白王みずき

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dangerousss

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白王みずき(はくおう みずき)

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希望崎学園一年生。風紀委員会所属。
身長は平均よりやや高めで胸は控えめ。セミロングの髪を首のあたりで二つに縛っている。
成績は優秀で運動神経も悪くなく、料理上手で面倒見のいい委員長キャラ(別に委員長ではないが)。
まじめな性格で、言葉遣いも丁寧。また正義感も強く、立ちはだかる高い壁に敢然と向かっていく勇気も持っている。
基本的に争いは好まないが、仕事柄、必要とあらば心を鬼にし、能力を駆使して相手と戦う。

これらの性格は全て、今は一緒に暮らしていない兄から学んだものである(現在の彼女は母と二人暮らしである)。
周りにはうまく隠しているが大のお兄ちゃん子であり、いつか再会する瞬間(とき)を夢見て、兄に認めてもらえるような立派な女性になろうと心掛けている。
そんな彼女の一番の悩みは、己の決心と能力が完全に乖離していることである。

なお、今回のトーナメントへは、彼女なりの「立派な女性になる」ことの修行の一環として参加を決意した。
彼女の中では「兄愛>厭戦」なのであった。

魔人能力『みずのはごろも』

能力名は『みずのはごろも』――水を自在に操作することができる能力である。
その制約として、まず操作する水は一度衣服として己に纏わせなければならない。
そして、身に纏った水を消費することでのみ技を放つことができる。
要するに、技を使えば使う程――水を放てば放つ程、自分の衣服が消えてゆくのだ。

水を纏う過程を彼女は“着替え”と呼称しており、己の身体と触れている水に念を込めることで能力が行使される。
それらの水は淡い光を放ちながら少女の身体を伝って任意の部位へと登り、再度の念によって刹那のうちに望んだ衣服へと変化する。
ゆえに、“着替え”のための毎朝の水浴びは欠かせないという。

普段は希望崎学園の制服と化した水を纏い学園生活を送っている。
彼女自身はこの能力を「女性は人前でみだりに肌を出すものではありません!」として恥だと思っている。
が、仕事柄なんだかんだで能力を使って問題の処理にあたることになってしまう。
その際は、「発射する水の威力は残りの布地の表面積に反比例する」性質のせいか、望むと望まざるとに関わらず段々と肌色が増えてゆき、最終的にはだいたいあられもない姿を晒すことになる。
体の各部をもじもじと隠しながら羞恥に頬を染め、目に涙をためつつも、「一人前の女性が公衆の面前で泣くわけには……!」と気丈に振る舞う彼女の姿は一部のマニアに大好評らしい。

根がまじめな彼女は、いつ・どのくらい能力を発動することになっても大丈夫なよう、唯一兄から貰ったミサンガ以外の全ての衣服を能力による産物としている。
それゆえに彼女は「能力に覆われているだけで実質全裸」なのであり、能力無効でも喰らった日にゃ、瞬きする間にすっぽんぽんであろう。
勝利の一つ向こうの岸には全裸の恥辱――ギリギリの境界線上で、学園の秩序維持と兄との再会のため、頑張れ、みずき!

プロローグ

【白王みずき プロローグSS 秩序と痴女】


――みずき、僕は曲がったことが嫌いだ。

――強者に諂い弱者を虐げる、そんな世界は間違っている。

――僕のように、正義を愛する女性に育ってくれ、みずき。その時は、きっと迎えに来るから……。



「兄さんっ……んう?」

 安らかな寝息を立てる横顔に柔らかな陽光が差し込み、少女は目を覚ました。
 未だ微睡みの中の少女は、カーテンの隙間から漏れる眩しさから、今が朝であることを知る。
 身体を起こし、水色のパジャマの袖で目をぐしぐしと擦りながら、ぼうっとした頭を覚醒させてゆく。

「朝……? ということは、さっきのは、夢……」

 それは幼き日の一幕。少女にとって大切な存在と交わした約束。
 少女は左の手首に巻かれたミサンガに手を添え、彼の者の名を切なげに呟く。

「みかど兄さ――」

「みずきー! 学校遅れるわよー!」

「ひぇっ!」

 部屋の外から響いた大声が、物憂げな世界に浸っていた少女を現実へと引き戻した。
 首を傾けて時計を確認すると、針はいつもの起床時間よりも十分ほど先を示していた。
 少女は慌てた様子でベッドから跳ね出て、部屋を後にした。


 少女の名は、白王みずきという。
 希望崎学園の生徒であり、風紀委員会に所属している。
 彼女は現在二人暮らし中の母親から渡されたコーヒーを一啜りし、眠気の残滓を吹き飛ばす。

「みずき、朝ごはんはー?」

「うっ……ごめんなさい、その、時間が……」

 みずきは謝りながら、如何にも申し訳なさそうに俯く。
 母は肉親に対してもばかに礼儀正しい娘を微笑ましく思いながら、「仕方ないなあ」と少女に笑いかける。

「それにしても、みずきが寝坊だなんて、珍しいこともあるもんねえ。変な夢でも見たの?」

「変じゃありませんっ! ……変じゃありませんでした、けど……」

 突然大声を出したり、かと思えば頬を染めながらごにょごにょと縮こまったり、忙しない少女であった。
 母は娘の挙動不審の理由をなんとなく察しながら、気付かない振りをして娘に話しかける。

「どうでもいいけど、時間ないんじゃないの? “着替え”なくていいの?」

「ああ、そうでした!」

 少女は母の言葉で急務を思い出し、スリッパをぱたぱたと鳴らしながら、お風呂場へと入っていった。
 そして“パジャマを着たまま”浴槽へと入り、蛇口を捻る。
 当然に浴槽内へと水が注がれてゆき、それがくるぶしに掛かる程度に溜まったところで蛇口を逆に捻り止めた。

「んっ――!」

 薄く張られた水の中で、少女が何かを念じると――なんと、身に着けていたパジャマ等が、ぱしゃり、と水に“戻った”のである。
 パジャマだった水は、あるものは重力に促されるまま足元の水の元へ落ち、またあるものは少女の柔肌を伝って水面へと還って行った。
 あっという間に生まれたままの姿になったみずきは、改めて呼吸を整え、

「ふっ――!」

 またも、今度はさっきより些か力強く念じる。
 すると、今度はさっきとは逆――少女の祈りに呼応するかのごとく、浴槽の水のうち、少女と触れている部分が淡い光を帯びた。
 そして水はまるで生命を持ったかのように、ゆっくりと少女の身体を伝い、登ってゆく。

「んっ……んんっ……!」

 這い登る水の感触に悩ましげな声を漏らす少女の身体を、煌めく水が次々と覆ってゆく。
 伸びた脚を経由し、小振りな尻や薄い胸に纏わりつく水は、あたかも生娘を犯すスライム状のモンスターのようであった。
 やがて、少女の上と下の秘すべき部分に到達した水はそこで動きを止め、主の次なる命令を待つ。

「はあ、はあ……はっ!」

 上気した息遣いで少女が三度目の念をこめると、水は一瞬のうちにその性質・形質を変じた。
 先程まで淡く輝く水に覆われていた二点には、穢れを知らぬ処女雪を想起させる純白が在った。
 それは、紛うことなき、女性ものの下着であった。

 これが彼女の能力『みずのはごろも』である。
 水を衣服に変え、纏うことのできる能力。
 それだけの能力ではないが、ともかくこれが彼女にとっての“着替え”であり“武装”であるのだ。

「ふうっ……お着替え、完了です」

 そうこうしている間に、全ての“着替え”が終了した。
 膝丈ソックス、プリーツスカート、ブラウス、カーディガン……そして、風紀委員の証たる腕章。
 ピンクの簡素なヘアゴムにて括られた二房の後ろ髪を揺らしながら、少女は浴室を出た。

「おかえりー。今日はいつもよりゆっくりだったね。なんかいつもより顔も赤いしぃ?」

「な、なんでもありませんっ!」

 にやにやと楽しげにからかってくる母親をぴしゃりと撥ねつけ、みずきは玄関へと向かう。
 その性質上、毎日、幾度となく繰り返してきた儀式めいたこの能力発動だが、少女はこの水を纏う際に味わう感触に、未だ慣れることができていなかった。
 きっと敏感肌なのだろう。

「しっかし、休日だってのに登校とは、風紀委員って大変なのねえ」

「何故か最近、校舎の会議室や保健室が破壊されてしまったので、それの復旧のお手伝いをしてるのですよ。まったく、誰がこんなことをっ」

 ローファーを履きつつぷんすかと文句を口にするみずき。
 彼女たち風紀委員は、現在、生徒会と力を合わせ、何者かに破壊された校舎の復旧の手伝いをしているのだ。
 その他、有志の生徒を含めた協力者たちは、休日返上でことにあたっている。

「では、行って参ります!」

「おう、気をつけてねー」



 速足で歩き、みずきはなんとか集合時間内に学校に着いた。
 着いて早々に開始された復旧作業は数時間続き、一旦の昼食休憩と相成った。
 みずきは一緒に作業していた風紀委員の先輩・吾妻操子と共に昼食をとっていた。

「あーあ、いつまでこんな作業続ければいいのかしらねえ」

「まあまあ。私たちがやらなくて一体誰がやるのか、ですよっ!」

 吾妻操子は、赤メガネとたわわに実った乳房が魅力的な二年生生徒会役員兼風紀委員で、みずきの新人教育を担当した縁で今でも仲良くしていた。
 二人は希望の泉らへんに設えてあるベンチに座り、支給されたコンビニ弁当をつついていた。
 生徒たちによる汗だくの作業の合間の、束の間の休息――そんな静かな時を破壊する、ならず者たちの絶叫!

「「 ヒャッハー!! 」」

「っ!?」

「なんですか、あなたたち!」

 彼女達の前に躍り出たのは、ピンクの鶏ヘアーにトゲ付き肩パッド、そして棍棒や手斧等の禍々しき武器を携えた、大量のモヒカンザコ達!
 何故、こんなところに大量のモヒカンザコが――? それは、「ここが希望崎学園だから」では足りぬ所以があった。
 というのも、最近こそ平和が訪れつつある学園だが、少し前までは、一月ペースでハルマゲドンが起こっていた程にこの学園は無法地帯だったのだ。
 戦いの度に生徒会と番長グループの魔人達が死にゆき、今年だけで幾度の政権交代が起こったことか――。
 精神を崩壊させモヒカンザコに堕ちてしまった生徒が大量にいたとて、なんらの不思議もないと言えよう。

「ヒャッハー! その弁当をよこしやがれー!」

「ヒャッハー! 姉ちゃん、いいカラダしてんじゃねーか! ファックさせろォ!」

「な、なんて下品な……!」

 己の欲望に忠実すぎるモヒカンザコ達の叫びに、みずきは顔を赤らめ非難の眼差しを向ける。
 一方の操子は足元に置いてあった大きなカバンを開け、指に糸の伸びたリングをはめた。
 先輩の臨戦態勢を受け、みずきも立ちあがり、操子の攻撃範囲から外れるよう距離をあける。

「ヒャッハー! 食料だー!」

「ヒャッハー! レイプだー!」

「みずきちゃん、討ち漏らしは頼んだわ!」

「了解です、操子せんぱい!」

 目配せし声を掛け合う二人の元へ、四方八方からモヒカンザコが襲いかかる!
 彼らは、なぜだろう、貧乳のみずきよりも巨乳の操子に群がっていく――だが、群がるその中心から、白目をむいたモヒカンザコが多数吹き飛ばされてくる!
 彼女の操る戦闘ダッチワイフに逆姦され、諸々を搾りとられて投げ捨てられたモヒカンザコが、うずたかい山を築いていた。

「その調子よ、あるる姦!」

「ヒャッハーッ、あの巨乳、なかなかヤバいぜェー! 近づけねえッ!」

「手斧だァ、手斧を投げつけるんだ、ヒャッハァーッ!」

 モヒカンザコにあって、そこそこの指揮能力を有する軍師モヒカンザコもいるようで、彼がこの集団のリーダーであるようだった。
 彼の命令に従って、手斧を持っているモヒカンザコ達が一斉に振りかぶる――だが!

「ヒャッ!?」

「なんだッ、なにが起こってるんだアアアアアッ!!」

 振りかぶった手斧は、しかして放たれることなく“何か”に弾かれ地に落ちた。
 謎の攻撃の正体を見極めるために辺りを見回した軍師モヒカンザコの目に留まったのは、一人の少女の姿――。
 “肘から先のカーディガンを失した”右腕を地面と平行に伸ばし、人差し指と中指をまっすぐ伸ばした銃撃スタイルで指先から雫を滴らせた、白王みずき!

「操子せんぱい、援護は任せて下さいっ!」

「ありがとう、みずきちゃん!」

 みずきの能力を知っている操子には分かっていた――モヒカンザコたちの手斧が弾き落とされたのは、みずきの仕業であることを!
 これが白王みずきの能力『みずのはごろも』による戦闘法である。
 その身に纏った水を自在に操ることが可能なそのチカラで、水を銃弾の如く放ち、モヒカンザコの手に命中させ、手斧を弾き落としたのだった。

 みずきの射撃のタネに気付けずに取り乱しているモヒカンザコたちを、操子の懸糸ダッチワイフ・あるる姦が処理していく。
 更なる恐慌状態に陥ったモヒカンザコたちは、指揮官たる軍師モヒカンザコへと振り返る。

「ヒャッハー、兄貴ィ! 一体どうすりゃいいんだよォ!」

「ヒャッハーッ! 落ちつけェ、お前らァ! 見たとこ貧乳の方のパワーは大したことねえ! 先にそっちをヤっちまいなア!」

「「 ヒャッハー!! 」」

 軍師モヒカンザコの指令に従い、今度はみずきの元へとモヒカンザコ達が殺到する――が!
 無策で直線的に突っ込んでくるだけのモヒカンザコに、みずきは冷静に水鉄砲を撃ち込む。
 水鉄砲は“現時点”でこそさほど威力は高くないが、モヒカンザコの象徴たるそのモヒカンヘアーを狙い撃ち水弾によってセットを崩すことで、モヒカンザコたちの士気を急激に奪い去る!

「クソッ……こうなったら、奥の手だヒャッハァー!」

 モヒカンザコたちはその殆どが戦闘不能に追い込まれ、残ったのは後方で指示を飛ばしていた軍師モヒカンザコだけだ。
 そんな追い詰められた彼が懐から取り出したのは、なんと、火炎放射器!
 その噴射口を操子の方へと向け、絶叫する!

「ヒャッハァァァ! 汚物は消毒だ~!!」

「きゃあああああっ!」

 火竜の口より放たれた豪炎が、操子とあるる姦を結んでいた糸を焼き切る――!
 主と完全に分断され燃え上がる相棒の姿を見ながら、操子は膝をついた。
 人形遣いとしては並以上の腕を持つ彼女も、相棒なくしてはその強さを充分に発揮することはかなわないのだ。

「操子せんぱいっ!」

「ヒャッハー! ケシズミになりなあああああ!」

「こうなったら――はあああああっ!」

 敬愛する先輩の危機に、みずきはその能力をフル・バーストさせる!
 肩幅に開いた両脚で全身を支え、敵の方向に掌を向け両手を合わせたその姿は、あたかも戦車砲の如し!
 そこから勢いよく放たれる、ダムの放水を思わせる水撃ッ!

「ヒャッ――ハアァァァァア!?」

 自身に迫りくる水弾に気付き、迎え撃つべく振り返った軍師モヒカンザコの目に映ったのは――圧倒的質量! 水の壁!
 火炎放射器でも焼ききれぬ水撃をまともに喰らい、そのセットを完全に“消毒”されてしまった軍師モヒカンザコ。

(ヒャッハー……何故、この短期間に威力が急上昇っ……がくり)

 意識を失った軍師モヒカンザコの前にいたのは、一瞬前には“両腕が露わ”になっていたみずきの、それこそ“隠すべきとこしか隠れてない”姿だった。
 自己主張控えめな双丘は、指三本程度の帯状にまで小さくなったカーディガンの残骸が、肩に乗っかった一条のニットによって吊られ、かろうじて局所的に隠されているだけである。
 同様に、小振りな尻では、膝丈であったはずのスカートが「ワカメちゃんもかくや」という程に切り詰められ、チラチラと、けしからぬものが見え隠れしている。

 これこそが、『みずのはごろも』の真骨頂である。
 白王みずきが使役する水の威力は、彼女の身に纏う衣服の残量に反比例する。
 すなわち、服が消えれば消えるほど、必殺級の技を使える――もとい、あられもない姿を晒さなければ敵を倒せないのだ!

「……助かったわ、みずき。ごめんね、不甲斐ない先輩で」

「そんな、操子せんぱいがいたからこそ――ぅんっ!」

 ダッチワイフの燃えカスの元でへたりこむ操子のところへと歩み寄ろうとしたみずきだったが、突如、謎の喘ぎと共に身体を抱き締め立ち止ってしまった。
 不思議そうに見上げてくる操子に、みずきは紅い顔で、おずおずと告白した。

「その……先っぽがですね、カーディガンのニットと……えと、擦れちゃいましてっ……」

「…………」

 そう、先の軍師モヒカンザコ戦に於いて、みずきは残存する襤褸以外の、下着を含めた全ての衣服を消費してしまっていた。とにかく無我夢中だったのだ。
 それゆえに今の彼女にとってはそよ風すらも大敵であり、走ることすらままならぬほどに“ギリギリ”なのだった。
 呆れ顔の操子はしばし口を噤んだ後、「ハァ……」と深い溜め息をつき、一言、

「あんたのその能力、ほんとえっちいわねえ」

 と、感慨深く呟いた。
 まるで痴女ね、などとは、さすがに良心が咎めたので口にできなかった。
 なお、この後、真っ赤になって操子の言葉を否定しようとしたみずきの元へ、騒ぎを聞きつけた生徒会役員や風紀委員が大量に駆けつけたのはまた別の話である。
 女性の甲高い叫び声が学園中にこだましたとか、しなかったとか。

 斯様に強烈な不憫な子属性を持つ白王みずき――彼女が、「兄さんに認めてもらえるような女性になるため」などと言って出場を決意した『SNOW-SNOWトーナメントオブ女神オブトーナメント ~「第一回結昨日の使いやあらへんで!チキチキ秋の大トーナメント」~』で、一体どのようなメに――否、どのような活躍をするのかは、誰にもわからない。  <終>


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