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第一回戦【海水浴場】SSその2 - (2013/04/27 (土) 21:56:39) のソース

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*第一回戦【海水浴場】SSその2
 蛭神サソリは憂鬱に悩まされていた。
 サソリは挌闘家であった。やはり、挌闘家である以上自らの実力を知らしめたかった。しかし
、その目標にはいくつもの壁が立ちふさがっていた。
 まず、彼が魔人であること。この時点でこの世の90%の挌闘家とは立ち会えぬ、立ち会っても意
味のないことが明白になってしまっている。
 次に、彼が蛭神家の魔人であること。サキュバスやインキュバスの家系、淫魔人である蛭神家
というだけで多くの魔人が彼と立ち会おうとしなくなる。つまり、寝技をかけられた時どんな淫
術が炸裂するか、想像したくもない。しかも、筋肉隆々の男から。
 さいごに、彼の戦闘スタイルに問題があった。彼の挌闘家としての正装は全裸。そして、その
スタイルは【五身一体】。この五身とは、右腕・右脚・左手・左足。そして、男性器。なんというこ
とだろうか、男性器に常軌を逸した強度を持たせる魔人能力蛇神鞭を中心に添えたスタイル。
 もはや、このような男と戦いたいという猛者はほとんどおらず、やはり同じように表舞台から
追放されし外道挌闘家と仕合をする虚しき日々を蛭神サソリは送っていた。
 だが、彼の人生は一辺する。なんと魔人同士を集めた武術大会に招かれたのだ。尤も、これは
蛭神家代表の他の選手が核ミサイル投下のゴタゴタで行方不明となり、他に候補を探したときに
タイマンで戦車を撃破したサソリが仕方なく選ばれたのだが、サソリにとってはどうでもいいこ
とだった。蛭神家がサソリの出場決定と同時に大会から手を引いたとしても。
 自らの力を思う存分に発揮し、それを世間に認めてもらえるという機会にサソリの股間は図ら
ずも興奮し、文字道理赤熱していた、はずだった。
「小男、チンピラ、女子・・・か」
 そこにいたのは戦車さえも破壊可能な彼にとって思わず溜息が出てしまうような面子であった
。無論、彼らも魔人であるのだから見た目で判断すべきでないことぐらい、頭は愚鈍と一族から
笑われてきた彼でも重々承知である。が、その魔人がどのようなタイプであるかは容姿を見れば
だいたい分かる。つまり、筋肉が発達していれば鍛錬のすえに超人的膂力を得た魔人であったり
、そのような肉体を得ることが能力の一部であったりするし、そのような魔人は概して肉体派で
ある。逆に細いシルエットをもつならば、肉体に頼らず能力に特化した魔人が多い。もちろん、
細指一本で大男の全力の正拳突きを悠々受け止めるような能力の発現をするものもいるが。
 とにかく、サソリは肉と肉が激しくぶつかり合う戦いを望んでいたのに、恐らく目の前にいる
魔人達は能力特化なのだ。全くなんと星の巡り合わせが悪いことか。
「が、手を抜くわけにもいかぬ。どれ一つ振って見るか」
 その丸太にも例えられる四肢、いや五肢がゆっくりと動きだした。
「なんなんだ、あれは」
 遠藤終赤は戸惑っていた。いきなり放り出された海水浴場。そして、明らかに堅気でない男二
人組はいいとしよう。このような職種の人間と逢うのは職業柄珍しくない。だが、もう一人の男
、あの一糸纏わぬ。あれはなんだ。遠藤終赤が男性器を見るのは初めてでない。小さい頃は父親
や叔父と一緒にお風呂に入ったこともあったし、叔父の蔵書である古今東西の探偵小説また探偵
教科書には色事が、挿絵付きで、描かれていることも少なからずあった。ので、彼女は男のソレ
に関する知識は同年代の女子よりもあると自負しているし、実際に親族以外のソレをみても、マ
ァ、上手く処理できるだろうと思っていた。しかし、あれはなんだ。
 コーラのペットボトル、いや、田舎に突っ立て居る黒ずんだ木製電柱を思いださせるそれが、
こちらに向かってくるではないか。さすがにこれには歴戦の探偵、遠藤終赤も困惑せざるおえな
い。
("電柱"から見える手足の太さ!奴(やっこ)は格闘系魔人と見える。さらに排泄器の機能とする排
尿や射精を行わないところを見ると、アレ自身を武器にするというのか!)
 と、思考をしたはいいが、もはや"電柱"は目の前で振りかぶられようとしていた。
「ッッッ!!」
 魔人の脚力を持ってして、100mはあった間合いを数秒でつめたサソリ、そして自分の一物をも
って目の前の女子を叩き潰そうとした刹那、その女がこちらに向かって指を向けるのをサソリは
見逃さなかった。回避!瞬間、桜色の閃光が左目をかすめる!
(光学能力か!)
 指の先や手のひらからエネルギーを放出する魔人能力者は珍しくなかったし、立ち会ったこと
もあった。しかし、彼らはもっと遠距離からエネルギーを打ち込んできた。今、彼は己の男性器
を振りかぶろうとしたために、己のソレで視界が塞がれ、体勢的にも回避は困難。もし、目の前
の彼女がこれを狙ってやったのなら、なかなかどうしてやり手ではないか!
「くく、少しはァ、楽しめそうだなぁ!」
 サソリは回避体勢から一気に男性器を砂場に叩きつける。目くらましのためだ。
 が、次の瞬間には深さ2mほどの大穴が地面で口を開いていた!
「何・・・だと・・・!?」
 まさか女の戦略かと思い、顔をそちらに向けると女もぽかんとしている。となると、あのチン
ピラと小男の組が!
「うおおおおおおおおおおおおあおおおおおおお!!!」
 いや、仮にそうでももはや彼らは墜ちるしかなかったのである。物理的にも肉体的も。なぜな
ら、落とし穴には夜魔口砂男の眠り砂がたっぷり詰まっているし、まあ、起きていても上から窒
息させる勢いで眠り砂がかけられるからだ。

「いやァ、相手が真っ先にこっちに来なくて良かったですねぇ」
「まったくやな」
 サソリが遠藤に向かった直後、夜魔口赤帽は大量の真紅の液体を砂男に呑ませたのだ。その摂
取量は効果が切れると同時に全身の疲労で即死するレベルであったが、この大会の特殊性を考慮
した一種の作戦であった。そうして、ありえないほど強化された砂男は地面に潜り、即席の落と
し穴、もちろん自分の能力でつくった砂を混ぜたものを、をつくったわけだ。もし相手達がこち
らを先に狙っても、砂男が砂の結界を作ってしまえばこちらは籠城戦に持ち込める。そうなれば
、やはり残ったもの同士は潰しあうだろう。結局のところ、海水浴場が舞台になった時点で自分
達が圧倒的有利な立場にいるのである。
「げほっ」
 早くも強化の反動が現れだした砂男が血を吐き出した。赤帽はそれを心配そうに見守る。
「すまんなぁ、もしかしたら、あと数回死んでもらうかもしれん」
「かまいやしませんよ、それでおやっさんが助かるならァ・・・げほっ」
 砂男の全身が震えている。皮膚がひび割れ血が噴出している。あの治療担当魔人の力は参加す
る前に十分見せてもらったが、それでも不安になる。治療が、ではなくてこの舎弟の心が果たし
て決勝まで持つのかと。いや持ってもらわなければならない。
 砂男が静かに砂浜に横たわる。もはや、息を、いや心臓自体が破れたのかも知れない。
「おやっさん、待っててくだせぇ」
 赤帽は一人静かにつぶやいた。自分以外の、全てが眠った砂浜に、その声は波にさらわれたか
のように、消えていった。
『夜魔口赤帽&夜魔口砂男』WIN!
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