講評 第一回戦まで

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講評 白王みずき

第一試合一位通過のSSです。主に白王みずきの可愛らしさを強調しつつ、
勝利に至るロジックもしっかりと組み立てられた優秀な作品で、一位通過も納得の完成度といえます。
戦闘描写では、野球場のギミック(放送機材)を意志乃鞘以上に使いこなしており、
銃弾を水で防御した際の実例を用いた解説なども、ハッタリが効いていて面白いところです。
そして、1人の敵に対して共闘戦略を取ったSSは他にも多くありましたが、
最終的に裏切ったり戦闘を再開する事もなく、仲の良いまま「勝ちを譲って」終わるというSSは他にはなく、
しかも意志乃の参加動機や性格とも矛盾しない、とても読後感の良い結末だったと言えます。
プレイヤーの性質のためか、随所にエロ描写や百合描写が見受けられるのも特徴で、
こういった部分であざとく人気を取りに行くハングリー精神は、とても素晴らしいと思います。


【ハイライト】
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 礼の双眸が驚愕に見開かれる。
 そして状況を理解するよりも先に、またも鳴り響く、今度は打って変わって明るく晴れやかなメロディ!
 辺りを見回す彼女の上方――スタンド最上段の手すりの付近に人影が見えた。

「――また、このパターンかっ……!」

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跳弾攻撃でピンチに陥った意志乃鞘を、白王みずきがバリバリの演出と共に救出しに現れるシーン。
繰り返し表現を有効に使っていて、糺のうんざりした様子が想像できるのが面白いですw


講評 糺礼

他のSSと比べるとやや短めですが、必要な情報はしっかりと描写されています。
読みやすく、能力の意外な応用法も見せてくれた点で、個人的に評価の高いSSの一つです。
やや絡め手的な勝ち方になってしまうためか、第一回戦のプレイヤーの殆どが選ばなかった
「漁夫の利」戦略での勝利を採用しているのも特徴といえるでしょう。
しかしこのSSは、「戦っていなければヒーロ補正は働かない」という納得の攻略法を元に、
死んだ振りを装って不意打ちを仕掛けるという狡猾さで糺礼本体のキャラ立てを成功させ、
さらに傍から「能力が推理できない」形での勝利を手にしています。
ワンアイデアでの勝利といってしまえばそれまでですが、
これらの様々な効果を一度に実現できるトリックという事で、文章量の軽量化にも寄与している点が秀逸です。
全員が遠距離攻撃を所持していることを踏まえた緊張感から、
いきなり糺礼が倒れる、という意外性のある冒頭も面白い構造だったと思います。
ただし、これが「糺礼」のSSである(=糺礼の勝利が確定している)限り、最初に倒れた糺は
必ず「死んだふり」なのだと読者に分かってしまう、という点も指摘されていました。


【ハイライト】
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一方、みずきはまだ自分が攻撃を放っていないにも関わらず礼が倒れたことから、鞘の出したビームが決め手となったと判断した。
ヒーロー部の噂と合わせて、鞘の持っている飛び道具はビームのみ。
だが、ビームなら水の盾を張れば屈折させ労なくかわすことが可能だ。遠距離で戦い続ければ勝利の道はある。

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SS中では軽く流された上、実際にこのトリックでのビーム回避を行ったわけではありませんが、
ビームに対する水系能力者の対処法として、基本的な応用を踏まえて行動を考えさせている、丁寧な仕事です。


講評 意志乃鞘

白王みずきのSSと同様、タッグを組んで怪人ポジションの糺礼に立ち向かう、という構造です。
序盤では三つ巴戦闘特有の危うさや戦略などを丁寧に描写しており、
能力の活用も、水弾を蒸発させての蒸気煙幕や、水の剣による近接攻撃などの、
他のSSにはない手法を様々に試みている部分などは面白いところです。
また、憎悪に燃える糺礼や、やはり挙動が可愛らしい白王みずきなど、
キャラクター性格の書き分けは第一試合のSSの中では一番だったのではないでしょうか。
……しかし、このSSには個人的に絶対に許容できない問題点が存在します。
糺礼を倒した後、最後の白王みずきとの対戦が完全に省略されている点です!!
時間的な問題で最後まで書ききれなかったのでしょうか? 他の描写はちゃんとしているのに……


【ハイライト】
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 右胸はナイフを、左胸はデリンジャーと呼ばれる超小型の拳銃を持っている。
 当然、というべきか。これを見た鞘とみずきは驚愕し、目を見開いていた。
「そうだろうな――! 貴様らのように恵まれた能力者に、こんなものが想像できるわけない!」
 右胸のナイフは鞘に向けて投擲され、左胸のデリンジャーはみずきに向けて発砲された。

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単に魔人を憎悪するだけでなく、「恵まれない能力者」「恵まれた能力者」という、
独自の哲学を持つ礼のキャラ付けが私好みでした。欲を言えば、それに見合う実力描写も欲しかったところです。


講評 灰堂四空

やや短めのSSながら、実力的にも灰堂が勝利する説得力があり、過不足なくまとまったSSという印象です。
なんだか具体的に説明できないのですが、セリフだけでも灰堂四空というキャラの良さが伝わってくるSSで、
病気で弱った対戦相手の羽山を思わず心配してしまったり、真面目にやっていても「オッケー」と口にしたりと、
格好を付けているようでちょっと抜けている感じのキャラクターが個人的に非常に好みでした。
第2試合は他の試合と比べ、3人の内に露骨な強能力者が存在せず、
どちらかというとパワーバランスの拮抗した試合だったのですが、そんな中で、
「2対1の共闘ならば残り1人に勝てる」「1対1ならば病気の方が負ける」といった展開は非常に分かりやすく、
初見の方にも納得のいく決着だったといえましょう。
魔人能力の「菌にすら認識されない」という応用法も意外性のあるトリックだったと思います。


【ハイライト】
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そんな彼女を見て、灰堂も中心部に向かう。

「オッケー、あんた…気に入ったぜ!
 俺は灰堂四空。もう一人はどこにいるか知らねーが…正々堂々、勝負と行こうか!」

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対戦相手が迂闊にも姿を晒してしまう、という展開は他のSSにもいくつか見られましたが、
それに対し灰堂は自分側も策を仕掛けず正々堂々と挑んでおり、キャラの好印象に一役買っています。


講評 羽山莉子

第二試合一位通過のSSです。全体的なセリフや仕草が可愛らしい雰囲気を醸し出す中で、
構成はしっかりとした能力バトルとして完成されており、魔人能力のみならず、
個々人のスキルを最大限に活用して戦闘を組み立てている点が高評価に繋がったのでしょう。
空間認識能力を平面的な間合いの計測のみならず、「高度計測」にも用いる辺りは、
自分にできることとできないことを緻密に検証して書いているという印象を受けました。
その他、菌と交渉し認識できる沢木の能力を、単なる攻撃用の能力として以上に、
偵察用の情報能力として評価しているなど、発想力の点でも光るものがあります。
灰堂四空との終盤戦は特に圧巻で、エレベーターでの密室戦からビル倒壊による場外勝ちと、
ギミックを最大限に活かし切った戦闘は、面白さだけではなく、大きなインパクトも与えてくれます。


【ハイライト】
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その瞬間。
エレベータ扉ごと、蹴り飛ばされる沢木の姿が目に映った。
エレベータの中からは、私よりも大柄な男が降りてきた。
真っ黒な服と真っ黒なサングラスに身を包んだ男。
直感で理解した。
この男が、このフィールドに居る三人目の男。

「――――灰堂四空――――」

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一旦体勢を立て直そうと逃走した沢木が、出現した第三勢力の灰堂に一蹴されるシーン。
展開としては王道ですが、こういうのはやはり、演出として非常に格好良く映えます。


講評 沢木惣右衛門直保

ほとんど説明不要な感じではありますが、とにかくテンションの高さで笑わせてくれる試合です。
シンプルながらも、殆どのダンゲプレイヤーが大好物のウンコネタという点で、
今回の参加者の中では邪道的なネタSSでありながら、相当な得票数を叩き出していました。
特に、畳み掛けるようなAAの多用がこのプレイヤーさんの持ち味といっても良いのでしょうが、
今回はさらに善玉菌が全般的にモヒカン雑魚AAで表現されているため、視覚的破壊力も抜群です。
元ネタのキャラクターをアレンジして、拳王≒菌王という設定を作り出した、キャラ作りの勝利でしょう。
その他細かい部分を指摘していけば、口調はほとんど同じはずなのに何故かやたらとゲスに見える灰堂や、
「なんか健康にいい力が来たぞ!」というセリフのアバウトさなど、なんとも表現できない面白さがあります。


【ハイライト】
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はさまれた
前方に莉子、後ろに灰堂…逃げ場はない
「オッケー」
「ばいばーい」
同時に蹴りが放たれた。

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蹴り技を主体とする格闘タイプの灰堂はともかく、爆弾使いのはずの羽山までもがダブルキック。
さりげなくも気づいた瞬間笑ってしまう、暗器型のギャグといえるでしょう。


講評 日谷創面

第三試合一位通過のSSです。長いSSではありますが、それでも最多票を獲得したということは、
長くても、しっかりと最後まで牽引するだけのストーリー力があったという証明でしょう。
事実、冒頭での惨敗から、戦闘動機の回想、自分の内に潜む手芸者ロクロとの対話など、
創面のキャラクターに関しては少年漫画的要素をこれでもかというほど投入しており、
戦闘を通して少しずつ成長し、覚醒する展開は、分かっていても熱くなるものがあります。
反面、やたらと身体欠損が多いのも特徴で、少女達を頭部破壊で始末していく様なども、
やや殺伐としすぎてはいますが、ジレンマに苦しむ創面の心中をよく表現できているといえます。
ただ、個人的に苦言を呈したいのは「続き」を前提としたかのような、大量の伏線を残している部分で、
一回戦負けがあり得る以上は、このような消化不良になり得るような展開はあまり好ましくないところです。
もっとも、コメントでは続きに「期待」しての票も多く、今回はこれがプラス評価されたと見て構わないでしょう。


【ハイライト】
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小波の「イメージ」によれば、二人はここで鉢合わせになるはずである。
実際彼は、『勝利へのイメージ』が構築された時点で「補正」によってこの部屋まで引き返そうとしていた。
それでも「間に合わなかった」のだ。重症を負った創面が時間内に戻ろうにも、それは物理的に不可能なことだった。

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SS内では偶然の産物ですが、小波の能力の穴を上手く破った展開です。
物理的に「できなくなっている」事は「できない」という理屈は、この能力の大きな弱点を表現できています。


講評 小波漣

主に小波の主観で思考の流れや状況の描写を細かく見せている、一人称形式のSSです。
敵の一人と共闘して残る一人を撃破し、さらに協力者を不意打ちで撃破するという、
三つ巴戦で最も効率的な展開を描いたのが特徴で、小波のクレバーさを表現しています。
ただし、「結昨日舟」というNPCを幕間SSで作成してMAPに銃を登場させるという展開は、
上手く使えば面白くなった可能性はありますが、SS中で銃を使用するのが小波のみで、
銃ならではの特性が役立ったわけでもないので、単に趣味に走っただけという印象を受けます。
これらMAP改変を始めとした、都合の良すぎる戦闘展開が票の低調に繋がった面は否めないでしょう。
他には、創面の名前の分かりにくい例えや、斎藤窒素の異様な大声などの、
SSの展開に関連しない不思議な描写が多かったのも個人的には疑問符がつきます。


【ハイライト】
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 今度は完璧に大脳を撃ちぬいたのだ。即死である。

「ごめんなさい、日谷さん。悲しいけどこれ、戦争なのよね」
 その「ごめんなさい」は、謝罪か弁明か――彼女にもわからない。それをごまかすように、かの名台詞を吐いた。

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戦争ではありません。


講評 熊野ミーコ

こちらも日谷創面と同様、第一回戦中でもトップクラスの長文SSです。
しかし、SSの内容は三者の視点からそれぞれ時系列順に状況を描写しつつ、
それぞれの策を追うという贅沢な構成になっており、この長さも納得といったところでしょう。
1人で戦況を支配することの出来る小波の能力を軸として、相手に最善手を取らせつつも、
ハッタリによって創面を小波に接敵させ、小波の攻撃を受けきった上で倒させるという、
「勝ち目がない相手をもう一人に倒してもらう」というセオリーをしっかりと押さえています。
熊野自身の能力描写よりも、どちらかというと創面の能力の応用に光るものがあり、
個室のドアロック戦略や、能力解除による拘束など、様々な形で使いこなしていたのも特徴です。
最後に武術の力で創面を圧倒したというのは能力バトル的には少々邪道ではありますが、
個人的には意外性とカタルシスを両立する、良い結末だったと思います。


【ハイライト】
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「豪華客船がァ♪」
「いあー♪」
「映画に出て来るとォ♪」
「てけり・り♪」
「沈むッ♪沈むッ♪」
「いあー いあー♪」

バギッ。 ドガッ。

不穏当で冒涜的な歌と破壊音が響く。

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章構成のSSの中で、熊野のセリフとナレーション一つだけの、どこで何をしているのかも分からない短い章。
その描写の少なさ故に不気味さがあり、この後の展開に向けた絶妙な「溜め」となっています。


講評 ボルネオ

プレイヤーとしてはトップクラスに使いにくい能力を持ったキャラクターながら、
その分他の2人の心理描写が、手を抜かれることなく丁寧に書かれたSSです。
不動の倒され方がやや呆気無いようにも思えますが、ボルネオのポジションは
どちらかというとボスキャラクターに近いので、能力の無体さを表現した結果でしょう。
池松に能力を破らせる過程を描写した上で、相手の格闘能力を凌駕する野生で勝利する事で、
終盤でも展開が単調にならず、緊張感を保たせる演出となっています。
唯一気になる点はそこらのホームセンターにあるバールにプレイヤーの独自設定を与えていた事で、
しかもそれを用いるのがバールを使わなくても十分な近接格闘能力のある池松という辺り、
個人的にはその部分が最後まで引っかかったままでした。
票数だけ見れば残念な結果となってしまいましたが、これは他2人のSSが優秀すぎただけで、
文章力的には十分に他ブロックでも張り合える力はあったと思われます。


【ハイライト】
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熊や、パンダといった可能性は手の短さから考えてまず無いだろう。
そして、あの大きさの霊長類といえばゴリラかオランウータンといったところだろう。
(赤毛のゴリラは存在しない……なら、アイツはオランウータンか)
叢雲がその確信を持った途端、黒い霧に包まれた敵に異変が起こる。

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抜け落ちた毛の一本から、ボルネオの正体を推測する池松。
このSSでは他2つのSSに比べて格闘能力が低めですが、それを補うだけの頭脳スペックで強者の風格を出してます。


講評 池松叢雲

文体そのものは比較的淡白ながら、圧倒的な格闘性能が策略を踏みにじる恐ろしさを、
第一回戦の中でも最も説得力をもって表現していたSSではないでしょうか。
能力の推理や共闘という選択肢を持っていることが描写されつつも、
それを敢えて捨てて一直線に暴力で攻め進む池松のストイックな魅力もさることながら、
各所に散りばめられたシュールな英語のセンスはネタSSとしても面白く、
「単純な暴力そのものが心理的なハッタリになる」という対不動戦の結末にしても、
十分に納得の行く展開と、キャラクター、ギャグ、構成の全てがハイレベルにまとまっています。
特にボルネオを「総当たり」で倒すというのは思いつきそうで中々思いつかない解法で、
しかも英検段位習得者という池松のキャラクターにもあった、これ以外にないといえる倒し方でした。
演出面では、不動やボルネオが英語によって倒された時のエフェクトのキレっぷりも笑えますが、
各所に挿入される回想が第4試合の3人の因縁を伺わせるもので、想像をふくらませてくれます。


【ハイライト】
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「ない……」
 右腕を切り落とすべく、不動は冷静に床に転がる鉈を操作した。
 誤りであった。
「あんたがそこから撃てる技は、なにもない」
「――正解だ」
 池松は笑った。

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池松の圧力を前にして、不動が失策を強いられるシーン。それにも関わらず、
緊張感のある台詞回しと地の文が非常に格好良く、対戦相手である不動の格を落としていません。


講評 不動昭良

第四試合一位通過のSSです。投票でも池松叢雲のSSとのデッドヒートを制しただけあって、
こちらも非常にレベルが高く、能力バトルものとして誰もが満足できる完成度となっています。
全体的に高レベルな第四試合の中でも、このSSは三つ巴の乱戦の描写力が非常に高く、
1対1での戦闘への残り1人の不意打ちや、三者三様の敵の優先順位の心理描写、
さらに、池松にしか攻略が不可能な事を理解して、「ベルで呼び寄せてボルネオの正体を教える」など、
戦況の動かし方は非常に秀逸で、静止した緊張感を与える池松のSSとも好対照でした。
特に優秀な点は「敵の脅威」の丁寧な描写で、ボルネオと池松のどちらもないがしろにされる事なく、
明確な強者として不動を追い詰めています。恐るべき強者が不動を追い詰めるからこそ、
それを逆転して勝利する不動の強さが際立つという、基本的ながらも難しい構成を書ききった作品でした。
このキャラクター描写力と文章力の高さが勝利に直結したと言って良いでしょう。
勿論、場外に能力を用いる発想力や、ギミックの利用が高評価に繋がった事も言うまでもありません。
ついでに、池松の英語のセンスが本人のSSに迫る再現度だったのも驚きです。


【ハイライト】
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「仮定法は、本来ありえないことを表す時に用いる構文だ。その際、動詞は通常の直説法とは異なる変化をする」
 言いながら池松は一歩踏み出した。……否、踏み出そうとした。
 しかし、前に進むことはできなかった。足が床を蹴る、その感触がない。
「これは……」
「なるほど、ありえないことを表す……ですか。うちの課長の口癖は、『魔人の犯罪にありえないことはない、あらゆる可能性を考慮しろ』なんですけどね」

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無関係にも思える問いかけから、さりげなく不動自身のバックグラウンドを描写し、
さらに決着への伏線とするセリフ回しのセンスが非常にジョジョっぽくて、なんというか最高でした……!


講評 医死仮面

キャラクターのイメージに合った、トラップと漁夫の利を使っての効率的な勝利を収めているSSです。
医死仮面自身には身体能力とアイテム以外に特に際立った特殊能力が存在しないものの、
切断糸を張り巡らせた電車を丸ごと横転させてミキサー化するという発想はまさにケタ違いのスケールで、
二段構えのこの本気の殺しぶりに魅了されたプレイヤーも多かったのではないでしょうか。
医者ながらの観察術の解説に民明書房を引用している辺りも、ハッタリが効いていて面白いところです。
また、自キャラの魅力を十分に引き出しているだけでなく、医死仮面が直接関わらない部分である、
序盤の∞と櫛故の戦闘描写も秀逸です。特に∞の持つ多彩な能力を全て戦闘内で描写していたのは、
第五試合では本人のSSも含めてこのSSだけであったという事は、もっと評価されても良い点でしょう。
眼鏡を失って泣く∞や、背後からの止めに躊躇う櫛故など、そのキャラクターも上手く掴めています。
そしてそれらとは何の関係もないのに挿入されたロリエント急行の各描写のセンスは、
独特というかもはや不可解とも言えるレベルで、間違いなくこれがマニアック的な評価の一因です。


【ハイライト】
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医死仮面は∞の死を確認すると、その後は一瞥もくれることなく自身の胸の火傷に薬を塗り始める。ジョン・スミスは誰の心にも残らないし、誰も心に残さない。彼女らと違い、死を悲しんでくれる者などいないのだろう。

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医死仮面のキャラクター性を如実に示したラスト。
他のSSとは一味違った、余韻のある終わり方が印象に残ります。


講評 一∞

第五試合一位通過のSSです。全体的に文章力が高く、多彩な表現で楽しませてくれるSSです。
やや短めながらも、内容は共闘からの医死仮面の撃破さらに再戦、
そしてトリックを明かしての櫛故の撃破と二転三転した展開を盛り込んでおり、
読みやすさと∞自身のキャラクターの面白さが、票の獲得にも繋がったのでしょう。
特筆すべきは、∞が5種類のうち3種類しか能力を使用していない点で、
それでも勝利を収めている辺り、二回戦以降にも余力を残した上手い構成です。
「圧倒的な強者が圧倒的なまま勝ち進む」という展開のSSで一回戦通過をしたのは
八試合を通してもこのSSのみで、それが逆に高い筆力を物語っています。
ラストのエロ描写での票の獲得にも成功している辺りも、作戦勝ちといったところです。


【ハイライト】
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 ──────何故、レーザーを使わなかった?
 解1。間合いが遠すぎた。或いは、近すぎた。
 否。遭遇時の間合いは充分な距離であり、むしろ機先を制する絶妙の攻撃手段足り得た。
 解2。既に何度か発射済みで冷却時間中だった。
 否。何らかの破壊音や戦闘音は一切聞こえなかった。
 解3。レーザーによる列車の動力部破壊による事故を恐れた。
 否。眼鏡から水平方向に飛ぶ光線は車体を壊したとしても動力部に影響を与えない。
 解4。味方への誤射を恐れた。
 是。乱戦での射撃は容易に側面や敵背後で同士討ちを引き起こす。

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共闘して医死仮面を倒すだけでなく、2人の敵を前にした医死仮面側の推理過程もかっこ良く描写されています。
でもどの道、ここでレーザーを撃たれていたら対処できなかったような……


講評 櫛故救世

能力作りの秀逸さからGK間での下馬評は非常に高かったキャラでしたが、
今回は相手が索敵能力を持っていた事もあり、厳しい戦いとなりました。
同時リングアウトによって勝ちを狙うというのは移動するマップを利用した面白いトリックで、
能力を応用した必殺技も含め、個人的には勝ち筋の目の付け所は鋭かったと思っています。
しかし、それに至るまでの戦闘描写がどうにもあっさりしすぎていて、
強能力者であるはずの医死仮面や∞が、いまいち強者に見えないという難点は否めません。
こちらも、∞の能力に関しては5種類を全て使わせていたはずなのですが……
キャラクターのポテンシャルが非常に高いと期待されていただけに、残念な結果となってしまいました。
近距離での敵との会話の応酬がかなり多いのがこのSSの特徴の一つですが、
それが逆に戦闘の緊張感を削いでしまったのかもしれません。


【ハイライト】
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「しかし残念だ。それだけの実力がありながら眼鏡をしていないとは……それが君の敗因だよ」
「そうかな……さっきの仮面の人と違って、喋りすぎなのが貴女の敗因だと思うよ」

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∞だけでなく櫛故本人も、能力内容から自己紹介から、確かに喋りすぎです。
というか、医死仮面も結構喋っていたりします。


講評 小宅麗智奈

一見すると真面目なSSに見えますが、なんと本人が殆ど何もしていないのに勝ってしまうという、
よく見るとすごい展開をしているSSです。私もこれに気づいた時はかなりの衝撃でした。
小宅は全編にわたってフライトユニットと反射神経を使って敵の攻撃を避けているのみで、
真野は共闘を申し出たと思ったら次の登場シーンでは一夜に倒されており、
一夜は勝手にアキカン達にリンチされて、無抵抗なまま小宅の蹴りを受けて倒れてしまいます。
文体からはどう判断したものかわかりませんが、どちらかというとネタSS寄りの作品だったのでしょうか。
なので、特にこれといって評価できるトリックや構成などもありませんが、
真野と一夜の戦闘を完全省略するというとんでもない解決法はやはり投票でも問題視されており、
「あそこでああ来るとは思ってなかったからなー」というセリフも、ギャグっぽさを増長させています。


【ハイライト】
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真野風火水土は真野一族の魔人である。彼らにとって貧乳という言葉は何にも勝る賛辞の言葉とされている。
逆に巨乳好きなどは唾棄すべき存在とされ発覚次第一族から追放されムラハチとなる。

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真野一族の唯一の共通点ともいえる「貧乳好き」設定を拾った、ファンサービス的なセリフです。
もちろんこれが展開に影響することはありませんでしたが……


講評 真野風火水土

第六試合一位通過のSSです。全参加者中でもトップクラスに短いSSでありながら、
その短い文章の中に真野のキャラクターの魅力と敵の能力を破るトリックが詰め込まれており、
短編的な味わいのある、内容の凝縮されたSSとなっています。
夏祭りというマップを、フライトユニットを制限させるという形でさりげなく利用し、
更に冒頭のりんご飴の描写を、コイントスの無駄打ちから一夜の誘導に繋げるという無駄のない構成は、
いつの間にかペースに乗せられている小宅の視点を追っているかのように一体感のある流れでした。
セリフ回しのセンスも良く、格好良いだけでなく親しみのあるとぼけたキャラクターでもあり、
総じて、真野のキャラクターの魅力で牽引する力のあるSSだったということができます。
そして、小宅の厄介なスキル「反射神経」を、死角からの空間射撃で倒すという解決もスマートで、
さらにそのタイミングを完全に読みきって矢塚を狙撃した真野の抜け目なさなど、魅力は語り尽くせません。


【ハイライト】
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矢塚は面倒は他人にはかけても決して自分では被りたがらない男である。1000万円は惜しいが、これ以上苦労する代償としてはあまりに安く釣り合わない。
「今日はもう……やめとくわ」
「そうしよう」
繁みの奥から白旗の代わりに立ちのぼる白い煙を見て真野も自分の煙草に火をつけた。

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最後まで一切姿を見せないまま終わった矢塚一夜ですが、それにも関わらず漁夫の利を狙って不意打ちを仕掛け、
さらに自分が不利になると即座に棄権する辺り、とても「矢塚一夜らしい」と思わせてくれる存在感でした。


講評 性懲りも無く蘇りし矢塚一夜

遅延ペナルティのルールのために、前代未聞の-17票という結果を叩き出した驚異のSSです。
しかし、投票結果上は一位を獲得していただけあって、真野に迫る非常にハイクオリティな構成力で、
正直いって、これが一回戦敗退をするという結果には残念なものがあります。
SS内では他のキャラクターにはない「小物でゲス」という一夜の性格を存分に表現しており、
冒頭で即座にアキカン達から略奪を行う時点で、他と一味違った笑いと興味を湧かせてくれます。
しかし小物的なリアクションを取りながらも、面の攻撃のアキカン散弾で小宅の反射神経を攻略したり、
真野の能力を「コインを宙に舞わせない」事で攻略するなど、能力の攻略法に関しては随一です。
さらに敵側である真野の台詞回しや腔発トリックなども非常に「それっぽい」ものが使われており、
戦略も含めたキャラクター描写の優秀さには、文句の付け所がありません。
一夜は本当にいいキャラクターをしており、アキカンを惨殺して脅したり、真野のセリフの途中で発砲したり、
挙句の果てには小宅の口に銃口を突っ込んだりなど、こちらの魅力も別の意味で語り尽くせませんw


【ハイライト】
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あの時イカさえ取ってなければ恐らく、小宅は一夜を油断させ誘い出す
ような行動はとらず、一夜は無謀な奇襲をしなかっただろう。
或いは一夜は完全に小宅の虚を突き、小宅を殺害できたかも知れない。

あの時イカさえ取ってなければ!!

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一夜がイカ略奪のせいで小宅に気づかれてしまった事態を、悔やみに悔やみまくる地の文。
地の文なのに、本当なんなんでしょうねこのテンションw


講評 姦崎双

バトル描写と言うより、プレイヤーのセンスに賭けたネタSSといった趣のSSです。
というより、SSの描写はほぼ100%セックス描写しかありません。
SS内で対戦相手が実際のスペックを発揮出来なかったり、頭の回転が悪くなったりするのは、
結果的に自分のキャラクターを勝利させざるを得ない以上、ある程度は仕方のない事ですが、
対戦相手に対して侮辱的という意味であれば、これ以上のSSは恐らく考えられないでしょう。
笑うに笑えませんし、純粋にエロSSと見ても実用にたえるようなものではありません。
文章力は決して低くはないとは思うのですが、とにかく扱う題材がひどすぎて判断がつきません。
というか、講評でここまで褒めどころに困るSSはこのSSくらいのものです……
触手なのに「にっこりと笑った」りするセンスもなんかおかしいです。


【ハイライト】
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(省略)

 それは少女と少年にとって一瞬の隙だった。触手が二人の足を絡め取っていたのだ。

(省略)

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セックスに至る過程を完全に省略するという、信じられない強行手段です。
ネタSSの手法の1つとしてならば面白かったかもですが……いや、やっぱりネタSSなのかな……


講評 のもじTHEアキカン・クイーン・ヘッド

第七試合一位通過のSSです。魔のブロックである第七試合を制したSSに相応しいというべきか、
とんでもない異形のセンスを爆発させたハイテンションネタSSです。
まずは舞台装置であるモヒカン雑魚達に双達が囲まれて撲殺されるという衝撃的展開に始まり、
各所に北斗ネタを散りばめつつも、流れるように石田の変態心理描写に移ります。
そしていつの間にか自然に混じっていたのもじが出現し種明かしをするという、
ドライブ感溢れ過ぎの高次元構成となっています。しかしながら、
モヒカン雑魚に混じっていた事にも、パンクロッカースキルという確実な裏付けを取っており、
さらに双の撃破も、触手の本数の少なさによる対処人数の少なさという弱点を突くなど、
どこからどう見てもネタSSでありながら、構成の整合性も取れているというのが恐ろしい所です。
結果的に石田も全くのもじに歯が立ちませんでしたが、度重なる変態描写のお陰でキャラだけは立ちまくってます。


【ハイライト】
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(注釈)
注1:阿野次のもじの発言
注2:阿野次のもじの発言
注3:阿野次のもじの発言
注4:なにか絶対運命的なモチーフ描写。ただしDPは尻から出る。

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よりによって注釈文を伏線化するという、どうやったら考えつくのか分からない異次元的手法。
突出した個性の本文に留まらず、最後にとんでもないインパクトを与えてくれます。


講評 石田歩成

こちらもギャグ描写に寄ったネタ寄りのSSでした。こちらもキャラの捉え方が秀逸で、
双姉弟の敗退の経緯は、第七試合の中でも一番らしい感じのやり取りでした。
戦術自体は、触手への能力発動による半必殺と、モヒカンをデコイに使ってののもじへの接近の2つで、
特に変わった応用もしていないシンプルなものでしたが、どちらかといえばそれに至るまでの経緯が面白く、
棋士として冷静に考えながらもやっぱりレイプで絶頂に達してしまう石田や、
その背後でやっぱりひどい事になっているのもじと双(弟)などは、
実にダンゲロスかつ世紀末的な、今後の期待できる描写でした。
石田はこの中では一番まともな人物のはずですが、やはり全体的になんだかコメディチックで、
最後の決め台詞をいまいち決めきれていない辺りなども好感が持てます。
敵が2人とも直接戦闘タイプの能力者ではなかったため、バトル描写は見れませんでしたが、
機会があれば、石田の戦闘シーンも一度見てみたいものです。


【ハイライト】
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「く、くうぅ……こうして俺は体力を奪われていたのか……だが、いつまでもヤラレっぱなしではおれん……待てよ。そもそもなんでごもら君は拘束されてないんだ?
 能力の対象に入れられなかった……? 能力は二人までしか相手にできない訳か。ならば……」
 歩成は一つの作戦の実行意志を固めながら絶頂に達した。
「この作戦で行くしかない、い、イクゥッ~~~!!!」

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敵の能力を推理して対策を立てるという、本来かっこ良くあるべきシーンのはずなのですが、
いかんせんレイプされながらの発言なので、酷い事になっていますw


講評 伝説の勇者ミド

第八試合一位通過のSSです。毎回キャラクターの個性的な描写に定評のあるプレイヤーですが、
今回もその前評判に違わないキャラクター達の描写を軸にストーリーを組み立ててくれました。
ハッタリを軽く看破し、川の深みすら即座に逆利用するバロネスの老獪さ、
ストイックな言動と、まさに次元の違う強さで迫る練道の極悪ぶりは、
全体的にキャラの濃い第八試合を代表するSSに相応しい強烈さです。
しかも、ミドの賢さを生かした戦術による構成の妙や、随所に仕掛けられたギャグ描写など、
これ一つで二重三重に楽しめる、まさにエンターティメント的なサービスに溢れたSSでした。
随所で挿入される全く無関係な股ノ海の描写は卑怯じみたレベルで、何度見ても笑わせられてしまいます。
それだけではなく、誰が見ても弱能力の『おもいだす』を存分に活用した敵の性質の推理、
更に冒頭の仕掛けが終盤になって効いてくる展開は、能力バトルの醍醐味を体現しているでしょう。
しかもその一つが「パンツを穿いていない」事だとは、誰も予想する事などできなかったはずです。


【ハイライト】
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「逃がさないわよォーー!」
迫り来るオカマが、飛び上がって障害物を飛び越えたのだ!

「と、飛んだーーーーーーーーーーーーッ!?」

赤きオカマ飛翔す!!
衝撃的なそのシルエットに、ミドの絶望はより色濃いものとなった。

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赤きオカマ飛翔す!!
なんというか、疾走感に溢れたこのフレーズがなんとも言えずお気に入りです。
バロネスが飛んだ時のミドのショック感がよく現れているためでしょうか……


講評 裸繰埜闇裂練道

正直なところ、0票である事が信じられないくらい完成度の高いSSです。
他2人のレベルの高さを抜きにしても、やはり票の少なさのあおりとしか言えないでしょう。
文体は落ち着いていて、丁寧な情景描写が成されており、
ギミック以外の形でも、竹林というマップを表現に役立てているという印象を受けます。
ミドがPジャイアントパンダを駆って現れる辺りはやや唐突感のある展開ですが、
それでもバロネス、ミドの両者の心理を描写すると共に、2人共に最善手を取らせています。
また、バロネスの飛行原理を正確に看破していたプレイヤー性能の高さも見所の一つです。
パンダの群れに上空のバロネス、さらに飛び来るナイフといった圧倒的不利な状況を、
それすらも凌駕する凄まじい暴力で練道が蹂躙していく展開には戦略を越えた爽快感があり、
まるで初登場時のウボォーギンの活躍のような、素直に燃える事のできるSSだったといえるでしょう。
第八試合は本当に票数が少なく、さらに上位2人が拮抗していたためのこの結果でしたが、
未読の方は是非この3人のSSを読んでください。GKサイドからも、自信を持ってお勧めいたします。


【ハイライト】
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溜息をついて、その場にどっかと座りこんだ。何となく空を見上げて満月を眺めた。円形に切り取られた空に浮かぶ丸い月。
何だか無性に可笑しくなった。

「まぁ、良い。久々に工夫しがいのある戦いが出来た」

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一連の戦闘を「苦戦した」ではなく、あくまで「工夫しがいのある」と表現する練道。
事実、練道はこの戦闘で殆ど傷を負っていません。これだけでも圧倒的な強さが分かる一言です。


講評 バロネス夜渡

こちらも、ミドや練道のSSに勝るとも劣らない、非常にハイレベルなSSです。
文章力もさることながら、このSSはマップのギミック利用に優れており、
竹槍を量産して攻撃や防御に応用する辺りは、まさにこちらの狙い通りといったところです。
そして、展開的にはその格闘性能で戦局を支配する練道とのタイマンが軸となっています。
特に秀逸だったのは、『ブラディ・シージ』による『永劫』破りで、
キャラ設定の「気合の飛行」を納得させつつ、『永劫』で動けずとも強制的に身体を稼働させるという、
能力の応用という点に関しては、一回戦で最も意外かつ鮮やかに見せてくれたSSだと思います。
能力名からも恐らく、これはキャラ作りの時点から考えられていた応用法でしょう。
高耐久力のスキルによって練道の攻撃を受ける事ができたのも、キャラ作りの大切さを示しています。
ミドもまた、狸寝入りをしてやり過ごしたり、地形を利用して血を媒介とするバロネスの能力を封殺するなど、
しっかりと油断ならない雰囲気に描写されており、対戦相手の個性も良く書き分けられています。
タヌキという単語の様々な側面に絡めてSSを展開させていくのはこのプレイヤー独特の手法で、
地力の高さが窺い知れます。ミドとの決着がやや不思議な感はあるものの、文句の付け所のないSSです。


【ハイライト】
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「でも別に、アタシは格闘家と違うもん。アンタの土俵で戦う訳じゃあないからねー!」

指を鳴らすと、十数本の竹槍が夜渡の周りを囲むように展開する。
『ブラディ・シージ』の真骨頂、大量の武器による包囲戦術だ。

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個人的に意外でしたが、複数の武器を同時操作して敵を包囲するという応用は、
第八試合では本人のこのSSのみでした。プロローグでナイフを操作していた姿が印象的だったからでしょうか?



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