのトング攻撃は身体の前面からしか繰り出せないし、トングと
トング術使用時の両腕以外の強度は並。よって片方がおとりになって
もう一人が背中から斬りかかる!以上!」
「じゃあどうやって背後を取ればいい?」
「え、えーと座席の間かトイレに隠れて、もう一人と戦闘中に後ろからグサッって」

私はややしどろもどろになりながら答える。エルフの女騎士は基本ソロプレイの
戦闘員だから連携の策はこのぐらいしか思いつけない。
私は悪くない、ジョブ特性値の問題なのだ。父や夫ならいい考え浮かぶんだろうけど、
あいつらは女騎士がメインジョブじゃないから。ば、馬鹿じゃないんだからね。
ソロでの冒険知識や嘘を見抜く能力は高いんだからねっ!

だが、ケンジさんは私の共闘案に納得いかなかった模様。

「そんなフワフワした考えじゃあ協力できねえな。
俺は魔人とアホが何よりも嫌いなんだよ」

反対の意見と共にズボンとパンツを一気に降ろし、ボロンとイチモツをさらけ出す。
私にとっては最大のダメージ倍率となる生男根。
それを出すって事は交渉は決裂したのか。

「やれやれ、あのトング女は私一人で」
「さっさと済ますぞ、掃除屋がここに乗り込む前にケリを付ける」

私の言葉が終わらぬ内に彼は言葉を被せてきた。


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『戦闘開始から2分7秒』

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「思ったよりやるわね!」「てめえもな!」「この技はどうかしら?」
「うぐ!だがまだまだ!」「いやん!そこはだめぇ!」「ここがええのんか?」
「これで決めてやるわ!」「さあ来いっ!」
「「うおおおおおおおおおおおっっっ」」


『実況の佐倉光素です。裏トーナメント準決勝特急列車、激しいバトルの末に
内亜柄影法選手死亡!後はゾルテリア選手と聖槍院九鈴選手の一騎打ちです』

「ふうっ、間にあったか」

アナウンスの後、私は息を整えて聖槍院九鈴を待ちうける。
と、正にその時6両目と7両目の連結部の自動扉が開き、やっかいな敵が現れた。
さっきまで近くに気配は無かった。きっと私の開けた穴の近くで待機し、
決着のアナウンスを聞くや否や体力の回復する間を与えない為に下に降りてきた、
そういった所だろう。

「…その格好はどういうつもり」

私の見た目に突っ込む九鈴。無理も無い、最初に列車の上で戦った時と違って
私の顔は黒いタイツに覆われていた。てっぺんから見える金色の髪と
生乾きの血がこびりついた右肩以外すっぽりタイツに隠された姿を見ては
疑問を口にするのも仕方ない事だろう。だから私はこう答えてやった。

「今の私は貴方に負けたゾルテリアではないっ!私は黒タイツウーマン!
そう、いわば第二形態みたいなものなのよ!私は天才、私は万才、
30…私は約20才」
「…バカじゃないの」

無表情でツッコミを入れる九鈴、うん、私だって馬鹿だとは思う。
だが、これも勝つためのステップの一つ。私はその場でくるくると回り歌い出す。

「前人未到の空前絶グォ~ 天下無双の針小棒ドァイ~ 驚天動地の五里霧ッチュ~ 
我田引水自画自スワ~ン 青は藍より青く花より団子 とにかく無敵の
大・大・大・大・大・大・大・大・天・才~」

何度もその場で回転し、キリッとポーズを決める。
九鈴はさっさと終わらせて帰りたいという顔をしていた。

「死ぬ前の最後の言葉はそれでいいの?」
「この黒タイツウーマン、負けるつもりは微塵も無し!
準備運動は完了よ、さあいくわよっ」

私は奇乳とも言えるサイズの胸の谷間からレイピアを抜き放ち真っ直ぐに突く。
狙いは心臓!だが、レイピアの先端は簡単に、それこそゴミを拾うがごとく
黒いトングで摘ままれてしまう。

「あらま」
「それでは半端に終わったゴミ掃除を再開する。今度は逃がさない」

右手のトングでレイピアの先端を押さえたまま、左手のトングが私の着ている
ライトアーマーと黒タイツを次々と剥がしていく。露わになる裸体、
手ごたえの無いZTM、落ちる胸の詰め物、飛び出すチンチン!

「いやーんみないでぇー、オカマッ」
「えっ、どういう…」

明らかに狼狽の色を浮かべる九鈴。
私は、いや、俺は好機と見て一気に策の仕上げに向かう。

「伸びろっ、レイピアー!」

『やたら間延びした歌』から生まれた伸縮機能を持つレイピアが俺の命令に反応して
トングに摘ままれたまま伸び、先端が九鈴の胸をえぐる。

「うぐっ、な、内亜柄影法!死んだはずじゃあ」
「あの放送か?車内マイクを利用させてもらったのさ。それじゃあさよならだ」

九鈴の胸から本物のシルバーレイピアが生える。
俺の服を着たゾルテリアが背中から九鈴の心臓を貫いたのだ。
放送を信じていた九鈴は俺に化けたゾルテリアを死体と思いんだ結果、
背後からの攻撃を無防備で受け絶命した。

『実況の佐倉光素です。裏トーナメント準決勝特急列車、激しいバトルの末に
聖槍院九鈴選手死亡!後はゾルテリア選手と内亜柄影法選手の一騎打ちです』

本物のアナウンスが俺達と観戦者に九鈴の脱落を伝えた。

「終わったわね。にしても、良く思い付いたわね。こんな手段」

ゾルテリアの共闘案の後、ほぼ無策と言っていいゾルテリアの案に呆れ返った俺は
『被せる言葉』より生成したズラを出し、それを被りながら頭の良くない彼女にも
分かるように作戦を説明しながら必勝の策を作り上げていった。

この列車は運転は完全自動という説明がなされていた。
ならば運転以外の機能は俺達が利用しても問題無いという事だ。

最後尾の車掌室のマイクが利用できる事を確認すると、
俺達は激闘の叫びを上げながらお互いの服を交換していった。
はたから見たら間抜けそのものだが、九鈴に近づかれる可能性を少なくしつつ
入れ替わりを完了するには他に手段が無かった。
ちなみに黒タイツウーマンについてはゾルテリアのアイデアである。

「ところで、光素ちゃんや私の声マネ凄い似ていたわね。どうやったの?」
「おいおい俺は天才検事、それも声のスペシャリストだぜ?
探偵に出来る事なら俺にだってできるさ」
「…『けんじ』って剣士の上級職じゃなかったんだ」

もっとも、この偽アナウンス戦術を閃いたのはついこの間。
偽探偵こまねの遊園地での戦い方を見てからだけどな。

「それじゃあ、これで共闘は終わり。私達の戦いの続きをしましょう。
あ、その前に貴方の服返すわね」
「ああ」

ゾルテリアから渡された服を受け取り袖に手を通す。
胸周りが多少伸びている気がするが、トングを刺されて穴だらけのタイツより
ずっとマシというものだ。などと考えていると、

「はい、ドーン!」
「うおっ!」

服を最後まで着る前に全裸のゾルテリアヒップアタックが俺にヒット。
そのまま揉み合って床に転倒し、俺の両腕はガッチリとロックされ、
顔面にはケツが押しつけられ言葉も発せられず僅かな隙間から
呼吸ができるのみの状態になってしまった。

「さあ、約束通りさっきの続きからよ!」

いや、確かに共闘前の体勢はこうだったけどさ。

「そして、私としてはギブアップをお勧めするわ。
言葉を戦闘の起点にしているアナタにはこの体勢からの逆転の手は無いはず。
さらに言えば全裸なせいで私は今お腹すっごいゴロゴロしてる!」

プスッ プー

尻からの放屁が始まった。くせー。耐えろ、そして考えろ俺。
天才検事の頭脳を持ってすればこっからの逆転の策はいくつも思い付けるはず。

ピプピー、ブブッブー

両手をどうにかして動かせばくせー、くそ、くせー、体重と技術の揃った見事な
くせーロックと言わざるを得ない。ならば割と自由な足で相手を蹴りあげる!くせー
俺は足を畳みくせーゾルテリアのボディに膝を撃ち込み、し、しまった!

「はうう!そんな所蹴られると…らめぇぇぇ!!」

ブリブリブリー!ブリュブリュブリュブリュー!

くせーくせーくせー土石流のごとくくせー下痢便が俺の顔にぶっかけられくせー
くせーこうなったらくせーギブアップするしかくせーないのかくせーくせーくせー
くせーあれ?この状態でくせーギブアップどうすればいいんだくせーくせー
右足でくせー床をくせー鳴らすくせーいやくせーこれはくせー共闘へのくせー同意

ブリブリブリブー!ゴボッ!ブチャラッティー!

た くせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー
く す せーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー
くせー け くせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー
くせー  て くせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー




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『戦闘開始から1時間37分42秒』

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『たった今、内亜柄影法選手の失神が確認されました!
よってエルフの元女騎士ゾルテリア選手の勝利とさせていただきます!』

ケツ・着!
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